嘘告(※ガチ恋)されたので、ネタばらしまで学園一の美少女との恋人生活を満喫します!   作:みずがめ

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Side 榛名結衣.私の恋の始まりとこれから

 浅間徹……私の好きな人である。

 私と彼との出会いは、高校に入学してからだった。

 そうは言ってもドラマチックな出会いがあったわけじゃない。普通に一年生のクラスが同じだっただけで、特別仲良くなったわけでもない。

 席が隣同士でもなかったし、友達グループも違っていた。クラスメイトとして話しかけることはあったけれど、プライベートな話をしたことがなかった。

 どこにでもある普通のクラスメイトの関係。異性として意識する相手になるだなんて、その時がくるまで、考えたこともなかった。

 そんな私が浅間くんを意識するようになったのは、冬休みが明けてから少し経った寒い日のこと……。

 

「ない……ない。なんで……私、ここに付けてたのに……」

「どうしたの結衣ちゃん?」

「あ、いや……初詣の時に買ったお守りが見つからなくって……」

「あー、最近スクールバッグに付けてたやつか」

「うん……」

 

 この間の初詣で買ってもらったばかりのお守りをなくしてしまった。

 もうすぐ結婚して家を出るお姉ちゃんが、寂しくなって元気がなくなっていた私を励ますために買ってくれた大切なお守りだ。

 お姉ちゃんは「このお守りを通して結衣のこと見てるから、シャキッとしなさい」なんて冗談めかして笑っていたけれど。私はそれを真に受けて、本当にお姉ちゃんが傍にいるみたいに感じられて嬉しかった。

 

「教室には見当たらないし……外に落としたのかもよ?」

「うん……」

「まっ、お守りなんてまた買えばいいじゃん。あれだったら今度一緒にお参りに行っちゃう?」

「べ、別にいいかなー……高い物でもないし……」

 

 値段なんて関係ない。

 それが大切な物だって、私は言えなかった。

 だって、ただの安物だろうって思っているだろうから。友達に悪気がないとわかっているからこそ、彼女を否定してしまうようで言いづらかった。

 せっかくお姉ちゃんが私のために買ってくれたのに、なくしてしまった申し訳なさが心を締めつける。

 それに、大切な物のはずだったお守りを大事にできなかったことが情けなくて……自分を許せなかったんだ。

 

「どこに落としたんだろう……途中まではあったはずなのに……」

 

 その日の放課後。私は自分の記憶を頼りに、学校の敷地内をくまなく探した。

 校舎では見つからなくて、落し物が届いていないかも聞いたけどダメだった。

 

「やっぱり学校の外かな……」

 

 外で落としたとなれば、もう見つからないかもしれない。

 それでも、私は探すのをやめられなかった。

 冬の時期は日が暮れるのが早い。すぐに薄暗くなってきて、地面の様子が見えづらくなる。

 もう見つからないんだ……そう諦めそうになった時だった。

 

「あれ、榛名さん? 落とし物でも探してる?」

「ひゃあっ!?」

「わ、悪い。驚かせちゃったな……影薄くてすんません」

 

 これから帰るところだったのか、道端で浅間くんに声をかけられた。

 お守りを探している私は目立っていたのだろう。浅間くんから声をかけられるなんて初めてだったから。

 

「もしかして、お守りを探しているとか?」

「え、ど、どうして?」

「ごめん。教室でお守りをなくしたって言っているのを聞いちゃって……あ、いや、盗み聞きしていたわけじゃないからね! たまたま聞こえてきちゃっただけだから!」

「必死に言われると逆に怪しい……」

「マジで疑ってるトーンで言わないでっ!」

 

 我ながら失礼なことに、焦っている浅間くんを見ていると、さっきまで心にあった悲しい気持ちが薄れてきた。

 

「……でさ、そのお守りの色とか形ってどんなの?」

「え?」

「だから、お守りの特徴を教えてほしいんだけど」

「えっと……色は赤色で、これくらいの普通の大きさなんだけど……」

「わかった」

 

