神時代に現れた戦闘民族   作:SS4のビジュアルが一番好き

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其之七:オラリオへ

 

 

 

 旅立ちの朝は、雲ひとつない快晴だった。

 

 ターメリクは最低限の荷物を小さな布袋にまとめ、背中に背負った。

 数年間の修行によって引き締まった体躯には、この世界にやってきた当初の幼さは消え、戦士としての力強い気配が宿っている。

 

 

「本当に……行っちゃうんだね、お兄ちゃん」

 

 

 家の前で見送るベルの顔は、今にも泣き出しそうに歪んでいた。

 九歳になったベルの腰には、老人に与えられた木剣が下げられている。この数年間、ターメリクの背中を追いかけるように必死で振るい続けてきた証だ。

 

 

「当たり前だ。俺は強ぇ奴と戦うために旅に出るんだ。ここでいつまでもダラダラ過ごすつもりはねぇ」

 

 

 冷たく言い放つターメリクだったが、その瞳に以前のようなトゲはない。

 ベルはギュッと唇をかみ締め、握りしめた拳をターメリクに向けた。

 

 

「僕……おじいちゃんのもとで、もっともっと強くなるよ! そしていつか……オラリオに行って、お兄ちゃんに追いついてみせる!」

 

「……ハッ。追いつく、ねぇ」

 

 

 ターメリクは不敵な笑みを浮かべ、ベルの頭に乱暴に手を置いた。わしわしと白髪を撫で回すと、鼻で笑ってみせる。

 

 

「言っとくがベル、俺は待ってやるつもりなんざさらさらねぇぞ。どんどん先へ行ってやるから、俺の背中を見失わねぇよう、せいぜい必死で追っかけてきな」

 

 

頭を撫でられ、髪をクシャクシャにされながらも、ベルの瞳には確かな強い意志の光が灯っていた。

 

 

「ほっほ、相変わらず素直ではないのう」

 

 

腕を組んで二人のやり取りを眺めていた老人が、呆れたように笑いながら歩み寄ってきた。

 

 

「ターメリク。まずはここから港街メレンを目指すと良い。あそこから海を渡れば、下界の広大な外世界が広がっておる」

 

「港街メレンか……」

 

「アマゾネスの戦士たちが暮らす闘国『テルスキュラ』、独自の武芸や忍術が発達した『極東』……そして大陸北端には、世界三大秘境の一つ『竜の谷』と、それを見張る神の眷属の精鋭ども存在する。今の生半可な強さでは相手にならん場所ばかりじゃ」

 

 

老人はニッと口角を上げ、ターメリクの顔をまっすぐに見つめた。

 

 

「そこで存分に己の力を磨いてくるが良い。そして――お主が自分に絶対の自信を持てた時、あの迷宮都市オラリオへ向かうのじゃ。ターメリクよ、お主が下界でどんな風を巻き起こすか、楽しみにしておるぞ」

 

「言われなくても、世界の強ぇ奴らを片っ端からブッ叩いて証明してやるよ。俺が一番強いってな」

 

 

ターメリクは背を向け、片手をひらひらと振りながら歩き出した。

 

 

「行ってらっしゃい、ターメリクお兄ちゃん! 絶対、絶対また会おうね――ッ!!」

 

 

 背後から響くベルの叫び声。

 ターメリクは振り返ることなく、空に向かって強く拳を突き上げた。

 

 

 

◇◇◇

 

 

 

 ――それから約四年もの歳月を、ターメリクは世界中を貪るように渡り歩いて過ごした。

 

 十二歳の時点で、ターメリクの強さはすでに神の眷属における『Lv.4上位』に匹敵する領域へ踏み込んでいた。並の有象無象では到底相手にならない。ゆえに彼は、下界でも一握りの危険地帯や一部の猛者だけを狙って突き進んだ。

 

 侍や忍びがしのぎを削る『極東』では、純粋な強さこそターメリクに遠く及ばないものの、洗練された剣術や忍術、気配を絶つ暗殺術といった『技術』の冴えと対峙。かつて老人に手も足も出なかった苦い経験を糧に、ターメリクは相手の機先を制し、微細な魔力の流動を見極める洗練された戦闘勘を徹底的に叩き上げていった。

 

 アマゾネスの戦士たちが暮らす、殺伐とした闘国『テルスキュラ』では、死闘を歓喜とするアマゾネスの精鋭たちと激突。圧倒的な暴力と殺意の応酬の中で、ターメリクのサイヤ人としての闘争本能が研ぎ澄まされていく。

 

 そして、数々の竜種が蠢く最悪の秘境――大陸北端の『竜の谷』。

 空を埋め尽くすワイバーンや凶暴な大型の竜種、さらには谷からの竜種の流出を防ぎ見張る神の眷属の精鋭陣。ターメリクはその過酷な死地へ単身踏み込み、果てしない殺し合いを繰り広げた。

 

 死の淵から生還するたびに爆発的な強さを得る、サイヤ人特有の体質。

 数々の死線をくぐり抜けるたび、彼の強さは『Lv.6』を超え、ついには『Lv.7』相当という英雄の領域にまで跳ね上がっていった。

 

 

◇◇◇

 

 

 

 ――十六才となったターメリクは、険しい山々の頂から、遥か彼方に見える『巨大な白い塔(バベル)』を見下ろしていた。

 

 世界の中心――迷宮都市オラリオ。

 

 無数の強者がひしめき、無限の怪物が蠢く巨大な地下迷宮を抱えた、下界最大の戦場。

 

 

「……へっ、待たせたな」

 

 

 野性味を増した鋭い顔つきに、獰猛な笑みを浮かべる。

 体内に渦巻く膨大なエネルギーと、研ぎ澄まされた魔力コントロール。いまや彼の強さは、オラリオの頂点に君臨する冒険者どもとも真っ向から渡り合える域に達していた。

 

「さぁて……オラリオの強ぇ奴らと、地下迷宮の怪物どもをブッ飛ばしに行くとするか!」

 

 

 不敵に笑うと、ターメリクは遥か下のオラリオへ向けて、堂々と足を踏み出した。

 

 

 

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