織斑一夏が世界を壊そうとする話   作:ソナ刹那

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ご無沙汰です。
ご無沙汰すぎて一夏が絶賛迷走中です。



26 生徒会長を

2学期最初の実戦訓練は一・二組合同。てなわけで、中華娘と遊んでやってる。

 

「おいおいどうしたぁ!そんなノロマじゃあ追いつけねぇぞ!!」

「あんたの速度にまともに敵うわけないでしょ!?」

「ワーキャー吠えやがって…いいぜ?摩訶不思議トンデモパワーは全て封印だ。これでなら、もうちったぁ楽しめんだろ?」

 

極力、エイヴィヒカイトの出力を抑え「ただのIS」に近づける。代わりに久しぶりのご登場となる《雪片弐型》を取り出す。単一仕様能力の時もあるし、剣も使っておかねぇとな。

 

「おらぁぁぁぁあああ!!」

「それでそんなに動けるとか反則じゃない!」

「反則じゃねぇ!チートだぁぁぁぁ!!」

 

当然ながら完封勝利を収めた。

 

 

 

 

 

というかあれだ。午前と午後の二回、つまり全日実習とか正直だるい。いや勝てるから別にいいけど、織斑一夏ハーレムズこと代表候補生連中が、目をギラギラさせてかかってくるせいで、さすがに疲れる。気分的に。

しかもこんな俺とやりあってるせいで、動きの質が上がりつつある。そういや臨海学校の時も、蛇が送ってきたパチモンIS相手にしぶとく耐えてたな。着実に力がついてるんだろう。

なんか微妙なもんだ。要はこいつら、ただの鍛錬で人間離れしようってんだ。こいつらがそれでいいってんなら別にいいんだが、ただの人間でいろって言った身からしてみれば、割と複雑な心境である。

 

 

 

 

 

「…昼からまたやるって怠いなぁおい。昼飯食って眠いっての」

 

ぶっちゃけサボりたい。

 

「………ここって今、俺専用のロッカールームになってたと思ってたんだが?」

 

音もなく中に入ってきたやつにそう問いかける。

 

「あらぁ?バレちゃった♪」

「バレちゃった、じゃねぇよ。まずは出てけ」

 

振り向くとそこには青い髪の少女が。……青い?

 

「誰だあんた?どっかで見たような気もするけどよ…」

「そう?残念ねぇ…割と有名人なんだけどなぁ〜」

 

リボンの色からして二年生のようだが、俺には上級生との接点なんてねぇ。けど見知ってる覚えがある…。マジで誰だ?

 

「そりゃあすまねぇな。あんまり他人に興味ないんで」

「そう?私はあなたに興味があるんだけど、な!」

 

持っていた扇子を俺の喉元に向けて繰り出す。

静かで速く、無駄のない洗練された動き。なかなかの実力者のようだ。完全に俺を殺りに来てた。

 

「…おっかねぇなぁおい。そんな軽いノリで殺されちゃ、俺もやるせないんだけど?」

「簡単に死にはしないくせに、よく言うわね」

 

そりゃあな。そんなんじゃ死にたくても死ねねぇよ。

 

「…んで?俺を殺りに来たってことはよぉ、俺に殺られる覚悟は出来てるってことだよなぁ、あ?」

 

さすがに殺されかけて、それをスルーするほどお人好しになったつもりはねぇ。

俺の殺気に当てられながらも、変わらない態度で女は言葉を返した。

 

「いやねぇ〜、本気のはずないじゃない〜。そもそも、本気でやったってあなた死なないでしょ?」

「例えそうでもイラってくるもんはくるんだよ」

「そこで否定しないあたり、嫌な性格してるわね…」

「承知の上だろうが」

 

こいつはきっとイかれてる。

俺が常人じゃないって分かった上でこんな風におどけてる。並の神経じゃない。

 

「そんでよ、用はないのか?チョイと殺そう、ってまさかそんだけの話か?」

「さすがにそれは人としてどうなのかしら?」

 

人として疑ってるからそう聞いてるんだよ。人外の俺が言うのもなんだけど。

 

「…あなたは何者なの?」

 

