天使の悪魔とDEATH NOTE 作:天使の悪魔が男って…壊れちゃうよ
人間界に降りてきたはいいものの、早速問題が発生した。
「……お金ないじゃん」
当然といえば当然だ。
死神界で暮らしていた僕に、人間界のお金なんてあるわけがない。
意気揚々とアイスを買うつもりだったのに、出鼻をくじかれた気分だ。
お金がないとアイスを買えないし、合法的な入手方法も思いつかない。
フラフラと地上を見ながら飛んでいると、ある建物が目に入った。
それは町外れにあるこじんまりとした教会だった。
「どうしようかな」
僕は仕方なく近くにあった教会に立ち寄り、献金からほんの少しだけ小銭を拝借した。アイス代くらいなら、まあ…天使の悪魔だし、いいよね?
とはいえさすがの僕でも少しばかり気が引けたので。何度か教会に通うついでに、そこらで目についた人間から寿命をもらうことにした。
例えば、女性につきまとっていた男とか。見るからに具合の悪そうな余命の短い老婆とか。
まあ、僕なりに選んでいるつもりだ。
そんなこんなで、アイス代に困らなくなったのは良かったんだけどさ
どうやら、ここの神父に正体がバレてしまったらしい。
……いや正体というか、姿が見えるようになっただけなんだけど。
平日の昼下がり。ミサも無く閑散とした教会の椅子で昼寝をしていたところを、偶然にも神父が手袋に触れてしまったのだ。
どうやら落としたペンを拾おうとしただけらしいけど、運命のイタズラってやつ?
そこから先はまあ、なんというか。
「天使様!!ご用命があれば何なりと!」
……毎日こんな感じ。
献金くすねたし、何となく嫌な奴の寿命を貰ったりしただけなんだけど。
一応、僕が死神もどきの行動を心がけてたり、本当は悪魔だってことを説明してみたけど聞く耳持たないって感じだった。
僕が天使に見える外見だとしても、行動を美化しすぎだと思うよ。
それからと言うもの、狂信者みたいになってしまった神父は何かと僕に尽くそうとしてくる。
一度、そこまでしなくていいよって止めようとした事がある。
そしたら「お、お気に召しませんでしたか!?私は何と力不足なのでしょう…!神に仕える身として余りに未熟、この身が憎い!ふんッ!!!」とか言って聖書を頭にぶつけ始めた。
これには流石にびっくりしたなあ。
とにかく便利だけど正直疲れるんだよね、もっと適当でいいのにさ。
そんなわけで、今日は教会を抜け出して公園に来ていた。拠点としては使うけど、ずっとあそこに居ると息が詰まるし…
この公園は僕のお気に入りだ。
管理は雑で日当たりも良くないからかあまり人気は無いが、端の方に設置されている自販機にアイスが置いてある。
僕でも人目を気にせず好きにアイスを買えるのは最高だ。
僕は71と書かれた自販機から目当てのものを購入すると、近くのベンチに腰掛けた。手袋は外して膝の上に置く、汚れたら嫌だからね。
アイスを食べる時はいつも素手だ、僕コーン派だし。
「すみません!」
食べ進めていると突然、そんな声が聞こえた。
もしかして自分か?と顔を上げると、目の前に立つ男とバッチリ目が合っていた。
ああ、今手袋外してるから……
「その羽、すごいですね!コスプレですか?」
「……コスプレ?」
「いやあ、すごいクオリティだなあ。もうすぐハロウィンですもんね!」
予想外の指摘に、思わずきょとんとする。
「えっと、まあそんなところ」
「ですよねえ!いやー初めはてっきり本物かと思いましたよ!」
「……本物だけど」
「え?」
「なんでもない」
わざわざ説明するのも面倒くさい。
勝手に勘違いしてるなら都合がいいし、それに乗っておこう。
スーツを着た男は僕の隣を指差した。
「あの、隣いいですか?」
「別に」
「ありがとうございます!」
……元気な人間だなあ。
男は隣に座るなり、また羽を見始めた。
「それ、動かせるんですか?」
「動くよ、触らないでね」
少しだけ羽を広げてみせる。
「うわっ、本当に動いた! すごいなあ……!」
「そんなに珍しい?」
「珍しいですよ! こんなの初めて見ました!」
うわー!どうやって作ってるんですか!?と騒ぐ人間に、「知らない」と答える。割と無礼なのにあまり不快にならないのは、ちょっとアホそうだからかな。
「ところで、それ何味ですか?」
「今日はカスタードプリン」
「おいしそうですね!」
「おいしいよ」
「僕も買ってこようかなあ」
男はそう言って立ち上がった。どうやら本当に買いに行くらしい。
「じゃあ、また!」
「……うん」
嵐みたいな人間だったな。まあ、いいか。
残ったコーンを口へ放り込んで、革手袋をつけ直した。
___________
「そういえば僕この間、天使のコスプレをしている人に会ったんですよ!」
捜査本部で松田がそんな話を始めた。
「天使?」
思わずと言ったふうに、月が聞き返す。
「はい!公園で見かけたんですけど、羽がすごくて!本物みたいでしたよ。もうすぐハロウィンだから気合い入ってるなあ〜って」
「当日じゃないのにコスプレしてるのか?それは変質者じゃ…」
「やだなあ相澤さん、すぐ疑ってかかるんだから。そんな感じじゃなかったですって!」
「どんな感じの人だったんですか?」
「おっ月君も興味ある?ええと、若い人で、偽物ですけど綺麗な羽が生えていて…あ、そうそう。いつもアイスを食べてるんですよ。何度か会ったんですけど、結構面白い人で!」
僕も最初は本当に天使が居ると思っちゃいましたよ。
まあ寂れた公園で自販機のアイス食べてる天使なんて、いる訳ないですけどね。アハハ!と笑う松田に周囲は呆れてる。が、月だけは違った。
「…そうなんですね」
月は何気ない顔をしていたが、内心では少し引っかかっていた。
以前、リュークから聞いた話。死神界には、天使のような奇妙な存在がいるらしい。まさか、あの話と関係があるのだろうか。
「松田さん。その方とは何度くらい会ったんですか?」
珍しくLが口を挟んだ。それも松田の話題を広げるなんて。
「え?!そうですねえ、2.3回くらいかな。最近公園でよく見かけるんですよ」
「なるほど」
Lは松田の話を聞きながら、ちらりと月の方を見た。天使という言葉が出た途端、少し月の雰囲気が変わった気がしたからだ。
普段なら聞き流してもおかしくないような、松田の生産性のない雑談。
それなのに、より詳しく聞きたがっている様に見えた。…もちろん気の所為かも知れないが、生憎気になったことを放置するタイプではないので。
「松田さん。次にその方に会ったら、少し話を聞いてきてもらえませんか?」
「えっ、いいですけど……何かあるんですか?」
「いえ、少し興味があるだけです」
Lはそう言って再びパソコンの画面に向き直り、もう話す気はないという意思表示なのかショートケーキを食べ始めた。
それを見ていた月は笑顔のまま、Lの背を見つめていた。
天使の悪魔は死神の目を所持してません。寿命貰うのに目要らないですし。よって、公園でたまに会う男が松田だと知りません。
松田も松田で、気がついたら居なくなってるのに深く考えてません。
時系列狂ってますが気にしないで下さい。
天使の悪魔がいる時点でパラレルです。