本作は『機動戦士ガンダムSEED』の二次創作IFストーリーです。

アークエンジェルがザフトの追撃を逃れ、地球連合軍ユーラシア連邦本部にたどり着いた後から始まります。

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高熱で寝込んでいたところ、なぜか発作的に書き上げてしまいました。

熱のせいなのか、ガンダムSEEDのせいなのかは不明です。

どうか温かい目で読んでいただければ幸いです。


アグニは効くぜ! ……六門にしたらもっと効くんじゃないか?

C.E.71。

 

地球連合軍とザフトの戦争は、激しさを増していた。

 

中立国オーブの資源衛星ヘリオポリスで発生したG兵器強奪事件。

 

その事件に巻き込まれた民間人の少年、キラ・ヤマトは、地球連合軍の新型モビルスーツGAT-X105ストライクのパイロットとなった。

 

彼はアークエンジェルとともに戦場を転々とし、ザフトの追撃を受けながら幾度もの戦闘を乗り越えてきた。

 

しかし、その戦いの中でアークエンジェルは少しずつ損傷し、搭載兵器や物資も消耗していった。

 

そして、ついに訪れたアスラン・ザラのイージスガンダムとの決戦。

 

激しい戦闘の末、イージスはストライクに組み付き、自爆した。

 

爆発に巻き込まれたストライクは大破。

 

パイロットのキラ・ヤマトも行方不明となった。

 

アークエンジェル側は彼をMIA――作戦行動中行方不明として扱うことになった。

 

それでもアークエンジェルは航行を続けた。

 

ザフトの追撃を振り切り、幾度もの危機を乗り越え、ようやく地球連合軍ユーラシア連邦本部へとたどり着いたのである。

 

長い逃避行は、ひとまず終わった。

 

だが、艦と乗員が休息を得られた一方で、失われた戦力をどう補うかという問題が残されていた。

 

特に、ストライクの損傷は深刻だった。

 

ユーラシア連邦本部・整備施設

「……こりゃ、ひでえな」

 

巨大な格納庫の中。

 

一機のモビルスーツを前に、整備班長マードックは腕を組んでいた。

 

目の前にあるのは、かつて戦場を駆け抜けたGAT-X105ストライク。

 

しかし、その姿は見る影もなかった。

 

装甲の各所は破損し、頭部は原形をとどめていない。右腕部も失われ、胴体には爆発による損傷が広がっている。

 

背部のストライカーパック接続部も大きく破壊され、内部フレームの一部は交換が必要と診断されていた。

 

周囲には取り外された装甲や破損部品が並び、整備員たちが一つ一つ状態を確認している。

 

「これ、本当に直せるんですかね?」

 

若い整備員が不安そうに尋ねた。

 

「直すんだよ。少なくとも、上はそのつもりらしい」

 

「でも、フレームまで損傷していますよ」

 

「分かってる。だからこうして調べてるんだろうが」

 

マードックは点検資料をめくった。

 

「イージスの自爆に巻き込まれたんだ。これだけの損傷で済んだことを幸運だと思うしかねえ」

 

「パイロットのキラ・ヤマト少尉は、まだ見つかっていないんですよね」

 

「ああ。MIA扱いだ」

 

マードックはストライクを見上げた。

 

「生きてるかどうかも分からん」

 

「……そうですか」

 

整備員の表情が曇る。

 

彼らにとって、ストライクは単なる兵器ではなかった。

 

幾度もの戦闘を乗り越え、アークエンジェルを守ってきた機体であり、その操縦者もまた、整備班にとって馴染みのある存在だった。

 

マードックは小さく息を吐く。

 

「今は機体の修復が先だ。使える部品と交換が必要な部品を分けろ。フレームの歪みも徹底的に調べろよ」

 

「了解です!」

 

「それと、無理に急ぐな。歪んだフレームをそのまま使ったら、戦闘中に機体が持たなくなるぞ」

 

「分かりました!」

 

整備員たちが作業に戻る。

 

そのとき、格納庫の入口から一人の技術士官がやってきた。

 

「マードック班長!」

 

「何だ?」

 