想像通りのシンプルな問い。

 

「あなたの今までの行い、どう考えたってただの人間の出来ることじゃない。仮にISによる効果だとしても、それにしては度が過ぎている。…ISにはまだ未知なことが多い。それでも、あなたのその力がそれによるものではないくらい分かる」

「…へぇ」

 

なかなかにいい推理をする。それなりに脳味噌の出来はいいらしい。

 

「それに、純粋な身体能力で他の代表候補生を圧倒していた。あれは人間の動きじゃない。人間の枠組みを超えた、超常現象のような出鱈目さ。…まるで、フィクションの中に出てくる異能力者みたいに」

「……それで?」

「え…?」

「それを聞いた上でどうすんだ?」

「どうするって、それは…っ!」

 

女の胸倉を掴んでロッカーに押し付ける。軽くロッカーがへこむほどの強さで。

 

「それを聞いて、お前になにが出来る?」

「ーーーっ!?」

 

初めてこいつの身体が震えた。それは恐怖一色の震え。眼前に死を迎え、身じろぎ一つ出来ないで、隣り合わせの終わりの瞬間に絶望を感じている。

 

「てめぇが優秀な人間ってことはよ〜く分かるわ。けどな、お前がただの人間であるうちは、俺に勝てることはない。俺を殺したきゃ、せめて素手でISを粉微塵にするくらい出来るようになれ」

 

掴んだ手を離し、その肢体は崩れ落ちる。目は虚ろ、精神が一瞬で脆く散った。

 

「…もともと教えることなんざなにもねぇしな。こっちの土俵には上がらない方が、後悔しなくていいと思うぜ」

 

小さくなったそいつを置いて、俺は午後の実習に向かった。…ハァ、怠い。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

翌日、全校集会が行われた。内容は学園祭について。

というか呑気だよないっつも。あんだけ色々あったってのに、そういうところはブレねぇな。少しは危機感持てよ。

 

「それでは、生徒会長からお話しいただきます」

 

ずっとこっちに集まってた視線が、一瞬で壇上に集まる。

 

「……てめぇかよ」

 

そこに立ってたのは昨日現れた謎の女。見たことがあるのは道理で。

 

「ご存知の通り、私が生徒会長の更識楯無よ。私から伝えることは、今回の学園祭に置いて、新たに特別ルールを追加するということです」

 

そう言ってこっちに視線を送り、ウインクを一つ。

…なんか嫌な予感がするんだが。

 

「例年は各部活の出し物に、生徒たちが良かったと思う企画に投票し、その投票結果に見合った部活動費を追加で出していました。…しかし今年は、投票結果1位の部活動に織斑一夏を強制入部させる権利を与えます!」

「うおおおおおおぉぉぉぉぉぉっ!!!」

 

…おい。あのメスぁ、やりやがったな。堂々と人権無視じゃねぇかよ。というかどんだけ盛り上がってるんだよ。飢えも末期かよ。

こっちの視線に気づいたせーとかいちょーに思いっきり睨みを効かせる。

 

「えへっ♪」

 

あいつマジでいつか絞める。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

『織斑一夏のホストクラブ』『織斑一夏のSMクラブ』『織斑一夏の調教大会』………。

 

「却下」

「えぇぇぇぇぇぇ!!??」

 

えぇぇぇじゃねぇよアホか。

 

「お前ら揃いも揃って頭パーティマンか?イカれてるにも程度ってもんがあるだろ。てか、このクラスの趣向が偏ってて若干悪寒を感じるんだが」

 

されてぇってならしてやるけど、それ口外出来るレベルに収まらんからな?R18でも刺激強いぞ?俺はやるっていったらとことんやる根っこは真面目…って誰が真面目だぁあ?