 浅間くんは頷くと、辺りの地面を探し始めた。

 

「て、手伝ってくれるの? そんなことしなくていいって。悪いよ……」

「暇だからいいよ。それに、ものすごく大切なお守りなんだろ?」

「え? どうして……」

「なんとなくそう思っただけ。榛名さんはクラスの潤滑油みたいな人なんだから、たまにはクラスメイトをこき使ってもいいよ。榛名さんが元気ないと、俺みたいな大人しい奴は空気が変わっただけで居心地悪くなるし」

 

 私がいくら遠慮しても、浅間くんはお守り探しをやめなかった。仕方がないので彼と一緒に通学路を探し回った。

 他の人だったら、私を手伝うどころか「寒いからもう帰ろう」だとか「お守りくらいまた買えばいいでしょ」と説得していたと思う。

 けれど、浅間くんは私を止めようとせず、それどころか文句の一つも言わずに黙々と探し続けてくれた。

 いつしか日が完全に暮れて、真っ暗になって街灯の灯りを頼りにするしかなくなった。

 とても寒い……疲れた……もう帰りたい……。そんな弱音が頭の中でぐるぐると回る。

 でも、お姉ちゃんからもらったお守りを諦め切れなくて、浅間くんに迷惑をかけているのを自覚しながらも、なかなか切り上げられなかった。

 

「よっこいしょ」

 

 浅間くんが唐突に道路わきにある側溝に手を突っ込んだ。

 汚れるのも気にせず、彼はガサゴソと手を動かす。

 

「もしかして、榛名さんのお守りってこれだったりする?」

 

 側溝から引き抜いた浅間くんの手には、確かに私がお姉ちゃんに買ってもらったお守りがあった。

 大切なお守りが見つかった喜びが胸に広がり、安心感が一気に押し寄せてきたからか涙腺が緩んで泣きそうになる。

 

「うん! うん……ありがとう……ありがとうね……」

 

 泣いてしまえば浅間くんを困らせてしまう。私は涙をぐっと堪えて、何度も頷いて答える。

 こんな寒い日に、こんな遅い時間になっても探し続けてくれた。

 手や袖が汚れることもいとわず、お守りを取ってくれた。

 どうお礼を言えばいいのかわからない。いくら「ありがとう」と言っても足りない気がしてならなかった。

 

「じゃあ、あったかい飲み物をおごってくれたら借りはなしってことで」

 

 私がそのことを伝えると、浅間くんは大したことがないとでも言うように笑った。

 

「で、でも……それだけじゃ……」

「冬に飲むコンポタは最高に美味いんだよ。それをおごりで味わえるとか、贅沢にもほどがある」

 

 ……夜なのに浅間くんが、とても眩しく見えた。

 自販機で温かいコーンポタージュを買うと、浅間くんは満足して帰ってしまった。

 あまりにもあっさりとしていて、私はしばらく彼が帰った方向を見つめながら動けずにいた。

 

「浅間くん……」

 

 去っていく彼の後ろ姿を、もう忘れられそうにない。

 どれだけ寒くて、時間がかかっても、お守りを探すのを手伝ってくれて、見つけてくれた。

 それ以上に、また買えばいい替えの利く物ではなく、ちゃんと「私の大切な物」として寄り添ってくれたことが嬉しかったんだ。

 

 

  ◇ ◇ ◇

 

 

 あの時から、浅間くんのことが好きになって……ついに私たちは恋人になった。

 これもみんなが私の背中を押してくれたおかげ。告白が成功して嬉しかったことを、明日学校に行ったら事細かに話してあげよう。

 

「ふふっ」

 

 放課後に屋上で浅間くんに告白した時のことを思い返して、自然と笑みがこぼれる。

 彼が私を受け入れてくれた時は、本当に幸せな瞬間だった。そして、これから二人でもっと幸せになるんだ……。

 

「ふふっ……ふふふ」

 

