隣の苦労人JKと電柱から生まれた赤ん坊を育てることになりました   作:みたらし団子!!

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12万円がなくなりました

チュンチュン……と、無駄に爽やかなスズメの鳴き声で目が覚めた

現在時刻、朝の7時。睡眠時間はおよそ4時間ちょい

酒寄の部屋で目を覚ました

 

「……眠い」

 

だが、俺には今日どうしても遂行しなければならないミッションがあった。それは『厄介な宇宙人を起こさずに、無事に学校へ行くこと』だ

隣を見ると、布団でかぐやが大の字で爆睡している

 

「……おはよう、旭。あの子起きてない?」

 

「ああ。今のうちに学校行くぞ、あいつが起きたら絶対『がっこう行く!』って騒ぐからな」

 

俺たちは無言で頷き合い、アパートの階段を音を立てずに降りようとした

その時だった

 

「あーっ! 二人とも抜け駆け!? わたしもハッピーエンド探しに行くー!!」

 

アパートの2階の窓から、パジャマ代わりの酒寄の服を着たかぐやが、満面の笑みで笑っていた

 

「まぁ無理ですよね...知ってたけど」

「はぁ...」

 

俺たちは揃って重いため息をつき、再び階段を上って部屋へと戻った

 

「がっこう! わたしも行く!」

 

目をキラキラさせて玄関に立ち塞がる謎の少女だが、戸籍も常識もない規格外の宇宙人を学校に連れて行けるわけがない

 

「絶対ダメ!あんたは学校には行けないわよ、着いてきちゃだめだからね!」

 

「そもそもあんたはとっとと月に帰る方法を思い出してよね!」

 

「えぇ~!なんでぇ~!!つまんない~!!」

 

かぐやが酒寄の足にしがみついているのを横目に俺は考えた

そういえば、原作ではパンケーキを食ってたな...それなら....

 

「なぁパンケーキでも食べるか?」

「ちょっと?何言ってんの?」

「まぁまぁ、すぐ終わるって」

「はぁ全く....優しいんだから...」

 

かぐやは「パンケーキ!!なにそれ!!」と目をキラキラさせながら俺を見た。

 

「ここで少し待ってな」

 

俺はいったん自分の部屋に戻りパンケーキを三枚焼いた

 

「ほい! 焼けたぞ! パンケーキ!」

 

シロップ、果物を皿に盛り付けたパンケーキをテーブルにドンッと置いた。

 

かぐやは「おおお!!これがパンケーキ!!」と目をさらにキラキラさせていた。可愛い

 

「学校が終わったらすぐ帰るから、それまではこの部屋で待っててな」

 

「わかった!じゃあ、いただきまーす!」

 

かぐやは迷いなくパンケーキに大きくかぶりついた。

その瞬間、少女の動きがピタリと止まった。

 

「――――ッ!?」

 

かぐやの大きな瞳が見開かれ、昨夜のオムライスとは全く別の意味で、文字通り星が飛んだ。

 

「おいしい!!オムライスもだけどこれもおいしい!」

 

「だろ、いい子に待ってろよ」

 

「そうよ。私たちが帰ってくるまでにしっかり帰り方も思い出してよね」

 

酒寄はジト目で少女を見下ろし、ふと小さく息を吐いた。

 

「よし、じゃあ学校に行くか」

 

「そうね」

「待って!!やっぱりダメ?」

 

上目遣いでこちらを見ながらかぐやが聞いてきた

 

「ぐっ!!カワイ…ってそうじゃなくて、パンケーキ食べたろ?だったらちゃんとお留守番していなさい」

 

「...はーい」

 

俺たちは、しょんぼりしているかぐやを部屋に残し、今度こそ学校に向かった。

 

「あんた..かぐやの顔見て可愛いって言った??」

 

「エッ?何のこと?」

 

「...................フーン」

 

終業式を終え、うだるような夏の陽射しの中、俺は今後のバイトのシフトに思いを馳せながら正門へと向かっていた。

 

「うしっ、今日から夏休みだな...稼ぎ時だし頑張るかぁ」

 

しかし、見慣れた正門の前に、かぐやがしゃがみ込んでいるのを発見し、俺の思考は停止した。

 

「わぁーっ! お前、すっごいモフモフだね!」

「ワンッ!」

 

見知らぬ散歩中の犬の顔を両手でこねくり回しながら、かぐやが何やらとんでもない生命体創造のインスピレーションを得ていた。

いや、待て待て待て。

 

「はぁ..やっぱりきちゃったかぁ~」

「あ! 旭だー!」

 

