人生周回中ネフェルピトーの軌道修正が間に合わないーー世界がボクを殺しに来る件ーー   作:周回中NFLPT

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You Can Smile Again ーーあなたはまた笑うことが可能ですーー

 

ボクは、NGLの鬱蒼(うっそう)とした森を駆け抜けていた。

 

目指すのは一週目で全てが始まった、あの忌まわしき丘の周辺。

 

幸い護衛軍の、ゲロキモ色ボケニチャリ熊は、ボクほど広範囲かつ高精度な『円』を持たない。

 

だからあいつが、彼らを強襲している可能性はゼロに近いはずだった。

 

ボクは必死に、未だ潜む人間のオーラを円で探した。

 

そして、ついに見つけた。

強い輝きを放つ三つのオーラを。 

 

どうやら彼らは円に触れ、臨戦態勢を取っていたらしい。

 

ボクが木の上から地上へと舞い降りた瞬間、

 

「来たぞ! 二人共、下がーー」

 

「待つニャ! ボクは戦いに来たんじゃないのニャ!」

 

有無を言わさぬ、被せ気味非戦闘アピール。

よし、まずは先手を取れ…てないニャ、うん。

 

銀髪をなびかせる、かなりのオーラを纏った男、アラサーピエロ(カイト)。

その手にはすでに、クレイジースロットが変化した武器が握られていた。

 

「なら、何をしに来た?」

 

カイトは、一周目ではボクが戯れに抹殺し弄び、二周目でもハチャメチャ実力差を突き付け、三周目では会えてさえいない男。

 

でも、師団長の今なら分かる。

彼は強い。

今のボクでは五分五分か、或いは…

 

「気を付けろよカイト、罠かも」

 

白髪チビガキ、キルアがボクを睨みつける。

二周目ではファインプレーだったけど、今回はちょっと良くないよキミ。

 

「分かっている」

 

「罠じゃない! 話し合いに来たのニャ! ボクの名前はネフェルピトー。キメラアント師団長なんだけど、今の状況を憂慮しキミ達人間に接触しにきたのニャ!」

 

「…ほう?」

 

カイトが怪訝そうに眉をひそめる。

が、武器の銃口はまだボクに向けられたままだ。

 

ボクはサラサラと清涼感ある汗を流しつつ、カイトから決して視線を外さなかった。

 

「ねえカイト、この蟻…なんか変だよ?」

 

そこに、将来クソ長髪筆頭の怪物と化してしまう、緑の服を着たツンツン頭の少年、ゴンが言った。

 

正直、一週目でボクを撲殺した張本人、ゴンが口を開いた瞬間が一番怖かった。

だって今のボクはただの師団長なのだ。

 

クソ長髪筆頭モードの彼なら、きっと指先一つでボクはバラバラだろう。

 

しかしカイトが生きている限り、化物スイッチは入らないのは確認済みだ。

 

「ああ、確かに。なんか必死だよね」

 

「そりゃ必死にもなるニャ」

 

ボクは極力彼らを刺激しないよう、これまでの事を語り始めた。

 

 

 

 

――その頃、王が向かった地、東ゴルトーにて。

 

「攻撃だ! 早くやりなさい兵隊達!」(東ゴルトー語翻訳)

 

鳴り響くヤケクソ銃声と怒号。

東ゴルトー共和国の人民軍兵士たちが、防衛戦を展開しているのだ。

 

国境を越え侵入してきた、頭おかしいハチャメチャ強い集団を阻止するため、重機関銃や戦車砲が火を噴く。

 

だが、降り注ぐ弾丸のオーバーキルラインを、一匹の蟻が鼻歌混じりに歩いていた。

 

「ウフフ、元気がいいわねえ。お外のニンゲンさんは、もっと楽しめそうかしら?」

 

カデシュブムだ。

クマ耳を弾丸がかすめるが、傷一つ付かない。

 

それどころか、彼女が纏う激ヤバオーラ…強化系の極致たる『堅』が、近代兵器の火力を完全に無効化していた。

 

「なんですかあの危険な存在は! こちらに来ないで下さい!」(東ゴルトー語翻訳)

 

エグい恐怖に駆られた兵士が、対戦車ロケットランチャーを味方もろとも放つ。

 

直撃コース。

だが、カデシュブムはかわすどころか、裏拳でロケット弾を叩き飛ばした。

 

「ウフ…ヌゥフフフフフフフ!!」

 

そしてブムはゲロキモニチャニチャ笑いを漏らしながら突進。

 

ドッ、と彼女の背後で弾頭が炸裂。

爆風で周囲の兵士がなぎ倒される。

 

「アッァアンハハハハハハ!!」

 

跳躍。百メートルもの距離をひとっ飛びすると、装甲車の上に着地。

その丸みのある拳を、ただ無造作に振り下ろした。

 

グシャアッ!!

