どうか、助けてやってください。
産む痛みを。産まれる息苦しさを。支配される恐怖を、塗り重ねられる恥を。やりきれぬ無力を。不治の無知を。増えていく罪を。分かれぬ悲しみを。
人間は、神の似姿としてあまりに不完全でした。
もし我々のために降りてくださらないなら。
この二つの目に収まりきらぬ無数の絶望を。
この二本の腕で抱きしめ足りぬ深い狂気を。
全てを救い去ってしまう何かを、ください。
それは永い、永い、空白の眠りで、それでいて玉響の微睡みでもあった。
何も見えない、
聞こえない、
味もない、
匂いもない、
手触りもない……
あるのはただ白昼夢だけ。
まるで天上の誂えた柔らかく深いベッドに沈み込んで、いつまでもいつまでも心地よい昼寝に浸り込んでいるかのような。それでいて、授業中のうたた寝にも似て、一瞬気が遠のいた甘やかな隙であるかのような。
眠っているのか、起きているのか。その境目に私はいた。
──私?
私って、誰だっけ。
──ブゥーン………………。何かが動き出す音がした。
私は、何をしていたんだっけ。
私は、何をすべきなんだっけ?
──ブゥーン………………。低い音がする。
聴覚が久々に捉えた音。機械の唸り声だろうか。一定の鈍い微かな音がずっと鳴っている。
──ブゥーン………………。
異音に呼応して、天上にいた私の意識はまっさかさま、急速に地面への浮上を始める。連鎖して、五感が滲むようにじわじわと不快感を訴え始める。背中が痒い。喉が乾いた。舌の根まで乾いた。身体が痺れて変に熱い。それに、私の中のどこかを通って、何かが流れ始めている。ずっと同じ場所に留まっていた液体が、このブゥゥーンという音に呼応してたちまち動き出すと、長らく使われていなかった重い容器のすみずみを満たすべく波打って循環を始める。
酷い圧迫感が胸を襲う。重苦しい。
──ああ。私はいた。息苦しさが私の身体の在処を教えてくれた。意識とともに浮かび上がる記憶のカケラ。
誕生日に食べた【ケーキ】。滑らかなスポンジと、ホイップクリームの砂糖の甘い味。スナップ写真のように蘇るのは、友達の笑顔、芝生の整った広い庭、音楽と談笑……。皆が私を祝福してくれた最高の思い出の切り取りの数々。そして、そんな日々を【覆う影】。あの影を、私は知っていたはず。まだ伝えたかった言葉の熱が胸に燻っている。誰だった?探さなきゃいけない。私は今でも、あの子に伝えたいことが──
ひゅっ、と息を吸った私は、目を見開いた。