白い。
白く眩んでいる。この暗い色の板みたいなものは、天井だろうか。目眩の真っ最中のように半透明な靄がごみごみと視界を掻き乱して、実際私はくらくらしていた。
数十秒ほど、景色が輪郭をすっかり取り戻すのを待った。
天井。
照明。
壁。
私は上半身を起こすと、ぐらりとうなだれた。ぐちゃぐちゃの毛布と乱れたスカートから、見慣れない奇妙な靴を被せられた脚2本が生えている。その様がまるで、私じゃないみたいに思えた。どこか他人事のように不思議がって周辺を見下ろす。
「……何……これ」
どうやら私が寝ていたのはベッドではなく、蓋の開いた黒く大きな箱だったらしい。内側にはまるで玩具の梱包のように私の体型に合う窪みが彫られたマットレスが敷かれ、私の身体はそこにすっぽり収まっていた。黒い箱の形状はまるで──
「……棺桶?」
悪い冗談だ。何だか……私、死んだみたいじゃない?
しかし笑えないことに、どうして自分がここにいるのか分からなければ、ここがどこなのか検討もつかない。天国や地獄だとしても否定できないのだ。
私は意を決して棺桶の周囲に広がる景色に目を向けた。
そこにあったのは、一面の花畑。
赤、白、桃色、黄色、紫色……。色とりどりの花々がびっしりと咲いていて、鮮やかすぎるほど鮮やかで美しい。
「……ええと。これって私、神様から高評価だったんじゃない?仮に死んでたとして……。いえ〜い……」
私は引き攣った笑いを浮かべた直後に、噎せた。
「けほ、う''ぇほっ……ぅ''……」
鼻を突く濃密な甘ったるい匂いが、気持ち悪い。部屋中、空気を腐らせるほどに充満した花々の香りが……まるで香水のプールに閉じ込められたみたいだ。
「ちょっと……鼻が慣れるまで時間がかかりそう。っていうか、思ったより匂いがキツいけど、ここ本当に天国なんだよね?誰か……案内人はいないのかな……。あの〜!誰か……、」
そのとき気づいた。すこし離れたところ、花畑の中に……誰かが倒れている。花壇の列の間の芝生に、繰り糸を失った人形のような姿勢で横たわる、金髪の頭と投げ出された手が見えた。
「えっ……?」
私は棺から飛び出し、倒れている人のもとへ駆け寄った。
「大丈夫ですか!?ねぇ、大丈夫?聞こえるっ?」
私は肩を叩きながら大声で呼びかけた。そうしながら、男の子だろうか、髪が短い、と細切れの思考が浮かんでは、無数の心配の合間に消えた。
「……ん……」
男の子の瞼が震えた。そして朝日のような金髪が揺れて、海のような鮮やかな青い瞳が開いて──
「うぉわ''あああああ''!?!?!?」
素っ頓狂な絶叫が花畑中に響き渡った。