人生周回中ネフェルピトーの軌道修正が間に合わないーー世界がボクを殺しに来る件ーー   作:周回中NFLPT

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覚えやすい名前でしょう私はプププ

 

ーーあれから、3日。

 

驚いたことに朝の時点で未だ、他の護衛軍の卵が見当たらなかった。

 

記憶が正しければ、ボクのあとにすぐプフ、そしてユピーが産まれたはずなのに。

 

まあ、人間からの連絡待ちだから、ぶっちゃけ都合は良いんだけどね。

 

…もしかして、一周目より女王様の栄養状態が悪いのかな?

 

そこにポックルを栄養にせず不法投棄したことで、更に栄養バランスが崩れ、歴史がかなり変わりつつあるんじゃ…

 

(ん〜〜…やっぱり肉団子不足による遅れが生じているのかな。王にデバフさえ入らなければ、プフたちの誕生が遅いのは、のびのびできていいんだけどニャ〜)

 

そんな呑気なことを考えながら廊下を歩いていると、師団長たちの陰口が耳に飛び込んできた。

 

「あーあー、ピトーのクソ野郎! いくら護衛軍だからって好き放題に動きすぎだろ! 猫かよ! 猫だわ」

 

「全くだぜ! なんか数日前も上質肉団子をヨダレダバダバ垂らしながら嬉しそうに抱えて、どっかへ走り去ってたらしいぜ?」

 

「オイオイマジかよ。女王様の餌を横取りして、テメェだけでコッソリ食ってんじゃねーの? 意地汚ねェぜ、泥棒猫かよ! 猫だったわ!」

 

――は? いや、はぁぁぁ!?

 

な、何を言ってるのかなコイツらは。

きっと今のボクは、瞳孔がガン開いてる。

 

誰が、誰が横取りなんてするかニャ!

 

ボクは王の!

ひいてはキミたちの未来を守るためにッ!

高度な政治的判断であの上質(略)を五体満足で逃がしてあげたのニャ!

 

ボクの苦労も知らないで、勝手に横取り野郎扱いするなんて万死に値するニャ。

 

…コイツら狩るか? 狩るニャ。

 

「おやおや、なんとも聴くに堪えない話ですね」

 

「全くニャ! 本当にアイツらは勝手なことばかり…って、キミは、プフ!?」

 

師団長らのクソ解釈に耳を奪われすぎて油断していた。

 

いつの間にかボクの背後に忍び寄っていた者。

 

バイオリンを携え、タキシードを纏った蝶の羽を持つ優男は、間違いなく同じ護衛軍の同僚、シャウアプフだった。

 

「おや。ネフェルピトー、私は名乗った覚えはありませんが?」

 

(あ、しまった!  何でボク、まだ会ってないのに普通に名前を呼んでしまってるのニャ!?)

 

「う、あ、いや、なんか見た目からしてそんな感じの名前かなって、ボクの勘が告げたんだニャ!」

 

「ふむ、大した直感ですね。しかし間違いですよ。私の名前はシャププププです」

 

「…え?」

 

「シャププププです。惜しいところまで行ってはいましたが…まあ、良いでしょうニアピンです」

 

(いや良くない! 何なのシャププププって、めちゃ言いにくいニャ!)

 

「それよりも、先ほどの彼らの話は看過できないものです…まさか事実じゃないでしょうね、ピトー?」

 

プフ…いや、プププの目が細められる。

 

「そ、そんなわけないニャ! 我の強い連中がテキトーな妄想を言ってるだけだね!」

 

「ですよねぇ。私たちが仕えるべきは女王、そしてこれから御生誕あそばされる王のみ。その栄養を横取りするなど、護衛軍にあるまじき大罪」

 

凌げたかに思えたが、プププの追及は終わらない。

 

ボクの次くらいに良いセン行ってる彼の顔に、弱い立場の相手をガン詰めする時専用のイヤらしい笑みが張り付く。

 

「ですが、彼らの言う『上質肉団子をヨダレダバダバ垂らしながら嬉しそうに抱え、どこかへ走り去った』という目撃談。えらく具体的だと思いませんか?」

 

(うくっ、しつこいニャ…!)

