貞操逆転世界で教師を辞めようとしたら、生徒たちがデモを起こして、辞められなくなった。今までは普通に接してくれた生徒も急に牙をむくのはなんで? 作:主義
松平みたいな奴が多過ぎるのだ。
俺の担当するクラスには男がいる。もちろん年齢も彼女たちと同じぐらいなんだから、そっちに行ってくれよ。
何よりその男こと石浦《いしうら》良人《よしひと》はこの世界では珍しく、女に対する恐怖というのが見られない。これはこの世界では非常に珍しい事だ。これだけ男女比の偏りが見られる世界だと、男は貴重な存在だ。
そうなると男に近付けるチャンスというものは限られている。そしてそういうチャンスが巡ってこず、変に拗らせてしまうと痴漢や強姦に走ってしまうのだ。事実、そういう事件は少ない話ではない。前の世界と違うのはその事件での被害者は全員、男で加害者が女というところだろうな。
それぐらいして男に触りたい、近付きたい人間はいるのだ。それは高校生でも同じはずだ。俺みたいな男よりも全然、石浦の方がいいと思う。さっきも言ったが、この世界で女に対する警戒心がない男は本当に珍しいのだ。
それも高校生でとなると、本当にいないんじゃないか。この世界に石浦だけの可能性だって全然あると思うぐらいに希少な存在。
そんな男がいるんだ。
普通はそっちの男を好きになるのが普通だと思うが。
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今、俺は職員室にいる。職員室で自分のデスクで仕事に取り掛かっているが、後ろには松平花衣がいる。
「松平、なんでお前は俺に付いて来る?」
「付いていきたいので」
「そんな理由で職員室まで付いて来られるとこっちが困るんだが」
「私には付いていきたい以上の理由は存在しませんが、いいではありませんか。先生が仕事をするのを邪魔するわけではないんですから」
「そういう話じゃない。職員室は教職員が書類仕事などを含めて、様々な仕事をする。その中には今、お前に見られると不都合なものもある。だから、出て行ってくれ」
「いやです」
「嫌と言われても出て行ってもらわんと困る」
「…先生が困るのは本望ではありませんが、私としては先生から離れたくありません」
「…石浦を知ってるだろ」
「それは知ってますよ。クラスメイトですし」
「お前と俺よりも石浦の方が年が近いし、関わりやすい存在だと思うが」
「それはそうですね。それがどうかされたんですか?」
「それだったらお前の好意を石浦に向けてくれるか?」
「いやです。断固としてお断ります」
「なぜだ?」
俺なんかより優良物件だと思う。
確か、石浦の家はそれなりに金持ちの家で、将来は安定している。父親が実業家でいずれは子供がTOPに立つようになる。そうなるということは岩浦に選ばれた女は社長夫人になる可能性が高い。
それに比べて、俺はただの教師。お金をすごい持っているわけでもなければ、これから会社を立ち上げようとする気もない。将来もそこまで明るくないというのが俺の現状だ。
だが、松平は悩む素振りを見せずに答えた。
「なぜ…ってそんなの簡単ですよ。私が好きなのは先生であって、松浦くんではありません。男という存在であれば、誰でもいいわけではないので。私は先生でなければいけないんです」
だから、そんな大したことをした覚えはないって。
「それに私だけではなく、先生のことを『男性』として好きな人はたくさんいるんです、当たり前ですが。先生はそれだけ魅力的な人っていうことですよ」
なんで俺のことなんかをそんな風に思うんだろうと「あ~せんせいじゃん!」という声が聞こえてきた。
そんなよく聞き覚えのある声が聞こえてきたので、振り返ると予想通りの人間がいた。
「双葉《ふたば》、お前もか」
「センセイがいないから探したんだよ」
双葉《ふたば》佳名恵《かなえ》。
こいつも俺のクラスのやつだ。金髪ロングでアクセサリーもかなり付けているため、簡単に言うとギャルだ。うちの高校はそれなりにアクセサリーや頭髪にも厳しいため、かなり言っているが、こいつはそれを直そうとしない。前に同僚の先生から「私から注意しましょうか。茂木先生のお手を煩わせるなんて!」と言われたこともあったけど、さすがにそれは断った。
だって、双葉のことだから高校に来なくなる可能性だってある。
なんでそんなことを思うようになったのかと言えば、一度あったのだ。現代文の先生に授業態度で責められた時に、次の日から登校しなくなった。その時はどうにか俺が家まで行って、説得して登校してくるようになったけど、一歩間違えれば本当に不登校になるところだった。
別に不登校自体は悪いことではないが、本人が楽しそうに高校に来ているのを見ている俺からすると、本人の話を聞いて判断したかった。
そんなことを考えていると、双葉の目線が俺から松平へと移った。
「あ、花衣も来てたんだ」
「もちろんです。私が先生の側を離れることはありませんので」
「それは離れろと言いたいな」
松平は本当に離れる気がない。こいつが生徒の中で一番厄介だ。そして何より、こいつは成績もよく品行方正、文武両道で通っている人間だ。それが余計に面倒くさい。
「あたしもセンセイと話したい!」
「俺は双葉と話すことはないが」
「あたしはあるよ。センセイと話したことはたくさん!」
「そうか。どうせお前もどっかに行ってくれと言ってもそれに従ってくれたりしないよな」
「やっとセンセイのこと見つけたんだもん。どこにもいかないよ」
「私のことは無視しないでください。私も先生とたくさんお話したいんです」
周りの先生からの視線も痛いし、俺も一応教師だ。しなくてはならない作業もそれなりにあるのだ。
こいつらの話に付き合う余裕はないが、ここで帰れと言っても帰るような奴らだったら苦労しないんだよな。
「そこにいてもいいが、仕事の邪魔だけはするなよ」
これが最善の手と判断した。
松平も双葉も本当に集中している時は話しかけてこなかったので、その辺りはしっかりしていたが、それ以外はずっと雑談をしたり、質問を振ってきたりと邪魔だった。