治安局の仕事は多岐に渡る。今日はホロウ災害の危険さを市民に伝える講習イベントを開いていた。
「……と、私の話はここまでです。それではここで特別ゲスト、ジョーカーさんの登場です!」
『よう、新エリー都のみんな!』
ジョーカーが登場すると、会場は歓声に沸いた。ジョーカーは治安局のなんでも屋という立場上、市民と触れ合う機会も多く、市民の間でもヒーローのような扱いを受けていた。
「すごい、本物のジョーカーだ!」
「かっこいい、わざわざ来てよかった……!」
『みんな、今日は講習会に来てくれてありがとう。俺が治安局最強の知能構造体・ジョーカーだ。……自分で言うのは恥ずかしいが、仕方ないか。』
「それではジョーカーさんとの質問コーナーです!何か質問のある方、いらっしゃいますか?」
朱鳶が観衆にマイクを向けると、皆が元気よく手を挙げた。その中でもとりわけ元気だった、1人の少年に朱鳶はマイクを渡した。
「えっと、ジョーカーさん!この前、ホロウで暴れてた強盗たちを捕まえたって聞きました!どうしてそんなに強いんですか?」
『……そうだな。皆も知っていると思うが、俺は元々防衛軍によって作られた知能構造体だ。本来はもっと前線で、エーテリアスやホロウ災害と戦うために生まれた。だから戦闘力が高いんだ』
「…じゃあ、なんで治安局にいるの?」
『もちろん、防衛軍でホロウ災害に立ち向かう選択肢もあった。だが俺は、新エリー都に暮らす皆の日々を守りたかったんだ。もっと気軽に、身近に皆を助けられるような存在になりたかった。俺みたいなのがいれば、皆も安心だろ?』
「うん!ジョーカーさんかっこいい!」
それからしばらく。何度かの質問コーナーやジョーカーとの触れ合いコーナーがあり、講習会は終わりを迎えた。
「ジョーカーさん、ありがとうございました。ジョーカーさんの人気がなければ、ここまでの人は集まらなかったでしょう」
『朱鳶……そう自分を卑下するな、確かに俺のヒーロー的人気もあるだろうが、お前の確かな思いがなければここまで来れてないんだ』
「……ありがとうございます」
『うん、それでいい。それじゃあ俺は上との話があるんでね』
「あ、ちょっと待ってください!」
『ん?』
「その……握手を、してもらっても?感謝を、示したいんです」
『ああ、いいとも』
ジョーカーが、朱鳶の手を握る。その手は冷たく、機械のものだ。だが、朱鳶は暖かいものを感じていた。
『……朱鳶?』
「いえ、すみません。ありがとうございました」
『ああ、それじゃあ』
朱鳶は、懐古していた。初めてジョーカーと出会った時のことを。
警察学校を出てすぐ、朱鳶は新人として捜査に加わることになった。朱鳶はすぐに犯罪者の手口に気づいて上司に進言したが、新人である彼女の意見は雑に扱われ、杜撰な捜査に進みかけた。
だが、そこを救ったのがジョーカーであった。上層部の進言で捜査に加わったジョーカーは、朱鳶の意見を尊重した。そしてホロウ内部に逃げた犯人たちとの戦いでも、彼は鮮やかに勝利した。その活躍と優しさを、朱鳶は間近で見ていた。
__ジョーカーさん。あなたは、自分を冷たい機械だと言うけれど。
私は、そうは思いません。あなたほど優しく、正義感に満ちた“人”は、そういない。
私は、あなたを信じていますから。
その思いがけっこう重めなことを、朱鳶は自覚していなかった。
朱鳶
ジョーカーなら触れられても大丈夫。ジョーカーさんガチ勢。
ジョーカー
子供達からも大人気。朱鳶からけっこう重めな信頼を向けられている。
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