転生したのでポケモン世界をのんびり旅します 作:AIは許される?許してよ
ポケモンセンターの照明が明滅した。
そして、次の瞬間。
パチンッ!
という音とともに、室内の明かりが一斉に消えた。
「きゃあっ!?」
カスミが悲鳴を上げる。
「な、なんだ!?停電!?」
サトシも驚いている。
……うんこうなることは知ってた。
「ふふふ!どうかしら!」
暗闇の中からムサシの声が響いた。
「これでポケモンセンターの機能は停止したわ!」
「治療中のポケモンたちも、これでは逃げられないだろうね!」
コジロウが得意げに笑う。
「さあ、ポケモンを全部いただくニャ!」
……いや。
犯罪者が堂々と犯罪計画を説明するなよ。
俺はため息をつきながら、隣にいるソウブレイズを見た。
「ソウブレイズ、見える?」
「ソウ」
ソウブレイズが頷く。
……よかった。
俺にはほとんど見えないけど、ソウブレイズには相手の位置が分かるらしい。
「じゃあ、ひとまず俺のそばにいてね」
「ソウ!」
「……リンヤ!」
サトシが俺を呼んだ。
「どうするんだよ!?」
「どうするって……」
俺は少し考えた。
……うん。
ここは原作通りに進んでもらうのが1番いい。
変に俺が動いて展開が変わるのも面倒だし。
何より、ピカチュウの活躍を奪うつもりはない。
「とりあえず、ジョーイさんの指示に従おうか」
「分かった!」
……素直で助かる。
「みなさん!こちらへ!」
ジョーイさんが非常灯を頼りに駆け寄ってきた。
「治療中のポケモンたちを安全な場所へ移動させます!」
「俺も手伝います!」
サトシが即座に答えた。
「あたしも!」
カスミも続く。
……うん。
2人とも行動が早い。
俺も手伝うか。
「ソウブレイズ、周囲を警戒してて」
「ソウ!」
俺たちはジョーイさんに案内され、治療室へ向かった。
そこには、まだ回復途中のポケモンたちがいた。
そして、その中には。
「ピカチュウ!」
「ピカ……」
ベッドの上で横になっているピカチュウの姿があった。
サトシが駆け寄る。
「大丈夫か!?ピカチュウ!」
「ピカ……チュウ……」
……うん。
まだ完全には回復していないみたいだ。
それでも、サトシの声に反応している。
「ごめんな、ピカチュウ。俺がもっとしっかりしてれば……」
「ピカ……」
サトシがピカチュウの頭を優しく撫でた。
……こういうところを見ると、やっぱりサトシはいいトレーナーなんだと思う。
まだまだ未熟だけど。
ポケモンを大切にする気持ちは本物だ。
「サトシ君!ピカチュウを連れて、こちらへ!」
「はい!」
ジョーイさんの指示で、サトシがピカチュウを抱き上げる。
俺も近くにいたポケモンを運ぶのを手伝った。
……しかし。
この状況。
やっぱり落ち着かないなぁ。
「いたぞ!」
突然、廊下の向こうからコジロウの声が響いた。
「こんなところに隠れていたのね!」
ムサシも現れる。
その後ろにはニャース。
……ああ。
追いつかれた。
「さあ!ポケモンを渡しなさい!」
「嫌だ!」
サトシがピカチュウを抱きしめる。
「絶対に渡すもんか!」
「あんたたち、いい加減にしなさいよ!」
カスミも怒鳴った。
……うん。
相変わらず元気だねぇ。
俺はソウブレイズに視線を向けた。
「……ソウブレイズ」
「ソウ」
「もし攻撃してきたら、みんなを守ってね」
「ソウブレイズ!」
ソウブレイズが前へ出る。
すると、ムサシが顔をしかめた。
「げっ!さっきの変なポケモン!」
「変なポケモンとは失礼な」
俺は思わず突っ込んだ。
「あのポケモンは危険だよ、ムサシ!」
コジロウが警戒する。
「アーボとドガースを一瞬で倒したんだから!」
「分かってるわよ!」
ムサシが舌打ちした。
「でも、こっちには秘密兵器があるんだから!」
ニャースが何やらスイッチを押した。
すると、天井付近から巨大な網が落ちてきた。
「うわっ!?」
「きゃあっ!?」
サトシとカスミが驚く。
……ああ。
そういう仕掛けか。
「ソウブレイズ、かげうち」
「ソウ!」
黒い影が伸び、落下してきた網を横から弾き飛ばした。
バサッ!
