治安局最強の知能構造体・ジョーカー。“彼”が制作されたのは、新エリー都防衛軍が無敵の戦力を求めたことがきっかけである。幾度もの失敗、廃棄を重ねようやく誕生した“彼”は、本人の意思により治安局で便利屋のような働き方をしている。
……というのが表向きの「ジョーカー」の存在理由。実際はそのような生易しいものではない。
少女は、あるホロウで発見された。身分も記憶もない彼女を、防衛軍はちょうどいい「部品」として扱うことを決めた。防衛軍が開発した、エーテルメモリ。このメモリをベルトを介して使用すれば、エーテルをその体に纏って戦うことができるという。
メモリは複数開発されたものの、やはり体への負荷が大きく被験者はもれなく全員がエーテリアス化、もしくはエーテル濃度に耐えきれず死亡という結果のみであった。
しかし少女は違った。メモリに適応し、「ジョーカー」としての力を手に入れた。ホロウ内でも問題なく活動し、エーテリアスにも有利に戦う。理想の戦士の誕生である。
が、いざ実戦に投入するとなった際にある意見が唱えられた。
「このような少女を戦わせるのは如何なものか」
それはあまりに当然な意見であった。少女はあまりに華奢だった。下手すれば子供の蹴り一発で複雑骨折しそうなほどに。さらに少女はエーテル適正減退症候群を患っていた。メモリを使用してジョーカーの鎧を纏っている間は問題ないが、ホロウ内でもし変身が解けた場合、少女はすぐにでも死亡してしまうだろう。
意見を唱えた人物は、防衛軍でありながら道徳心のある人物であった。ゆえに、幼く華奢な少女が戦いの中で亡くなることを良しとしなかった。
様々な会議、議論が重ねられた結果、彼女…「ジョーカー」は治安局に譲渡されることになった。それも人間としてではない、知能構造体として。
表向きは防衛軍が開発した知能構造体として、治安局のなんでも屋という立ち位置に収まることになった。だが経緯ゆえか、上層部は彼女の負担などお構いなしに出動を命じる。まさに社畜であった。
「セツ」
「セヴェリアンさん……」
だが、彼女のことを気遣う人物も存在していた。都市秩序部の監察官、セヴェリアン・ローウェル。彼は彼女、もとい「ジョーカー」に命令する立場であるゆえ、その素性を知っている。
「特務捜査班から報告だ、今回の一件は無事解決したと」
「そうですか、よかった」
「…………」
「セヴェリアンさん?」
「……そのひび割れ。やはり症状は進行しているのか?」
「ちょうどメンテナンスに行くところです、もしかしたらもう死ぬかもしれませんね」
「そのようなことを気軽に言うな。きみは…」
「ごめんなさい、ジョーカーは大切な戦力ですもんね。できるだけ最期まで働きますよ」
「…………」
「それじゃあ、失礼しますね」
軽い足取りで部屋を出るセツを、セヴェリアンは複雑な面持ちで見つめる。セヴェリアンにとって、セツは「人間」だ。だがセツは、自分のことをジョーカーを動かすための部品としか思っていない。その認識の乖離は、深刻である。
セツ
防衛軍に拾われた色素薄めうすほそ美少女。見た人が「幽霊?」ってなるレベル。
ジョーカー
メモリとベルトで変身する。聞いたことあるね。
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