「開発部門から連絡です。ストライクの修復と同時に、新しい改修案を検討しているそうです」

 

「改修案?」

 

マードックは眉をひそめた。

 

「この状態のストライクを、どう改修するつもりなんだ?」

 

「詳しい話は会議室で説明するとのことです」

 

「……嫌な予感しかしねえな」

 

ユーラシア連邦本部・技術開発会議室

会議室には、地球連合軍の技術士官や設計担当者たちが集まっていた。

 

大型モニターには、ストライクの設計図が表示されている。

 

ただし、そこに描かれているのは、現在のストライクとは大きく異なる姿だった。

 

背部には大型バックパック。

 

その周囲には、六基の大型砲台が配置されている。

 

「それでは、今回提出されたストライク改修計画について説明します」

 

技術主任が立ち上がった。

 

「対象機はGAT-X105ストライク。先日の戦闘で大破した機体を修復すると同時に、火力と戦闘能力を大幅に向上させることを目的としています」

 

「単純な修復ではなく、機体そのものを強化するということか?」

 

出席者の一人が尋ねる。

 

「その通りです。現在のストライクを元の状態に戻すだけでなく、新たな装備を追加することで、今後の戦闘に対応できる機体へと生まれ変わらせます」

 

技術主任はモニターを切り替えた。

 

「そこで我々が提案するのが、新型ストライカーパックの開発です」

 

画面に名称が表示される。

 

INFERNO STRIKER

 

「インフェルノストライカー……?」

 

「はい。最大の特徴は、六基の遠隔砲台です」

 

設計図が拡大される。

 

六基の砲台が大型バックパックから展開し、それぞれ異なる方向を向いている。

 

「各砲台には、アグニの技術を応用した高出力ビーム砲を搭載する予定です。これらを遠隔制御することで、機体本体と連携した多方向からの攻撃を実現します」

 

「つまり、ストライク自身が敵と交戦しながら、別方向からも攻撃できるわけか」

 

「その通りです!」

 

技術主任は自信ありげにうなずいた。

 

「六基の砲台を独立して運用できれば、一機で複数の敵を同時に攻撃できます。敵に包囲された場合でも、各方向へ砲台を展開することで対応可能です」

 

「これは面白いな」

 

出席者たちが設計図に見入る。

 

その中で、マードックだけは浮かない顔をしていた。

 

「……ちょっと待て」

 

「何でしょうか、マードック班長?」

 

「その六基の砲台、どうやって動かすつもりなんだ?」

 

「遠隔制御システムを採用します」

 

「具体的には?」

 

技術主任は別の資料を表示した。

 

「各砲台には制御用コンピューターを搭載し、機体本体から指令を送ります。通信方式については、既存のガンバレルなどの技術を参考に、有線接続も含めて検討しています」

 

「有線接続?」

 

マードックはモニターを見た。

 

「ケーブルを使うってことか?」

 

「はい。現時点では、安定した通信を確保するための有力な案です」

 

「六基全部にケーブルを繋ぐのか?」

 

「その予定です」

 

「……おいおい」

 

マードックは額に手を当てた。

 

「砲台を六基も動かして、さらにケーブルまで六本伸ばすのか? 機体が動いたときに絡まったり、引っ掛かったりしないのか?」

 

「ケーブルの長さや取り回しについては、今後の試験で確認します」

 

「また試験か!」

 

マードックの声が会議室に響いた。

 

「戦闘中にケーブルが絡まったらどうする? 敵に切られたら? 砲台が動かなくなったら? そういうことまで考えてるんだろうな?」

 

「もちろんです。ケーブルの保護機構も検討しています」

 

「最初からそこまで考えて設計しろよ……」

 

技術主任は苦笑した。

 

「しかし、完成すれば画期的な装備になることは間違いありません」

 

「完成すれば、な」

 

マードックは腕を組む。

 

「そもそも、パイロットの負担はどうするんだ?」

 

「操縦支援システムを導入する予定です」

 

「本体の操縦に加えて、六基の砲台を操作するんだぞ。パイロットがどれだけ忙しくなると思ってる?」

 

「照準や射撃の一部をコンピューターに任せることで、負担を軽減できると考えています」

 

