人生周回中ネフェルピトーの軌道修正が間に合わないーー世界がボクを殺しに来る件ーー 作:周回中NFLPT
そして、嫌な予感の正体は、対策を立てる間もなく唐突に訪れた。
『ぬ、ぬぅあああああああああああああああああああああああああ!!!』
女王がバチクソデカい悲鳴を念波で垂れ流しながら、同じくバチクソデカい自分の腹に引っ張られるようにして、身体をのけ反らせていた。
下級蟻は、クソデカ念波で次々と失神している。
「遂に来られますよ…! 我らが、我らが至高の王がァァァァァ!!」
「オゥコラ! シャッコラァァァ!!」
感動のあまり涙を流して痙攣するプププと、相変わらず妙な鳴き声を発し続けるトゥピー。
『ふ、ふぬぅあああああああああああああああああああ、あ? あ……あ…あああああああああああああああああ!?』
このアホ護衛軍二匹を横目に、ボクの脳内警告音は鳴り響きっぱなしだった。
『あ、あばばばばばばばばばばぎぃあああああああああああああああ!!』
ビキィッ、と空間が裂けるような音がした。
『お、おぐあああああああああああああぎゃああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああ!!!!!!』
遂に女王の腹を内側から強引にブチ破り、その姿を現したのは、ボクらキメラアントの、王だった。
だがやっぱり、現れたのはボクの知る王…メルエム様ではなかった。
体躯は、ただでさえ規格外だったトゥピーをも遥かに凌駕する、圧倒的な筋肉の超重量塊。
鍛え抜かれた大胸筋、極端な逆三角の肉体、丸太のような四肢に、綱を何本も束ねた様な極太ビンタ尾。
そりゃあこんなバチクソ質量が腹に入っていれば、女王もバチクソデカ悲鳴をあげるというもの。
『あ、ああ…私の、子供、王…全てを握り潰すパワーを意味する名前を…貴方は、ゴリエム』
女王は絶命した。
最期の言葉がゴリエムでいいのかニャ。
だが、誕生したゴリエム様は、眼窩から一筋の涙を流していた。
(あ、あれ? もしかして外見こそ凄いことになってるけど、その内面は慈愛や知性を秘めているんじゃ…)
ボクが淡い期待を抱いた、その刹那。
「者共ォォォ! 余は王であるッ! 早速、母上をこんな目に合わせた人間を一匹残らず皆殺しにして全員肉団子にしろオラァァァァァッッ!!」
圧倒的にダメな方向だったニャァァァ!!
「うォォォォォ!! さすが我が王ォォォォォォ!! 圧倒的パワーですゥゥゥゥゥゥ!!!」
「っしゃコラァァァァァ!! 全員ミンチだオラァァァァ!!」
黙れ阿呆護衛軍!!
ボクの涙ぐましい努力が、王の一言で完全に消し飛んだニャァァァ!!
――そこからの進軍はバチクソ早かった。
そりゃあもうひたすら突き進み、人間を轢殺し続ける暴の民と化したキメラアント…いや『
「あ、あの…ゴリエム様」
「な、なんだピトー女子ッ! 貴様のことなど余は何とも思っておらんからな! そ、その、勘違いするなッ!」
「私のことはどう思われても良いのです。ですが、どうか、話を聞いていただきたく」
「じ、女子が余に話だと…!? い、一応、訊いてやらんこともないぞっ!! 何だ何だ何だァァ!」
「ピトー! ゴリエム様は今、人間の首を玩具のように引き抜いて弄ぶという高尚な遊びをなされているのですよ! 邪魔をするなど無礼極まりない!」
プププが横から口を挟むが、もはや相手にする気力もない。
傍らでは、モンティ・トゥー・ユピーが「人間ってなァ一体何ミリまで潰して伸ばせるのかチャレンジ」を開催中だった。
もう終わりだねこの軍団。
だけど、あれなら…
前の世界で王の心を大きく揺るがしたあれなら、ゴリエム様の軌道を修正出来るかもしれない!
「ゴリエム様、こちらをご存知ですか?」
ボクが取り出したのは、将棋やチェスを複雑にミックスした盤上競技――軍儀の遊戯盤だった。
かつての王は、この軍儀と出会い、コムギと出会って変わっていったのだ。
これはボクが仕掛ける、最後の賭け。
ゴリエム様は、ボクから軍儀盤を受け取ると――
そりゃもうバリボリと、景気よく喰った。
「ふむ! なかなか美味であったぞピトー女子! 木の温もりが五臓六腑に染み渡るゥゥ!!」
もう本当に終わりだねこ(ry)
「っしゃあ女子からの差し入れでさらにパワーがアップした余が直々に、人間どもを千切り殺してくれるわァァァ!!」
雄叫びを上げ、最前線へと出撃していくゴリエム様。
こうなっては、ボクら護衛軍はあとに続くしかない。
カイトも殺さず、ポックルも逃がし、結末をどれだけ変えようと努力をしても、結局王が、人間を最短最速でマジギレさせてしまった。
無数の屍を築いた進軍の果て。
ボクたちの前に待っていたのは、無数に狂い咲く薔薇の炎だった。
(…もし三周目があるなら、女王の食事管理を徹底しよ)
眩い光に包まれながら、ネフェルピトーは二度目の死を、静かに受け入れるのだった。