 

もし上質肉団子(ポックル)をリリースし、アラサーピエロ(カイト)を無傷で逃がしたことがバレでもしたら、この疑り深い男はボクを「背信分子」と判断しかねない。

 

シャププププ――通称プププは、名前こそアレだが王のことになると異常に執着するあたり、元のプフと大して変わらない…いや、名前はアレだけど。

 

(う、うーん…プフは王が第一なんだから、下手に嘘を重ねるより、人類の脅威を正直に伝えた方がいいかもしれないニャ!)

 

という訳で、ボクは一周目の自分が経験した人間の恐ろしさを、必死に熱弁する事にした。

 

「ねぇプププ、ボクは人間についてめちゃくちゃ勉強したんだよね。彼らを単なる餌として侮るべきじゃないニャ。国一つを簡単に消滅させたり、致死性の毒を撒き散らすような破壊兵器をたくさん持ってるんだ。そんな相手をマジギレさせたら、流石にボクたちでもヤバいと思うんだニャ」

 

「ハッ、戯言を。王が御生誕あそばされば、そんなオモチャなど苦にもされないでしょう!」

 

「いや、違くて。いくら王でも生身の個人だし、毒とか超高熱とか向けられたら普通に無理じゃない?」

 

「さっきから何なのですか貴女は! 我々キメラアントは人間の遥か上をゆく究極の生命体なのですよ!? あのような愚鈍極まるカスのごときダニに、何を怯えているのですか! それに、そんなものがあっても、まだ王は【バチクソ無敵】だから絶対に大丈夫に決まっていますよ!! もしそれでもクソ強王が危険ならば、我々が盾になる。ただそれだけの事!」

 

…ん?

ボクの猫耳に、強烈な違和感。

 

なんかプププ、前のシャウアプフに比べて、ちょっと…いや、かなり阿呆寄りになってない?

 

「バチクソ無敵」って何ニャ。

「クソ強王」って何ニャ。

 

語彙力が完全に死んでるニャ。

 

「あぁ!? コラ、ウッセエコラ! あぁん!?」

 

その時、背後からアホほど大きな声が響いた。

この圧倒的な存在感のオーラは、間違いなく彼だ。

 

「あ、ユ…っッ!」

 

――ピー、と言いかけて、ボクは慌てて自分の口を両手で塞いだ。

 

危ない危ない。

また生まれたての同僚の名前を先回りして呼ぶところだったニャ!

 

名乗るまで待て、だよね!

 

「…ユ、何ですかピトー?」

 

拾うニャ!

他人の失言をネチネチ拾うスピードだけは前世並みなの何でニャ!

 

「ゆ、ゆー…ゆ、有言実行しないと、だニャ!!」

 

「何をですか?」

 

「王の盾になることだニャ!!」

 

「フッ、無論ですよ。美しく完璧な盾にね」

 

ふ、ふー…何とか誤魔化せたニャ。

 

「と、ところでキミは誰ニャ?」

 

ボクはわざとらしく、隣に立っている筋肉モリモリマッチョマンの護衛軍、モントゥトゥユピー(仮)へと話を振った。

 

「あ? 俺ァモンティ・トゥー・ユピーだコラ!  オラァ!」

 

び、微妙に違う!!

しかもコラだのオラァだの、変な鳴き声を連呼してる!

 

この時、ボクは確信した。

 

上質肉団子が欠けたせいで、新しく生まれた護衛軍の連中に、深刻な知能デバフが発生している。

 

このままでは、王が一番マズいんじゃ…

 

そんな、嫌な予感がビンビンにしていた。





護衛軍の悪口を堂々と言える師団長らは二周目オリジナルという事で…
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