俺が慌てて駆け寄ると、かぐやは犬の飼い主のおばあちゃんに満面の笑みで手を振りながら立ち上がった。

 

「だって、お留守番飽きちゃったんだもん。旭と彩葉の匂い辿ってきたら着いた!」

 

「犬かお前は! っていうか、よく誰にも見つからずに……」

 

「それより旭! わたし甘いもの食べたい! お留守番してたんだから、ご褒美ちょーだい!」

 

「ここに来てる時点でお留守番出来てないだろ...」

 

悪びれる様子もなく目をキラキラさせるかぐやに、俺は深い深いため息をついた。

 

ここで放り出して勝手にウロウロされても困るし、即席パンケーキで誤魔化した負い目もある。

俺は観念して、かぐやを連れて近くのスイーツショップに向かうことにした。

 

「うっわー!! なにここ、あまーい匂いがする!!」

「これ以上大声出すなよ……」

 

やってきたのは、駅前にある小洒落たパンケーキ専門店。

実を言うと、俺はこの店に入った瞬間に嫌な予感がしていた。

原作の知識として、終業式の後に『彩葉たちがパンケーキを食べに行く』というイベントがあることは知っていた。だが、それが具体的にどこの店なのかまではぶっちゃけ覚えてない。

 

俺が周囲を警戒しながら席を探していると、フロアの奥から聞き覚えのある声が響いてきた。

 

「彩葉ノートで赤点回避記念~!」

 

「お礼の品で~す」

 

「「ご査収くださ~い」」

 

見れば、彩葉と、その親友である芦花、真実の三人が、パンケーキを前にして盛り上がっていた。

 

「ちょっと二人とも、声大きいってば……。それに、ノート貸したくらいで大げさだよ」

 

彩葉は頬を少し赤らめながら、呆れたように、でもどこか嬉しそうに笑っている。

 

(ああ……尊い……。生で見る芦花と酒寄のやり取り……最高すぎる……)

 

俺がモブおじさんとしての本能を爆発させ、柱の陰から拝んでいた、その時だった。

 

「あーーーーっ!! 彩葉だぁーーーーっ!!!」

 

「!!?!?ばっ、おまっ!」

 

静止する間もなく、かぐやがフロア中に響き渡る声で叫び、一直線に彩葉たちのテーブルへと突撃していった。

 

「よっ!彩葉! わたしも甘いもの食べに来たの!」

「な!? なんであんたがここに……っ!?」

 

彩葉の顔からスッと血の気が引くのが見えた。

そりゃそうだろう。親友たちの前で、ひた隠しにしてきた規格外の宇宙人に突撃されたのだから。

 

呆然とする彩葉の横で、芦花と真実が目を丸くしてかぐやを見つめている。

 

「えっ? 彩葉、この可愛い子、知り合い?」

 

「ていうか、あれ……後ろにいるの陽川くんだよね? どういう状況?」

 

「あー……その、なんだ」

 

俺は観念して、引きつった笑顔を浮かべながら三人の……いや、かぐやを含めた四人のテーブルへと歩み寄った。

 

「旭ー! わたしおっきいイチゴのやつがいいー!!」

 

「黙ってろお前は!!」

 

目を輝かせる芦花と真実。顔面蒼白の酒寄。

そして空気の読めないかぐや。

俺の平穏な夏休みは、初日の昼下がりにして早くも波乱の幕開けを迎えていた。

 

「ふんふん~♪」

騒ぎの原因であるかぐやは鼻歌を歌いながらパンケーキを食べている

 

「んじゃあ...俺は先に家に帰ってるから、女性だけで楽しんで!それじゃ!」

 

「行かせるわけないでしょ!」

 

俺が亜高速並みの速さでお店から出ようとすると酒寄がその倍の速さで出ようとしている俺の腕を掴んだ

芦花と真実は目を点とさせていた

俺が長男じゃなかったら反応できなかった

 

「この状況を私だけでどうしろと!?」コソコソ

「嫌だって...家帰ってご飯作んなきゃだし」コソコソ

 

「旭どこ行くの?」

 

俺の袖を掴んで目をウルウルさせて震えた声でかぐやが言う

俺はかぐやの手をとって諭すように言う

 

「俺は家に帰ってご飯を作らなきゃだから、酒寄がいるし俺がいなくてもいいかなって」

「ご飯?それなら大丈夫!家にいる時に作ったから!」

「あー....はい....」

くっそ!そうだった...忘れてた....

 

 

 

「無駄な抵抗も終わったみたいだしこの子について教えてよ!」

 

なんか魔王みたいなこと言ってるよこの人....

