男女比1:30000の星間文明世界に放り込まれたギャル偽装パイロット ~男バレしたら即“部品”行きなので、旧式ロボで傭兵やってます~   作:サイリウム

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4:バイブス上げていきましょ!

 

というわけで何とか口の中の不快感を消し飛ばした後。クルーの少女に連れられ、やって来たのはこの船の格納庫。言わば整備長である彼女の城とも呼べる場所に来たのだが……。

 

明らかに機嫌の悪そうな女性が、1人。

 

今の時代では珍しくない2m越えの巨体で、赤髪を三つ編みで後ろに纏めた存在。そんな整備長が此方の姿を視認した瞬間……。

 

 

「だらァッ!!!」

 

 

スパナのような工具を投げつけて来る。

 

この巨体なのだ。以前の時代の限界を軽く超え、200kmぐらい出てそうなレベルで飛来してくるが……。こっちだってパイロットとして場数を踏んでいる上に、投げるまでの動作まで見えている。特に驚くこともなく片手で受け止め、腕で円を描くように衝撃を緩和。そのままかる~く彼女に投げ渡してみる。

 

 

「え、なになになに? 傭兵ぶち殺しキャンペーンでも始めちゃった?」

 

「おいギャルっ! テメーなんてもん押し付けてんだ!」

 

「おわ。マジ切れじゃん、やば。」

 

 

頼むから何かの間違いであってくれよ、なんて考えながら“あーし”として話しかければ、返って来たのは結構な罵声。何かやらかしてしまったようだ。……放り出されないよね?

 

こ、この人結構権力持ってるというか、あの船長ちゃんに意見出来る年長者的ポジション。というかそもそもこっちの命綱とも呼べる“ドレッド”を預ける人だから、仲良くしておかないと不味いんだけど! 機体に何か仕込まれたらマジで終わる!

 

 

「ど、どったの整備長? あーしなんかした? ウチの愛機をお任せしただけじゃね?」

 

「なんだこのオンボロは! 部品の調達だけでウチを傾けるつもりか、アァン!?!?!?」

 

「お~、ヤラカシでしたか。メンゴメンゴ!」

 

 

謝罪の言葉を送るが、その怒りは収まりそうにない。

 

私からすれば滅茶苦茶軽い謝り方なんだけど、この時代の人間からすれば『拙者の不覚にござる。平にご容赦くだされ』のような意味合いを持つ謝罪。今演じてる“ギャル”に相応しく、最大限の謝罪をさせてもらったのだが……。駄目だったようだ。

 

 

(まぁ“そういう意味”では非はこっちにあるしなぁ。)

 

 

今もなお罵詈雑言を投げかけて来る整備長にギャルらしく平謝りしながら、私の愛機。『寸胴型の巨大ロボット』に軽く視線を向ける。

 

円柱状の身体に、半円の頭。多少人間らしい腕と足はついているが、本来その身を覆う装甲板の多くが剥がれ落ちており、摩耗の激しい関節部に至っては中の配線が見えてしまっている。一応まだ動くとは思うのだが……。整備長のいう“オンボロ”という評価は間違っていないだろう。

 

なにせ自身の愛機。搭乗ドレッドは、『骨董品』に分類される。

 

 

(といっても、価値は欠片も無いんだけど。)

 

 

これを入手したのは、自身が乗ってきた21世紀の宇宙船を売り払った所。

 

闇市らしき場所で眠っていたドレッドだったのをおまけとして実質押し付けられたのが始まりだ。

 

いや実はね? 私が乗って来た宇宙船。この時代の人間からすれば滅茶苦茶貴重な歴史的遺産なわけですよ。なにせ100世紀の人間から見れば、21世紀の品の考古学的価値とかヤバすぎるわけですし。けどあの店主全く価値を理解してなくてね? 二束三文で買い取られそうになったんですよ。

 

んでそれに文句を言って限界ギリギリまで値段を引き上げ、更に文句を言うことでオマケとしてついて来たのが……。この機体。

 

早い話、廃品を押し付けられた形。

 

それを素人知識で修理し、これまで騙し騙しやって来たのだが……。

 

 

(ハス=エル機械重工製 第8世代ドレッド 宙間汎用機『マルテン』。)

 

 

愛称“マルちゃん”。……確かHSL-G8UV-10Pとかだっけ?

 

ちなみに現在の最新ドレッドは第12世代。この時代での最新がジェットステルス機とすれば、感覚的にはレシプロ機ぐらいの差がある。いやもっと離れてるか? まぁとにかく古くてヤバいのよ。

 

これまでは自力で色々誤魔化しながらやって来て、何とか動くレベルを維持してきた。けどまぁそろそろ限界だから、本職に見て貰って可能ならば修理して欲しかったんだけど……。

 

あ、うん。整備長ぶち切れてるから無理そうですね。はい。

 

 

「第8世代とか古すぎて正規の部品売ってねぇんだぞお前ッ! もうオーダーメイドでしか手に入らないのを寄越すなボケ! 一式そろえるのにいくらかかると思ってる!!!」

 

「あ、あーしとしては、動けばおけ丸水産だゾ?」

 

「アタシに適当な仕事しろって言いたいのか!? その頭蓋丸ごとぶち壊すぞテメェ!!!」

 

 

さっき手渡した工具を全力で振り回しながら、キレ散らかす彼女。

 

回避は問題ないが、ボディの体型隠す宇宙服とか、首元の変声機に直撃して故障すると社会的に死ぬのでご勘弁願います。マジで。ゆるして、ゆるして……!

