天使の悪魔とDEATH NOTE 作:天使の悪魔が男って…壊れちゃうよ
「あれ、めずらしく混んできた」
いつもの寂れた公園に見覚えのある顔があった。
一人はたまに会う根明の男。会うと近寄ってきてひとりで話し続けるので、適当に聞き流している。
その隣にいるのはよれよれのロンTにダボダボのGパンを着た、えらく姿勢の悪い男……なんかいやに既視感があるような。
そして、もう一人。
「それで、月くんまでどうしてついて来たんですか?」
「こんなことに竜崎が興味を持つなんて珍しいだろ? しかも実際見に来るなんてよっぽどじゃないか。だから僕も少し気になってさ」
「そんなこと言って、ほんとは月くんが一番興味津々なんじゃないですか?」
「はは、冗談はよしてくれよ。竜崎が来てないなら僕が来るはずもないだろ」
思わず自販機の前で固まる。
僕は手袋をしてるのをいいことに、振り返って男達をじっと観察した。
月…夜神月?え、じゃあとなりの竜崎って男はL?
そして、次に湧いた疑問は何故ここに?だった。だがすぐ、たまに話す男が松田だったことに思い至る。お前、松田だったのか。
じゃあ何か、松田に僕の話を聞いてここに来たのだろうか。
わざわざあの〈L〉と〈夜神月〉が?松田は僕のこと天使のコスプレをしてると思ってるのに?そんな人物に興味なんて持たなそうだけどな。まだ死神とかのが琴線に触れるんじゃ…
「ん、死神…?あ、そうか。死神だ」
なんですぐ思いつかなかったんだろう。
死神界で暮らしてたんだから、そりゃ他の死神は僕の事を知ってるはずだった。僕は目立つし。
恐らくだが、リュークが夜神月に僕の存在を話したんだ。そして松田の話に興味を持ったのかも…。Lは、そうだな…夜神月の反応を見て、とかだったりして。
……ということは。
後ろに視線を向けると案の定ついてた、死神が。
「よっ」
初対面のくせして、死神リュークはずいぶん気軽に手を振ってくるものだから
(うわ、最悪……)
僕は思い切り顔をしかめた。
夜神月に勘づかれるといよいよ面倒くさそうだ。僕は人差し指を口にあて、手招きすることにした。
___________
あれから目当ての人物がみつからなかった2人は、紙コップ飲料を販売している自販機近くの、少し苔の生えたベンチに腰かけていた。
「おまたせしましたー!コーヒーとココア買ってきましたよ」
両手に紙コップを持った松田が、はい月君コーヒー、竜崎はココアで良かったですよね?と走り寄る。
「しっかし、今日は居なくて残念でしたね。割と見かけるんだけどなー」
まあまたチャンスありますよ!と続けるが、Lはココアを受け取らずに立ち上がると、公園の出入口に向かって歩き始めた。
「そうですね、残念です。では私は忙しいので帰ります」
そのココアは松田さんが飲んでくださいー。
そう言い残すと、Lは足早に去っていった。
「えー!せっかく買ったのに…僕もコーヒーの気分なんだけどなあ」
そうだ、良かったらココアも月君が飲んでよ!
