GATE 〜AVENGE IN ANOTHER WORLD〜 作:蓮太郎
『門を制圧したら増援は止まる。そうすれば残りは時間の問題だ』
アイアンマンは上空のワイバーンを睨みながら、頭の中で最速のルートを弾き出していた。
門までは約三百メートル。道中にはまだ数千人の兵士と旋回するワイバーン25頭、あとついでにオーガも居るが普通の兵士と一緒にしている。
だがアイアンマンにとって障害にはなるはずもない。
『キャップ、聞こえたか。私が門を制圧しに行く』
『ああ、聞こえた。だがその前に』
キャプテンアメリカの声に、ふと遠くの空を仰ぐような間があった。
『トニー、自衛隊だ』
直後だった。
西南の空から低く重いエンジン音が響いてきた。二機の戦闘機が銀座の空を切り裂くように飛来し、そのまま異世界の軍団の上空を通過していく。
警告のための低空飛行ではなく、次の瞬間には別方向からヘリコプターの編隊が姿を現した。
『早いな』
アイアンマンは呟いた。SNSでの拡散からまだ2時間も経っていない。
この国の危機対応は、彼の見立てよりずっと迅速だった。
ヘリから降り注ぐように放たれたのは、警告弾だった。
地面に着弾した弾丸が砂埃を巻き上げ、異世界の兵士たちの足が一瞬止まる。その隙を見てか拡声器から声が響き渡った。
「そこの武装集団に告げる! 直ちに武器を捨て、投降しなさい! 繰り返す直ちに――」
空飛ぶ人に空飛ぶ船、あり得ないものを見た兵士たちは動揺した。
だが指揮官らしき大男が再び怒号を飛ばすと、彼らは怯むことなく空へと弓を構えた。
そして、ワイバーンがヘリに向かって急上昇を始める。
『まずいな』
アイアンマンは即座に判断した。万が一に備え、門へ向かう予定を切り替え、ワイバーンの進路に割り込むように飛び上がる。
『こっちだ、トカゲ野郎』
リパルサーの光がワイバーンの鼻先をかすめ、注意を引きつける。怒り狂ったワイバーンが彼めがけて突進してくる。
アイアンマンはそれを誘導するように、自衛隊のヘリから離れた方向へと飛んだ。
『自衛隊は下の連中の制圧を。空は俺が引き受ける、なんてな』
誰に言うでもなく彼はそう呟いてから右腕を振り抜いた。掌から放たれたリパルサーレイがワイバーンの翼を正確に捉える。
命中した事で悲鳴とともに巨体が地面へと落ちていく。
その光景を、地上の至るところからスマートフォンのカメラが捉えていた。
「うわ、マジで飛んでる!」
「あの鉄人、本物じゃん……!?」
「ちょっと待って、あれコスプレじゃないの!?」
避難したビルの陰地下鉄の入口、路地の奥。人々は震える手でスマホを掲げ、次々と動画を撮影していた。
SNSのタイムラインは瞬く間に赤と金の装甲と、そして星条旗の盾で埋め尽くされていく。
『#銀座襲撃』『#鉄人が飛んでる』『#キャプテンアメリカ本物』――ハッシュタグが爆発的に増殖し、トレンドの上位を占領していく。
ハッシュタグに同時に上がっていたキャプテンアメリカは路地裏でまだ戦っていた。
「そっちだ!」
盾を低く構え兵士の剣撃を受け流す。金属のぶつかる音が三度響き、四度目で彼は盾の縁を兵士の脇腹に叩き込んだ。
鎧越しでも効く一撃だった、耐えきれず兵士が膝をつく。
「もういい、君たちに勝ち目はない」
言いながら、彼は路地の奥に目をやった。逃げ遅れた老婦人が、ゴミ箱の陰で震えている。
「おばあさん、こっちです。走れますか」
「は、はい……」
「私の後ろに。急ぎましょう」
盾をつけたまま老婦人を庇うようにしながら走る。その背中を、別の兵士が狙った。
だが、キャプテンアメリカは振り返らなかった。
盾を背負ったまま、彼は走りながらにして兵士の気配を感じ取っていた。老婦人を抱えるようにして横に跳び、背中への襲撃を跳んで回避する。
そのまま地面に着地するため体勢を立て直し、盾を壁に向けて投擲。跳弾するかの如く跳ね返った盾が襲いかかってきた兵士を打ちのめし、キャプテンアメリカの手元へと戻る。
「しつこいな」
兵士が三人、路地の入口を塞いでいた。キャプテンアメリカは老婦人を壁際に寄せると、盾を構えてゆっくりと前に出た。
「ここは押し通らせてもらおう!」
三人が同時に襲いかかってくる。それでも彼は一歩も引かなかった。
盾で一人を弾き、体を捻ってもう一人の剣をかわし、肘を兜に叩き込む。最後の一人は盾の裏側で受け止め、そのまま壁に押し付けた。
「降伏しろ、命までは取らない」
あっという間に制圧されたことで戦意を失った兵士は剣を落とした。
そのまま簡易に拝借した結束バンドで拘束して老婦人を避難させる一部始終は、向かいのビルの窓から撮影されていた。
『この人、本当に強い……!』
『盾さばきが人間業じゃない』
『うちの旦那より強いわ』
『コミケのコスプレブースにいた人だよ! さっき見た!』
動画は瞬く間に拡散された。数十万の再生回数が、一分ごとに跳ね上がっていく。
自衛隊の制圧も着実に進んでいた。だが、異世界の兵士たちは数が多すぎた。そして何より、あの門が開いている限り次から次へと新たな兵が現れる。
アイアンマンは最後のワイバーンを地面に叩き落とすと、空中で姿勢を整え門へと向き直った。
『キャップ、避難誘導はもう十分だろ。そろそろ門を制圧するぞ』
「ああ、行こう。俺も今そっちに向かってる」
『頼りにしてるぞ』
「任せておけ。ところでもう1人いるって言ってたよな?」
『ああ、どうやら相当時差ボケがあるらしくてコールに出ない』
「後で来たら自慢してやろう」
アイアンマンはスラスターを噴かし、銀座の大通りを一直線に門へと向かって飛んだ。眼下で自衛隊の装甲車が隊列を組み、異世界の軍勢に圧力をかけている。
その中を、赤と金の光が流星のように駆け抜けていく。
青の超人戦士が合流するまで残りわずか。
一方その頃。
「ふわぁ…………よく寝た。あれ、もう昼?ロシアとの時差ボケがまだ続いていたか?」
銀髪のロシア人がコネで借りた高級ホテルで目を覚ました。
私はここで最後に出したヒーローが一番好きです。もっと活躍して(無謀な願い)
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