貞操逆転世界で教師を辞めようとしたら、生徒たちがデモを起こして、辞められなくなった。今までは普通に接してくれた生徒も急に牙をむくのはなんで? 作:主義
俺は松平花衣という生徒の力を侮っていた。彼女の家柄を考えればこれぐらいのことは普通にできる。
その日、校内での常識は変わった。
『学園の敷地内でのみ、茂木先生に対するどんなことでも許容される』というものが校内の掲示板に大きく紙に書かれ張り出されていた。
これがいたずらとかでもないと仮定するのであれば、これをやったのは松平以外に考えられない。
松平家の権力を持ってすれば学園の秩序に介入することも難しくはないだろう。それに俺だ。俺は転生してきたんだ。それも転生の仕方として、この世界に一から生まれ落ちたわけではない。
だから俺にはこの世界に両親と呼べるような存在は一人たりともいない。
そういう意味で俺だけであれば、校内でそこまで反対はでない。他の男子生徒を巻き込めば、その子たちの両親が絶対に反対するし、この学園は世間からバッシングを受けることになるだろう。
だが、俺だけであれば騒ぎ立てる身内もいないし、後は俺の告発さえ阻止し、全員がこれを黙認すればこの状況は誰にもバレないで済むのだ。
もしかしたら男子生徒が俺のことを可哀そうだとか、いずれは自分たちに手が及ぶんじゃないかという恐怖感から世間に情報を出す可能性もあるが。
――――――
その日、本当に変わった。さすがにそこまで大胆な行動には出ないが、俺の体を触って来る奴は増えた。普通はこんなことできない。この世界でそんなことをしたら警察に捕まる可能性は極めて高いからな。
たぶん、校内の奴らもあれをやったのは松平だと分かっているだろう。だが、多くの生徒に対して利点となる情報だから誰も何も言わない。
少なくとも男子生徒はそうではないが、松平という名が怖いのかもしれない。
時間が流れ、昼休みの時間に俺は松平を空き教室に呼び出した。本当は職員室が良かったが、今の俺にとってあそこは地獄と変わらない。あの張り紙は教師陣にも当てはまる事だ。
教師陣も俺に対して何をやってもいいのだ。
そうとなれば、行動に移す奴もいる。だからあそこは選ばなかった。
「松平」
「なんでしょうか?」
本人はとぼけているのか、いつもと変わらぬ感じだ。
「掲示板に貼ってあったもの、あれはお前がやったことだな」
「そうですね。私がお父様にお願いして学園側に働きかけてもらいました」
悪びれる様子もなく普通に言うのだ。まるでこれぐらいのことは当たり前ですよと言わんばかりだ。
「なんだあんなことをした?」
「それは先生に色んなことをするためです」
「…お前は隠す気がないな」
「なぜ隠す必要があるんですか。私は先生のことが大好きで、色んなことをしたいと思っていますよ」
この高校を逃げようと思っても逃げられない。どうせ、松平に掴まって今度はもっと自由を制限されて、彼女の家の地下にでも監禁されるだろう。
それならまだここの方がいいのかもしれない。どちらも最悪だが、その最悪と最悪を天秤にかけてみての判断はこっちだった。
「本当は私だけが先生を触りたいですし、他の女性陣は大人しくしていて欲しいものですが。お母様が「たくさんの競争相手がいる中でも意中の男を手に入れてこそ女ですよ」と言って、こんな形になってしまったんです。残念です」
松平は落ち込んでいるが、俺はもっと落ち込みたい。これから地獄みたいな生活が待っている訳だからな。未来に希望なんて持てるような状況じゃないし。
「こっちとしては最悪な日々の始まりだがな」
「確かに先生としてはそうかもしれないですね。ですが、そんなことを思うのも最初だけです。少しずつ慣れていくと思うので、それまでの辛抱です」
全てはこいつの所為なんだがな。だが、松平に目を付けられた時点で俺の人生はもう決まっていたのかもしれない。
「そして私が高校を卒業するまでに先生の心を射止めます。そして高校卒業と同時に松平家に来てもらいます。それからは毎日幸せな日々を送りましょう」
「…俺は誰とも結婚するつもりはないが」
「それは今だけです。卒業する頃には『私しかいない』と思わせます」
「そんなことできると思えないが」
「どうですかね。私という存在を侮っていると後で後悔すると思いますよ、先生」
「そういうものか」
その日、俺にとっての地獄の日々が始まった。