嘘告(※ガチ恋)されたので、ネタばらしまで学園一の美少女との恋人生活を満喫します! 作:みずがめ
平日の夕方。俺は自室でスマホの画面を見つめていた。
『私が君にした告白ね……ぜーんぶ嘘でしたー!』
『ぎゃははっ! 騙されてやんの。こいつがお前なんて地味な奴を好きになるわけねえだろ』
『はーい、これで罰ゲーム達成。お疲れさーん。いい顔しているところバッチリ撮れたよー』
『あれ? こいつ泣きそうになってんじゃね? 期待させちゃってごめんな。冗談だから笑ってくれよ。な?』
耳障りな笑い声のせいで心が冷えていく。
せっかくの放課後の自由時間を台無しにされた気分だ。これはもう、異世界主人公最強ハーレムラノベを読まなきゃやってられん。
「何見てんの?」
俺が買ってきた新刊のラノベを、俺よりも先に読んでいた親友がスマホを覗き込んできた。
「嘘告動画」
「なんだか不愉快な連中……もしかして知り合い?」
「んなわきゃねえ。俺の友達はネットリテラシーをちゃんと身につけている奴しかいない……と思う」
「なんで後半自信なさげなのさ」
「いやー、最近の若者は『知らなかった』とか言ってとんでもない事件を起こしたりするだろ。俺もそこんとこ見抜けていないかもしれん」
「
「お前もな」
などと会話しつつ、嘘告動画を漁っていく。心の中で「こいつら顔出ししてるけど大丈夫か?」と心配する俺はとても優しい男子高校生。彼女募集中なので、性格に難のない女子は俺に今すぐ惚れてほしい。
「なんでいきなり嘘告?」
「んー……」
なんとなく口ごもってしまう。
別に興味を持った理由を秘密にしたいわけじゃないんだが、説明するにはちょっぴり心が重い。
しかし俺の顔を穴が空きそうなほど見つめてくる親友からは、とても逃げられそうになかった。
「……実は、今日の昼休みに教室に戻った時のことなんですけど」
「なんで敬語? まあいいや、続けて」
「クラスの陽キャが『罰ゲームは嘘告で決定!』とか言っているのを聞いてしまったわけですよ」
「終わってんねー」
だるそうに感想を漏らす親友。俺も激しく同意したい。
別にクラスメイトみんなと仲良しなわけではないが、同じ教室で勉学に励む仲間がそんなくだらないことをしようとしているのが悲しいのだ。
「もしかしたらその嘘告の標的が俺の友達かもしれないだろ。そんなめんどくさいことに巻き込まれ……いや、俺は悲しい未来にならないように、こうやって動画を見て対応を考えているというわけだ」
「本音が漏れちゃってるぞー。まっ、事情はわかった」
親友は眼鏡をくいっと上げる。データマンみたいでかっこいいな。
「確かに徹が心配している理由もわかるよ。実際にこうした嘘告動画なんてものがあるからね」
「ほんとにな。ちょっと調べるつもりだったのに、こんな動画が出てきたのはびっくりだ」
「もし実行して、こんな風に動画が出回ったら大変だろうね」
「さすがにネットに拡散なんてことはしないと思うが……たぶん」
「仮にそこまでしなかったとしても、動画や文字に残して、それをその陽キャ連中が笑い者にすれば大問題だよ。被害者が学校に訴えれば教師が動くだろうし、名誉毀損罪や侮辱罪に問えるかもしれない」
「ほ、法的問題になるほど大問題になるのか?」
「少なくともボクなら訴えるけどね。合法的に学校を休んで、きっちり診断書をもらって、加害者たちをじっくりと詰めてやるよ」
話を聞いていると想像以上に大問題だった。
まあ嘘告なんて、人の恋心を笑ってやろうって行為なんだから問題があるに決まっているか。個人的に問題があると思っていただけで、法的に悪いこととは知らなかったが。
「で、どうするの? 先生にチクっとく?」
「つっても、チラッと聞いただけで嘘告をやろうとしている人がわからないんだよな」
男女何人かが話していたっぽいんだけど……実行犯がわからなければ、先生に言ったところでしらを切られるだけだろう。
「……もし被害者が出た時は、必ず先生に言うんだよ。知っているのに言わなかったことがバレたら、徹が悪いことをしていなくても疑われるから」
「心配性だなぁ。お前は俺のオカンかよ」
「同じダメ人間の親友だよ。それ以上でも以下でもない」
珍しく微笑んだ親友は、やたらと母性を感じさせた。
それにしても「それ以上でも以下でもない」って地味に言ってみたい台詞だな。親友もそう考えていたのか、ちょっと満足げだ。
「にしても……嘘告ってけっこうやっている奴が多いんだな」
さっきから嘘告動画を次々と再生しているのだが、終わる気配が全くない。
もしかして嘘告って全国的に流行ってるの? 世はまさに嘘告ブームってこと?
「こんなことに青春の貴重な時間を費やすなんて……世も末だね」
「これを一定数の奴らが楽しんでいるってんだからな。俺はお友達になれる自信がねえよ」
コメントの比率を考えれば、ごく少数ではあるんだけども。嘘告をエンタメとして捉えている人がいるのは事実らしい。
気分が悪くなるくらい動画を視聴した結果、嘘告を笑えると思って実行している連中が胸糞であるということは、疑いようがなくなった。
◇ ◇ ◇
翌日の朝。
登校して上履きに履き替えようと下駄箱を開けた俺の目に飛び込んできたのは、一通のラブレターだった。
「……」
人生で初めて、自分の目を疑ったかもしれない。
俺、
だがしかし、全く嬉しくない。これっっっっっっっっっっっっっぽちも、嬉しくない!
(嘘告の標的にされてるのって……俺かよ!)
俺は心の中で悲しみいっぱいの叫び声を上げたのだった。