 

「ノリツッコミで勝手にキレるって理不尽の極みだと思うよ?」

「黙ってろフランス。てかお前同じクラスだったなそういや」

「…ほら、理不尽」

 

なんかショボーンとしているが、あいつは打たれ強いから大丈夫だろ。

 

「お前ら年頃の女が自分らのえげつない性癖暴露して、狂ったようにワーキャーしてるんじゃねぇよ。健全な案出せ、健全な奴をよ」

 

それを言うのはおそらく今更なんだろうがよ。

 

「なぁ山田ちゃん。センコウ的にもそうだろ?」

「そ、そこで私に振ります!?」

 

だってアンタ先生じゃん。うちの駄姉は「面倒くさい」って言ってどこか行っちまったし。あいつマジで教育者向いてねぇよ本当。

 

「…ホ、ホストクラブくらいだったら……」

「アンタもかよ…」

 

だめだ。どいつもこいつも脳機能がエラーしてる。ファントムだよ、キチガイファントム。

 

「メイド喫茶だ」

 

そう静かに発したのはロリうさぎ。

 

「飲食店・休憩所、そう言った店での需要は勿論、代表候補生たちのメイド姿とあれば、自然と客の入りもよくなるだろう」

 

まともだ。

 

「そして何より…」

「何より…なに?」

「嫁の執事姿だ!私゛は゛っ゛!嫁゛の゛執゛事゛姿゛がっ゛!見゛た゛い゛っ゛!」

「やっぱまともじゃねぇ!ってかお前どこの藤原竜也だよ!」

 

…もういいや。もういいやそれで。

というわけで、俺たちは「メイド&執事喫茶」なったとさ。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

決まった内容を駄姉に伝えると、ロリうさぎが提案したって聞いて笑い転げてた。まぁ確かに。あんなキャラクターだったのが、そう言いだすとは予想外だよな。

帰り際、あいつが「一夏の執事一夏の執事一夏の執事一夏の執事一夏の執事一夏の執事一夏の…」と呟いていたのは、聞かなかったことにしておこう。

 

「…なんのようだ?」

 

職員室から出た先にいたのは、今回の愉快犯。

 

「やぁねぇ〜♪そんな顔しないでよ〜」

「てめぇからされたこと踏まえやぁ、こんな顔するのも無理ねぇだろ。…で、なんのようだ?」

「あら?用がないとおしゃべりしていけない?」

「少なくとも、好き好んで喋ろうとは思わねぇな」

「む〜織斑くんのイケズ〜」

 

…本当こいつシバいてやろうか。

 

「一つ、言っておきたいことがあったの」

「…なんだよ」

「この学園の生徒会長が意味するところって、分かる?」

 

人前で偉ぶることじゃねぇのか?

 

「生徒会長、即ち全生徒の長である者は常に、最強であれ」

 

打って変わって真剣な目を俺に向ける。

 

「それが生徒会長。…でもね、問題があるの」

「問題…?」

「そう、問題」

 

ビシッと俺を指差す。

 

「やっぱ俺か」

「その通り、貴方の存在よ。恥ずかしい話だけど、どう頑張ったって貴方に勝てるとは思えない。つまりそれは、私が生徒会長であることに満たされていないと認めること」

 

面倒な生き方してんなこいつ。

 

「…なんとな〜く言いたいことは分かった。んでもって拒否する」

「やっぱり、生徒会長にはならない?」

 

学園最強=生徒会長。その方程式が成り立つと言うのなら、俺が生徒会長ということ。

 

「嫌だよんなもん。面倒くさい。だいたい、俺が先頭立って引っ張っていくタイプの人間に見えるかよ?」

「見えないわね」

「だろ?そんなことしたら、学園崩壊もんだろ」

 

うちの連中はうおぉぉぉおおお!!!って言いながらついてきそうだけどな。馬鹿か。

 

「…てかよ」

「ん?なにかしら?」

「最強である必要があんのか?」

「………」

 

黙って目を伏せる。

 

「代々生徒会長が最強だったから。もしそんな程度の理由で、今お前がそれに拘ってんならやめとけ。そういう奴は大抵いずれ自分を見失う」

 

古き良き伝統は受け継いでいこう。けどその良し悪しが分からないんじゃ話にならない。歴史に縛られるようじゃ、それはただの呪いだ。

 

「でも私が最強じゃないと…」

「っ…ああもう!お前さっきから最強最強五月蝿ぇんだよ!だいたいなぁ、喧嘩がちっと強いだけで、人を引っ張ってけると思うなよ?そういう独裁政治や恐怖政治と同ジャンルのもんは、最終的に失敗するって歴史が証明してんだろうが」

