1話目『異世界転移!?』
俺は友達と一緒に遊んでいると突然トラックが突っ込んできた。
「危ない!」
咄嗟に隣の友達を突き飛ばしてトラックが当たらないようにしたが俺自身は避けることが出来ずそのまま…その後の記憶がない。俺は死んだと直感的に確信した。
────
俺はトラックに引かれたはずだが、気がつくと見知らぬ場所にいた。
まわりは薄暗くホラー映画の森みたいな不気味な場所だった。
「俺は死んだはずだ…てかここ何処だよ」
困惑していると頭の中に声がした。
──ユニークスキル『開拓者(パイオニア)』『健康体(ヘルシーボディ)』 『賭博師(ギャンブラー)』獲得しました──
──ユニークスキル『開拓者(パイオニア)』 既存の常識や限界を突破し、新しい可能性を切り開くユニークスキル。
──ユニークスキル『健康体(ヘルシーボディ)』 肉体・精神・魂に発生する異常を感知し、本来の健全な状態へ戻そうとする。
──ユニークスキル『賭博師(ギャンブラー)』あらゆる事象を賭けの対象とし、リスクと引き換えに結果へ干渉する。
「なんだ今の声?誰だ?」
俺が問いかけても反応がない。どうゆう事だ?
「……とりあえず、落ち着こう。まずは状況確認だ」
俺は深呼吸をして、自分の身体を確認する。
トラックに轢かれたはずなのに、身体には傷一つない。服も事故に遭う前と同じものを着ている。
「夢……ってわけでもなさそうだな」
頬をつねってみる。
「痛っ!」
普通に痛かった。
「夢じゃないのかよ……」
頭を抱えたくなる。
しかし、今はそんなことをしている場合じゃない。
見える範囲には木々が生い茂り、地面には見たことのない植物が生えている。空は木々に覆われていて、太陽の位置すら分からない。
どう考えても日本ではない。
「もしかして……異世界転移?」
そんな馬鹿げた考えが頭をよぎる。
普通なら笑い飛ばすところだが、実際に目の前で起きていることを考えると否定できない。
それに、さっきの声。ユニークスキルがどうとか言っていた。
「ユニークスキル……」
試しに頭の中で念じてみる。
すると、再びあの声が聞こえた。
──告。ユニークスキル『開拓者』の解析
を開始します。
「うおっ!?」
突然の声に驚き、思わず周囲を見回す。
──解析完了。
──ユニークスキル『開拓者』は、未知の事象を発見し、既存の可能性を拡張する能
力です。
「……なるほど?」
正直、よく分からない。
「じゃあ、次は健康体」
──告。ユニークスキル『健康体』は、肉体・精神・魂の状態を健全に保つ能力です。
「ふむふむ。これは分かりやすいな」
そして最後。
「賭博師」
──告。ユニークスキル『賭博師』は、あらゆる事象を賭けの対象とし、リスクと引き換えに結果へ干渉する能力です。
「ギャンブル……?」
俺は少し考え込む。
「なんか危なそうな能力だな」
三つともユニークスキルらしい。
普通、ユニークスキルって一つだけじゃないのか?
そもそも三つも持っていることが普通なの
かすら分からない。
「まあ、考えても仕方ないか」
今は情報が少なすぎる。
それに、ここが本当に異世界なら、いつまでもこんな場所にいるわけにはいかない。
まずは人を探そう。
そう思って歩き出そうとした、その時だった。
ガサッ。
「……ん?」
近くの茂みが揺れた。
風ではない。
何かがいる。
俺は息を潜めて茂みを見つめた。
すると、そこから姿を現したのは……。
「……ウサギ?」
いや、違う。
見た目はウサギに似ているが、身体は大型犬ほどもあり、額には鋭い角が生えてい
る。
そして何より、こちらを見つめる目が明らかに普通ではない。
「…………」
「…………」
しばらく見つめ合う。
すると、その生き物は突然こちらに向かって走り出した。
「うわああああ!?」
俺は慌てて横に飛び退く。
直後、先ほどまで俺が立っていた場所を角が通り過ぎた。
「ちょっ!? 何だよこいつ!」
ウサギもどきは方向転換すると、再びこちらに向かってくる。
逃げるしかない。
俺は全力で走り出した。
「なんで異世界に来て早々、魔物みたいなのに襲われなきゃならないんだよ!」
後ろから聞こえる足音が近づいてくる。
まずい。
このままでは追いつかれる。
その瞬間、頭の中に声が響いた。
──告。ユニークスキル『健康体』が発動しました。
──肉体状態を確認。
──身体能力の最適化を開始します。
「は?」
直後、身体が少し軽くなった。
足が地面を蹴る感覚が変わり、今までよりも速く走れるようになった気がする。
「なんだこれ!?」
だが、驚いている暇はない。
相手との距離は少しずつ離れている。
しかし、完全に振り切ることはできそうにない。
「くそっ! どうすれば……!」
その時、頭の中に別の声が響いた。
──告。ユニークスキル『開拓者』が発動しました。
──周辺環境を解析します。
視界に様々な情報が浮かび上がる。
木々の位置、地面の傾斜、周囲の植物。
そして、少し先にある大きな岩。
「……あれか!」
俺は岩の方向へ走る。
そのまま岩の裏側へ回り込み、近くにあった木の根を飛び越えた。
直後。
ドンッ!!
