男女比1:30000の星間文明世界に放り込まれたギャル偽装パイロット ~男バレしたら即“部品”行きなので、旧式ロボで傭兵やってます~   作:サイリウム

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1:あーしは偽造ギャル

 

数千年ほど前、とある科学者がこんなことを思いついてしまった。

 

 

『この世にオスって要らなくね?』

 

 

当時人類は既に太陽系から飛び出しており、銀河中にその生存圏を伸ばしていた。

 

まさにSFのような世界。その分、科学技術も格段に進んでいたようで……。思いつくだけならばまだ良かったものの、その科学者こと狂人は技術力と実行力を兼ね備えた一番厄介なタイプ。瞬く間に全ての『オス』を死滅させるウイルスを完成させ、全宇宙にばら撒いてしまった。

 

これにより生まれたのが、1:30000とかいうふざけた男女比率。

 

なんとか対抗策が間に合ったおかげで種族自体の絶滅まではいかなかったようだが……。当時生きてた男性の殆どが死滅。更にウイルスによって人類は『男が滅多に生まれない』という風に書き換えられてしまったのだ。

 

単なる病気を引き起こす様なものではなく、一度変えられればもうどうにもならない『種族としての特性』の変化。

 

こんなことが起きれば、変革は必至。

 

そう、女性を中心とした社会の成立だ。

 

 

(確かに当初は、よくあるハーレムみたいなものが出来ていたらしいが……。)

 

 

何せ比率が1:30000。

 

当人たちが了承しているとしても、男1人が3万人均等に愛を振りまくなんてまぁ無理な話。ハーレムなどという時代錯誤な関係はどんどんと崩壊。種族の保全の為に男は管理されるようになり、余った女性たちは同じ女性と恋愛し子を成すように。既に進んでいた遺伝子方面の技術をより発展させることで、男から採取した種を複製し数を維持する社会へと変化していったようだ。

 

まぁそんな状況になれば、女性同士の恋愛が主流になるのは時間の問題で……。

 

自然と男の『価値』は『種族の保全』だけになっていく。なにせ科学の発展により複製や長期保存、更に改良が可能になったのだ。定期的に入れ替えたり新しい遺伝子を入れる必要はあるが、“男”の価値がほとんど無くなった事はご理解いただけるだろう。

 

種族としても、社会としても。男が『お荷物』になるのはそうおかしな話ではない。

 

 

(それで、問題なのは……。この『価値の暴落』から、既に数千年の時が経過していること。)

 

 

例の科学者がウイルスを銀河中にまき散らしたのが西暦換算で大体8000年くらい。

 

それで今の時代が、西暦換算で10000年ぐらい。

 

これだけの期間が空けば、自身の知る『過去の価値観』は確実に消滅する。“男”の存在は種族の存続という観点から見れば必要ではあるが、社会の構築という面から見れば不必要。残った唯一の役割である『存続』すら、技術発展と効率化によって奪われつつある。

 

 

まぁ、早い話。

 

 

男にね。

 

人権がね。

 

無いんですよ。

 

 

(2000年代で暮らしてた自身からしたら、地獄でしかない……!)

 

 

何せ今の男と言えば、『工場に持って行けば数十万くらいで買い取ってもらえる部品』だ。

 

しかもその工場では文字通り“部品”として扱われるため、四肢を切り取り怪しげなお薬を注射。効率よく精子だけを生産する機械にされてしまうという。まだ家畜の方が良い暮らしをさせてもらえるレベルなそうな。

 

運が良ければこの時代における貴族的立ち位置の富裕層。そのペットぐらいには成れるらしいが……、空いてる席はほんの一握り。技術の発展と反比例して倫理がお亡くなりになっているこの時代において、男性が人として生きることはガチで不可能。

 

 

(なんでこうなるんでしょうね? 本当に。)

 

 

民間の宇宙飛行士として外宇宙への探査に出たと思えば、謎の宇宙嵐に巻き込まれて未来渡航。

 

事故でこの時代に転移して来た自身からすれば。

 

というか男からすれば、クソ以外の何物でもない。

 

いやね? 確かに昔は貞操逆転世界とか男の夢だし興味はありましたよ? そういう漫画とかアニメとか見たことはありますよ? でもここまで酷いのはノーセンキューなのよ。大切に扱ってください……!

 

 

(死ぬほど帰りたいけど、今の時代でも時間渡航は不可能。しかもこっちに来る原因になった事故は全く再現性がない。そのまま野垂れ死ぬ趣味はないから生き残るために動き始めたけど……。男のまま生きようとすれば“部品”にされる未来しかない。)

 

 

故に自身は、生き残るために性別を偽る必要があった。

 

というかそれ以外道が無かった。

 

一歩間違えれば即座に工場行き、発覚=死のサバイバルの開始ってワケ。多分常人であれば一瞬でゲームオーバーになってもおかしく無かったんだけど……。幸いなことに私には“偽装”するだけの手段があったのだ。

 

 

(姉に叩き込まれたメイクがこんなところで活きるとは……!)

