転生したのでポケモン世界をのんびり旅します   作:AIは許される?許してよ

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旅の始まりは膝枕から

……温かい。

 

いや、正確には少し熱い。

 

けれど、不快な熱さではない。じんわりと伝わってくる温もりが、妙に心地よかった。

 

頭の下には適度な硬さの感触がある。

 

枕にしては少し硬いが、地面に直接寝転がるよりは遥かに快適だ。

 

おまけに、時折吹いてくる風が頬を撫でていく。

 

……うん。最高の昼寝環境だ。

 

「……んぅ」

 

薄っすらと目を開ける。

 

視界に入ってきたのは、青い空でも木々の葉でもなかった。

 

黒い鎧。

 

そして、その向こう側からこちらを覗き込んでいるソウブレイズの顔。

 

「……おはよう」

 

「ソウ」

 

「よく寝たなぁ……」

 

「ソウブレイズ」

 

ソウブレイズが小さく頷く。

 

俺はそのまま目を閉じようとして――ふと気づいた。

 

……あれ?

 

今、俺は何を枕にしているんだ?

 

少しだけ首を動かして確認する。

 

黒い装甲に覆われた太もも。

 

その上に、俺の頭が乗っていた。

 

…………。

 

「……膝枕?」

 

「ソウ」

 

「ああ、なるほど。膝枕かぁ」

 

納得した。

 

どうやら俺は、ソウブレイズに膝枕をしてもらいながら昼寝をしていたらしい。

 

……いや、なんで?

 

確か、マサラタウンを出発してから適当な木陰を見つけて、少し休憩しようと思ったんだったか。

 

それで地面に腰を下ろして……。

 

ああ、思い出した。

 

ソウブレイズが隣に座ったから、なんとなく膝を借りたんだった。

 

「いやぁ、ありがとう。おかげでよく眠れたよ」

 

「ソウ」

 

ソウブレイズは特に気にした様子もなく頷いた。

 

5年間一緒に暮らしているからか、こういうことにも慣れているらしい。

 

もっとも、ソウブレイズの膝枕には1つ問題がある。

 

硬いのだ。

 

当然である。

 

こいつの身体は鎧のような装甲に覆われている。

 

普通の人間の膝枕のような柔らかさは期待できない。

 

しかし、不思議なことに寝心地は悪くない。

 

むしろ、頭が安定するので結構気に入っている。

 

……まあ、世間一般で膝枕といえば、もっと柔らかいものを想像するだろうけど。

 

「……ところで、今何時?」

 

「ソウ」

 

ソウブレイズが俺のリュックを指差した。

 

時計を確認しろということらしい。

 

「はいはい」

 

身体を起こし、リュックから時計を取り出す。

 

午前10時40分。

 

…………。

 

「……1時間くらい寝てた?」

 

「ソウ」

 

「そっかぁ」

 

思ったより寝ていたらしい。

 

まあ、別に急ぐ旅でもない。

 

今日中にトキワシティへ到着できれば十分だろう。

 

「それじゃあ、そろそろ行こうか」

 

「ソウ!」

 

ソウブレイズが勢いよく立ち上がった。

 

……そんなに出発したかったのか。

 

いや、そりゃそうか。

 

旅立って早々、1時間も昼寝していたんだから。

 

俺が逆の立場だったら、もう少し早く起きろと思うかもしれない。

 

……いや、俺だったら一緒に寝てるな。

 

マサラタウンからトキワシティへ続く1番道路。

 

ゲームでは最初に訪れる道路であり、出現するポケモンも比較的弱い。

 

ポッポやコラッタ。

 

カントー地方ではお馴染みのポケモンたちだ。

 

ただし、それはあくまでゲームの話。

 

実際の1番道路は、ゲーム画面で見ていたものよりも遥かに広い。

 

当然ながら、数10歩歩けば次の町に到着するような距離ではない。

 

草むらも本当に草が生い茂っているし、道から外れれば木々が密集している場所もある。

 

何より、ポケモンが決まった場所にしか出現しないわけではない。

 

野生のポケモンは生き物だ。

 

食事をするし、眠るし、縄張りも持つ。

 

