天使の悪魔とDEATHNOTE 作:天使の悪魔が男って…壊れちゃうよ
気づいたら天使の悪魔に成っていた。
それを自覚したのは少し前のことだ、暇だったし木の下で寝ていたら林檎が頭に落ちてきた。思い切り顔に直撃したものだから「ぶぇっ」と情けない声が出た直後、自分が〈天使の悪魔〉だと自覚した。
前世の僕は普通の社会人で…まあややオタク気質だったかも。だけど本当に平凡なだけの人間だった。それがまさか、いつの間にか死んで生まれ変わったら天使の悪魔だなんて。
ただまあ、こんなこともあるんだなあと思った。
記憶を取り戻す時もこんなあっさり?とは思ったけれど。生まれ変わったことによって精神構造も変わったのかもしれない、多分。
なっちゃったものは仕方ないんだし、今更どうこうできる訳でもなし。僕はこれからも〈天使の悪魔〉として生きていくだけだ。
しかし一点、問題があった。
「ここ〈地獄〉じゃないんだよね」
ここは悪魔たちが居る〈地獄〉では無かった。
そして〈人間〉たちのいる世界でもない。
ここはそう、殺風景で灰色の世界____〈死神界〉と言われる場所に僕は居た。
何故ここが〈死神界〉だと知ってるかって?
それは記憶を取り戻す前に一度、なんかギラギラしたやつに連行されたことがあるからだ。ここで一番偉いらしい死神大王の前に。
どうやら僕は特異らしかった。
それもそのはず。およそ死神とは思えぬ容姿、天使のようなその姿。
けれど持って生まれた力は死神らしいもので、居た場所も死神界ときたものだから死神大王は僕の扱いに頭を悩ませた。
大王がうんうん悩んでいると、さっきのギラギラした奴(ジャスティンと言うらしい)が何かを耳打ちした。それを聞いた大王は少し迷う素振りを見せたけれど、結局は僕を〈死神もどき〉として扱う事にした様だった。
そしてその際、幾つかのルールを告げられた。
・お前を死神として死神界に置いておくこと、そして死神らしく人間の寿命を奪うこと。
・特例としてノートではなく自身の力で寿命を奪うことを許可すること。ただし、人間を救う(寿命を延ばす)目的で寿命を奪うと即処刑になること。
・死神界のルールを守ること(これは多すぎて大王も把握しきれてないため、主要なルールをジャスティンが教えてくれるらしい)
さらに、ノートの代わりにノートの皮で作った〈手袋〉もくれた。
これがあれば寿命を奪いに人間界に行っても、ほかの死神と同様に人間から僕の姿は見えなくなるらしい。手袋を外している時や、一度手袋に触れられると人間にも姿が見えるようになるため気をつけろとの事だ。
つまり僕は〈天使の悪魔〉の力で〈死神もどき〉らしく人間の寿命を奪い、死神界の秩序を乱さなければ置いてもらえることになったのだった。
他に行く宛てもないし、僕はそのルールに従うことにした。
それからというもの、だらだらと寝て起きて退屈に過ごし、たまに人間界に降りて寿命を奪う日々。最初は怠惰の極みって感じでゴロゴロするのも良かったんだけど……。正直、今はもう飽き飽きだ。死神界は娯楽が無さすぎて、退屈すぎた。
そんな日々を過ごしていたところで記憶を取り戻し、今に至るって訳。
_______そうだ、人間界に行こう。
ここが退屈すぎるなら、寿命を奪いに行く以外でも人間界に行けばいいんだ。絶対そっちの方が楽しい。干渉しすぎは良くないかもしれないが、僕の感性じゃここは耐えられそうにない。
記憶を取り戻せたのはちょうど良かったかもしれない。ある程度の一般常識は分かるので、見えなくとも変な行動は起こさずに済む。さらに人間界にはアイスクリームがある。
そこからは早かった。これ幸いとばかりに革手袋を身につけ、僕は〈穴〉に飛び込んだ。
「あ」
落ちてる最中に気付いたんだけどさ。
ここってもしかして DEATH NOTEだったりする?
________
月はベッドの端に腰掛け、目の前の死神を眺めていた。
初めて見たときはさすがに驚いた。
人間とはかけ離れた体躯に黄色く光る目。
そして骨ばった顔に裂けたような口。
控えめに言って、化け物が突然現れたのだから正直死を覚悟したものだ。
「……少しイメージと違ったな」
「何がだ?」
「死神だよ。もっとこう、黒いローブを着て大鎌を持って……っていうのを思い浮かべるだろ?」
「ククッ。そりゃあ人間の勝手な想像だろ。まあ鎌を持ってる奴もいるが」
「へえ…なら、そういう死神と出会ったことのある奴が後世に語り継いだのかもね」
「かもな」
どうやら死神というのは、月が思っていたよりもずっと俗っぽい存在らしい。少なくとも目の前のリュークからは、神秘性など微塵も感じられなかった。
「なあリューク。死神がいるなら、天使もいるのか?」
「さあな。天使かどうかは知らねえが、死神界に羽の生えた奴ならいるぜ。見た目は天使みたいなもんだ」
「死神にも色々いるんだな」
「そいつは俺たちとはちょっと違うらしい。死神もどきとして扱われてるんだとよ」
「死神もどき?」
「そういう呼び方をされてるだけだ。俺も詳しくは知らねえけどな」
「死神とはまた別の存在、か」
月は少し考えるように視線を落とした。
死神だけでも十分に興味深い存在なのに、天使のような姿をしたものまでいるらしい。
「そんな奴がいるなら、一度会ってみたい気もするよ」
「クックック。相変わらず人間ってのは、変わったもんに興味を持つよなあ」
リュークは何が面白いのか、喉を鳴らすように笑った。
月はそれ以上その話題を掘り下げることなく、
今度は自分の考えをリュークに語り始めた。
今の世は腐っている。
このままではいけない、誰かがやらなければならない。
自分にならできる。いや、自分にしかできない。
デスノートで世界を変える。
犯罪者のいない理想の世界を作る。
そして自分が『新世界の神となる』のだと
______神のそばには天使が控えるものだよな?
とは、終ぞ口に出すことはなかったが。
______________
『…?』
天使様、どうかされましたか?
『別に。ていうか僕は天使じゃないってば』
いいえ、貴方は天使様です。
病に苦しむものに救いを与え、罪人には罰を下す。ああなんと素晴らしい……!
誰かなんと言おうとも貴方様はこの腐った世に降臨されし救いの天使様……!
『いや死神もどきというか……悪魔なんだけど。全く話が通じない……ハア、アイスが食べたい』
すぐにご用意致します!!
お待たせするのは大変心苦しいのですが、天使様のお好みを存じ上げませんので、まずは31種類買い占めてまいります!!
『……キャラメルバニラ味、買ってきてよ。』
っ!!畏まりました!!
すぐに、すぐに戻りますので暫くお待ちください!!
あるだけ買ってまいります!!!!
『ほんと、落ちる場所ミスったなあ』
持ち物
・天使の悪魔の力
とってもおそろしい
・死神大王お手製の革手袋
みえなくなる、べんり