 

 

元々自身は比較的中性的、男性には見えない顔つきをしていた。

 

学生時代の文化祭では勿論、家の中で強権を握っていた姉に女装させられるぐらいには、そういう見た目だった。今では遠き過去、“現代”であればコンプレックスでしかない容姿だったが……。

 

こんな状況であれば活用するしかない。

 

更にこの時代では『男は工場のパーツ』なのが“常識”なため、男を見たことがない女性が大多数。多少疑問を感じたとしても、性別の違いまで行きつかないという状況だった。お陰様で生き延びるための準備を整えられたんだよね。

 

 

(この時代に来た時、墜落した私を最初に見つけた彼女のおかげでもあるけど。……いやほんとに彼女が“変わり者”で助かった。最悪あそこで死んでたからなぁ。)

 

 

とまぁそんなわけで。

 

この時代にやってきた時に着ていた宇宙服から部品を取り出し、簡易の変声機を作成。そこから墜落した宇宙船の廃材を使って、体型を誤魔化せる“装甲”を追加。さらに残った宇宙船を売り払ってこの時代の金を入手。後は“変わり者の彼女”の助けを借りて戸籍を偽装し、最低限の身分を獲得。

 

その後言語の習得や文化や価値観の擦り合わせ。生き残るために必須な常識を学びながら情報を集め……。

 

ようやくこの仕事に行きついた、ってワケ。

 

 

(それが雇われの傭兵、巨大ロボのパイロットだ。)

 

 

この時代風に言うとすれば、『ドレッド乗り』。

 

いやはや、まさか巨大ロボに乗れるとは。特撮やアニメで手に汗握りながら応援してた時が懐かしいよ、ほんとに。

 

 

(……まぁ現実はアニメみたいに甘くないのだけれど。)

 

 

『ドレッド乗り』。巨大ロボットのパイロットと言えば聞こえはいいが、実際は流れの傭兵。乗っているドレッドだって盗品か廃棄品程度。誰かに雇われているだけで、盗賊とそう変わらない存在。何処からどう見ても落伍者で、身分も最底辺って奴。

 

けれど大半は機体に乗っているおかげで顔や体型を晒す必要が少ないし、盗賊崩れに見られているが故に身分を改められることもほとんどない。何せ『悪いことをしていればその場で射殺』すれば良い身分だからね。余計な詮索もされにくいのよ。

 

 

(本音を言えば危険だらけだし、今すぐ転職したいのは確かだが……。)

 

 

どう足掻いても自身は男。

 

発覚したらそのままデッドエンドだ。こんな状況で普通の仕事が出来るとは思わないし、どれだけ上手くやっても性別が違う以上“小さな違和感”を抱かれるもの。そもそも戸籍も偽装だし、バレたら身元どころか体を改められて終わる。

 

最悪ロボのコックピット。そこに籠っているだけで何とかなる今の仕事は私に合っているのだ。

 

 

(まぁ最初は色々苦労したし、何度かバレそうになったこともあったけど……、意外と何とかなった。運よく才能があったおかげでこれまで生き残れたし、通り名が付くレベルまで行けた。確かに注目を浴びるのは好ましくないけど……。)

 

 

仕事が絶えないのは、とても良いこと。

 

何せ自身のような何処にも所属していない野良の『ドレッド乗り』は、信用がマイナススタートだ。自分で売り込みに行っても断られるのが常で、最悪武器を向けて追い返す、もしくは殺してドレッドを奪いに来ることも多い。

 

だが今のようにある程度名が売れた状態であれば、売り込んだ時に攻撃される可能性はぐっと減る。悪名だろうが何だろうが、名が知られるぐらいに生き残っているのは実力の証明に他ならないのだから。

 

確かに、今受けている『商船の護衛』のような実入りの良い仕事は滅多にないが……。

 

 

(ま、今日も生き残るために頑張っていきましょうか! ……っと。)

 

 

そんなことを考えながら飲み物を口にしていると、感じる気配。

 

すぐに自身の周囲を見渡し、“本性”に至る証拠の有無を確認。同時に偽装している体型へと手を当てることで不具合が無いことを確かめる。後は意識を“そちら側”へと整え、下ろしていた髪を結い、声の調整を行いながら変声機の電源を入れる。

 

そしてそのすべてが終わった瞬間、響くノックの音。

 

 

「今いいっすか~?」

 

 

音の方へと振り返ってみれば、ノックと共に割り当てられた自室へと入って来る少女。

 

星々を飛び交うこの商船クルーの1人だ。

 

 

「どもっす“ギャル”さん。」

 

「お、おチビちゃんじゃん。おっすおっす。元気してた?」

 

 

思い描く最強のギャルを意識しながら、喉仏を抑え込み女性の声でそう返す。

 

もちろんバチバチに決めたツインテを揺らし、可愛さもアッピル。

 

うんうん、鏡とかないから確認できないけど、今日もぱーぺきな仕上がり。現代日本に戻って原宿辺りを歩けば、『金髪ギャルって今も居るんだ……!』と思われながら二度見されることだろう。ま、男なんですけど!