 

 

(……にしても、どうしようか。)

 

 

名前が売れるほど稼がせては貰っているが、ただでさえ私は“本性の隠蔽”関連で結構な金が飛ぶ。

 

仕事はあるとは言え、そもそもの社会的信用が無いのがドレッド乗りだ。入って来る額に限りは有るし、偽装以外にも金は掛かる。一応貯蓄はしてあるのだが……。それでもドレッドという巨大ロボを買うには、金が足りない。

 

新品どころか中古品でも難しいレベルだ。

 

となると闇市で流れてくるような盗品や廃棄品がねらい目なのだが……、闇市となると信用が“一切無い”。ドレッド自体の安全性もそうだし、私がドレッドを買ったという情報もそうだ。ソレに乗って戦うわけだから途中でぶっ壊れれば死ぬし、勝手に情報を売られれば色々困る。足が付く、ってやつだね。

 

そもそもこっちには性別という特大の地雷が控えているのだ。可能な限り厄介ごとは減らすに限る。

 

 

(だからこそ“ちゃんと整備してくれる”彼女は本当にありがたいんだけど……。お、怒らせちゃった!)

 

 

金だけの関係である私達傭兵の機体など、適当に整備しても何の問題もない。

 

なにせ私のような存在など、その辺の浮浪者や盗賊と何も変わらないのだから。

 

商船からみた傭兵の扱いなんて、肉盾程度。私みたいに多少名が売れれば少し扱いは変わって来るが、立ち位置は変わらない。この船のように独自の戦力を持たない船であれば、唯一の戦力として多少は世話してもらえるだろうけど……、それでも使い捨ての駒である事には変わりない訳だね。

 

 

(けどこの“傭兵契約”を結ぶ時に、この人の人柄は大体見て取れた。)

 

 

かなりの職人気質で、自分の命綱である『ドレッド』を預けられる人。もちろんこっちが騙されてる可能性もあるけど……。

 

“適当な修理”でガチ切れしてるあたり、かなり信用できる相手であることは解る。自分の仕事に誇りを持ってるタイプ。価値観がちょっと違うせいで毎日ジェネレーションギャップだが、比較的倫理観も保ってる。

 

マジでなが~くお付き合いしたいよね、ほんと。

 

……でも工具で殴り殺されるのは御免被る。と、とりあえず現状維持の方向で何とか説得!

 

 

「あ、あーしってほら! 流れの傭兵じゃん! 整備長っちにはマジごめぽよなんだけど、適当でいいわけよ! ほ、ほら死んじゃえば“替え”用意すればいいだけでしょ? だから最低限動けば何とかなるってこと! ……あ! お仕事はマジカンペキにこなすからね! 船に傷一つ付けませーん!」

 

「はッ! 機体見たらソイツの腕ぐらい解るんだ。そこは心配してねぇよクソガキ! だがこっちにも面子ってもんがあるんだよ! あと半分くらい何言ってるか解らんから普通に喋れ。」

 

「無☆理」

 

 

私の返答に怒りの表情を浮かべ、彼女が何かしらの言葉を投げかけようとした瞬間。

 

感じる悪意と、その直後に鳴り響くアラート。

 

そしてその種類は、所属不明機の接近。

 

敵の、お出ましだ。

 

 

「ちッ! こんの忙しい時にッ! おいギャルっ! 糞みたいな仕様だが、“前よりは動けるように”してある! 誰かは知らんがどうせ宙賊だ! 給料分くらいは仕事しろッ!」

 

「デジマ!? 超感謝! それならあーしにまっかせっなさーい! 全部丸ごと取っちめちゃる!」

 

 

そう言いながら、また彼女が剛速球で投げつけて来るヘルメットを受け取る。

 

正直に言えば命の危険がある戦闘などまっぴらごめんだが、傭兵である限り戦闘はつきもの。船長ちゃんの期待に応えるためにも、整備長の仕事にケチをつけないためにも。完璧に熟して見せるとしよう。

 

それにこの船の環境はこれ以上ないレベルの“当たり”だ。そんな上客を失うのは絶対に避けたい。リピートしてもらうためにも、信用は稼げるときに稼ぐべき。

 

さぁって。

 

 

「バイブス上げて、いきましょ!」

 

 






○ハス=エル機械重工製 第8世代ドレッド 宙間汎用機『マルテン』

ドレッドと呼ばれる巨大ロボット、その8世代目にあたる機体。ギャルからの愛称は“マルちゃん”。胴体と頭部が半一体化しており、寸胴の身体に手と足が付いているような機体。開発段階から『出来るだけ安価に数を揃える』ことを目的としており、装甲や関節モジュールに少々の問題を抱えながらロールアウトされた(紙装甲、すぐ手足動かなくなる)。
ただ非常に安価であったため数を揃えやすく、一時期は作戦領域の3割近くをこの機体で埋め尽くし、敵を圧殺するという頭のおかしい戦術が取られていた。ドレッドの歴史上記録が残る限りもっとも製造された機体であり、『量産機の王様』の名をほしいままにしている。

なお当時の現場からの異名は『ただの棺桶』。

ギャルが入手したこの機体は製造から既に500年近く経過しているモノ。入手した時から前任者による改装が多数行われており、薄い装甲を補う改造跡や問題だった関節モジュールを取り換えた跡が残っていた。ギャルはその補修を行いながら、騙し騙しやって来た感じ。実はもう結構限界だったので、整備長に見て貰わなかった場合、近いうちに爆散していた。



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