網は誰もいない床に落ちる。
「なっ!?」
ムサシが目を見開いた。
「また邪魔したわね!」
「いやぁ、そりゃ邪魔するでしょ」
俺は苦笑した。
「ポケモンを盗まれるわけにはいかないし」
「このぉ!」
……うん。
怒らせちゃった。
まあ、仕方ない。
その後も、ロケット団は色々と仕掛けてきた。
煙幕。
網。
そして、何やらよく分からない機械。
……いや、本当に。
どこから持ってきたの、そんなもの。
しかも、ポケモンセンターの中で使うには危険すぎる。
「ソウブレイズ、そっちの機械を止めて」
「ソウ!」
ガシャンッ!
「ああっ!?」
コジロウが悲鳴を上げる。
「せっかく用意した装置が!」
「悪いねぇ」
……うん。
これで少しは静かになるかな。
そう思ったのだが。
「……もう許さないわ!」
ムサシが怒りに震えていた。
「こうなったら、力ずくで全部奪ってやる!」
「そうだそうだ!」
「覚悟するニャ!」
……ああ。
まだやるんだ。
本当に諦めが悪いなぁ。
しかし、その時だった。
「……ピカ」
小さな声が聞こえた。
俺が振り返ると、サトシの腕の中でピカチュウが顔を上げていた。
「ピカチュウ!?」
サトシが驚く。
「無理するな!まだ治ってないんだろ!?」
「ピカ……チュウ……!」
ピカチュウはサトシの腕から降りようとしていた。
……あ、この展開は。
俺はソウブレイズに小さく声をかけた。
「ソウブレイズ、少し下がろうか」
「ソウ?」
「うん。ここからは、あの子の出番みたいだから」
「ソウ」
ソウブレイズは不思議そうにしながらも、俺の隣へ戻ってきた。
「ピカチュウ!無理するなって!」
サトシが必死に呼びかける。
しかし、ピカチュウは前へ出た。
小さな身体。
まだ完全には回復していないはずなのにその目には、強い意志が宿っていた。
「……ピカ!」
「なによ、あの弱そうなピカチュウ!」
ムサシが笑った。
「そんな状態で何ができるっていうの?」
「そうだよ!大人しくしていればいいものを!」
コジロウも笑う。
……ああ。
言っちゃった。
それ、完全にフラグだよ。
「ピカチュウ……」
サトシが拳を握りしめる。
「分かった!一緒に戦おう!」
「ピカ!」
ピカチュウの頬から、小さな電気が弾けた。
パチッ。
パチパチッ。
……うん。
そろそろだね。
俺はソウブレイズの肩に手を置いた。
「……ちょっと離れようか」
「ソウ?」
「巻き込まれたくないから」
「ソウ……」
……いや、本当に。
あれに巻き込まれるのは勘弁してほしい。
「ピカチュウ!でんきショックだ!!」
サトシが叫んだ。
「ピッカァァァ!!」
ピカチュウの身体から、眩しい電撃が放たれた。
バチバチバチバチッ!!
「なっ!?」
「うわぁぁ!?」
「ニャァァァ!?」
ロケット団の3人が悲鳴を上げる。
電撃は周囲の機械にも伝わり、次々と火花を散らした。
……うわぁ。
すごい。
前世でアニメを見た時も思ったけど。
このピカチュウ、本当に規格外だなぁ。
「ピッカァァァァ!!」
さらに電撃が強まる。
そして。
ドォォォン!!
