[叔父から教わったこと]
夕方。
姉妹は町の宿屋に部屋を取り、そこで調査の整理をしていた。
アイリスは机の上に地図と悪魔祓いの本を広げる。
「失踪した人たちの場所は、やっぱり住宅地の周辺に集中しているね」
「うーん……隠れ家でもあるのかな?」
「可能性はあるよ。でも、まだ何とも言えない」
アイリスは本のページをめくった。
悪魔にはいくつかの種類が存在する。
正式な契約を結んで人間を悪魔にするものもいれば、契約などお構いなしに人間を襲い、強制的に悪魔へ変えてしまうものもいる。
その時、アイリスの脳裏に叔父の言葉が蘇った。
叔父「悪魔にも種類がある。ちゃんと契約とかする行儀のいい悪魔と、手当たり次第に人を悪魔にするマナーの悪い悪魔だ」
アイリス「マナーの悪い悪魔……?」
叔父「ああ。ちなみに正式な契約をせずに悪魔にされると『ソウルレス』になる」
アイリス「ソウルレス……」
叔父「こいつらは悪魔と違ってそれほど強くないし、寿命も数ヶ月程度で短いんだが、一つだけ延命する方法がある」
アイリス「それって?」
叔父「生きてる人間の魂を喰らうことだ」
叔父はそこで少し表情を険しくした。
叔父「だからソウルレスは攻撃的だし、もっとも人的被害が出やすい。最優先で祓う必要がある」
「……ソウルレス」
アイリスが小さく呟いた。
「ん? どうしたの?」
マリアがベッドの上で寝転がりながら尋ねた。
「ちょっと気になることを思い出したの。叔父さんから聞いた話なんだけど……」
アイリスはソウルレスについて説明した。
正式な契約を経ず、強制的に悪魔へ変えられた存在。
短い寿命を延ばすために、人間の魂を求める。
そして何より、通常の悪魔よりも衝動的で危険な存在だということ。
「へえ……そんな悪魔もいるんだ」
「うん。もし今回の事件がソウルレスの仕業なら、かなり危険だよ」
マリアは天井を見上げた。
「じゃあ、早く見つけないとね」
「そうだね……」
その時だった。
宿屋の外から、突然大きな叫び声が聞こえた。
「誰か来てくれ!!」
続いて、複数の人間が走る足音。
アイリスはすぐに立ち上がった。
「何かあったみたい!」
[夜の捜索]
宿屋の外に出ると、町の通りは騒然としていた。
町の男たちが集まり、猟銃や松明を手にしている。
町長もその場におり、住民たちに指示を出していた。
「今度は誰がいなくなったんですか!?」
アイリスが尋ねる。
町長は険しい表情で答えた。
「町の看板娘、エミリアさんが姿を消した。夕方までは店にいたそうだが、帰宅途中で行方が分からなくなったらしい」
「そんな……」
町の人々の間に不安が広がる。
エミリアは町の食堂で働く若い女性で、町の人々から親しまれていた。
「目撃者はいないんですか?」
「一人だけ。町の外れにある林へ向かう人影を見たという者がいる」
町長は松明を掲げた。
「これ以上、被害を出すわけにはいかない。今夜は全員で捜索する!」
男たちは猟銃を持ち、松明を掲げて林へ向かい始めた。
アイリスもその後に続こうとする。
「私たちも行きます」
「危険だぞ。相手が何なのかも分かっていない」
「だからこそです。私たちは悪魔祓いですから」
町長は少し迷った後、頷いた。
「分かった。ただし、決して無理はしないでくれ」
「はい」
マリアもアイリスの隣に浮かんだ。
「私も行くよ!」
「もちろん。お姉ちゃんも一緒に来て」
「任せて!」
姉妹は男たちとともに、町外れの林へと向かった。