 私は自室の机の引き出しにしまってあるお守りを取り出すと、そっと撫でる。

 お姉ちゃんにもらったからだけじゃなく、浅間くんに見つけてもらった大切なお守りだ。一生捨てられない宝物になった。

 このお守りがあったからこそ、私に恋心が芽生えて、こうして浅間くんと恋人になれた。

 今日はいきなり手を繋いで、一緒に帰って……カフェにも寄っちゃったりして……。

 

「も~~っ! 何これ! 幸せすぎ~~っ!!」

 

 胸が温かくて、ぽわぽわして、感情が爆発しそう。

 私はベッドに飛び込んで、枕をぎゅっと抱きしめる。

 

「ずっと夢見心地だよ~~。カフェで味どころか何を食べたか覚えてないよ~~! だって……だって浅間くんが私の彼氏なんだもん!」

 

 じたばた、うねうね、すりすり……。

 ああ……もどかしい。早く明日にならないかなぁ……浅間くんに会いたい。

 

「あっ。しまった……浅間くんと連絡先交換していない……」

 

 あまりにも幸せすぎて、こんなことも忘れてしまうだなんて……私のバカ。明日絶対に聞こう。

 

「でも晴れて恋人になったんだし、ゆっくり仲を深めていけばいいよね……関係が進めば、徹くんって、名前で呼んでみたりして……きゃー♡」

「……」

 

 ベッドで浅間くんとのこれからを妄想していると、ドアの隙間から覗く目と視線が合った。

 

「きゃああああああああああぁぁぁぁぁぁーーっ!?」

 

 思わず悲鳴を上げてしまう。お、お化け!?

 

「いやー、妹のあられもない姿を見るってのも、けっこう気まずいもんだね」

「お姉ちゃん!?」

 

 ドアを開けて入ってきたのは、この春に結婚したばかりのお姉ちゃんだった。

 お姉ちゃんは結婚して引っ越したものの、旦那さんが少しの間出張に行くからということで、家に戻ってきているのだ。

 お姉ちゃんの旦那さんは忙しい人らしく、出張や、会社で泊まり込んで仕事をする時などはちょくちょく家に帰ってくるとのことだ。寂しくなって泣いていた私の気持ちを返してほしい。

 

「緩み切った顔しちゃって。もしかして彼氏でも出来た?」

「……」

「お、マジ? まっ、あたしの妹にしちゃあ遅い方か」

 

 勘のいいお姉ちゃんには隠し事ができない。言わなくたってバレるんだから……って、友達にも私の気持ちは隠せていなかったんだった。あれ、それって私が隠し事下手なだけ?

 

「そっかそっか。好きな人と結ばれたのならいいことだ」

「うん……」

「でも子供を作るのはいくらなんでも早いからね?」

「なんでそんな話するの!? 付き合ったばかりなんだから、そんなことしないよ!」

 

 そんなこと……今は、しないよ……っ!

 でもでも、浅間くんに求められたら……ど、どうしよう~。

 

「そこんとこは本人たちの自主性に任せるとして。だけどタイミングは考えないとね。あたしみたいに出来ちゃった婚になると、それなりに大変だから」

 

 お姉ちゃんは少し膨らんだお腹をさすりながら笑う。

 苦労を覗かせてはいるものの、それ以上に幸せそうに見えた。

 

「大丈夫だよ。私たちは清いお付き合いをするんだから」

「お? 言うねぇー。よしよし、お姉ちゃんが妹の彼氏がどうなのか採点してあげよう。どんな人か話してみな」

「もーっ! そういうお節介はいいから」

「彼氏のノロケ話をしたくないの?」

「……お姉ちゃんは採点とかしなくていいからね」

 

 私は初めてできた彼氏を、お姉ちゃんが「お腹いっぱい」とギブアップするまで自慢したのだった。

 

 




お読みくださりありがとうございます! ここまでがプロローグになります。
今作はカクヨムで先行公開していますので、完結まで毎日投稿していくつもりです(倒れなければ…)

https://kakuyomu.jp/works/11054822664388789062
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