 

強化系の凄まじい質量攻撃に、装甲車がアルミ缶のように一撃でひしゃげ、爆発炎上。

 

爆炎の中から演出優先で姿を現したブムは、生き残った、特に若い兵士を見回して、妖艶に唇を舐めた。

 

「若い子見ーっけ…貴方達はまだ、まだまだ動けるわよねェェ…若い個体だから、若い個体だからァ!」

 

彼女が丸い尻尾を振った瞬間、ハチミツの如き芳香と共に、金色に輝く無数のオーラが解き放たれた。

 

【神聖なる蜜蜂(カデシュ・ハイヴ)】

 

球状のオーラは一瞬で金色の蜜蜂へと変化し、兵士らをバチクソに蹂躙した。

 

「これは蜂です! これは蜂です!」(東ゴルトー語翻訳)

 

「おお神よ! こちらに来ないで! 私はあなたたちを必要としていません、うわあああ!」(東ゴルトー語翻訳)

 

しかし、蜂に刺された兵士たちの動きが、ピタリと止まった。

 

次の瞬間、彼らの顔が真っ赤に上気し、瞳が狂気的な快楽に染まっていく。

 

「あ、あ…ッ! 何故ですか!? 私の力がみなぎっていきます!」(東ゴルトー語翻訳)

 

叫んだ隊長の全身から、アホみたいな密度のオーラが吹き出した。

 

精孔の強制開放。

更にブムの強化のオーラを流し込まれたことで、肉体が限界を超えさせられてオーバーブーストされているのだ。

 

「うおおおお! 私の肉体が燃えているかのように熱くなっています! 熱くなっています!」(東ゴルトー語翻訳)

 

隊長は、そして兵士らはトランス状態のまま武器を投げ捨て、狂乱の様相でブムに特攻を仕掛けた。

 

戦う、という意志までもが過剰に強化され、能力をバチクソ(120%)引き出された人間の行き着く先は一つしかない。

 

「ウフフフフ、素敵よ、とーってもステキ。もっともっと、アタシのために命を燃やしてェェェェン!!」

 

無論の事ながら『堅』でガードしているブムを、殴る蹴るした兵士らは、骨が砕け、手足をあらぬ方向に捻じ曲げ、千切れ、へしゃげていった。

 

それでも兵士らは、ニチャついた笑みを浮かべ、頭突きし、首の骨を折るまで戦い続けた。

 

或いは、過剰なオーラ消費に耐えかね、一人、また一人と、生命力を限界まで搾り尽くされ、ニチャついた笑みのまま干からび、絶命した。

 

彼らの消費したオーラは、ブムの肉体へと吸収され、浸透し、更なる力を彼女に与えてゆく。

 

相手をわざわざ強化し、限界を超えた力を引き出させた上で、最終的には根こそぎ生命力を奪う。

 

これがブムの【神聖なる蜜蜂(カデシュ・ハイヴ)】その効果であった。

 

「おい、ブム。ちったぁ加減しろ」

 

干からびた死体の山を前に、呆れたような声を上げたのは、彼女と同じく護衛軍のモントゥトゥユピー。

 

「王様の食事(レアモノ)を集めるのが俺たちの任務だろうが。こんな絞りカス、使い物にならん」

 

「うぅん、あぁ…手厳しいのねユピー」

 

ブムはクマ耳をシュンと伏せ、これ見よがしに悲しそうなポーズをとってみせる。

 

(キショいなコイツ…)

 

等とユピーが思っているのも露知らず、

 

「アタシはただ、あの子たちの好きな様にさせてあげただけなのにねえ? やっぱり…アタシの遊び相手はぁ…あのイケてる猫ちゃんじゃないとねェ、ウフフ、ヌゥウフフフフ!」

 

狂気に染まったバチクソキモい笑い声が、血の海と化した防衛線にいつまでも響き渡っていた。






【神聖なる蜜蜂】
自身のオーラを蜜蜂に変換し相手に打ち込む。オーラを注入された者は精孔を強制開放され、肉体、精神を暴走させられる。そして強引に放出されたオーラは全てカデシュブムの元に流れ、彼女のオーラを強化してゆく。

抽出したオーラはストックもでき、念巨大ハチミツボールとして他者に譲渡(王への受け渡し等)も出来るようだが、彼女は絶対にしなかった


東ゴルトー語
四周目世界に存在する独自の言語。翻訳をより正確にしたものを以下に示す。

「攻撃だ! 早くやりなさい兵隊達!」→「ヤツらを決して通すな! 構わん撃ちまくれ!」

「なんですかあの危険な存在は! こちらに来ないで下さい!」→「馬鹿な無傷だと!? クソッ、こっちに来るんじゃねえ!!」

「これは蜂です! これは蜂です」→「金色の…コイツは蜂だ!」

「おお神よ! こちらに来ないで! 私はあなたたちを必要としていません、うわあああ!」→「なんてこった! もう蜜蜂はコリゴリなんだよォォ!! うわあああ!!」

※なんてこった→オーマイゴッド→おお神よ
※もう蜂蜜はコリゴリ→この兵士の家は貧しい養蜂場

「あ、あ…ッ! 何故ですか!? 私の力がみなぎっていきます!」→「う、ああ…な、んだこりゃあ…力が、みなぎりやがるぞォォ!!」

「うおおおお! 私の肉体が燃えているかのように熱くなっています! 熱くなっています!」→「熱い、熱いぞォォ! このままオレぁ燃えちまうのかァアハハハハハハ!!」



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