ウサギもどきが勢い余って岩にぶつかった。
「よしっ!」
思わず声が出る。
相手が怯んでいる隙に距離を取る。
だが、まだ安心はできない。
「はぁ……はぁ……。なんなんだよ、あいつ……」
俺は少し離れた場所から様子をうかがう。
ウサギもどきは頭を振りながら、再びこちらを探していた。
どうやら簡単には諦めてくれないらしい。
「……逃げ続けるのも限界があるよな」
俺は周囲を見渡した。
武器になりそうなものはないか。
すると、地面に落ちていた比較的太い木の枝が目に入った。
俺はそれを拾い上げる。
「これで何とかするしかないか……」
その時だった。
──告。ユニークスキル『賭博師』が発動可能です。
「え?」
──現在の状況を賭けの対象として設定できます。
──賭けを開始しますか?
目の前に、見えない何かを提示されたよう
な感覚があった。
「賭け……?」
頭の中に選択肢が浮かぶ。
【賭けの内容】
勝負:角持ちの魔物との戦闘
勝利条件:相手を戦闘不能にする
賭けるもの:魔素 10%
勝利報酬 身体能力の一時強化
敗北時 賭けた魔素の喪失
「いやいやいや! いきなり賭けろって言われても!」
俺は困惑する。
そもそも魔素が何なのかも分からない。
だが、今の状況を考えれば、選択肢は多くない。
「……やるしかないのか」
俺は木の枝を握り直した。
「勝てばいいんだろ。やってやるよ!」
──告。賭けが成立しました。
その瞬間、身体の奥から何かが抜けていくような感覚がした。
同時に、身体がわずかに軽くなる。
ウサギもどきがこちらを見つけた。
そして、再び突進してくる。
「来い!」
俺は正面から迎え撃つ……ふりをして、直前で横へ飛び退いた。
ウサギもどきの突進をかわす。
その瞬間、俺は木の枝を地面に突き立てた。
ウサギもどきは勢いを殺しきれず、枝に足を取られて転倒する。
「今だ!」
俺は近くにあった大きな石を拾い、相手の前に投げつけた。石が地面に当たり、魔物が怯む。
そして、俺はその隙に距離を取った。
──告。勝利条件を達成しました。
──賭博師の効果が終了します。
──報酬を獲得しました。
「はぁ……はぁ……」
俺はその場に座り込んだ。
勝った。
本当に勝ったのか?
目の前の魔物は動かなくなっている。
「……生きてる」
ようやく実感が湧いてきた。
俺は異世界に来て、魔物と戦って、生き残った。
「はは……なんだよこれ」
乾いた笑いが漏れる。
そして、頭の中に再び声が響いた。
──告。ユニークスキル『開拓者』に新たな経験が蓄積されました。
──新規能力の獲得条件を確認。
──条件未達成。
「……え?」
今の戦闘で何かが起きたらしい。
しかし、詳しいことは分からない。
俺は一度立ち上がり、服についた土を払った。
「とりあえず、ここから出ないとな……」
その時。森の奥から、複数の足音が聞こえてきた。
しかも、先ほどのウサギもどきとは比べものにならないほど大きな音だ。
「…………」
俺はゆっくりと振り返る。
木々の隙間。
そこには、赤く光る複数の目があった。
一つ、二つ、三つ……。
いや、もっといる。
「…………嘘だろ?」
茂みの奥から現れたのは、巨大な狼の群れだった。
その先頭には、ひときわ大きな黒い狼がいる。
俺は本能的に理解した。
先ほどのウサギもどきとは格が違う。
そして、頭の中に無情な声が響いた。
──告。周辺に複数の魔物を確認。
──個体名:牙狼(ファングウルフ)。
──脅威度:高。
「…………」
俺は静かに後ずさった。
「異世界転移って、もっとこう……チート能力で無双するものじゃないのかよ!!」
俺の異世界生活は、どうやら想像していたものとは大きく違うらしい。