『宇宙世紀の拾い屋、未来のジャンクを解体する』 作:AI小説練習中
「……冗談じゃねえぞ、木馬の野郎! 落ちる場所が南にズレすぎてんだよ!」
大気圏突入の熾烈な熱気が残る地球・北米大陸の上空。ダグは輸送トレーラー『トータス号』の操縦桿を握り締めながら、盛大に毒づいていた。
サイド7からホワイトベースのあとを追いかけ、大気圏突入のタイミングに合わせて地球へ降下したダグだったが、原作の知識があっても「大気圏の気流」までは完全にコントロールできなかった。
ホワイトベースとシャアのクラウン機が繰り広げた大気圏突入戦の余波を受け、ダグの輸送船は予定していたジオン軍の占領地域から大きく離れた、連邦とジオンの補給線が交差する「
「大気圏突入で燃え尽きたザクの残骸……拾いたかったなぁ。まあ、生きて着地できただけ儲けものか」
ダグはトータス号から降り立ち、装甲の冷却ファンが上げる甲高い排気音を聞きながら、周囲の索敵を開始した。
荒涼とした赤土が広がる荒野。だが、ダグの「原作知識」と「ジャンク屋の目」は、ここが単なる砂漠ではないことを知っていた。
「確か、シャアが大気圏突入直前に放ったコムサイの切り離しカプセル……あの軌道計算なら、この半径十キロ以内に落ちてるはずだ」
予想は的中した。
谷間にひっそりと打ち捨てられていたのは、ジオン軍の大気圏突入用カプセルの熱遮蔽装甲板と、緊急切離し用の高出力推進ブースターの残骸だった。
「ビンゴ! ジオンの耐熱セラミック被膜と、高圧ハイブリッド・ペレット燃料! これがあれば『デッドストック』の大気圏内飛行時間を3分は延ばせる!」
ダグは鼻歌交じりに作業を開始した。
『デッドストック』の大型クレーンを操作し、熱で溶けかかった希少金属パーツをテキパキと切断・回収していく。
連邦軍もジオン軍も、大気圏突入直後の混乱でこんな辺境の落とし物まで手が回らない。まさに「早い者勝ち」の天国だ。
しかし、その作業の最中、物陰から複数の怪しい影が接近してきた。
『おいおい、見慣れない型の作業用MSだな。連邦の泥棒カラスか?』
現れたのは、ジオンの旧式兵器「ザクI」を独自に改造した二機のMS。
塗装は斑点の迷彩、装甲には無数の傷。正規軍ではない。戦争の混乱に乗じて双方の物資を奪う「ならず者
「おい、新参。その耐熱パーツとブースターの燃料、俺たちに黙って持っていこうってわけじゃないよな?」
旧ザクのコクピットからスピーカー越しに、下卑た笑い声が響く。
ダグはハッチを開け、呆れたように肩をすくめた。
「やれやれ……これだから無法地帯は嫌なんだ。おい、そこの旧ザクの兄ちゃん。胸の装甲、右側に大きく歪んでるぞ。それ、サイド5の海戦で被弾した補修痕だろ? 内部の冷却パイプが圧迫されてて、あと5分連続稼働したらオーバーヒートでジェネレーターが吹っ飛ぶぞ」
『な……なに!? なぜそれを……!』
「ついでに言うと、後ろの二号機。脚部のアクチュエーター、連邦の作業用プチモビルスーツのパーツを無理やり流用してるだろ。規格が合ってないから、右に旋回するとき足首がロックするはずだ」
荒らし屋のパイロットたちが動揺して操作を誤り、二号機の旧ザクがガタリと体制を崩した。
「俺はダグ。ジャンク屋だ。あんたらと殺し合いをする気はない」
ダグはトータス号の荷台から、サイド7で回収した「ジオン軍の120mmザク・マシンガンの予備ドラムマガジン」を一つ叩きつけるように下ろした。
「これは無傷の純正品だ。その旧ザク二機の欠陥を教えてやるし、パーツの噛み合わせも調整してやる。だから、このコムサイの耐熱装甲は俺に譲れ。……どうだ? 銃弾を撃ち合うより、お互い儲かる話だろ」
荒らし屋のリーダーは、ダグの愛機『デッドストック』の不気味な造形――旧ザクの胴体に連邦の全周囲モニター、自作の凶悪なヒート・ホーク――と、ダグの異常な機械知識に圧倒され、ゴクリと唾を飲み込んだ。
『……チッ、気味の悪い野郎だ。だが、そのドラムマガジンは貰っていくぜ』
数時間後。
荒らし屋たちと無駄な戦いを避け、見事に耐熱セラミック装甲と推進ブースターを手に入れたダグは、暗くなり始めた荒野で『デッドストック』の強化作業を行っていた。
「よし……耐熱被膜の移植完了。これで大気圏内の熱対策もバッチリだ」
ダグは作業の手を止め、夜空を見上げた。
雲の隙間から、遥か上空で小さく光る爆炎が見える。
「ホワイトベースは今頃、ガルマの部隊に包囲されて冷や冷やしてる頃だな……」
前世の記憶通りなら、明日にはガルマ・ザビのガウ攻撃空母群が、ホワイトベースを追い詰めてこの付近のエリアで大大規模な空戦を繰り広げるはずだ。そして、巨大なガウが一機、激戦の末に落とされる。
ダグは冷えた合成スープを一口すすり、ニヤリと笑った。
「準備は整った。待ってろよ、ガルマの坊ちゃん。あんたが落としてくれる『極上の落とし物』は、このダグ様が残さず回収してやるからな」
こうして、知識と交渉術で危機を脱したダグは、「大空の落とし物」が待つ激戦地へと、静かにトレーラーを走らせていくのだった。