群馬県の女神ちゃんは、とにかく群馬を布教したい! 作:利根きぬ
週末、ドキドキしながら高崎駅まで来た俺。
ここ、群馬の大ターミナルで、敷島さんと待ち合わせる予定だ。
改札近くの商業施設の一角…… 十分ほど待っていると、
「やっほー! 待たせた?」
桔梗色のロングヘアをなびかせて、女神様がやってきた。
ああ、幸せだよ。俺は幸せだよ…… もう、感無量になっちゃう。
「いや、十分前に来たところだ」
「…… むう、今きたとこ、っていってよう」
「あ、今来たとこです」
「遅い」
むすっとして、改札へ向かってしまう彼女。あれ…… ミスった?
「あ、ちょ、ちょっと! これっ」
俺は、紙袋から、群馬県産のこんにゃくを取り出す。
「これ、俺の母さんからっ!」
そう、母さんが「敷島ちゃんへのお土産」として、こんにゃくを持たせてくれたのだ。
「…… ありがと」
敷島さんは軽く会釈し、受け取った。
「…… もしかして、嫌だった?」
俺は不安に思った。こんにゃくは好きじゃなかったのか……?
「嫌じゃない。さ、行くよ」
敷島さんは、半ば強引に改札へ向かった。
俺は慌てて付いて行く。
せっせと先を行く敷島さんは……
「なんで、なんでそんなカッコいいのよ……! くっ、こんなにメロメロでは、女神の名が廃れると言うのにっ………」
こんにゃく、めちゃくちゃ効果抜群だった。
「下仁田の最高級のモノ…… もう、私、しあわせものだよ……」
群馬を司りし神さまにとって、下仁田こんにゃくは大好物だ。
「もう…… 私がモノでご機嫌とられてる気がするよ…… でも、嬉しい」
私と黒磯くん、群馬愛抜群だねっ!
そう言って、元気よく改札をピピっと突破した。
ホームに降り立った俺と君臨した女神様は、上越線水上行きに乗り込む。
「上越線、それは雪国へ我らを導きし、天使のようなもの……」
女神様が天使認定した上越線、この電車は水上までなので、新潟には行かない。
「渋川まで、どれくらいかな?」
俺はなんとなく尋ねた。
「三十分くらいかなあ、沼田とかだと五十分くらいだし……」
「了解。じゃあ、それまでちょっと寝れるな」
「へっ⁉︎ そ、そうね、上越線の乗り心地は、最高だものっ……」
女神様は、頬を赤らめて、頷く。
なんか変なこと言ったか? 言ってないよな……
「ま、じゃおやすみ……」
「ああ、ちょっと! わたしもっ……」
すると、隣に座っている敷島さんが、突然俺の肩に頭を乗せる。
「⁉︎」
「えへへ、これでよく寝れる……」
すると、一瞬で女神様は眠りに落ちた。
俺は…… ぞっとした。好きな人が俺の肩で、幸せそうに眠っている事実に。
大丈夫か? 明日遭難したりしない? どっかの山噴火しない?
三十分、渋川まで緊張で全く寝れない俺であった。
「ふああ、よくねた!」
んっ、っと伸びをする女神様。バスロータリーで伊香保行きのバスを待つ。
俺は、どうしても気になっていたことを尋ねる。
「敷島さん、どうしても気になることがあるんだ」
「……⁉︎ え、ええええええ! ま、まって!」
全力で口をぱくぱくさせて、両手に顔をうずめる敷島さん。
「敷島さん……」
「…… うん……」
「敷島さんって、なんで女神様なの? どうして神さまなの?」
「…… へ、あ、そっち? そっちかあ! なあんだあ……」
敷島さんは、苦笑いで答える。悔しそうだ。
俺は、続けて、
「以前から、群馬県を司る、とか言ってたよね。あれに深い意味はあるの?」
まあ、ないだろう、群馬が好きすぎて自称してるのかな。
そう思っていた。
女神様のお告げを聞くまでは。