エロゲのモブに転生した俺、うっかり【幼い】最凶悪役令嬢(ラスボス)の専属指南役になる。……待って、ヤンデレルートなんて原作にあったか? 作:エイイダ・カエン
何度目のゲームオーバー画面だろうか。
赤黒い文字で『Bad End』と表示されたモニターを前に、俺はキーボードを叩き割る勢いで台パンした。
「ふ・ざ・け・ん・な・ぁぁぁっ!!」
深夜のアパートに俺の絶叫が響き渡る。
プレイしているのは、現在界隈で覇権を握っている超大作エロゲ『天の罪人学園(セレスティアル・シナーズ・アカデミア)』だ。
王道から邪道まで、あらゆるヒロインを攻略し尽くした俺は、満を持して隠しシナリオである『最終ルート』に挑んでいた。
だが、ラスボスである『淫欲の災厄魔女』がマジで頭がおかしい。
画面の中で、黒い瘴気を纏った魔女が嗤う。俺が手塩にかけて育てた主人公の最強装備すら、奴の理不尽な全体即死攻撃の前にワンパンで沈んだ。
そして何より許せないのは、その後流れる敗北イベントだ。
愛しのヒロインたちは全員、魔女の凶悪な催眠魔法で思考を溶かされ、意思を奪われた人形のように快楽だけを貪る肉奴隷へと堕ちていく。
これのどこが純愛エロゲだ。ただの鬼畜NTRゲーじゃねえか。
「こちとら全ルートコンプして、レベルもカンストさせてんだぞ! 装備の厳選だって何百時間もかけた! なんでかすり傷一つ付けられずに負けんだよ!」
怒りのあまり視界が明滅する。
俺はすぐさまスマホのSNSを開き、ゲームの公式アカウント宛てに血走った目でリプライを叩きつけた。
『おいクソ運営! バランス調整どうなってんだよ! どんだけレベリングしてもラスボスに勝てねぇじゃねえか! 回避不可の即死技とか理不尽にも程があるわボケ!』
送信ボタンをターンッ! と勢いよく押す。
少しはスッキリするかと思ったが、数分後、信じられない通知が届いた。
ゲームの開発責任者の個人アカウントからの、引用リプライだ。
『仕様です。簡単にクリアしたいなら、そのボスを抱けば?(笑) それで解決だろ?』
……は?
俺はモニターの文字を三度見した。
「客を馬鹿にしてんのかテメェエエエエ!!」
ブチギレた俺は、財布とスマホだけを鷲掴みにし、頭を冷やすため深夜のコンビニへと飛び出した。
夜道を歩きながらも、スマホの画面を親指で激しくタップし続ける。
あのふざけたクソ開発者に、徹底的にレスバを仕掛けるために。
「絶対許さねぇ……証拠のスクショ全部晒して、炎上させて社会的に抹殺してやる……!」
怒りで指先が震え、フリック入力が何度も空回りする。
ただひたすらに、画面の中の文字しか見えていなかった。
だから、交差点に差し掛かった俺は、横から猛スピードで突っ込んでくるトラックの暴力的なヘッドライトの光に気づけなかったのだ。
けたたましいクラクションの音。
強烈な衝撃と、重力が反転して空を舞う感覚。
アスファルトに叩きつけられた瞬間、