ネコカンを与えて保護しただけなのに   作:末路雛鳥

1 / 1

最近、プラチナチケットで白ルーノスが当たりました……白ルナがよかったのは内緒。

でも白ルーノスのおかげで大狂乱のゴムネコ倒せましたし、問題なしですね。


帰り道、謎の生命体に出会う

両親の顔は、正直よく覚えていない(急展開)

 

幼い頃に交通事故で亡くなったと聞かされているだけで、残された写真を見てはたまに寂しくなる程度だ。

 

そんな俺――神楽末路(かぐらまつろ)は今年で14歳の中学三年生だ。

最近の悩みは友達の両親が大喧嘩した時の話をよく聞かされること。

 

その喧嘩の理由がまたくだらなくて……父親の頭が禿げて母親に相談せずにオーダーメイドの100万円もするかつらを買ったらしい……な? くだらないだろ?

 

そんな俺は、両親が遺した猫カフェの店員として勤めている。

今はその買い出しの帰りでビニール袋を両手にぶら下げて歩いている途中だ。

 

ちなみに中学生だけで店なんてやれるわけがないので、オーナーの名義は、俺のばあちゃんが引き受けてくれている。

 

実務を支えてくれているのは、店で雇っている二十三歳のスタッフ、犬野真白(いぬのましろ)さんだ。

 

彼女は動物取扱責任者と食品衛生責任者の資格をバッチリ持っている、黒髪ボブに青い瞳の超絶美人の完璧大和撫子……なのだが苗字が犬野なのに大の猫好きで、壊滅的料理と酒癖が悪く、いつも

 

「なんで私に彼氏ができないのぉぉ!」

 

と嘆いている。

まあ、モテない理由はだいたい酒のせいだと思うけれど、それを踏まえてもめちゃくちゃいい人だと思う。口が裂けても言わないけれど。

 

そんなことを考えながら、公園の横を通りかかったときだった。

視界の端に、明らかに周囲の風景から浮きまくっている『何か』が映り込んだ。

 

「……なんだ、あれ」

 

思わず足が止まる。

公園のベンチに、ちょこんと何かが腰掛けて――いや、めり込んでいた。 と表現すればいいのか。

 

丸を描いて、ちょんちょんと目を二つ描き、頭の上に申し訳程度にとんがった三角形みたいな突起が二つのり、下から棒みたいな手足が四本ほど生えている真っ白な白玉みたいな存在。

幼稚園児が五秒でお絵描きをしたようなフォルムだ。

顔と体が完全に一体化している。

 

……化け物かよぉ(震え声)

 

呆然とその白玉を見つめていると――

 

ぐううううぅぅぅぅぅぅぅぅ――。

 

公園に信じられないほど図太い腹の虫が鳴り響いた。

白玉はどことなくしょぼんとして、耳らしき突起をペタッと下げていた。

 

……腹が減っているのか?

 

 じり、と一歩近づいて見下ろしてみる。  すると、そいつはつぶらな瞳(?)で、じーっと俺を見上げてきた。

 

「にゃー」

 

……化け物かよぉ(戦慄)

 

今、鳴いたよな?

めちゃくちゃ気の抜けた声で鳴いたよな?

猫なのか、これ? うちのカフェにいる猫たちと似ても似つかないぞ。

 

だが……そのつぶらな瞳で見つめられると、どうにも放っておけない。

そんな目で俺を見るな! と叫びたくなる。

 

「……しょうがないな。ちょっと待ってろ」

 

買い物袋から、さっき買ったばかりのネコカンを取り出して地面に置いてやろうとして缶を開けて指でほぐす。そして地面においた、その瞬間――。

 

「うおっ!?」

 

猫? の口が開き、ネコカンの缶ごと飲み込んでいく。

 

「にゃーん」

 

わずか数秒で飲み干して、満足げに前足で口元をぬぐった。

そして、その場でコテンと横に倒れる。

 すぅ……すぅ……と、穏やかな寝息が聞こえてきた。

 

「食って即寝かよ! 図々しいな、こいつ……」

 

思わずツッコミを入れてしまったが、そいつはまったく起きる気配がない。  

 

うー、ん。どうしたものか。

カラスに突かれても困るし、一回連れて帰るか。

買い物袋を腕にかけ直し、両手でそいつを抱き寄せてみた。

 

……もちもちしてて触り心地は割といい。まるで大福を抱きかかえているみたいだ。

腕の中で脱力している白玉を抱えてカフェへと急いだ。

 

「ただいま戻りまし――」

 

「あ、お帰り神楽くん! 遅かったじゃない、もう待ちくたびれ……って、なにそれ?」

 