ッテカ ムダナテイコウジャネェシ

 

「ねぇ?陽川君このかわいい子は誰なのかな~?彩葉の服着てるし~?」

 

芦花に目をじっと見られながら質問される。コワイ...

 

「え~っとぉ、酒寄の親戚の子で...酒寄だけだとすごい大変だから、お隣だし少しだけ手伝ってるんだ」

 

やっぱこの説明が1番波風立たないよな!

だかそれを聞いた酒寄はこちらをバッと振り返り睨んだ

 

「そうなの!向こうから面倒見てっていわれてねぇ~アハハ...」

(何勝手なこと言ってんの!?覚えておきなさいよ...てかあいつもうこっちのこと見てないし!)

 

「へ~どこから来たの?」

「月から来たの!」

 

私がどうやって説明しようかと必死に頭を回していると、ありえない爆弾発言をしながらかぐやが自己紹介をした

 

「「月?」」

「!?つー、つー、築地!!築地から来たんだ!!」

「わ~おいしいお寿司屋さんおしえて~?」

よし!やっぱ立川一のグルメガール真実はこれで行ける!

 

「可愛いねぇ〜お名前は~?」

美容系インフルエンサーの芦花と言えども、宇宙人の可愛さに夢中のようでなんとかなった

 

「名前?ん〜っと、な「かぐや、これ食べるか?いちごのパンケーキだぞ」食べる!!...美味しい〜!!」

 

旭の的確なアシストでかぐやの爆弾発言を止めた!あいつ今絶対無いとか言いかけたでしょ!

まぁそんなことより名前....名前

 

「え~っと、え〜っとかぐや!」

「かぐやぁ〜...かぐやかぁ~えへへ~♪」

 

かぐやがニマニマしながら体をぐわんぐわん揺れさせてる

 

「こら小娘、体をぐわんぐわんさせない」

 

「旭!小娘じゃなくてかぐやだよ!ほら!かぐやって言って!!」

 

「わかったわかった、わかったからほらかぐや、肩を揺らさない」

 

「ごめん!!二人とも!!この埋め合わせは絶対するから~!!」

 

「ほら、旭!行くよ!」

 

「え?まだパンケーキ食べてな「つべこべ言わずについて来なさい!」...へい」

 

私は残ったパンケーキを口の中に放り込みかぐやの手を取る。旭は泣きそうな顔しながら現金を机の上に置いていた

 

帰り道

 

「いや~さっきのパンケーキおいしかったね~、旭が作ったものと同じくらい美味しかった!」

「そっかそれは良かった、俺もパンケーキ食べたかった...」

 

なんでこいつらこんな呑気なんだ!?

旭はパンケーキ食べれなくて残念がってるし!!こっちは言いたこと沢山あるんですけど!?

 

「正気!?正体ばれたらどうすんの!なんで家から出てるの?旭が作ったパンケーキで我慢するって言ったよね!?あんたも甘やかさない!」

 

「だってつまんないんだもん」

 

まじかこの宇宙人つまんない?そんな理由で外に出て来たの?自分が宇宙人だと言うこと忘れているの?

 

「ちょっと旭もなんか言いなさいよ!」

「いや~ぶっちゃけ我慢するのは無理そうだな~って思ってたしな」

「あとパンケーキ...食べたかった」

「はぁ...あんたねぇ...」

 

コイツどんだけ食いたかったのよ

 

「後で私が作ってあげるから我慢しなさい」

 

「彩葉のはパンケーキじゃなくて残飯だからいらな「は?喧嘩売ってるでしょ?買ってやるわ」

 

「売ってないから!手を降ろしてください!」

 

旭の首を掴んでる私を横目にかぐやかゴソゴソしてある物を取り出した

 

「ねぇ!これどうやって使うの~?」

 

「?私のスマコン?持ってきたの?」

 

「彩葉のノートPCで買えた!」

 

「は!?」

 

彩葉は雷のような速さで自身のスマホのウォレット残高を調べた

ウォレット残高¥-124400

「

「うわ、これは....」

うわ~これはひどい、こんなんみたら心折れるて、おいたわしや彩上

 

「死ぬ気でためたんですけど.....死ぬ気でためたんですけどぉ~!!ウウ...」

 

「え〜っと、なんか銀行?のデータを書き換えれば数字増やせるみたいだけど...やる?」

「ダメに決まってるでしょ!?ぜ〜ったい!やらないでよね!」

 

 

そんなこんなでアパートへと辿り着いた俺たちだったが、部屋に戻るやいなや、彩葉は魂が抜けた顔で床に突っ伏してしまった。完全に廃人である。

「……彩葉、大丈夫か?」

「……ううん、大丈夫じゃない。わたしの12万……」

 