「考えてるだけだろうが!」

 

技術主任は少し困った顔をした。

 

マードックはさらに設計図を指さす。

 

「次に重量だ。これだけの砲台とバックパックを積んだら、機体の重量はどうなる?」

 

「推進器を増設する予定です」

 

「その分、さらに重量が増えるだろ!」

 

「高出力の推進器を採用すれば……」

 

「今度は燃料と電力の問題だ!」

 

「……」

 

「ほら見ろ。何も解決してねえじゃねえか!」

 

会議室の一部から苦笑が漏れた。

 

技術主任は気を取り直すように咳払いをする。

 

「では、次に冷却機構について説明します」

 

「まだあるのかよ……」

 

「六基の高出力ビーム砲を運用するため、専用の冷却システムを搭載します」

 

「どこに?」

 

「バックパック内部に」

 

「そのスペースは?」

 

「現在、設計中です」

 

「入るのか?」

 

「……調整します」

 

「絶対に入らねえだろ!」

 

マードックは机に手をついた。

 

「いいか、武器を六基も積めば、それだけ整備する箇所も増えるんだ。砲台の可動部、制御装置、ケーブル、冷却機構、推進器。どれか一つでも故障すれば、全体に影響が出る可能性がある!」

 

「それは理解しています」

 

「理解してるなら、整備性も考えて設計しろ!」

 

技術主任はメモを取る。

 

「分かりました。整備用の点検口や、交換しやすい構造も検討します」

 

「最初からそうしてくれ……」

 

マードックは深いため息をついた。

 

しかし、彼もこの計画の可能性を否定しているわけではなかった。

 

六基の遠隔砲台による多方向攻撃。

 

それが実現すれば、ストライクの戦闘能力は大幅に向上するだろう。

 

問題は、それを実際に使える兵器として完成させられるかどうかだった。

 

「……ところで、電力はどうするつもりなんだ?」

 

マードックが尋ねた。

 

技術主任は少し表情を引き締める。

 

「そこが、もう一つの大きな課題です」

 

モニターに新たな資料が表示された。

 

「六基の高出力ビーム砲を同時に運用する場合、かなりの電力が必要になります。現在のストライクのバッテリーシステムでは、十分な稼働時間を確保するのは難しいと考えています」

 

「だろうな」

 

マードックは即座にうなずいた。

 

「ストライクだって、通常の戦闘でバッテリー残量を気にしなきゃならない機体だぞ。それに六基もビーム砲を追加するんだ。いったい何分撃ち続けるつもりだ?」

 

「現段階では、連続射撃時間については未定です」

 

「未定って……」

 

「大型バッテリーを追加搭載する案や、バックパック側に独立した電源ユニットを設ける案を検討しています」

 

「大型バッテリーを積む?」

 

マードックは設計図を見直した。

 

「それだけで、どれだけ重くなると思ってるんだ?」

 

「容量を増やせば、稼働時間を延ばせます」

 

「容量を増やせば重量も増える。重量が増えれば機動性が落ちる。機動性を補うために推進器を増やす。推進器を増やせば、今度はそっちにも電力が必要になる。分かってるのか?」

 

「……はい」

 

「しかも、推進器を増やすための燃料や冷却装置まで必要になるんだぞ。バッテリーを増やせば全部解決、なんて簡単な話じゃねえ!」

 

技術主任は資料に目を落とした。

 

「独立電源ユニットについても、検討しています」

 

「結局、バックパックに発電設備まで積むのか?」

 

「その可能性もあります」

 

「そんなものを積んだら、今度は発電設備の重量と冷却の問題が出るだろうが!」

 

「……おっしゃる通りです」

 

「お前ら、砲台を六基積むことしか考えてないんじゃないだろうな?」

 

会議室に笑いが起きる。

 

技術主任も苦笑しながら答えた。

 

「もちろん、電源問題は最優先で検討します。現時点では解決策を確定できませんが、今後の研究で実現可能な方式を探ります」

 

「探るだけで何年もかけるなよ……」

 

マードックは椅子に座り直した。

 

