転生したのでポケモン世界をのんびり旅します   作:AIは許される?許してよ

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格上相手には慎重に

ドゴォォォン!!

 

サイドンの巨大な足が地面を踏みつけ、バトルフィールド全体に衝撃が走った。

 

じならし。

 

ゲームでは威力60のじめんタイプの物理技で、相手の素早さを下げる追加効果を持つ。

 

しかし、現実で見ると随分と厄介な技だ。

 

なにせ、地面そのものを揺らして攻撃してくるのである。

 

普通の攻撃なら横に避ければいい。

 

だが、じならしは地面を伝わる衝撃波だ。攻撃範囲が広く、地上にいる限り回避するのは難しい。

 

だからこそ、俺はソウブレイズに跳躍を指示した。

 

「ソウブレイズ、着地と同時にひのこ!」

 

「ソウ!」

 

空中に跳び上がっていたソウブレイズが身体を捻り、着地する直前に口から炎を放つ。

 

赤い火の粉がサイドンへ向かって飛んでいった。

 

「サイドォン!」

 

ボボボッ!

 

火の粉がサイドンの胸元に命中する。

 

しかし――。

 

「……まあ、そうなるよねぇ」

 

サイドンはほとんど動じていなかった。

 

当然といえば当然だ。

 

サイドンはいわ・じめんタイプ。

 

ほのおタイプの技は、いわタイプによって半減される。

 

しかも、サイドンの身体は分厚い岩のような皮膚に覆われている。

 

ゲームでいえば、特殊防御が低いポケモンではあるけれど、こちらが使ったのは威力40のひのこ。

 

さらに相手は明らかな格上。

 

大したダメージを与えられなくても不思議ではない。

 

……いや、分かっていたことだけど。

 

「ふむ。ほのお技か」

 

サカキが腕を組んだまま口を開いた。

 

「タイプ相性を考えれば、あまり有効とは思えんが?」

 

「まあ、そうですねぇ」

 

俺は苦笑する。

 

確かに、ダメージを与えることだけが目的なら、ひのこは適切な選択とは言えない。

 

しかし。

 

「ソウブレイズ、にらみつける!」

 

「ソウ!」

 

ソウブレイズの目が鋭く光った。

 

相手を威圧し、防御力を下げるノーマルタイプの変化技。

 

にらみつける。

 

ゲームなら、相手の防御ランクを1段階下げる効果がある。

 

ただし、現実では数字が表示されるわけではない。

 

相手の動きが鈍くなるのか。

 

身体が強張るのか。

 

それとも、何らかの不思議な力が作用して防御力そのものが低下するのか。

 

正確な仕組みは分からない。

 

だが、効果があることは確認している。

 

「サイドン、突進だ」

 

「サイドォォン!」

 

サイドンが地面を蹴った。

 

巨体に似合わない速度で、こちらへ向かってくる。

 

……うわ、速い。

 

サイドンはゲームでは素早さが低い部類のポケモンだ。

 

しかし、それはあくまでポケモン同士を比較した場合の話。

 

実際に目の前で、あの巨体が突っ込んでくる光景はかなり恐ろしい。

 

「ソウブレイズ、横に避けて距離を取って!」

 

「ソウ!」

 

ソウブレイズが素早く横へ跳ぶ。

 

直後、サイドンが先ほどまでソウブレイズのいた場所を通過した。

 

ドドドドッ!

 

重い足音が響く。

 

……危なっ。

 

あれをまともに受けたら、相当なダメージになるだろう。

 

しかも、相手はサイドン。

 

攻撃力が高く、身体も頑丈。

 

真正面からの殴り合いなんて、できるわけがない。

 

「ひのこ!」

 

「ソウ!」

 

再び火の粉が飛ぶ。

 

サイドンの背中に命中するが、やはり大したダメージにはなっていない。

 

それでも構わない。

 

俺が狙っているのは、別のことだからだ。

 

ポケモンバトルは、ゲームのようなターン制ではない。

 

これが、俺が前世の知識を持っていても油断できない最大の理由である。

 

ゲームでは、自分と相手が技を選び、素早さなどによって行動順が決まる。

 

基本的には、どちらかが行動している間、もう片方は待っている。

 

しかし、現実ではそんなことはない。

 

相手が攻撃している最中にこちらも攻撃できる。

 

技を出した直後に別の技を使うこともできる。

 

相手の攻撃を避けながら反撃することだって可能だ。

 

もちろん、技を連続で使用すれば疲労するし、身体の動きにも限界はある。

 

だが、少なくともゲームのように、必ず相手の行動が終わるまで待つ必要はない。

 

だからこそ、俺は考えた。

 

格上相手に、どう戦うべきか。

 

結論は単純だ。

 

距離を取りながら、相手の防御力を下げ続ける。

 

「ソウブレイズ、にらみつける!」

 

