ギャルゲーの世界で攻略対象の幼馴染キャラの兄に転生したので、大人しく見守ることにした。それなのに主人公とヒロインが病むし、死のうとするのでそれをどうにか回避しようと頑張っていたら依存された。 作:主義
妹は中学1年生になった。
そろそろ僕も妹離れしないといけないと思い始めた、今日この頃。
僕は順当に大学1年生になった。本当は大学入学と共に一人暮らしも考えたけど、妹の説得にやられてしまい、残ることになった。
物語が動き出したと感じるようなこともあった。それは主人公と妹の仲が深まったらしい。今まで妹から主人公の話を聞くことはほとんどなかったけど、最近は妹の口から聞くことも増えてきたのでどうやら少しずつ仲は深まっているようで安心した。
ちゃんと物語は進行しているのだ。
「あの子とは仲良いよ」
「そっかぁ…それは嬉しい。やっと真梨奈にも仲の良い男の子ができて」
少し不安に感じることもあった。妹から主人公の話を聞かないので少し心配という気持ちはあった。もしかして僕が転生したことによってこの物語に大きな支障が出たのかなって。
でも、この感じだと物語はしっかりと進行しているし、心配する必要はないかもしれない。
「お兄ちゃんは嬉しい?」
「もちろん、嬉しいよ。お兄ちゃんは真梨奈に友達が増えるのはとっても良いことだ」
「そうだよね。真梨奈はお兄ちゃんが喜んでくれるのが一番嬉しい」
こんなに良い子がいるなんて。
中学1年生になっても、兄のことを嫌わないで居てくれるだけで本当に嬉しいものだ。正直、原作に兄貴は出てきてなかったからどんな扱いが待っているか分からなかった。
妹から「近づかないで」と言われる可能性を考えては枕を涙で濡らしていた。
だけど、そんな予想とは裏腹に妹は素晴らしい子に育ってくれていた。両親はほとんど帰ってこないのにしっかりと育って偉いと思う。これぐらいの年の子であれば「お父さんとどこかに行きたい」「お母さんに会いたい」とか言い出してもおかしくない。というか、それが当たり前だ。
それなのに妹の口からそんな言葉を聞いたこともない。
ちょっと不安になって「お父さんとかお母さんに会いたいとか思わないの?」と聞いたら、真梨奈は「別に何とも思わないよ。あの人たちは元々こんな感じだし。真梨奈はお兄ちゃんが近くにいてくれれば他はどうでもいいかな」と言っていた。
まぁ…こうなってしまったのは仕方ない。両親からの愛情が一番欲しいタイミングであの人たちはいつも二人きりでどこかに行ってしまう。そうなると自然と妹は親離れを起こす。
まだ早すぎる気もするが、こうなってしまったのは環境の影響なので仕方ない。
「お兄ちゃんは大学でお友達とかできた?」
「まぁ…多少はできたかな。思っていたよりも」
「その中に女の子はいる?」
「いるよ。なんかラウンジで時間を潰してたら声を掛けてくれて、そこからよく話すようになった子とか」
「…へぇ……お兄ちゃんはその子のこと好きなの?」
「なんで急に『好き』って話になるんだ?あくまでただの友人だよ」
「ほんとうに?」
なんで妹がこんなに僕の言葉を疑っているのだろうか。僕に対する信頼が薄らいでいるから、それとも別の理由が何かある?
「本当だよ。少なくても今はただの友人だよ」
「今は?」
「これからは誰にも分らないから。僕だって大学生だし、恋人の一人や二人は作りたいよ」
悲しいことに僕はまだ彼女が出来た試しはない。僕の行動は原作にはないので、原作に迷惑を掛けない程度であれば、どんな行動をしてもいい。だから僕だって、自分の日常を豊かにするために好きな子に告白したこともある。だけど、それが実った試しはもちろんない。
「お兄ちゃんは恋人が欲しいの?」
「いたらいいなとは思う」
「それは今の生活じゃ満足できないってこと?」
「そういうわけじゃないよ。真梨奈との生活はもちろんとっても充実してるけど、一人の男として恋人がいる感覚というものを味わってみたいと思うんだよ」
今までいたことがないからこそ、余計にそう思う。
「真梨奈は彼氏とかいらないよ。お兄ちゃんがいれば」
「それは嬉しいけど、いつかは真梨奈にも彼氏はできると思うよ」
急に真梨奈は今まで聞いたことがないぐらい、冷たい声で言い放った。
「できないし、欲しいとも思わない」
こんな真梨奈を見たことはなかった。今まで何度も冷たい声を聞いてきたけど、ここまで冷たい声は聞いたこともない。
いつも僕の前では明るい笑顔を浮かべてくれている子だから余計に、さっきの冷たい声が耳から離れない。
「そっか…」
それから真梨奈はさっきの冷たい声がウソのように、明るい声で近況の報告を始めた。話している時の顔も笑顔で、いつもの真梨奈だった。
僕は相槌を打ったりして、いつも通り、真梨奈の話を聞いていた。