虫の息で呟く彩葉を横目に、かぐやが何やら思い出して慌てて台所に行った。

 

「そうだ!彩葉、ごはんあるよ! お留守番してるあいだに作っておいたの!」

「は……? ごはん……?」

 

かぐやがラップを外してテーブルに運んできたのは、ありあわせ……ではなく、ネット通販で勝手に注文した食材をふんだんに使った『豚の生姜焼き』と、具だくさんの味噌汁、そしてツヤツヤに炊き上がった白ご飯だった。作り置きとは思えないほど、部屋中に醤油と生姜の香ばしい食欲をそそる匂いが立ち込める。

 

「こ...これもウォレットで.....?」

 

血の気を引かせた彩葉が魂を抜き取られたかのようなか細い声で呟いた

 

うわーこれよく怒んなかったよな、俺だったら絶対怒ってるわ

 

「よし、じゃあ冷めないうちに食べようぜ。せっかく作ってくれたんだし」

 

俺たちは箸を手に取り、いただきます、と手を合わせた。

彩葉はまだ少しどんよりとした顔のまま、おずおずと生姜焼きを一口、口へと運ぶ。

 

――その瞬間

俺達の動きがピタッと止まり、目が見開かれた。

ジワリと溢れ出した極上の豚肉の肉汁と甘辛いタレ、絶妙な生姜の風味が口いっぱいに広がったらしい。続いて勢いよくかきこんだ白ご飯との相性が抜群すぎて、彩葉の頬が感動でピクピクと震え始めた。

 

「「美味い...!!」」

 

普通にうまくて声が漏れ出た

 

その声を聞いてかぐやはガッツポーズを取る

 

「よしっ!」

 

普通に美味いな、これが彩葉の胃を掴んだ料理か...

 

「お金がないのよ。貧乏なのよ。こちとら必死に学費稼いでんのよ。何なのよ、うまいじゃないのよ。何なのよ、あんた。久しぶりのおいしいごはんで、体が喜びに満ちていくじゃないのよ」

 

ボロボロと目から涙を流しながら、もの凄い勢いでご飯と生姜焼きを口に押し込んでいく彩葉。

 

「彩葉、泣きながら食べるなよ……」

「だって……だって美味しいんだもん……! 悔しいけど、めちゃくちゃ美味しいんだもん……!!」

 

大盛りだったはずのご飯があっという間に消えていき、かぐやは自分の作った料理を美味しそうに食べる彩葉を見て、パッと顔を輝かせた。

 

「えへへ、彩葉がわらーった!」

「笑ってない! 泣いてんの!! でも美味しいから許す……いや許さない! 12万は絶対働いて返してもらうからね! 旭も手伝ってよ!?」

「なんで俺まで巻き込まれてんだよ……まぁ、いいけどさ」

 

さっきまでの修羅場が嘘のように、狭い部屋に賑やかな声が響く。

 

「ほら、使った食器とかお鍋とか洗うぞ」

私はちらっと台所を見ると野菜の切れ端やゴミ、飛び跳ねた油やソースなどなど

はっきり言ってマジ汚い

 

「確かにご飯は美味しかったけど、後片付けまでしっかりやる」

「えぇ~めんどくさぁ~い」

「文句いうと適当な研究施設に売るぞ」

「?...研究施設?」

「そうだ、かぐやは宇宙人だろ?いいとこに売れば高値で買うところもあるだろ?」

「売れたらもうなどと俺達には会えないけど」

 

コイツは何を言っているんだ

 

「え〜!!売られちゃうの?二人にも会えないの!?ヤダヤダ!!「ならちゃんとお皿洗いしなさい」わかった!」ピュー

 

かぐやはすぐに立ち旭と一緒にお皿洗いを始めた

 

 

 

食事を終え皿を洗っている俺たちを見て寝っ転がっている満腹彩葉さんが口を開く

 

「あのさぁ....あんたいつまでここにいるつもり?ここでは匿えないよ」

 

まぁそうだろうな、彩葉は親に無理を言って一人暮らしをしている。

人一人匿っています!とかバレたら一発で家に帰らされるよな

てかこれ俺もばれたらまずくね?男と女の子二人の三人で暮らしていますはやばい

自分の部屋もあるけどかぐやが来てから基本的に彩葉の部屋にいるし...まぁ寝るときは部屋に戻るけど...

考えるのやめよ!!