 

 

「ていうか。あーし、おチビちゃんに名乗ったっけ? 憶えないんですケド。」

 

「え、いや。『ギャル』さんって『ギャル』……。え、もしかして異名が本名な奴ですか?」

 

「お、そう言えばそうだった。メンゴメンゴ!」

 

 

ちなみに『ギャル』って名は、購入した戸籍の名前だ。

 

当時は一番安くて問題の無い戸籍を適当に買っただけなんだけど……。運がいいというべきか、『ギャル』になれたわけだ。だったらもうギャルとして振舞うべきだし、ギャルに成るべき。まぁ2000年代に流行った文化が10000年代まで真面に残っているわけがないので、意味が色々曲解されてるんだけど……。

 

あ、そのせいで私の“本名”にして異名な『ギャル』は、滅多に聞かない苗字みたいな扱いになってます。聞かな過ぎて本名が異名と勘違いされるレベル?

 

ま。そんな感じ。雰囲気でよろ~!

 

 

「あ! と、というか入室の許可もらう前に入っちまったっす。あ、あの。謝るので殺さないでくれると助かるんすけど……!」

 

「殺さないよ!? 蛮族じゃないですしおすし。でもマジで不思議じゃね? すっごい偶然! 実は本名なんだよねー! ま、そう呼ばれて困る事でもないし! 好きに呼んじゃって!」

 

「ほんとっすか? よかったっす!!! いやこの前傭兵がヤバい奴で、なんか急に激高してクルー1人撃ち殺しやがったんですよね……。」

 

「Oh……。」

 

 

ちなみにその傭兵はどうなっ……。あぁ、なるほど。整備長に生身で宇宙に放り出されたのね。

 

まぁそうなりますよね、うん。

 

なにせ技術が発展して星間渡航が一般的になったこの時代じゃ、『商船』ってのは大事なお仕事だ。無論人間は生身で宇宙を漂うことは出来ないので、移動には宇宙船が必要になるわけだが……。そんな閉じた空間の中で最下層の身分でしかない傭兵が正規クルーに手を出したら“そう”なるよね、っていう。

 

まぁそんなバカな前任者のおかげで私に仕事が回って来た訳なんだけど!

 

 

「にしても、ギャルさんってそんな感じだったんすね! そんな恰好ですし、すっごい古い言葉使ってるからもっととっつきにくい人かとおもってたっす。変っす!」

 

「デジマ!? マジぴよえんなんだけど! もっと話しかけてほしい感じだから、よろよろ~!」

 

 

なおこの時代においてギャルギャルしい言葉遣いは私達の言う“古文”に当たるようで。

 

体型を隠すために時間渡航前から使ってる白くて嵩張る改造宇宙服と合わせると、2000年代の感覚でいう『着物を着て侍っぽい話し方をする奴』に見えるらしい。

 

……まぁうん、変人だね。

 

 

(い、いやね? 一応これでもかなり頑張ってるんですよ?)

 

 

でも数千年レベルで時代が離れたらマジで言葉が変わるわけでして。

 

なんとか単語と文法は収められたんだけど……。

 

大分前に自身が男であることを知っている唯一の女性に確認してもらった際。

 

 

『多分“男”ってのを知らないからなんだけど、なんかニュルニュルして人を溶かしながら喰らう醜い化け物が喋っているように聞こえる。声変えても何かこう、すごく気持ち悪い。』

 

 

と言われてしまったのだ。

 

此方にとって“性別偽装”は死活問題なため、何とか矯正しなければならない。というわけで頑張って女声を出せるようにして、ついでに話し方も“エセギャル語”に改革。ようやく手に入れたのがこの『ギャル』なのだが……。

 

 

「え、変? 普通にあーし的にはアリなんだけど〜。けっこう気に入ってるしさ? ……そんな古い?」

 

「古いっす。」

 

「そ、そっか……。」

 

「あ、そうだ。ギャルさんギャルさん。船長が呼んでたっすよ? 案内するっす。」

 

 

あ~、あの船長。

 

……あの人色々服装が“アレ”だから、大変なんだよなぁ。目のやりどころに困るというか、やりどころが無いというか。この時代で言う所の“フォーマルスーツ”みたいなモノらしいから、指摘するのも難しいというか……。と、とにかく覚悟していこうか。うん。

 

 





○すべての元凶(科学者)

西暦3000年代を代表する狂人、女性。28回もの結婚詐欺にあい色々とおかしくなった結果、『男なんて消して女同士で百合の花を永遠に咲かせ続ければいいのよ!!!』と叫び始めた。無論即座に学会を追放され精神病院に叩き込まれたが、即座に脱出。辺境の惑星でウイルスを完成させ、全世界にばら撒いてしまった。なおこのウイルスは“当時様々な惑星に広がっていた人類”のみならず一部動植物にも影響を与えており、コイツのせいで本当に色々絶滅しかけている。

またある意味この時代を作り上げた創造主なので、一部の星系では彼女を神として崇め復活させようとしている邪教が存在していたり。




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