嘘告(※ガチ恋)されたので、ネタばらしまで学園一の美少女との恋人生活を満喫します! 作:みずがめ
一口に「嘘告」と言っても、色々なパターンがあるらしい。
目的だって罰ゲームや悪戯、照れ隠しだったり、自分が傷つきたくないから本当に好きだけど嘘ということにしちゃったりなどなど。
今回は罰ゲームなのは間違いないので、俺が本気で受け止める必要はないはずだ。
そして罰ゲームの場合でも、そこからの展開はまた分かれてくる。
「そうなんだ……ごめん、びっくりしちゃって……」
俺は榛名さんの告白に驚いたフリをしながら、さっと屋上を見渡す。
物陰になりそうな場所はない。俺が通ってきたばかりなので、ドアの隙間から覗き見していることもないだろう。
(誰もいないのか?)
意外だ。
俺が告白を受けた瞬間、隠れていた仕掛け人たちが姿を現して「本気にしたの? バカじゃーん!」と、煽ってくるパターンじゃないらしい。
他に人がいないのなら、動画を撮影されている可能性も低いだろう。
「だ、だよね……いきなりこんなこと言われたら困るよね……」
あと考えられるとすれば、榛名さん自身が動画を撮っているパターンか……。
俺はささっと彼女の制服を観察する。
陽キャグループに属していながら、制服を着崩したりなどせず、キッチリと着こなしているところに彼女の真面目さを感じる。だけどスカートをちょっと短くしているところに、譲れないおしゃれ心が伝わってきた。
じゃなくて! ポケットなどからカメラのレンズがこっちを向いている様子がないことを確認した。
離れた場所にスマホを置いて撮影しているとか……屋上にそんなところはないか。
周りに人がいる気配はない。カメラを構えているわけでもない。つまり……。
(……泳がされるパターンか!)
いくつもの嘘告動画の中にあった。数日付き合ったフリをして泳がせてから、ネタばらしするのだ。
恋人ムーブをさせてから突き落とすという、嘘告の中でも最低な行為だと思ったものだ。
幸福から一気に絶望の淵に叩き落としておいて笑っていられるのは、控えめに言って人間のやることじゃない。
なんて酷いことをするんだ……こんな胸糞な告白、誰が受けるもんか……っ!
(……いや、悩むわー)
とはいえ、榛名さんと恋人になれる時間をもらえるというのなら、嘘とはいえお得ではないだろうか?
俺も思春期を迎えた高校生。女子とお付き合いをするということに、とっても興味がある。
最初から嘘告とわかっているから、ネタばらしされてもショックは少ないだろうし……損得を考えれば可愛い女子と付き合える分、若干お得なのではなかろうか。
「あのさ、これは告白ってことでいいんだよな? 俺が頷いたら、榛名さんと付き合うってことでいいんだよな?」
「う、うん……私と、お付き合いしてください……」
頬を染める榛名さんの演技は、真に迫っていた。こっちは演技とか関係なく頬が熱くなる。女子への免疫力がない自分が恨めしい。
それにしても、やはり泳がされるパターンか。問題は、付き合ったとしてどの程度のことができるのかということだ。
期限は数日、長くても一週間といったところだろう。最短だと明日にはネタばらしされるんだろうけど……。
その間に何ができるのか……それが問題だ。
「俺、女の子と付き合ったことがないから……色々わからないことがあるんだ」
「うん……私も、彼氏いたことないよ」
それは意外。榛名さんくらい可愛くて人気者なら彼氏の一人や二人、十人くらいいたって不思議じゃないと思っていたのに。
いやいや、真に受けるな。これも俺をときめかせるための嘘かもしれん。
相手は嘘告しようという悪女だ。だったら俺が美味しい思いをしたところで、心が咎めることもない。
「一応確認なんだけど、仮に付き合ったら……手を繋げたりする?」
「も、もちろんっ。こっちがお願いしたいくらい……」
ほほう、手は繋げると。なるほどなるほど。
「一緒に帰れたりとか」
「や、やった。手を繋ぎながら一緒に帰れるんだよ……ね?」
一緒に帰ることをOKしてもらえたどころか、手を繋ぐオプション付きですか。な、なるほどなるほど。
「一緒に帰るついでに、どこかカフェに寄ってみたりとか」
「放課後デートしてくれるの? 嬉しいな」
「お弁当を作ってくれて、昼休みに一緒に食べたりなんかも」
「私が作ったお弁当を食べてくれるの? 浅間くんに喜んでもらえるように腕を振るうね」
なんか、思っていたよりも色々やってくれそう……。
いやいや、泳がす系の嘘告だと、そこまでやること含めての罰ゲームなんだろう。
それに、上げてから落とすのが奴らのやり口だ。俺の絶望顔を引き出せると思えば、これくらいの労力は甘んじて受けるつもりってことか。
いいだろう。ならばこっちにも考えがある。
「それで、もう少し確認したいんだけど」
「うん。なんでも言って。私ができることならなんでもするから」
オイ、今「なんでもする」って言った?
「付き合って、彼氏彼女になるってことはさ……その、き、キスとか……するのか?」
「…………」
榛名さんは聞こえていなかったのか、意味がわからなかったのか、しばらく固まってしまった。
「えええええええええええええええぇぇぇぇぇぇぇぇーーっ!?!?!?!?」
そして再起動した彼女は、顔を真っ赤にしながら絶叫した。
いや、うん、ごめん。今のは俺がキモすぎた。
いくら相手が嘘告したとはいえ、超えてはいけないラインが存在する。ちょっぴり煩悩が出てしまったことに反省。
まあ、これほど動揺している姿を見せてくれたのだ。榛名さんへの意趣返しはできたと考えていいだろう。
うん、だから引かれたって気にしない……うぐぅっ。
「はい……」
「ん?」
いつの間にか落ち着いていたらしい榛名さんが、潤んだ目でこっちを見ていた。
「恥ずかしいから今すぐは無理だけど……そのうち、キスしたい……です」
「…………」
今度はこっちが固まる番だった。
恥ずかしそうにしながらも、期待させるような表情がなんとも……さすがにそこまでしないとわかっていてもドキドキしてしまう。
演技とはいえ、こんな表情を見られたからもういいんじゃないかな。俺、ちゃんと騙されに来て良かった。
「えっと、じゃあ……その告白を、お受けします」
ぺこっと頭を下げる。言ってみてから、告白の返事ってどうすれば正解なのかわからないことに気づいた。これで合ってる?
「ほ、本当に! 私と付き合ってくれるの?」
「お、おうよ」
パアァッと効果音でもつきそうなほど輝いた笑顔に、俺は気圧されそうになってしまう。
榛名さんはすっと手を差し出す。
「不束者ですが、これからよろしくお願いします」
差し出された手と、榛名さんの顔を交互に見比べて、握手を求められていることに思い至った。
「あ、ああ。こちらこそよろしく」
榛名さんと握手を交わす。これでカップル成立ってことでいいんだよな? ……嘘の、だけど。
「じゃあ、一緒に帰ろっか」
「お、おうよ」
握手からの流れで、隣り合って手を繋ぎ直す。
どうやら本当に手を繋いでくれて、一緒に帰ってくれるらしい。
「……」
榛名さんの柔らかい手の感触を確かめながら思う。
(嘘告も……案外悪いもんじゃないのかもな)
俺はネタばらしされるまで、全力で泳がされようと心に決めたのだった。