貞操逆転した新エリー都に住む『あなた』とエージェントのお話 作:ぽこちー
【前回までの妄想エンジェル】
新曲のアイデアを完全に失ってしまった千夏。
机に突っ伏しても、お昼寝をしても、カラオケで全力で歌ってみても、アイデアの「ア」の字すら浮かんでこない。
そんな千夏の前に現れた
店長さんを通じて知り合った、理想のお兄さんとのデート。
果たして、ちなっちゃんの運命や如何に……??
(あかん、あかんてこれはっ!! 心臓バクバクゆーて、今にもはち切れそうやっ!! なんなん?? これなんなん?? 夢?? うち、夢でも見とるん??)
目をぐるぐると回し、身体をガチガチに強張らせながら歩く千夏。そんな彼女の緊張を解きほぐそうと、『あなた』はそっと手を差し伸べ、優しく握った。
「うひゃあっ!?!?」
思わず叫び声を上げる千夏に、『あなた』は優しく微笑みかける。
(夢ちゃう!! これ、夢ちゃうでアリアちゃん!! いや、ある意味夢やけどっ!!)
(うわぁ……手ぇ、めっちゃ大きいやん……♡♡♡)
(ゴツゴツしてて、だけど柔らかくて……指、なっがぁ♡♡♡)
(この手であんなことやこんなことされたら、うち……♡♡♡)
(って、何考えてんねん変態か!? お兄さんの気遣いをそんな風に捉えたらあかんでっ!!)
(でっ、でもぉ……)
千夏はそーっと『あなた』の顔を見上げた。
その視線に気づいた『あなた』は、千夏に優しく笑いかけると、握った手にそっと力を込めた。
(いや無理や!! 無理に決まっとるやん!! こんなんされて正気を保てる女なんておるはずないやろっ!!)
プシュー、と顔から湯気を立ち上らせ、ますます縮こまる千夏。
そんな彼女の手を優しく引きながら、『あなた』はルミナスクエアの人混みへと歩き出した。
すると、前方から歩いてきた女性が、千夏の肩にぶつかろうとした。
何でアンタみたいなガキンチョが、こんな素敵な男性とデートしてるのよ! 死ねっ!!
そんな怨念が、ひしひしと伝わってくる。
もちろん、『あなた』がそんな怨念に気づくはずもないが。
『あなた』はぶつかりそうになった千夏の肩に手を伸ばし、そのまま自分の方へと引き寄せた。
「なっ、何をっ!?!♡!?♡♡!?」
自分の世界に入り込んでいた千夏が、正面から迫っていた女性に気づくはずもなかった。
彼女に理解できたのは、隣を歩いていたお兄さんが、突然自分の肩を引き寄せたという事実だけだった。
チッ、とすれ違いざまに女性が舌打ちをする。
自分の嫌がらせが、かえって千夏にとって都合の良い状況を生み出してしまったからだ。
けれど当然、千夏がそんな事情を知る由もない。
(なっ、なんなんほんまにぃ……♡♡♡)
(なんでこんなにうちに優しくするん♡♡♡)
(うちのこと好きなんか♡♡♡ お兄さんとうち、相思相愛ってことなんか♡♡♡)
加速する千夏の妄想。
それは、もう誰にも止めることができない。
妄想が。
そうだ、自由を求め、選ぶべき妄想が目の前に広々と横たわっている。
終わらぬ夢がお前たちの導き手ならば。
超えてゆけ!!
己が信念の妄想のもとに——!!
……そんな感じのことを、ゴール・D・ロジャーが言っていた気がする。
千夏はその言葉を思い出し、勇気を振り絞って行動に移すのだった。
千夏のターン。
千夏の抱きしめる攻撃。
ギューーーーーーーーーー♡♡♡
『あなた』のターン。
『あなた』の優しく抱きしめ返す攻撃。
ギュッ♡
「っっっ♡♡♡ っっっっっっっっ♡♡♡」
一撃必殺!!
(あっかん……あかんでコレは……♡♡♡ うち、もう戻られへん……♡♡♡)
へにゃあ〜と液状に溶けてしまった千夏を、『あなた』は優しく抱きかかえる。
(ごめんな、羽、アリアちゃん……。うち、この人と幸せになるわ……♡♡♡)
翌日、千夏のインスピレーションは絶好調。凄まじい勢いで新曲を書き上げたという。
憧れのお兄さんとのデート、同棲、告白、結婚。
そして、初夜。
それらを描いた新曲。
その曲の名は——
『
当然、お蔵入りである。