「ソウ!」

 

ソウブレイズがサイドンを鋭く睨みつける。

 

サイドンが一瞬、動きを止めた。

 

「……ふむ」

 

サカキが小さく呟く。

 

「なるほど。そういうことか」

 

……気づかれたか。

 

まあ、そりゃそうだろう。

 

相手はジムリーダーだ。

 

同じ技を繰り返していれば、こちらの狙いくらい簡単に見抜かれる。

 

「サイドン、いわなだれ」

 

「サイドォン!」

 

サイドンが両腕を持ち上げた。

 

すると、フィールドの上空に無数の岩が現れる。

 

……おいおい。

 

それはまずい。

 

いわなだれ。

 

いわタイプの物理技。

 

ソウブレイズにとっては効果抜群だ。

 

しかも、攻撃範囲が広い。

 

「ソウブレイズ、走って!ひのこで牽制!」

 

「ソウ!」

 

ソウブレイズがフィールドを駆ける。

 

その後を追うように、巨大な岩が次々と落下した。

 

ドゴンッ!

 

ドガァン!

 

砕けた岩の破片が周囲へ飛び散る。

 

……うわぁ。

 

これ、本当に模擬戦だよね?

 

新人トレーナー相手に使う技じゃないだろ。

 

「ソウブレイズ、止まらないで!」

 

「ソウ!」

 

ソウブレイズが走りながら炎を放つ。

 

火の粉がサイドンの顔付近に飛んでいった。

 

「サイドン!」

 

サイドンが片腕で顔を庇う。

 

その隙に、ソウブレイズはさらに距離を取った。

 

……よし。

 

ひのこの目的はダメージではない。

 

牽制だ。

 

視界を遮り、相手の動きを一瞬でも止める。

 

その間に距離を取る。

 

そして――。

 

「にらみつける!」

 

「ソウ!」

 

再びソウブレイズの視線がサイドンを捉えた。

 

……うん。

 

これで何回目だろう。

 

少なくとも、かなり防御力は下がっているはずだ。

 

ゲームなら防御ランクの低下には限界がある。

 

だが、現実でどこまで効果が重なるのかは分からない。

 

ただ、サイドンの動きを見ている限り、少しずつ変化が現れているように感じる。

 

……まあ、気のせいかもしれないけど。

 

「なかなか面白い戦い方をするな」

 

サカキが口を開いた。

 

「正面から戦うことを避け、遠距離から牽制しながら相手を弱体化させる。実に合理的だ」

 

「ありがとうございます」

 

「だが、それだけで勝てると思うかね?」

 

……ですよねぇ。

 

「サイドン、接近しろ」

 

「サイドォォン!」

 

サイドンが再び突進してくる。

 

今度は先ほどよりも速い。

 

いや、正確には進路の取り方が違う。

 

ソウブレイズが逃げようとする方向を先読みし、回り込むように接近してきたのだ。

 

……まずい。

 

「ソウブレイズ、かげうち!」

 

「ソウ!」

 

ソウブレイズの足元から黒い影が伸びた。

 

そして、サイドンの影へと繋がる。

 

次の瞬間。

 

バシィッ!

 

影から飛び出したソウブレイズが、サイドンの側面を斬りつけた。

 

「サイドン!?」

 

サイドンが僅かによろめく。

 

……よし!

 

かげうち。

 

ゴーストタイプの物理技。

 

ゲームでは優先度が高く、相手より先に攻撃できる。

 

現実でも、その特徴はある程度再現されている。

 

影を利用した高速移動。

 

相手の隙を突く奇襲。

 

接近されたときの迎撃には非常に便利だ。

 

「ソウブレイズ、そのまま離れて!」

 

「ソウ!」

 

ソウブレイズが素早く後退する。

 

直後、サイドンの腕が振り下ろされた。

 

ブォンッ!

 

……危なっ。

 

もし少しでも遅れていたら、まともに食らっていただろう。

 

「ふむ。かげうちか」

 

サカキが興味深そうに目を細める。

 

「接近された際の迎撃手段として使っているのだな」

 

「まあ、そんな感じです」

 

「しかし、惜しいな」

 

「……何がですか?」

 

「そのソウブレイズ、本来は接近戦を得意とするポケモンなのだろう?」

 

…………。

 

……ああ。

 

やっぱり分かるか。

 

「ええ。そうですね」

 

「それなのに、君は接近戦を避けている」

 

「……相手が相手ですから」

 

「ふっ。確かにな」

 

サカキが笑った。

 

……いや、笑い事じゃないんだけど。

 

ソウブレイズは、物理攻撃に優れたポケモンだ。

 

前世のゲームでも、攻撃の種族値は125。

 

かなり高い部類に入る。

 

一方、特攻は60。

 

つまり、特殊技よりも物理技の方が得意なのである。

 