僕ちょっとコーヒー買ってくるねと、月の返答を待たずに松田は自販機へ向かう。
それに少し呆れながら見送り、月は静かに話し出した。
「なあリューク、本当にいなかったのか?」
もしも、松田さんの話していた天使のコスプレとやらがリュークの言っていた天使の姿をした死神もどきなら、普段は人間には見えないはずだ。
しかし、死神であるリュークには見えるだろう。
僕たちが見えないだけで、本当はいたりしなかったか?と問いかけるのは自然なことだった。
「いや、いなかった」
しかし、それに対するリュークの答えはNOであった。
____さかのぼること少し前
人差し指を口にあて、静かにしろとジェスチャーしながら手招きする相手のもとへリュークはやって来た。そしてリュークが口を開くよりも早く、手をつかまれ自販機の裏へ引っぱりこまれる。
「君って死神リュークだよね」
「なんだ、俺のこと知ってたのか?」
「噂は聞いてるよ、死神大王だましてノート2冊持ってるらしいって」
「はは、噂になってるか…」
そりゃまずいな。と頭を掻くリュークをじとりと睨む。
「それで、あの人間に僕のこと話したのって君だよね?あまり言いふらさないでほしいんだけど」
夜神月とLまで来ちゃってるし、これ以上ややこしくなったら困る。松田に関しては僕が悪いかもだけど、まさか繋がってると思わないじゃないか。
「僕がここに居たこと、黙っててよ。今後見かけても反応しないで」
「なんでだ?聞かれたら答えるぞ」
こいつ…人間に憑いてるほかの死神のことは見かけても黙ってるくせに。
僕がノートを持ってないからって、バラしてもいいと思ってるのか?
「…あのさ、君がついてる時点であの人間がキラなのは確定だよね?そして、キラは君の暇つぶし最大の娯楽のはずだ」
「ああ、そうだな」
「じゃあ、僕があの人間がキラだって言いふらしたら困るよね?」
「エッッ…!?」
リュークはギョッとした顔で、まさか言うのか?
と聞いてくる。
「言わないよ。君が僕のことを言わなければ」
僕は争うのも争わせるのも別に好きじゃないし。
ただ君たちのゲーム盤に乗る気はないってだけだ。
その返答にリュークはホッとした様子で肩の力を抜いた。
「ならいいけどよ、お互い約束守るかなんて分からないだろ?」
俺が話すかもしれないし、お前が話すかもしれない。リュークの指摘はもっともだった。
「ならこうしよう。僕は『キラの正体を誰にも言わない』。君は『僕を見ても誰にも言わない』。これで相互不干渉だ」
少し間を置いて、僕はリュークを見上げた。
「リューク、口約束でもこれは一応〈契約〉だからね。破った方は今後50年間、人間界への出入り禁止にしよう__誓えるかい?」
「クックックッ…そこまでするか普通。いいぜ、せっかくの遊びだ。途中で壊されたらつまんねえしな」
死神が誓うなんて、似合わねえなあ…。クククと喉を鳴らして笑うと、リュークはそれ以上何も言わなかった。
________
今日は少し疲れた、早く帰って休みたい。
記憶にあった知識を元にリュークがしたい事、されて嫌なことをある程度知っててよかった。これがなければこう上手く交渉が刺さらなかったかもしれないし。
話がまとまったのは良かったけど、キラの正体を誰にも言わないだなんて。何だか肩を持ってるみたいで嫌な気分だなあ。どちらの味方にもなる気なんてないのに。
はあ…どうか全ての出来事が僕と関わりないところで終わるよう、願った。
それに…もうあの公園へは行けないよね。
割と気に入ってたんだけどな…
僕は少しガッカリした気持ちで帰路につく。
この時間帯なら教会の門は閉まってるだろうし、礼拝堂まで直接飛んで行くことにした。
そうして礼拝堂の前に降り立つと、見慣れた扉に手をかける。少し重たいそれを押し開くと、いつも通りの静かな空気が流れ込んできた。
「……これは驚いた。私の目には、ひとりでに扉が開いたように見えましたが。もしかして天使さん、帰ってきたんですかね」
返事はない。
「もしもーし、いますかー……あれ、いないんでしょうか。
困りましたね、これでは私が一人で話し続ける少々奇妙な人間になってしまいます」
「…………」
「いらっしゃるなら返事をいただけませんか?
ちなみに神父は現在、熱心な入信希望者の相手をしています。あと1時間は戻りません。
2人きりです」
……流石にこれは予想外だよ。
死神ならすり抜けられた。
結構書きたい部分だけで書いてます。
ラストは決めてるのですが、途中の出力にくるしんでおり4話ちょっと遅れます。