人生周回中ネフェルピトーの軌道修正が間に合わないーー世界がボクを殺しに来る件ーー 作:周回中NFLPT
さて、落ち着いたところでちょっと整理しとこう。
現在のボクにはどうやら前世…というか、前回? とでも言うのか、記憶がある。
それによると、キメラアント護衛軍ネフェルピトーは、王を守護していた所に人間の強襲に遭い、激闘の末にクソ長髪筆頭の化身となったゴンに、しこたま殴られ顔面破壊された後、身体に風穴を穿たれしめやかに絶命した。
更に王や他の護衛軍は、人間のクソヤバ兵器、薔薇の花を模した爆炎を咲かせる
ボクの命は終わった、と思ったら何故かまた、キメラアント女王よりネフェルピトーとして産まれて来たのだ。
記憶はついさっき戻った。
良く分からないノイズかとも思ったけど、記憶と現実が余りにも一致していること…そして、とんでもなくリアル過ぎるものであること…
以上の事から、ボクは二度目の人生を生きている、いわゆる二周目状態だと考えた。
つまり二周目のボクのやるべき事は、ヤバいヤツらを回避し、人間に喧嘩を売り過ぎ無い様に調整する、というものだ。
(だとすれば…あいつをどうするかだニャ)
カイトたちを追い返したボクは、拠点に作らせた専用の個室に戻っていた。
念のため『円』を最大出力で展開。
それこそノミの脈拍すら感知できるほどのガッチガチのやつを張り巡らせる。
個室の隅には、ロープでぐるぐる巻きに拘束された人間。
ええっと、下級蟻に用意させた【ハンター名鑑(最新版)】によると、彼は新人プロハンター、ポックルという奴らしい。
記憶が戻る以前にも、何か引っ掛かるものがあったのか、ボクはコイツを拘束したまま個室に運ばせていたのだ。
ボクは彼の猿ぐつわをポンッと外すと、目の前にしゃがみ込んで顔を覗き込んだ。
「ねぇ、ちょっとキミに協力して欲しい事があるんだけど」
確か前回の…一周目のボクは、この人間の脳味噌を直接コネ繰り回して情報を洗いざらい吐き出させたんだっけ?
ん〜〜…ぶっちゃけ、そこはあんまり記憶にない。
まあでもボクは二周目だし、念やら水見式やらの知識はあるから脳味噌をアレする必要性はゼロだ。
なら、生かしたままスパイとかでいいんじゃない? なんて思っていたのだけれど…
「う、うるさい! 俺は…協力する気なんてないぞ!!」
と、必死の形相で睨みつけてくるポックル。
あーあー、これだもの。
ボクはあの時と違って、めちゃくちゃ優しい顔で猫撫声をかけてるつもりなんだけどさ。
バチクソビビリながらも、頑として譲らない彼に、ボクは方向性を変えてみた。
「キミ、何か勘違いをしているようだけど…」
そう。話の通じる理性的で紳士的な知識層としてアプローチしてみよう。
「ボクは賢いよ。キミを玩具みたいに解体したり、脳味噌こねくり回して楽しむような、下品な趣味は無い。ボクがしたいのはお互いにとってもっと建設的な話だ」
その言葉に、ポックルは「…何?」と戸惑い、必死に頭を働かせ始めたようだ。
(ふぅ、これで話を…あ!?)
そこでボクは、気付いてしまった。
女王は今、最高の王を産むために必死に『レアモノ』…即ち強い人間の栄養を求めている。
目の前にいるポックルは、どう考えても
(もしボクがコイツを生かしたままにしたら、本来女王の栄養になるはずだったポックル成分が丸々カットされる。つまり、これから生まれてくるメルエム様や、まだ卵が無かった護衛軍にデバフが掛かっちゃうんじゃない?)
特に王にデバフが掛かる可能性を察知し、ボクは悩んだ。
(それは絶対にダメだニャ!! 王がちょっと悲しい感じで産まれてきたらボクのせいだし! や、やっぱりコイツは今すぐ肉団子にして女王に捧げなきゃダメかもしれないニャ!?)
この時、ポックル視点では「現実的な話をしよう」と言い出した化け物が、次の瞬間には頭を抱えて混乱しだしたのだから訳がわからない。
結局、ボクは結論を保留にするしかなかった。
上質肉団子にすべきか、それとも人間側の情報源もしくはスパイとして生かすべきか。
いっそボクの念人形で操るとかは…?
(いやいや、論外ニャ。
しかしボクがこうして悩んでいる間にも、兵隊蟻たちはバカスカ人間を狩りまくり、グチャグチャと肉団子にして女王に捧げ続けている。
人間がキレ、ハンターと爆弾が送り込まれるのは時間の問題。
地獄にアクセル全開で一直線の真っ最中だ。
でも、だからといって「人間を狩るのをやめろ」などと命令をしたら、あからさまな背信行為だしキメラアントとして不自然すぎる。
(考えろ、考えろ…人間をブチ切れさせず、だからといってキメラアントの本能にも逆らわない、ポックルもどうにか出来る、めちゃくちゃ自然な行動って…?)
ボクは頭を抱え、尻尾を激しく左右に振り回しながら、部屋の中をグルグルと往復していた。
ポックルから見れば、ただの不気味な奇行。
「ああ〜もう面倒だニャ! キミ、肉団子になるのとボクたちのスパイ、どっちがいいニャ!?」
オーバーヒートしたボクはヤケクソ気味に怒鳴っていた。
なんかもう考えても最適解なんて分かるわけがない。
なら、勢いとスピードで勝負するしかないニャ!
「どっちも嫌に決まってるだろ!!」
「じゃあどうしたらいいんだニャァァ!」
一周目では、チビガキに睨みつけられながらコムギを治療していた時にしか感じなかった、極度のストレス。
そして焦りの合わせ技に、IQが著しく低下したボクは、あろうことか
そしてボクが「肉団…人間と無駄に揉めたくない」方針を洗いざらいぶちまけると、上質肉団子は言った。
「だ、だったら、俺を解放しろ。お前が人間と全面戦争する気はないって言うなら、そのメッセージは俺が責任を持って上に伝える。だからーー」
「にゃるほどよし採用ニャ! ついでに、めちゃくちゃ強いビーム撃つ爆弾じいさんハンターとかに『用件があるならそっちにボクが行くから、それまでNGLに攻めてくるな』って言っといて!」
「え? え、おい、ちょっと待っ――」
話が決まれば行動は一瞬。
決して面倒が過ぎて、とっとと終わらせたい訳じゃない。うん。
ボクは上質(略)を小脇に抱えると、本気の跳躍。
キメラアント居城を飛び出し、そのままの勢いで森をかっ飛ばして、NGLの国境付近へ上質(略)をリリースした。
フラフラと国境を越えてゆく彼を見送りながら、ボクは満足げに胸を張る。
(ふぅ! ひとまずこれでよしニャ!)
ハンター名鑑(最新版)
ハンター協会会員名簿的なアレ