大きな爆発音が響いた。
「な、なんなのよぉぉぉ!!」
「こんなはずじゃなかったのにぃぃ!!」
「ニャーたちの作戦がぁぁぁ!!」
ロケット団の3人が、爆風に巻き込まれて空へ吹き飛ばされる。
そして、遠くから声が響いた。
「「「やな感じぃぃぃ!!」」」
…………。
…………。
……うん。
これだよ。
これ。
ロケット団といえば、やっぱりこれだよね。
俺は思わず感心してしまった。
いや、感心するところじゃないんだけど。
でも、実際に見るとすごい。
人間とニャースが空の彼方へ飛んでいくんだから。
……あれ、どういう身体構造してるんだろう。
普通なら大怪我じゃ済まないと思うんだけど。
まあ、ロケット団だし。
きっと大丈夫なんだろう。
……うん。
深く考えるのはやめよう。
「やったぁぁぁ!!」
サトシが歓声を上げた。
「すごいぞ!ピカチュウ!!」
「ピカ……チュウ……」
ピカチュウが嬉しそうに鳴く。
しかし、次の瞬間。
ふらっ。
「ピカチュウ!?」
サトシが慌てて抱きとめた。
「大丈夫か!?」
「ピカ……」
……ああ。
やっぱり無理してたんだね。
「サトシ君!すぐに治療を再開しましょう!」
ジョーイさんが駆け寄ってきた。
「はい!お願いします!」
サトシがピカチュウを預ける。
……うん。
これでひとまず安心かな。
俺は周囲を見回した。
……いやぁ。
ひどい有様だ。
床には壊れた機械。
壁には焦げ跡。
天井の照明も何個か壊れている。
……これ、修理費すごそう。
ロケット団、ちゃんと弁償するのかな。
……しないだろうなぁ。
「……はぁ」
俺は大きくため息をついた。
「やっと終わった……」
「ソウ」
ソウブレイズも頷いた。
……うん。
今日は本当に疲れたね。
「なあ、リンヤ!」
サトシが俺に駆け寄ってきた。
「ん?」
「さっきはありがとうな!」
「……俺?」
「ああ!ソウブレイズが守ってくれたおかげで、ピカチュウも無事だったし!」
「まあ、少しは役に立てたならよかったよ」
「すっげぇ強かったな!ソウブレイズ!」
「ソウ!」
ソウブレイズが胸を張る。
……うん。
褒められて嬉しそうだ。
「それにしても、ピカチュウもすごかったね」
「だろ!?」
サトシが満面の笑みを浮かべた。
「俺、もっともっと強くなるんだ!」
「うん。頑張ってね」
「リンヤも一緒に頑張ろうぜ!」
「……俺はほどほどでいいかなぁ」
「なんでだよ!」
……いや。
俺はのんびり旅をしたいだけなんだけど。
「……あんたたち!」
そこへ、カスミがやってきた。
「何をのんびり話してるのよ!」
「え?」
サトシが首を傾げる。
「ポケモンセンター、こんなにボロボロになっちゃったじゃない!」
「ああ……」
「ああ、じゃないわよ!」
カスミが腰に手を当てる。
……うん。
正論。
まあ、ロケット団が悪いんだけどね。
「それに、サトシ!」
「な、なんだよ!?」
「あたしの自転車のこと、忘れてないでしょうね!?」
「……あ」
…………。
…………。
あ。
忘れてたね、これ。
「忘れてたのね!?」
「い、いや!忘れてないって!」
「嘘つきぃぃぃ!!」
カスミがサトシを追いかけ始めた。
「うわぁぁぁ!!」
サトシが逃げる。
……うん。
元気だねぇ。
俺はその光景を眺めながら、ソウブレイズに話しかけた。
「……俺たちはもう休もうか」
「ソウ」
「今日は本当に色々あったし」
「ソウブレイズ」
「うん。明日こそ、のんびり旅をしようね」
ソウブレイズが頷いた。
……よし。
明日はトキワの森へ向かおう。
できれば、サトシたちとは別行動で。
だってこの2人と一緒にいたら、絶対に面倒事に巻き込まれる気がするから。
……まあ。
そんな俺の願いが叶うかどうかは、分からないけど。
少なくとも今日のところはもう何も起こらないでほしい。
本当に心の底からそう思った。
現在の手持ちポケモン
ソウブレイズ♀ Lv.20