カフェのドアをくぐるなり、カウンターの奥から真白さんがすっ飛んできた。

長い黒髪を揺らし、青い目を丸くして白玉を凝視している。

 

「え、なにその可愛い……可愛い? 生き物? お餅?」

 

「いや、俺にもよく分かりません。公園のベンチで腹空かせてたのでネコカンあげたら寝てたので連れて帰りました」

 

「ネコカン食べたの? じゃあ猫かな?」

 

真白さんは少しパニックになりながらも、おそるおそる指先でつんつんと突っついた。

ぷにん、と気持ちのいい弾力が返ってくる。

 

「やだ……なにこれ、すっごいモチモチしてる……猫……猫ちゃんね? 今日からうちの子にする? ねえ神楽くん!」

 

「そんな雑な判断していいんですか……」

 

あきれていると、そいつがパチリと目を開けた。

そして何事もなかったかのように腕からぴょんと飛び降りると、てちてちと短い四本足を動かして店内へと歩き出した。

 

「あ、こら!」

 

店内には、昼下がりの陽だまりでくつろぐ本物の猫たちが数匹いる。

ロシアンブルーの『シオン』が、見慣れない白玉の接近に気づき、威嚇の声を上げた。背中の毛を逆立てる態勢をとる。

 

だが、白球は――

 

「にゃー」

 

無視した。

微塵も動じていない。瞳には何の感情も宿っていない。

そのままシオンの横をすり抜け、キャットタワーの1番下にあるフカフカのクッションへ体をうずめた。

 

「シャー……?」

 

威嚇していたシオンの方が完全に毒気を抜かれ首をかしげている。

 

白球は、クッションの上で丸くなると、再びすやすやと寝息を立て始めた。

あまりのマイペースぶりに、俺と真白さんは顔を見合わせるしかない。

 

「……神楽くん」

 

「はい」

 

「なんか……すごい大物感ない?」

 

「大物っていうか、ただ図太いだけだと思いますけどね……」

 

改めて、白玉をまじまじと見つめてみる。

 

うーん……なんというか、間抜けという言葉がこれ以上ないくらい似合う顔だ。

 

そんな白玉を、真白さんは満面の笑みで人差し指を使い、ぷすぷす、ぷすぷすと執拗につつき回していた。

 

「ぷにぷに〜。ねえねえ神楽くん、これ本当に猫ちゃんなのかな? 突けば突くほどお餅に思えてきちゃうんだけど」

 

「真白さん、突つきすぎです。あっほら、嫌そうな顔してますよ」

 

見れば、目をじとーっと細め、つつかれるたびにモチモチと体を凹ませて露骨に迷惑そうな顔をしていた。

そりゃ初対面の相手に延々と指で小突かれたら誰だって嫌だろう。

手を伸ばしてそいつを両手で抱き上げた。

 

「ほら、やめなさいって。おいで」

 

抱き上げて、目の高さまで持ち上げて視線を合わせる。

するとそいつは、首を――というか、首が存在しないので丸い体ごと、こてんと右に傾げてみせた。

 

……くっ、腹立つくらい間抜けな顔のくせに、思わずかわいいと思ってしまった自分が悔しい。

抱っこしたまま、カウンターに置いてあったスーパーのレジ袋へと手を伸ばした。

 

「そうだ。真白さん、これ使っていいですか?」

 

「ん? あ、それ? 元々は神楽くんが買ってきてたんだから、好きに使ってもいいのよ?」

 

レジ袋から取り出したのは、小さな金色の星のチャームがついた、細身の首輪だった。

 

うちの猫たち用にと買ってきたものだ。

さっそくこいつにつけてやろうとしたのだが……手がピタリと止まる。

 

「……そういえば首がなかった」

 

そう、こいつは顔と胴体が一緒だから太くて首輪が回りきらない。

少し悩み、首輪の輪っかを小さく調節して左耳っぽい部分に、スポッと通してみた。

 

「よし、これでいいか」

 

左耳に引っかかった金色の星が、ゆらゆらと揺れる。

 

……首輪というか、大ぶりのイヤーカフみたいになってしまったが、意外と似合っている。

 

名前は……そうだなぁ。ネコカンを見た時はすっごい元気だったし、この金色の星。

 

「お前の名前、決めたぞ」

 

「にゃ?」

 

「『ノヴァ』だ。新星って意味。元気いっぱいで星が似合うからな。今日からお前はノヴァだ」

 

そう告げるとノヴァが、突如として小刻みに震え出した。

 

丸い体がブルブルと波打ち、点のような目が、じわ〜っと潤んでいく。

ウルウルと涙をたたえ、キラキラと輝く瞳で俺を見つめ返してくるではないか。

 

「えっ……?」

 

え、どうしたんだ? 名前を貰ったのが、そんなに嬉しかったのか……?  

