神時代に現れた戦闘民族 作:SS4のビジュアルが一番好き
白亜の巨塔『バベル』が、天を突くように聳え立っている。
外壁をぐるりと囲む巨大な城壁の南門前。ターメリクは、見上げるほど高い門を見上げ、満足げに鼻を鳴らした。
「へっ……噂通り、バカでかい街だな」
十二歳で村を発った頃と比べ、ターメリクの体躯は見違えるほど大きく成長していた。背丈は伸び、服越しにもわかるほど厚くなった胸板と逞しく引き締まった腕。野性味を増した鋭い面構えと腰に巻きついた茶色の毛並みの尻尾は、立ち姿だけで異彩を放っている。
「次の方、どうぞ――」
順番が巡ってくると、羊皮紙を抱えたギルドの検問職員が、ターメリクの精悍な身なりと引き締まった体躯を見て目を丸くした。
「君、見ない顔だね。所属ファミリアと『神の恩恵(ファルナ)』の確認をさせてもらうよ」
「ねぇよ、そんなもん」
ターメリクが事も無げに吐き捨てると、職員は「あぁ、なるほど」と納得したように頷いた。
「恩恵はまだか。冒険者になりたくてオラリオに出てきた口だな。なら、まずは君を受け入れてくれるファミリアを探しなさい。神様が決まったらギルド本部で登録手続きをするんだよ」
「余計なお世話だ。通行料だろ、ほらよ」
職員の小言を聞き流し、ターメリクは渡された銀貨をカウンターに投げて門を通過した。背後から職員の「ちゃんとファミリア探すんだよ!」という声が聞こえたが、無視して人ごみの中へと消えていく。
一歩、街の中へ足を踏み入れる。
石畳の大通り。立ち並ぶ絢爛な建物。露店から漂う香ばしい肉の焦げる匂いと、行き交う多種多様な種族の活気。
そして何より――街のあちこちから伝わってくる、確かな強者たちの気配。
「……ほう。外の世界じゃ滅多にお目にかかれねぇ、そこそこ骨のありそうな奴らがゴロゴロいるじゃねぇか」
ターメリクの口角が獰猛に跳ね上がった。
一般人には解らないが、オラリオの都市内には【ロキ・ファミリア】や【フレイヤ・ファミリア】をはじめとする第一級冒険者たちの研ぎ澄まされた気配が点在している。四年の死闘を経て極限まで高まったターメリクの感覚なら、それらの気配の質や強さを一目で見極めることができた。
この街の連中は誰も彼もが神の配下――『眷属』となって戦っている。だが、ターメリクに神の恩恵へ頼る気など微塵もなかった。成長した己の肉体と、死線をくぐり抜けて手に入れたサイヤ人の力こそがすべてだ。誰かの下僕になるつもりも、神に頭を下げるつもりも毛頭ない。
「よし……まずは腹ごしらえだ」
闘志をたぎらせながらも、ターメリクはぐうと鳴った腹を叩いた。長旅を経て、サイヤ人の燃費の悪い胃袋は限界を迎えている。
通り沿いにある大きな酒場の扉を押し開き、空いている席にドカリと腰を下ろすと、ターメリクは豪快に卓を叩いた。
「店主! 一番でけぇ肉料理と酒を、食い切れねぇくらい持ってこい!」
「あいよ! 気前のいいお兄さんだねぇ!」
次々と運ばれてくる山盛りの肉塊を、ターメリクは化け物じみた勢いで貪り食っていく。サイヤ人らしい圧倒的な大食漢ぶりで次々と皿を空にし、長旅で減った腹を満たしていく。
ふと店内を見渡すと、武具を携えた冒険者たちが酒を酌み交わしながら地下迷宮(ダンジョン)の戦果について語り合っていた。
「今日の十五階層はキツかったな……」
「へっ、まだまだ浅い浅い。下層の奴らに比べりゃ温いもんさ」
ターメリクは肉を噛みちぎりながら、不敵に笑った。
(ファミリアに入れだの何だのうるさそうだが……知ったこっちゃねぇな。邪魔する奴はブッ飛ばして潜るまでだ)
他人の威光も、神の恩恵も要らない。
ターメリクは、己の拳一つでこのオラリオの頂点、そして地下迷宮の最深部を目指して突き進む。