ゲームでは草むらに入った瞬間にランダムエンカウントするけど、現実ではそんな都合のいい仕組みは存在しない。

 

……いや、そもそも草むらを歩いただけで毎回襲われるゲームの方がおかしいんだけど。

 

そんなことを考えながら歩いていると、ソウブレイズが足を止めた。

 

「ソウ」

 

「ん?どうしたの?」

 

ソウブレイズが道の脇を指差す。

 

視線を向けると、1匹の鳥ポケモンが地面をつついていた。

 

茶色い身体。

 

クリーム色の腹部。

 

頭には小さな冠羽。

 

……おお。

 

「ポッポだ」

 

「ポポッ」

 

こちらに気づいたポッポが顔を上げた。

 

別に逃げる様子もない。

 

警戒はしているようだが、今のところ攻撃してくる気配もなかった。

 

「へぇ〜。野生のポッポって、こんな感じなんだ」

 

前世では何100匹と見てきたポケモンだ。

 

ゲームでもアニメでも、序盤に登場する代表的な存在である。

 

だけど、実際に目の前で見ると印象が違う。

 

羽毛の1本1本が風に揺れている。

 

小さな足で地面を踏みしめ、首を傾げながらこちらを観察している。

 

画面の中のキャラクターではなく、ちゃんと生きている動物なんだと実感する。

 

「そういえば、図鑑を貰ったんだった」

 

俺はポケットからポケモン図鑑を取り出した。

 

せっかくだし、使ってみよう。

 

ポッポに向けて図鑑を開く。

 

すると、画面にポッポの姿が表示され、音声が流れ始めた。

 

『ポッポ。ことりポケモン。おとなしい性格で、敵に襲われると砂をかけて身を守る。方向感覚に優れ、遠く離れた場所からでも巣に帰ることができる』

 

「ふむふむ」

 

なるほど。

 

知っている内容ではあるけど、こうして図鑑で確認するのは新鮮だ。

 

ちなみに、ポッポはノーマル・ひこうタイプ。

 

ソウブレイズはほのお・ゴーストタイプ。

 

相性的には、こちらが一方的に不利ということはない。

 

むしろ、ポッポがノーマルタイプの技を使ってきた場合、ゴーストタイプのソウブレイズには基本的に通用しない。

 

……まあ、現実のバトルでは周囲の地形や間接的な影響も考慮する必要があるけど。

 

さて。

 

「ソウブレイズ」

 

「ソウ?」

 

「あのポッポと戦ってみようか」

 

「ソウ」

 

ソウブレイズが1歩前に出た。

 

ポッポもこちらの様子が変わったことに気づいたらしい。

 

翼を広げ、警戒するように鳴いた。

 

「ポポッ!」

 

「それじゃあ……ソウブレイズ、ひのこ」

 

「ソウ!」

 

ソウブレイズが口元から小さな炎を放った。

 

赤い火の粉が一直線に飛んでいく。

 

「ポポッ!?」

 

ポッポは慌てて飛び上がろうとした。

 

しかし、間に合わなかった。

 

ボフッ!

 

火の粉がポッポの身体に命中する。

 

「ポポォッ!」

 

ポッポは短い悲鳴を上げ、そのまま地面に落下した。

 

そして――動かなくなった。

 

……いや、死んだわけじゃないよ?

 

ちゃんと戦闘不能になっただけだ。

 

この世界のポケモンは、見た目以上に頑丈である。

 

もちろん、だからといって無茶な攻撃をしていいわけではないけど。

 

「……1発かぁ」

 

「ソウ」

 

ソウブレイズがこちらを振り返る。

 

「うん。いい感じだったよ」

 

「ソウ!」

 

褒められたのが嬉しかったのか、ソウブレイズが少し胸を張った。

 

それにしても、思ったよりあっさり終わったな。

 

まあ、当然といえば当然か。

 

ソウブレイズは現在レベル15。

 

1方、目の前のポッポは恐らくまだそれほど強くない個体だ。

 

レベル差もあるだろうし、何よりソウブレイズは最終進化したポケモンである。

 

進化によって身体能力が大きく変化するのは、この世界でも同じらしい。

 

ただし、ゲームのように単純な数値だけで強さを測れるわけではない。

 

