『宇宙世紀の拾い屋、未来のジャンクを解体する』 作:AI小説練習中
「いい? ダグ。この冷却ラインの圧力をあと5%下げないと、ドムのホバー用ジェネレーターと旧ザクのメインフレームが干渉して、腰の関節が吹き飛ぶわよ!」
ダグ商会・地球支部の薄暗いドックに、スパナを叩きつける甲高い音が響いた。
声を張り上げたのは、ミレーナだ。頭に手ぬぐいを巻き、顔に油汚れをつけた姿は、数日前にガウの残骸で死にかけていた女性兵士とはとても思えない。
「分かってるって。だがなミレーナ、出力を抑えたらオデッサの重力下で瞬発力が出ねえんだよ。マ・クベの野郎が鉱山基地ごと爆破した後の『撤退戦のどさくさ』で、極上のジャンクを回収するにはスピードが命なんだ」
ダグは『デッドストック』の脚部フレームに潜り込みながら、汗を拭った。
ガウの残骸から回収したパーツと、ミレーナのジオン軍正規メカニックとしての技術。
そしてダグの「原作知識」による無茶な設計思想が融合し、『デッドストック』はもはや原形を留めないほど凶悪な異形へと進化していた。
その時、ドックの緊急警告ブザーがけたたましく鳴り響いた。
『――警告。半径3キロ以内に未確認のモビルスーツ接近。個体数2』
ミレーナが素早くモニターに飛びつく。
画面に映し出されたのは、砂嵐の中を肩を寄せ合うように歩く、満身創痍の二機のモビルスーツだった。
一機は左腕を失ったザクⅡ(J型)。もう一機は、複座型のザク・キャノンだ。
どちらもジオン軍の識別信号を出しているが、塗装は剥げ落ち、今にも崩れ落ちそうな足取りだった。
「ジオンの敗残兵……ガルマ少将が討ち死にした後の、北米掃討戦から逃げてきた部隊ね」
ミレーナの顔が強張る。
「ダグ、どうする? 追い払う? それとも……」
「追い払うも何も、あんなボロ兵器で来られたら商売にならねえよ。……だが、あのザク・キャノンの背中に背負ってる中距離キャノン砲、なかなか良い状態じゃないか」
ダグはニヤリと笑うと、作業服のポケットに万能ツールを突っ込み、ドックのハッチを開けた。
「頼む……! 水と、パーツを分けてくれ……! 電子回路が焼き切れて、もう動けないんだ……!」
岩山のかげで立ち往生したザク・キャノンのハッチから飛び出してきたのは、ダグと同年代ほどのジオン軍中尉だった。
その横には、重傷を負った若きパイロットが横たわっている。
「連邦の追撃部隊が追ってきている! この子だけでも助けたいんだ……頼む!」
ダグは冷めた目で二人を見下ろした。
「あんたら、ガルマ・ザビの仇討ち戦でシャア少佐に見捨てられた部隊だな? 補給も絶たれ、あてもなく南下してきたってところか」
中尉が目を見開く。
「な、なぜそれを……!?」
「ジャンク屋のカンだよ。……それより旦那、取引をしよう」
ダグは作業用トレーラー『トータス号』の荷台を指さした。
「そこにあるのは、さっき冷やしたばかりの新鮮な水と、ジオンの合成レーション三日分。それから、そのザクⅡをあと百キロ走らせるための予備ヒューズと冷却オイルだ」
「本当か!? 条件は何だ……! 金なら……!」
「金はいらん。そのザク・キャノンが背負ってる『180mmキャノン砲』と、余剰の砲弾コンテナを置いていけ」
「なっ……! キャノン砲を奪われたら、俺たちは丸腰になる!」
「丸腰にならなきゃ、連邦の哨戒部隊に見つかったときに『戦闘意思あり』とみなされて即座に蜂の巣にされるぞ」
ダグは身を乗り出し、中尉の目をまっすぐに見つめた。
「連邦軍の第44小隊が、あと二時間でこの谷の北側に到達する。彼らの巡回ルートは決まってるんだ。あんたらがキャノン砲を捨てて、武器を持たない『脱走兵』として西の補給基地へ逃げ込めば、奴らは追ってこない。……命と大砲、どっちが大事だ?」
中尉は絶句した。
なぜこのジャンク屋が、連邦軍の小隊番号や巡回ルートまで知っているのか。
だが、ダグの瞳には迷いがなかった。それは、これから起きる「未来」を完全に確信している者の目だった。
「……分かった。大砲は持っていけ。だが、本当に西へ逃げれば助かるんだな?」
「ああ。連邦の小隊長は事無きを得たい事触れ主義のオッサンだ。武器を捨てたジオン兵を深追いして戦功を焦るような奴じゃない」
数分後。
キャノン砲を解体・回収されたザク・キャノンとザクⅡは、ダグが手渡した水と最小限の補給資材を積み込み、西の砂嵐の中へと消えていった。
ドックへ戻ったダグは、手に入れたばかりの巨大な180mmキャノン砲を磨き始めていた。
「よしよし、これで『デッドストック』の遠距離火力が跳ね上がったぞ。旧ザクのフレームに、ガウの推進器、ドムのホバー、そしてザク・キャノンの大砲……たまらん、このロマンの塊!」
「ダグ……あんたって人は」
ミレーナが呆れたように、しかしどこか感心したような眼差しでダグを見ていた。
「嘘をついたわね。連邦軍の巡回ルートなんて、通信も傍受できていなかったのに」
「嘘じゃねえよ。原作の裏設定……いや、俺のデータベースによれば、このエリアを管轄してる連邦の指揮官は、戦果よりも無事に退職金をもらうことを優先する男だ。武器を持ってない敗残兵をわざわざ追いかけて返り討ちに遭うリスクは犯さない」
ダグは作業の手を止め、煙草に火をつけた。
「俺はあいつらを助けたんじゃない。使えなくなった兵隊から、一番価値のあるパーツを買っただけだ」
「ふん、相変わらず素直じゃないんだから」
ミレーナはクスリと笑うと、キャノン砲の接続用ボルトを拾い上げた。
「でも、感謝しておくわ。あいつらを殺さずに、パーツだけ奪って逃がしてくれたこと」
「言ったろ? 俺は死体から剥ぎ取るより、生きてる奴と取引する方が性に合ってるんだよ。死人は文句を言わないが、良いジャンクの情報も持ってないからな」
ダグは紫煙を吹き出し、秘密基地の天井を見上げた。
「さて、連邦とジオンの大規模正面衝突――『オデッサ作戦』の足音が聞こえてきた。オデッサが落ちれば、地球上のジオンの補給線は崩壊し、大量のモビルスーツが乗り捨てられる」
ダグの目が、ジャンク屋としてのギラついた光を帯びる。
「行くぞミレーナ、トータス号の整備だ! 宇宙世紀最大級の『大売出しセール』に遅れちゃ、ジャンク屋の名がすたる!」