 

俺たちが色々考えていることなど露知らず、皿を洗い終わったかぐやは彩葉のノートPCで何やら怪しげなコードを打ち込んでいた。

 

「ふんふふ~ん♪カタカタカタカッ、ターン♪」

 

リズムに乗っているかの如くキーボードを打つかぐや、俺はそれをぼーっと見てた

 

「うおおおお!出来た!」

 

満腹彩葉が飛び上がる

 

「!?何してるの?まさか犯罪じゃないよね?」

 

「旭!彩葉!見て見て!!携帯ゲームキット見つけたから弄ってみた!」

 

「それ....」

 

たま〇っちによく似た古いゲーム機だった

こっちにもあんのか?

まぁ未来だしあんのか

 

「これ『犬DOGE』!彩葉達の学校で出会ったワンちゃんを参考にしたんだぁ~」

 

「これでいつでも一緒!!イヤッフゥ〜!!」

 

「ご機嫌ですね....。てか学校まで来てたの!?」

 

「そういえば、月の帰り方は思い出せたのか?」

 

「頑張ってるけど難しい〜〜ぐぬぬ」

 

彩葉が立ち上がって言う

 

「もうしょうがないから迎えに来るまでね」

「いいの!?」

 

酒寄がかぐやに条件を付ける

 

「目立たない、許可なく外でない、私の邪魔しない、これ守れるなら、家いていいよ」

 

「ヴぇ~」

「まぁどんまい」

 

絶望した表情のかぐやが口を開く

 

「じゃあじゃあ、かぐや迎えが来るまでこのボロアパートでなんの楽しみもなく、外にも出られず、幽閉されるってこと~?」

 

「ボロアパート言うな、まぁ?いやならこの話はなかった事にするけど?」

 

「やだやだ!」

 

「ハッピーエンドには自分でするんでしょ?自分で何とかしな~フフン...」

 

「こんな何にもない部屋で!?」

 

ピピピ...

「あっ、時間」

 

「あ..待って?どこ行くの? かぐやを置いて行っちゃうの?」

 

彩葉が立ち上がるとかぐやは目にもとまらぬ速さで彩葉の足にしがみついた

 

「違うわよ、ツクヨミに行くの」

 

「行くじゃん!かぐやもそのツクヨミ?ってところに連れてって!」

 

「無理よ、スマコンが無い...と」

 

「これ?」

 

かぐやが買ったスマコンを彩葉に見せる

 

「...そうだったわね」

「...んじゃ、俺も部屋に戻るわ」

 

「えっ.......」

 

カバンを持って彩葉の部屋から出ようとすると

かぐやが足にしがみついて来た

 

「速すぎるぜ、俺じゃなきゃ見逃しちゃうね」

 

「なんで帰るの?旭も一緒にツクヨミ行こうよ!」

 

「とは言ってもスマコン家だし、もういい時間だから風呂にも入りたいしな」

 

スマホは別として十万円以上の物を持ち歩くってのはなぁ...

失くしやすいし壊れやすいし、持ち運ぶ方がデメリットあるんだよなぁ

 

「まぁ風呂から出たらツクヨミ行くから、それまで待っててな?」

 

「えぇ〜?絶対来てよ!」

 

まぁ行くつもりだったしいいけどヤチヨのライブマジで良いからな

歌も演出も最高だし

 

そもそも、これ以上かぐやたちに付き合うわけにはいかないんだよな、手遅れだと思うけど。

かぐやと酒寄は配信者になるし、売れ始めたら引っ越しもするし、

男がいるとユニコーンが湧くからな、これを理由に少しずつ距離を置こう。

 

「そういえばツクヨミ?ってところに行って何をするの?」

 

「ヤチヨっていうツクヨミで一番人気のライバーのライブがあるのよ」

 

「おぉ~~」

 

目をキラキラさせるかぐやを尻目に、俺は「じゃ、後でな」と言い残して自分の部屋へと戻った。

 

風呂に入ってさっぱりしながらも、頭に浮かぶのは今までとこれからのことだ。

12万を失って白目を剥いていた彩葉。

規格外の能力と無邪気さで事態をかき乱す宇宙人・かぐや。

そして、これから行われるヤチヨのライブ――。

 

距離を置こうと決めたはずなのに、どう考えても俺の夏休みが平穏に終わる気配は微塵もなかった。

 

「……まぁ、とりあえず風呂上がりのヤチヨのライブだけは楽しむか」

 

脱衣所の鏡に映る自分の冴えない顔に向かってため息をひとつ吐き、俺はシャワーの栓をひねった。

波乱に満ちた俺たちの夏休みは、まだ始まったばかりだった。

 




見てくださっている皆さん本当にありがとうございます!!
至らない点しかございませんがこれからもよろしくお願いします!!
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