『宇宙世紀の拾い屋、未来のジャンクを解体する』 作:AI小説練習中
「……読み通りだ。ガルマ・ザビの坊ちゃん、派手にやってくれたねぇ」
地球の大気圏を突破し、北米大陸の降下ポイントへとたどり着いたダグは、荒涼とした岩山のかげで双眼鏡を覗き込んでいた。
眼前で繰り広げられているのは、ジオン公国軍北米方面軍のガウ攻撃空母群と、連邦軍のホワイトベースによる空中戦だ。
空を覆うほどの爆煙と、大気を引き裂くビーム・ライフルの一閃。原作アニメで幾度となく見た「地球編」の開幕である。
ダグが着ているのは、砂埃で汚れた耐熱セパレート服。
背後には、サイド3で回収したジーン機のパーツを組み込み、両腕の出力を大幅に強化した愛機『デッドストック』が、岩肌に擬態するように伏せている。
「シャアの野郎、相変わらずガルマを巧みに誘導してやがる。あそこが落ちるぞ……!」
ダグの指し示した先で、ガウ攻撃空母の一基がエンジンから黒煙を吹き出し、バランスを崩して大爆発を起こした。巨大な鉄の塊が、重力に引かれて山あいの谷間へと墜落していく。
「よし、激突ポイント予測完了! ガウ一機のスクラップ価値はザク百機分だ。お宝の山が降ってきたぜ!」
ダグは『デッドストック』のシートに飛び乗ると、スロットルを叩き込んだ。
キャタピラが泥と砂利を激しく跳ね上げ、武骨な作業用MSが爆発の爆風の中へと突進していく。
墜落現場は、すさまじい惨状だった。
巨大なガウの翼がへし折れ、内部から炎と黒煙が吹き出している。
ホワイトベースとジオン本隊はなおも上空で交戦を続けており、この谷間にはまだ誰も近づいていない。
「急げ、急げ! 連邦の偵察機かジオンの回収部隊が来るまで、勝負は十五分だ!」
ダグは『デッドストック』の大型ヒート・ホーク(旧ザクのものをドム用に大口径化させた自作ツール)を構え、ガウの壊れたハッチを力任せにこじ開けた。
ガウの内部は、軍需物資の宝庫だった。
予備の120mmザク・マシンガン弾薬箱、ドム開発用の予備パーツ、そして何より――ジオン軍の「高機能合成食料」と「上質なコーヒー豆」のコンテナだ。
「これだよこれ! 宇宙世紀の地球で食うまともなメシ! 宇宙の合成パックとは味が違うんだよ!」
ダグは手際よくコンテナをワイヤーで縛り、トレーラー『トータス号』の荷台へ引っ張り上げる。
続いて、半壊したマゼラアタックの砲身から高純度のガンダリウム系合金パーツを剥ぎ取りにかかった。
その時――。
『――動くな』
背後から、カチャリと銃器のセーフティが解除される乾いた音が響いた。
ダグが身を硬くして振り返ると、ガウの歪んだ装甲板の陰から、一人のジオン兵が拳銃を突きつけていた。
バイザーが割れたヘルメット。パイロットスーツは血と煤で汚れ、肩からは血が滲んでいる。
だが、その拳銃を握る手だけはピタリと震えていなかった。
「……連邦のコソ泥か? それとも、我が軍の物資を狙う
「落ち着けよ、おねえさん。銃口をこっちに向ける前に、自分の左足を見てみな」
ダグはゆっくりと両手を挙げた。
バイザーの隙間から覗く鋭い瞳と長い髪。声のトーンからして、ジオンの若き女性兵士――いや、脱走兵だ。
「左脚の油圧ラインが切れて、大腿動脈のすぐ横に装甲片が刺さってる。あと三分で出血性ショックで倒れるぞ。俺を撃ったら、あんたの命もそこで終わりだ」
「くっ……!」
女性兵士――ミレーナは唇を噛み締め、膝から崩れ落ちた。
拳銃が手からこぼれ落ち、カツンと金属音を立てて転がる。
ダグはため息をついた。
「ハァ……これだから戦争は嫌なんだ。俺はただ、ガウの高級コーヒー豆を拾いに来ただけだってのに」
ダグは腰の医療キットを取り出すと、迷いなくミレーナの傍らにしゃがみ込んだ。
「おい、何をする……! ジオンの兵士に情けをかける気か!?」
「静かにしろ。止血剤を打つ。俺はジオンも連邦も関係ねえ、ただのジャンク屋だ。……だがな、目の前で死にかけのメカニックを見捨てたら、夢見が悪くて今夜のコーヒーが美味しくなくなる」
手際よく止血処置を施し、止血帯をしめるダグの動きには、無駄がなかった。
ミレーナは荒い息をつきながら、驚愕の目でダグを見上げる。
「あんた……ただのジャンク屋じゃないな。なぜガウがここに落ちると分かった? なぜ私がメカニックだと判った?」
「カンと、ちょっとした未来予測だよ。……さて、おねえさん」
ダグはミレーナを軽々と抱え上げると、『トータス号』の助手席へと放り込んだ。
「命拾いしたけりゃ、俺の店で働いてもらう。タダで助けるほどお人好しじゃねえんだ。ジオンの最新メカニック知識、たっぷり絞り取らせてもらうぜ?」
「……勝手な男だ。だが、死ぬよりはマシか」
ミレーナは力なく笑うと、そのまま意識を失った。
数時間後。北米の砂漠地帯に隠された、岩山をくり抜いて作られたダグの隠れ家「ダグ商会・地球支部」。
ランタンの暖かい光が灯るドックで、ダグは回収したガウのコンテナから取り出したコーヒー豆を挽いていた。
香ばしい香りがドック内に満ちていく。
「ふぅ……ガルマ・ザビの補給部隊から巻き上げたコーヒー、絶品だな」
ベッドで目を覚ましたミレーナが、身体を起こしながら呆れたようにダグを見た。
「……本当に呑気な男ね。上空ではまだガルマ少将の部隊と
「放っておけばいいさ。どうせガルマは……いや、あの戦いはじきに終わる」
ダグは言いにくい本音を飲み込み、出来立てのコーヒーが入ったマグカップをミレーナに手渡した。
「ミレーナだっけか。これから連邦とジオンの戦いはもっと激化する。ジャブロー、オデッサ、 ソロモン……地球も宇宙も鉄くずの海になる」
「……なぜ、そんな未来がわかるような言い方をするの?」
「ジャンク屋の長年の直感だよ」
ダグは愛機『デッドストック』を見上げた。
今回回収したガウのパーツと、ジオンの最新電子部品。ミレーナという腕利きメカニックの加入により、この不格好な作業用MSは、戦場を生き抜くための「異形の名機」へと進化を遂げつつあった。
「俺たちは歴史の主役じゃない。ガンダムの後ろをこっそりついていって、捨てられた未来を拾い集めるだけだ」
ダグはマグカップを掲げ、一人ニヤリと笑った。
「さあて、次はオデッサの激戦区だ。マ・クベの野郎がどれだけのスクラップを残してくれるか……今から楽しみで夜も眠れねえよ」