「織斑くん…」

「てめぇが女共から支持されてるとすりゃあ、そいつはただ強いからってだけじゃなくて、なんか他にも理由があるんだろ。もっと他人を信じてみろって」

「………」

 

って、どの口が言うんやら。

 

「んじゃ、もうかったるいから話は終わりな」

「…ありがと、織斑くん」

「感謝されることはなにもしてねぇつうか、苗字で呼ぶのやめろ」

「じゃあ一夏くん。私も楯無でいいから」

「嫌だわ、トラブルメーカー」

 

絶対こいつ碌でもねぇし。

 

「あ、そうだ一夏くん!」

「…んだよ?」

 

なーんかイヤーな笑み。

 

「1つだけ、お願いがあるんだけどな〜♪」

 

ほら、イヤーな感じ。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「…あ、ラウラ」

「シャルロット…これはいったいどういうことだ?」

「さぁ…?」

 

ラウラがやってきたところにいたのは、シャルロットとセシリアの2人。

 

「あいつは確か…生徒会長だったか?」

「あいつって…先輩相手にあいつって言っちゃダメでしょ?…どういうわけか2人で戦うらしいんだよね」

「経緯は分かりませんけどね…」

 

3人の目の前にはISを纏った一夏と楯無が相対していた。

 

 

 

 

 

「なぁ、本当にやんのか?」

「えぇ、最初から勝てるとは思ってないわよ?けど、やっぱり実際に戦って分かることってあるでしょ?」

「どうかねぇ、戦わなきゃ良かったって後悔すんかもしれねぇぞ」

 

生徒会長のISは、アーマーが全然ない。その代わり液体の膜みたいなのが全身を覆っている。

 

「ハンデはどうするよ?」

「そうね〜…じゃあ超能力使うの無しでお願いね♪」

「素直だなおい」

 

それくらい清々しいと逆に尊敬するわ。こいつのプライドは、無駄にお高くとまって邪魔な代物とは違って、自分をしっかり把握している。こういう奴の方が厄介だったりする。

 

「オーケーオーケー。んじゃこの剣1本で相手してやる」

「ありがと♪」

 

槍を構えて臨戦態勢になる。

 

3…2…1…Battle Start.

 

ブザーが鳴ると同時に後ろに飛ぶ生徒会長。そして槍に内蔵されたガトリングガンで射撃してくる。

 

「ちっ、洒落臭ぇな」

「一夏くん相手に接近戦は無謀でしょ?」

「とは言うけど、お前のISも接近戦仕様だろうに」

「あら♪バレちゃった」

 

なんでこいつこんなに余裕なんだよイカれてるのかよ脳内までトラブルメークされてるのかよ。

 

「というかそもそもだ。そんな牽制が通じると思ってんなら心外だな、なぁっ?」

 

瞬間加速を細かくして、カクカクシカジカ動いて背後まで回る。

 

「うっそ!?」

「背後からバッサリイかせてもらう…ぜ!」

 

力の限り剣を振りかざして地面ごと叩き斬った。

だが、違和感。

 

「…言うなれば水分身か?器用だなそれ」

「すーぐバレちゃうのね、面白くない」

 

なにムスッとしてるんだよ。可愛くねぇ。

詳しい仕様は分からんが、というか分かっても説明は面倒くさいからしねぇけど。原作読め原作。

要はあのISから出てくる特殊な水で分身を作ってるわけだ。

 

「…仕方ないわね。このままだとキリがないし、攻めないとね〜」

「………」

 

そう言いながら槍を構えて突撃してきた。

 

「…ふーん、予想以上にやるんだな」

「お褒めの言葉ありがとう♪言ったでしょ?生徒会長は一応学園最強だって」

「なんでちょっと自信無くしてんだよ」

 

けど、あながち学園最強の名前は伊達じゃねぇようだ。

駄姉に次ぐ人間離れしかけてる動きだ。国家代表だったなそういや。ハーレムズより数枚上手だ。

 