「まあ、技術的に難しいのは分かる。だが、動力が足りなければ、どれだけ立派な砲台を積んでもただの飾りだ。そこは絶対に忘れるな」

 

「分かりました」

 

技術主任はうなずいた。

 

「ただし、開発そのものを諦めるつもりはありません」

 

「そりゃそうだろうな。ここまで設計図を作っておいて、今さらやめるとは言わんだろう」

 

「はい!」

 

マードックは設計図を見つめた。

 

大破したストライクを再生し、さらに六基もの遠隔砲台を搭載する。

 

無茶な計画であることは間違いない。

 

しかし、完成すれば強力な機体になる可能性もある。

 

「……分かった。ただし、いきなり六基全部を作るのはやめておけ」

 

「え?」

 

「まずは一基だけで試験しろ。遠隔制御ができるか、砲台の可動範囲に問題はないか、射撃時の熱や機体への影響はどうか。順番に確認するんだ」

 

「しかし、六基での運用を前提にした設計です」

 

「だからこそだ。最初から全部作って、全部失敗したらどうする?」

 

技術主任は黙り込んだ。

 

「一基で問題を見つけて、二基に増やして、三基に増やす。最後に六基で試験する。それが一番確実だ」

 

「……なるほど」

 

「それに、整備する側のことも考えてくれ。俺たちが後から苦労するような設計にはするなよ」

 

技術主任はうなずいた。

 

「分かりました。試験計画に反映させます」

 

「頼むぞ。これ以上、整備班の仕事を増やさないでくれ」

 

「ははは……」

 

技術主任の乾いた笑いが会議室に響いた。

 

ユーラシア連邦本部・格納庫

会議が終わった後。

 

マードックは再びストライクが保管されている格納庫へ戻ってきた。

 

大破した機体は、整備用の固定台に据えられている。

 

周囲では整備員たちがフレームの損傷箇所を調べ、交換部品のリストを作成していた。

 

「班長、会議はどうでした?」

 

若い整備員が声をかける。

 

「新型ストライカーパックの開発計画だとよ」

 

「新型ですか?」

 

「ああ。六基の砲台を背負わせるんだと」

 

「六基も!?」

 

「そうだ。しかも全部遠隔操作だ」

 

若い整備員は目を輝かせた。

 

「すごいじゃないですか!」

 

「すごいのは分かるが、作る側の苦労も考えろ」

 

マードックは呆れたように言った。

 

「砲台を六基も積めば、電力だって馬鹿にならん。バッテリーを増やせば重くなるし、重くなれば機体の運動性も落ちる。冷却装置だって必要だ」

 

「でも、完成したら強そうですね」

 

「そりゃ強いだろうよ」

 

マードックはストライクを見上げた。

 

「ただし、ちゃんと動けばな」

 

若い整備員は笑った。

 

「班長なら、きっと動くようにできますよ」

 

「簡単に言ってくれるな……」

 

マードックは手元の資料を確認した。

 

そこには、ストライクの修復計画と、新型ストライカーパックの設計案が並んでいた。

 

大破したストライクを再び戦場へ送り出す。

 

そのためには、まず機体そのものを修復しなければならない。

 

そして、インフェルノストライカーを完成させるためには、まだ多くの課題を乗り越える必要がある。

 

パイロットのキラ・ヤマトは、いまだMIA。

 

機体が完成したとしても、誰が操縦するのかさえ決まっていない。

 

それでも、開発計画は動き始めていた。

 

マードックは大破したストライクの装甲に手を置いた。

 

「……戻ってこいよ、坊主」

 

誰に聞かせるでもなく、そうつぶやく。

 

「せっかく直すんだ。お前が乗らなきゃ意味がねえからな」

 

格納庫の照明が、損傷したストライクの機体を照らす。

 

かつて戦場を駆け抜けた機体は、今は静かに眠っていた。

 

しかし、その背中には新たな可能性が待っている。

 

六基の砲台を備えた、前代未聞のストライカーパック。

 

その名は――。

 

インフェルノストライカー。

 

その開発計画が、ここユーラシア連邦本部で始動した。




こんな作品に需要があるのか分かりませんが、万が一続きを読みたいという奇特な方がいれば続きを書くかもしれません。

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