例えば、同じレベルのポケモンでも、戦闘経験や技の練度によって実力は変わる。

 

それに、相手の攻撃を見てから回避する判断力も重要だ。

 

ゲームなら、素早さの数値によって先攻と後攻が決まる。

 

しかし、現実のポケモンバトルは違う。

 

相手が技を繰り出している最中に回避することもできるし、攻撃の隙を突いて反撃することもできる。

 

つまり、ゲームの知識は役に立つけど、それだけで勝てるわけではない。

 

……まあ、今回みたいに実力差が大きければ、戦術も何もないんだけどね。

 

「さて、と」

 

俺は倒れたポッポに近づいた。

 

呼吸は安定している。

 

目立った怪我もなさそうだ。

 

炎を受けた羽毛も、多少焦げている程度だった。

 

「……うん。大丈夫そうだね」

 

俺はリュックから傷薬を取り出した。

 

せっかくだし、治療しておこう。

 

ゲームなら野生のポケモンを倒して終わりだけど、現実では倒れた相手をそのまま放置するのも少し気になる。

 

もちろん、野生のポケモン同士の争いまで全部面倒を見るつもりはない。

 

自然界には自然界のルールがある。

 

ただ、今回は俺たちから仕掛けたバトルだ。

 

だったら、最低限の責任くらいは持ってもいいだろう。

 

「よいしょっと」

 

傷薬を吹きかける。

 

ポッポの身体が小さく動いた。

 

「ポ……ポ……」

 

「ああ、まだ動かなくていいよ」

 

ポッポは薄っすらと目を開けた。

 

俺とソウブレイズを見比べる。

 

そして、少しだけ身体を震わせた。

 

……まあ、そりゃ怖いよね。

 

突然、見知らぬトレーナーにバトルを仕掛けられて、1撃で倒されたんだから。

 

「ごめんね。ちょっとバトルの練習をしたかったんだ」

 

「ポポ……」

 

「ほら、これでも食べる?」

 

俺は持っていたポケモン用の餌を少し差し出した。

 

ポッポは警戒しながらも、ゆっくりとついばみ始めた。

 

……うん。

 

食欲があるなら大丈夫そうだ。

 

「それじゃあ、元気でね」

 

「ポポッ」

 

ポッポは翼を広げ、近くの木へ飛んでいった。

 

俺はその姿を見送る。

 

「……さて」

 

「ソウ?」

 

「初バトルも終わったし、そろそろトキワシティに向かおうか」

 

「ソウ!」

 

ソウブレイズが元気よく返事をした。

 

……うん。

 

やっぱり、こいつは頼もしいな。

 

「それにしても、ひのこ1発で倒せるとはねぇ」

 

「ソウ」

 

「まあ、今のうちはこんなものかな」

 

この先、もっと強いポケモンと戦うことになるだろう。

 

ジムリーダー。

 

各地の実力者。

 

そして、ポケモンリーグに集まるトレーナーたち。

 

今はまだ、その入口に立ったばかりだ。

 

……とはいえ。

 

「……お腹空いたなぁ」

 

「ソウ……」

 

ソウブレイズがこちらを見た。

 

なんだか呆れている気がする。

 

「いや、だってもうすぐお昼だし」

 

「ソウブレイズ」

 

「え?さっきまで寝てた?それとこれとは別でしょ」

 

「ソウ……」

 

……そんなにため息をつかなくてもいいじゃないか。

 

旅は始まったばかり。

 

焦る必要なんて、どこにもない。

 

「よし。トキワシティに着いたら美味しいものでも食べよう」

 

「ソウ?」

 

「もちろん、ソウブレイズの分もね」

 

「ソウ!」

 

途端に元気になった。

 

……現金なやつだなぁ。

 

まあ、俺も人のことは言えないけど。

 

そんなことを考えながら、俺たちは1番道路を歩き続けた。

 

まだ見ぬポケモンとの出会い。

 

これから始まる数々のバトル。

 

そして、セキエイリーグへの道のり。

 

楽しみなことはたくさんある。

 

……とりあえず、今は昼飯の方が大事だけどね。

 




現在の手持ちポケモン

ソウブレイズ♀ Lv.15


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