嘘告(※ガチ恋)されたので、ネタばらしまで学園一の美少女との恋人生活を満喫します! 作:みずがめ
その日、私は昼休みに友達とゲームをしていた。
「最下位は結衣だねー。はい、罰ゲームは嘘告で決定!」
「えぇっ!? 待っ……」
「あっ、チャイムだ。次の授業ってなんだっけ?」
私が反対する暇を与えないかのようなタイミングでチャイムが鳴ってしまった。みんなはそそくさと自分の席に戻って次の授業の準備を始めてしまう。
「嘘告って……そんなの絶対よくないよ……」
嘘告。本心で好きでもないのに、相手に交際を申し込む行為だと聞いたことがある。
いくら罰ゲームとはいえ、やっていいことと悪いことには限度がある。
面白半分で人の気持ちをからかうなんて絶対にやってはいけないことだ。みんななら、それくらいわかってくれていると思っていたのに……。
(ううん。ちゃんと説明すればわかってくれるはず。面白半分で誰かを傷つけるなんてよくないことなんだから……)
後で「嘘告は嫌だ」って伝えよう。何が悪いのか言えば、みんななら納得してくれるはずだ。
私はどう説明するかシミュレーションしながら、午後の授業を迎えたのだった。
◇ ◇ ◇
放課後。昼休みにゲームに参加したみんなを集めて、私は嘘で告白することがどれほど悪いかということをこんこんと説いた。
「そんなこと誰だって悪いことだって知ってるよ」
「え?」
だったらなんで罰ゲームで嘘告なんてさせようとするの?
みんなの反応にぽかんとしていると、男子側から「悪い、説明不足だったわ」と、なぜ罰ゲームに嘘告が出てきたのかという理由を教えてくれた。
「別に誰かをからかうための嘘告じゃないんだよ。これは榛名が告白を練習するためっつーか。そもそも相手には事前に言っておくつもりだし」
「そ、そうなの? でも、なんで私に告白の練習なんてさせようとするの?」
「だって榛名、浅間のことが好きなんだろ?」
「うぇっ!?」
いきなり意中の相手を言い当てられて、女子として出してはいけない声を発してしまった。
どどど、どうして浅間くんの名前が出てくるの!? 私、好きな人の話なんて誰にもしていないはずなのに……っ!
「いやー、そりゃわかるって」
「浅間くんにだけ朝のあいさつを欠かさないし」
「授業でペアやグループ決めの時は必ず浅間を誘ってるしな」
「浅間くんが何も言わなくても、彼が忘れ物した時はすぐに他のクラスの奴に借りに行ってるし。あれはどうやって気づいているのよ?」
右から男子に指摘されて呻き、左から女子にツッコまれて、あわあわと声にならない音が口から洩れた。
まさかそこまで見られていただなんて……さりげなく距離を縮めていたつもりだったからバレていないと思ってたのに……。
恥ずかしくて顔から火が出そう……、恋心を必死に隠していた私の頑張りはなんだったの……。
「そのくせ一歩踏み出し切れていないというか……あれじゃあ『いい人』止まりだろ」
「うぐぅっ!」
私の心に言葉の刃が突き刺さった。
「いい人」と言われて、こんなにも嬉しくないのは初めてだった。これでも頑張ってるのになぁ……。
「どうせ告白する勇気もないんでしょ? そんなことができる度胸があれば、結衣くらい可愛ければとっくにやってるもんねー」
さらに追い打ちをかけてくる。女子の方が言葉の刃の切れ味が鋭いよね……。
「そんなわけで、榛名の背中を押すために告白の練習をさせようってわけだ」
「えぇー……」
「余計なお世話なんて言わないでよ? こっちだって見ていてもどかしかったんだからね」
「うぅー……」
「大丈夫大丈夫。結衣ちゃん可愛いんだから。スタイル抜群だし、大抵の男子は悩殺されてるって。あと足りないのは勇気のみ! ヘタレを脱却するのだ、榛名結衣!」
「むむむ……」
みんなの気持ちはわかった。
嘘告を提案したのは、全部私のためだったんだ。私の恋を応援してくれて、罰ゲームを利用して告白の練習をさせてくれるという心遣いは素直に嬉しい。
でも──
「……ごめん、みんな」
私はみんなに向かって頭を下げる。
嬉しいけれど、私にだって譲れないものがあった。
「私……初めての告白は浅間くんにしたいの……。だから、嘘でも練習でも、他の誰かに『好き』って言いたくない、かな……」
人生初の告白になるかもしれない。だからこそ、最初は本物の気持ちしか口にしたくなかった。
私の気持ちを伝えると、みんなは朗らかに笑ってくれた。
「そうか。なら仕方ないな」
「純だねぇ。まっ、そういうところが可愛いんだけど」
「だ、だからねっ!」
私の声に、みんなの視線が集中する。
決心が伝わったのかもしれない。みんなの気遣いのおかげで、一歩を踏み出す勇気ができたから。
「私……浅間くんに告白するよ」
私の宣言に、みんなが賞賛の嵐を──
「お、おい榛名。無理してないか?」
「そうだよ。罰ゲームだからって絶対に告白しないといけないなんて、誰も言ってないからね?」
「もしかしてテンパってんのか?」
「ヘタレな子を追い詰めると、突飛なことをやらかすって本当だったんだ……」
──くれなかった。
「な、なんでよ!? みんなが背中を押してくれたから頑張ろうって思ったのに……思ったのにぃっ! もっと私の決断に感動して! もっと私を褒めてよー!」
「はいはい。偉い偉い」
「流された!?」
みんな酷い! 上げてから落とすなんて最低!
ひとしきり騒ぐと、ちょっと落ち着いてきた。
「で、本当に告白するのか?」
「……うん。私、浅間くんに気持ちを伝えたい」
「わかった。俺ら全員、榛名を応援するよ」
その言葉に、全力で背中を押された気がした。
「じゃ、今回の罰ゲームは榛名の告白の結果を聞くことだな」
「結果がどっちになったとしても、正直に答えてよね」
「安心して。ダメだったらちゃんと慰めてあげるから。ジュースの一本くらいならおごってあげる」
「やめて! ダメだった時のことなんて考えさせないでよぉー!」
耳を塞ぐ私に、みんなは大笑いしていた。
でも、みんなのおかげで、こんなヘタレの私が告白しようと勇気を持てたのだ。
そう思えば、ちょっとくらい感謝しても……。
「ついにヘタレな榛名が、浅間に告るのか」
「あのヘタレな結衣ちゃんがねぇ」
「子供を見守る親の気分だよ。あのヘタレっぷりを知っているだけに感慨深い……」
「可愛いくせにヘタレなんだから。チヤホヤされて育ってきたのに、どうしてヘタレなんだろうね」
自分でヘタレなのは自覚しているけれど……いくらなんでもヘタレって言いすぎじゃない!?
こうして私は、本気で浅間くんに告白しようと、人生初のラブレターを書き始めた。
……文字で「好き」と書くのが思いのほか恥ずかしかったので、結局ただの呼び出しの手紙になってしまったのだけどね。