幼馴染から告白されたので断ったのに、次の日学校に行くとなぜか付き合ったことになっていてなんかヤバそうです。 作:主義
そして僕は島田の手を取り、人気《ひとけ》のない場所までやってきた。
「僕とお前は付き合っていない」
「なに言ってるの。俊明」
「こっちの目線からすれば、お前が何を言っているんだという感じだけど」
「私たちは付き合っているよ。昨日告白して、俊明はそれを受け入れてくれたじゃない」
「…僕は告白を受け入れていない。断った」
「そんなことない。俊明は私の愛を受け入れてくれたの」
島田美咲はこういう人間なのだ。幼馴染としてずっと一緒に居たから知っているのだ。
僕も頭のどこかでこうなるとは思っていた。
ならないで欲しいと願っていたけど。彼女が断ったぐらいで諦めてくれるような人間ではない。
こうなるか、僕に対して「なんで受け入れてくれないの!?」って怒り出すか、どっちかだと。
でも、こうなると僕はどうすればいいんだ。
僕がいくら付き合っていないと言っても彼女が『付き合っている』と公言すればそれは付き合っていることになる。僕の発言権なんてほとんどないのと同じだ。この学校で彼女以上に発言力がある人なんて生徒会長ぐらいだ。
そしてあんまり彼女を邪険に扱えば、僕は全ての男子から目の敵にされるだろう。今ですらそうなんだから、余計にそうなる。
さすがにあんまり教室を抜けるわけにもいかない。そろそろSHRが始まる時間でもあるし。
「話はまた昼休みにしよう」
「うん、一緒にお昼食べよう」
まるで話が通じていない。仲が悪くて、人の話を全く聞こうとしないことはあるかもしれないが、それなりに仲がいいのに全く聞こうとしない。
そして教室戻れば、もちろん質問攻めだ。
彼女に聞くよりも僕に聞いた方がいいと判断したのか、ほとんど僕が質問攻めにあっている。
様々な質問に対して僕は明確な否定はしないものの、付き合ってはいないという趣旨の説明をした。ただ幼馴染で仲が良いだけ。それ以上の関係でもそれ以下の関係でもない。
さっきの島田の発言はただ悪ふざけだと。
本当に付き合ってはいないと。
これが僕にとっては一番いいはずだ。あんまり強く否定することもせず、だが全てを受け入れる訳でもない。
クラスメイトはそれである程度は納得してくれた。それは僕という人間が『島田美咲』という学園のマドンナと付き合えるはずがないと、多くの人が思っているからだ。
もし僕がものすごくイケメンでそれなりに人気があったら、いくら否定したとしても周りはそれを素直に受け取らない。
『本当は付き合っているんだろう』とか『やっぱりイケメンはいいよなぁ…』とか思われるのが普通だろう。
だけど、今回に関しては僕だ。だからこれでどうにかなる。
昼休みになる前に僕は島田に対して、スマホを使って連絡した。
『昼休みは屋上に集合しよう。だけど、二人で一緒に教室を出たら注目を集めるから、まず最初に出てくれ、僕は少し遅れて合流する』
只でさえ、今日の僕と島田は付き合っているかもしれないという疑問が生まれた日だ。どう考えても一緒に行動するのはまずいから。
島田からは『私は注目されても全然いいけど、俊明は昔から目立つの好きじゃないもんね。ここは彼女だから彼氏の言うことに従ってあげるよ』というメッセージが返って来た。
昼休みになると僕と島田は屋上で改めて顔を合わせる。屋上にはありがたいことに誰もいないため、帰る時気を付ければ誰にも二人で会っていたことが知られることはない。
「まず、改めて言おう。僕はキミと付き合っていない」
「ううん。付き合っているに決まってるじゃん。なにジョーク?」
「いや、ジョークじゃない。本気だ。昨日の僕は告白されて、それを断った。幼馴染として好意に気付いていたが、僕はキミと良い友人でいたい」
「なに言ってるの。私と俊明は付き合っているよ。これから先の人生もずっと一緒にいるの。死が二人を分かつまでずっと一緒」
島田は僕を見ていない。これから先の未来でも想像しているのか、顔がにやけ始めるのだ。僕としては目の前の幼馴染が恐怖でしかない。
「付き合ってないよ。いくら島田が付き合っていると思い込んだとしても、僕は付き合っていないという認識だ。その認識が覆ることはないよ」
「ううん。私と俊明は付き合ってる」
彼女の認識が変わることはないと思った。元々の性格を知っている身からすると、認識が変わる可能性は低いと思っていたけど、やっぱり無理だ。
となるとこれからどうするべきか。
彼女の中で僕と付き合っていることになる。
学校内でも普通にスキンシップのようなことをしてきてもおかしくない。そんなことをすればまた僕と彼女が付き合っていると言われ出す。
それを避けるためには最低でも約束を取り付けないといけない。
「じゃあ…その認識でいいよ。でも、僕はあんまり目立ちたくないから学校内では話したりするのは止めよう」
「う~ん……ずっと俊明と一緒にいたいけど、俊明がどうしてもそうして欲しいの?」
「そうして欲しい」
「じゃあ…うん、学校内では話さない」
「よかった…」
もちろん、それだけで全てが終わる訳はなく、彼女から提案がきた。
「その代わり、週末はずっと一緒に居てくれる?」
問いかけてきた時の彼女の目は『NO』という言葉を許してくれそうにない。それにこれを飲めば、彼女は学校内で話し掛けないと約束してくれるなら。
「…わかったよ」
「それなら…うん、いいよ」
週末が犠牲になったものの、それだけで学校内では目立たずに済むのであれば良い方かもしれない。
そしてその後は、彼女と昼休みを共に過ごした。
お弁当まで作って来ていて、僕を返してくれそうにないし。