横から覗き込んできた真白さんが、両手を頬に当てて感動の声を上げる。

 

「神楽くん。ノヴァちゃんは名前をつけてもらって感激してるのよ! 捨てられて、飢えていた時に優しくてかっこいいお兄ちゃんに拾われて名前までもらえたんだから」

 

「そ、そうなのかな……。というかこいつ捨てられたってわけじゃな――」

 

その時、ノヴァの顔面の半分がまるで裂けるように巨大に開いた。  

 

え? 口ってそんな開くの? というか牙がめちゃくちゃあ――

 

ガブ

 

……。

 

「ぎゃあああっ!?」

 

ものすごい激痛が俺の小指を襲った、よりにもよって小指かよぉ!

ノヴァはウルウルした瞳のまま、俺の指を思いっきり丸呑みにして噛みついていた!

 

しかもただ噛んでいるだけではない。フガフガと鼻息を荒くしながら、体を左右に激しくブンブンと振り回している!

痛い! 痛いし全然抜けない!

 

「痛い痛い痛い! 真白さん助けて! 噛まれてる! めっちゃ噛まれてる!!」

 

「ええっ!? ノ、ノヴァちゃん、どうしちゃったの? あっ、愛の甘噛みね?」

 

「甘噛みの威力じゃないです! 指が! 骨ごと持っていかれる――ッ!」

 

涙目になりながら必死で手を引こうとするが、ノヴァは「フガーッ!」と唸りながら絶対に離さない。

 

そのとき、俺は気づいてしまった。

 

ノヴァの口元から、ものすごい勢いでダラダラと溢れ出している液体の存在に。

 

……これ、感動の涙じゃない。

ただのヨダレだ。

 

で、俺の指先にはさっきのネコカンの匂いがほんのりと残っていたはずで――。

 

「こいつ……っ! ネコカンの匂いに釣られて噛みついてるだけだろーーーっ!!」

 

感動もピュアもクソもなかった!  ただの食い意地が張っただけだった!

 

真白さんが慌ててネコカンを持ってきてノヴァの鼻先に突きつける。

 

「ほらノヴァちゃん! 美味しいネコカンよ! 神楽くんの指は美味しくないから離しなさい!」

 

ネコカンを見た瞬間、ノヴァは嘘のようにパッと俺の指を解放した。

 

そして地面に置かれたネコカンを平らげてしまった。

 

「はぁ……死ぬかと思った……」

 

唾液まみれになった自分の指をハンカチで拭きながらへたり込む。

指にはくっきりと綺麗な歯型がついていて少し血が滲んでいる。

一方の真白さんは、ネコカンを食べ終えて満足そうに口をぺろりと舐めるノヴァを見て、何やら感心したように頷いていた。

 

「ふふっ、すごい食欲ねぇ。やっぱり猫ちゃんはこうでなくっちゃ!」

 

「真白さん、完全にズレていますよ……。それに猫かどうかもわからないというのに」

 

「いいじゃない、可愛いんだから。よしっ、ノヴァちゃんの歓迎会ってことで、ビール飲んじゃお〜!」

 

「まだ昼の三時ですから絶対にっ、あっ、ちょっと?!お酒だけはやめてぇ!」

 

そんな酒癖が悪い大人を必死に止めているから気づかなかった。ノヴァが、本当に潤んだ目で、神楽を見つめていることに。

 

「にゃー」

 

その言葉の意味は、まだ誰も知らない。

 

 

 

 

 

というか誰も理解できない。





ノヴァちゃん……オリジナルにゃんこ。始まりのにゃんこ。ここからどうやって侵略していくのでしょうか。

ほどほどの投稿頻度になります。良ければ気軽に見ていってくださいね。
  1. 目次
  2. 小説情報
  3. 縦書き
  4. しおりを挟む
  5. お気に入り登録
  6. 評価
  7. 感想
  8. ここすき
  9. 誤字
  10. 閲覧設定
▲ページの一番上に飛ぶ  X(Twitter)で読了報告
感想を書く ※感想一覧
内容
0文字 10~5000文字
感想を書き込む前に 感想を投稿する際のガイドライン に違反していないか確認して下さい。
※展開予想はネタ潰しになるだけですので、感想欄ではご遠慮ください。

評価する
点
※参考:評価数の上限
評価する前に 評価する際のガイドライン に違反していないか確認して下さい。