ひのこは特殊技。

 

かげうちは物理技。

 

本来なら、ソウブレイズの強みを生かすには、かげうちのような物理技を中心に戦うべきだろう。

 

しかし。

 

相手はサイドン。

 

攻撃力が高く、防御力も非常に高い。

 

しかも、こちらより明らかにレベルが上。

 

そんな相手に真正面から接近戦を仕掛ければ、返り討ちに遭う可能性が高い。

 

特に、じめんタイプといわタイプの技は危険だ。

 

まともに受ければ、ソウブレイズが一撃で戦闘不能になることだって考えられる。

 

だからこそ、距離を取らざるを得ない。

 

……まったく。

 

相性が悪いって、こういうことなんだなぁ。

 

「ソウブレイズ、ひのこ!」

 

「ソウ!」

 

赤い火の粉が飛ぶ。

 

「サイドン、耐えろ」

 

「サイドォン!」

 

サイドンは炎を受けながら前進してくる。

 

……うん。

 

やっぱり効いてない。

 

いや、少しは効いているんだろうけど。

 

この程度の攻撃では、サイドンの体力を削り切るまでに時間がかかりすぎる。

 

「ソウブレイズ、にらみつける!」

 

「ソウ!」

 

再び防御力を下げる。

 

これで何度目か分からない。

 

サイドンの防御力は、かなり低下しているはずだ。

 

ただし、それでもサイドンの頑丈さが消えるわけではない。

 

元々の防御力が高すぎるのだ。

 

……さて。

 

どうしたものか。

 

「サイドン、いわなだれ!」

 

「サイドォォン!」

 

再び岩が降り注ぐ。

 

「ソウブレイズ、回避!」

 

「ソウ!」

 

ソウブレイズが岩の隙間を縫うように走る。

 

ドガァン!

 

ドゴンッ!

 

岩が砕け、砂埃が舞う。

 

……まずいなぁ。

 

このままだと、ソウブレイズの体力が先に尽きる。

 

サイドンはほとんど動いていない。

 

こちらが必死に走り回っている間、相手はどっしりと構えている。

 

消耗の差は明らかだ。

 

しかも、ソウブレイズはレベル15。

 

体力も無限ではない。

 

いくら素早く動けても、疲れれば動きは鈍る。

 

そして、1度でも攻撃を受ければ――。

 

……負ける可能性が高い。

 

「……ふぅ」

 

俺は小さく息を吐いた。

 

さて。

 

困った。

 

本当に困った。

 

……でも。

 

「ソウブレイズ」

 

「ソウ?」

 

「まだいける?」

 

「ソウ!」

 

ソウブレイズが力強く頷いた。

 

その姿を見て、俺は少しだけ笑った。

 

……うん。

 

なら、もう少し頑張ってみようか。

 

「……サカキさん」

 

「なんだね?」

 

「やっぱり、ジムリーダーって強いですねぇ」

 

「ふっ。そう言ってもらえると嬉しいな」

 

「正直、ここまで差があるとは思いませんでした」

 

「だが、君も悪くない。少なくとも、無謀な突撃を繰り返す新人よりは遥かに優秀だ」

 

「ありがとうございます」

 

……まあ、褒められても状況は変わらないんだけど。

 

俺はサイドンを観察する。

 

分厚い皮膚。

 

巨大な身体。

 

そして、圧倒的な攻撃力。

 

真正面から戦えば勝てない。

 

遠距離から削ろうとしても、時間がかかりすぎる。

 

……なら。

 

どうする?

 

ゲームなら、ここで交代するという選択肢がある。

 

しかし、俺の手持ちはソウブレイズ1匹だけ。

 

交代はできない。

 

だったら、今ある手札で何とかするしかない。

 

「……ふむ」

 

俺は少し考えた。

 

そして、あることに気づいた。

 

……そういえば。

 

サイドンの防御力は、何度もにらみつけるで下げている。

 

つまり、今なら物理攻撃も多少は通りやすくなっているはずだ。

 

問題は、どうやって接近するか。

 

そして、どうやって反撃を避けるか。

 

……なるほど。

 

なら、試してみる価値はあるかもしれない。

 

「ソウブレイズ」

 

「ソウ」

 

「次で少し仕掛けてみようか」

 

「ソウ!」

 

ソウブレイズが炎の剣を構える。

 

その姿を見て、俺は小さく頷いた。

 

……さて。

 

相手はロケット団のボス。

 

しかも、格上のサイドン。

 

勝てるかどうかは分からない。

 

だけど、せっかくの模擬戦だ。

 

ただ逃げ回って終わるのも、少しもったいない。

 

「……よし」

 

俺はサイドンへ視線を向けた。

 

そして、次の指示を出すために口を開いた。

 




現在の手持ちポケモン

ソウブレイズ♀ Lv.15
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