「けどよ、その人間の延長だけで仕留められると?」

「くっ…そんなに余裕だとお姉さん傷つくなぁ…!」

「勝手に自傷行為してるのはてめぇだろ。そこそこにしとかねぇとリストカットぐらいじゃすまねぇぞ?」

 

受け流してた槍を、思いっきり剣を払って逆に弾き飛ばす。

 

「なっ…!」

「弱いなぁおい。なんだかんだ言ってか弱い乙女アピールかあん?そういうの面に合ってねぇから」

「そう、いうのじゃないわよ…」

 

今の一撃で反対側のアリーナシールドまで吹き飛び叩きつけられ、息も荒く一瞬でボロボロになってる。ざまぁねぇな。

 

「…ねぇ?」

「…あん?」

「なんかさ…少し()()()()?」

「なにを急に…ん?」

 

そういや確かに暑いな。ただ8月の暑さよりは7月初めの暑さっぽい。要はジメッとしてる。

周りに目を向けて見れば、どうやら霧が立ち込めている。

 

「…『清き熱情(クリア・パッション)』!」

 

指パッチンと同時に俺を巻き込んで一帯が爆発した。

 

 

 

 

 

 

「一夏!」

「いったい何が起きましたの!?」

「分からない。けど、あの生徒会長の攻撃みたいだね…」

 

3人の目の前で突然一夏の周りが爆発した。

その威力は絶大で、3人のもとまで衝撃波となって威力を実感させる。

 

「凄い…!」

「これが直撃したら常人ではただじゃ済まんぞ…」

「…常人では、ですわね」

 

 

 

 

 

「やったかしら……っ!?」

 

楯無の眼前に佇むのは、先程と何も変わらない様子の一夏。

 

「いやぁ〜俺は痛くなくてもなぁ、シールドエネルギーは削られちまうとか、厄介だよなぁ〜」

「そんな…!」

 

唖然とした楯無に今気づいたように目を向ける。

 

「ん?どうした?」

「…直視したくない現実に遭遇しちゃったみたい」

「そうか。だから言ったろ?後悔するかもしれねぇって。ISには確かにダメージを与えてる。けど俺自身には然程気にならん程度の一発だ」

「全く…効かないとは思ってたけど、まさかここまでとはね」

 

その目には明らかに失望の色が描かれている。

 

「さて、そろそろ終幕と行こうや。一方的に片すってのも嫌いじゃねぇがよ、いかんせんそういうのは向き不向きがある。今のお前には駄目押しになるかもしれないけど?一撃必殺、変に着飾らずスパッと決めようぜ」

「…えぇ、どうぞ。死なない程度にね?」

「そりゃお前、自身のタフさに願掛けでもしとけ」

 

会長の目の前に立ち、拳を作る。

 

「俗に言う「本気(マジ)殴り」ってやつだ。ありがたく喰らっとけ。んでもって逝け」

 

後ろに引いた腕を思い切り叩き込む。

瞬間、大気は振動し目の前で大砲でも撃ったのかと思うほどの轟音。

衝撃波を伴い地へと流星の如く落ちていく水色。落下によって直径5メートルは優に超えるだろうクレーターを作り出す。

その凄まじさは周りにいた生徒たちにも、目に、耳に、肌に、驚異を体現して襲う。

結果は語らずとも。それは加減か、それとも学園最強の名の意地か。骨を十数本、臓器の負傷による多量の出血、その程度で済んだ。

 

「あ〜…思ったより逝っちまったか?」

 

悪魔にしては凶悪で、天使にしては慈悲がなく、人の衣を被った魔。

 

「まぁ自己責任ってことで。お前が俺をどう思ってたかは知らねぇよ?けどよぉ、いきなり殺されかけるわ、変なアイデアに巻き込まれるわ、今もこうしてどっかナメられてるわ。そんな奴を殺さないって保証をした覚えはねぇんだよなぁこれが」

 

要するに()()()()()()()()()()()()()()()()と。ひどく理不尽で気まぐれ。

 

「新しい始まりに祝福を、更識楯無。お大事にな」

 

彼が立ち去るその後ろでは、楯無が慌てた教師たちによって運ばれていた。




受験勉強に戻ります。
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