群馬県の女神ちゃんは、とにかく群馬を布教したい!   作:利根きぬ

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碓氷を熱弁! 女神さま!

「碓氷峠はね、世界の峠なの」

 

 敷島さんは、俺の隣で、はにかみながら言った。

 

「むかーし、私が子供の頃、江戸時代だね。その頃は、『中山道の関所』として、重要な役目を果たしていたの」

 

「関所?」

 

「そう、幕府がある江戸を守るために、今の長野県と群馬の県境あたり、碓氷峠に、幕府は関所を設けたの。それで、碓氷峠は栄えたんだよ」

 

「へえ、でも、電車とか通ってたよな」

 

「それは、明治になってからね。まず、明治新政府が、東京と大阪を結ぶ電車を作りたがってた。今、東京、大阪を移動するなら、黒磯くんはどうやって移動する?」

 

「まあ、東海道新幹線だな」

 

「そうでしょう、並走する東海道線が、メインルートだよね。でも、実は碓氷峠だって、それくらい東京と大阪を結ぶ、有力な候補だったんだよ?」

 

「え、こんな山奥なのにか?」

 

「山奥だからだよ。明治時代は、つよーい外国船が、たっくさん海岸に来てたでしょう? だから、内陸に作って、安全な鉄道を目指したんだよ?」

 

「はあ、そんな歴史が……」

 

「結局は、東海道が優先されたけどね。碓氷だって、その後すぐに開業したよ」

 

 面白い。東海道の繁栄が、碓氷にもたらされていたかも知れないのだ。

 

「で、そんな碓氷峠は平成九年まで、電車が通ってたの。おっきな気動車が押したりして、頑張って運んでたんだ。峠の手前の横川駅では、この釜めしが人気の駅弁だったのよ」

 

「平成九年…… か、俺は生まれてないな」

 

「長野新幹線ができたと同時に、維持費とかコストが限界で、廃止されちゃったけどね。今も、廃線跡は博物館とかで、観光地化されてるよ。釜めしは今も健在!」

 

 敷島さんは語り終えると、ふうっ、と息を吐いた。

 

「面白そう、今度行ってみたいな!」

 

 黒磯は、碓氷峠にすっかり興味深々だった。釜めし美味しかったし。

 

 すると、敷島さんは、ちょっと顔を赤らめて、

 

「また…… うん、また行こうね!」

 

 笑顔で、微笑んだ。

 

 心臓に悪い……

 

 

「夜ご飯、パスタにしよっか」

 

 公園を歩く敷島さんは、そんなことを口にした。

 

「ああ、いいけど…… 親御さんは心配しないか?」

 

 まだどっちも子供だし、あまり遅くなるのは良くないだろう……。

 

「うん! こっから家近いし、両親からも応援されてるからね!」

 

「応援……?」

 

「あ、あ、こっちの話だから、気にしないでっ! 気にするなっ!」

 

 そ、そうか……

 

「じゃあ、もう少し歩いて、二十時ごろ夕食でいいか?」

 

「うん! それまで、本屋さんでも行こっか?」

 

「なぜ本屋……」

 

 そう思ったが、神さまが言うなら、間違いないだろう……

 

 きっと、楽しいに違いないし、敷島さんとならどこだって楽しい。

 

「やっぱり…… 俺のこと……」

 

 期待はしてしまう、俺だった。

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