【ONE PIECE】電気(ことわり)を統べる者 〜海賊王の右腕となる雷の能力者〜 作:フォレスティアル
第14話は『シェルズタウン編』の開幕です!
街を支配する海軍大佐モーガンの横暴、処刑場に囚われた「海賊狩りのゾロ」、そして彼におにぎりを届ける健気な少女リカとの感動シーンをじっくりとお楽しみください!
アルビダ海賊団を退け、客船から港街へと移動した俺たちの船は、次なる目的地である『シェルズタウン』の港へと静かに錨を下ろした。
海軍第153支部が置かれたこの街は、一見すると白を基調とした美しい建物が立ち並ぶ穏やかな港町に見えた。だが――
「……なんだか、変ですね。街の人たちの雰囲気がすごく暗いというか、怯えているみたいです」
船を降りて街を歩き始めたコビーが、首を傾げながら周囲を見回した。
出店を出す商人たちも、道を歩く住人たちも、誰もが俯き、海軍支部の巨大なタワーを見上げてはビクビクと体を強張らせている。
「おい、コビー。『モーガン』って海軍大佐の名前を出してみろ」
俺がそう呟くと、コビーは素直に近くの果物屋の店主に向かって声をかけた。
「あの、すみません! この街のモーガン大佐ってどんな方ですか――」
「ひぃぃぃっ! メ、モーガン大佐の名前を軽々しく出すな! 殺されるぞ!!」
店主は顔を真っ青にして悲鳴を上げ、ガシャーンと店のシャッターを勢いよく閉めてしまった。
「ひえぇぇっ!? な、なんで名前に反応しただけで店を閉めちゃうんですか!?」
コビーが目を丸くして跳び上がる。
「この街の海軍大佐モーガンは、己の権力を笠に着て住人たちを恐怖で支配している独裁者だ。気に入らない住人は容赦なく処刑し、己の巨大な像を作らせて威張っている……『正義』の名を借りたただの害虫だな」
俺が冷たく言い放つと、コビーはショックを受けたように言葉を詰まらせた。憧れていた海軍の支部が、そんな腐敗した場所だったことに衝撃を受けているのだろう。
「しししっ! 面白い街だな! ところでルーサス、その『海賊狩りのゾロ』って奴はどこにいるんだ?」
ルフィは街の雰囲気に臆することなく、楽しそうに周囲を見回した。
「海軍支部の前庭にある処刑場だ。……行ってみるか」
◇
海軍支部の高い壁に囲まれた処刑場。
鉄格子越しに中を覗き込むと、直射日光が容赦なく照りつける広場の中央、一本の木に太い縄で固く縛り付けられている男の姿があった。
腹帯を巻き、頭に黒い手ぬぐいを巻いた鋭い眼光の男――ロロノア・ゾロ。
何日も水も食べ物も与えられていないはずだが、その身体からは野獣のような恐ろしい気迫が漂っていた。
「うわぁ……本当にいた……。すごく怖そうな人ですね……」
コビーが縮こまる横で、ルフィはヘラヘラと笑いながら壁の柵を乗り越え、ゾロに近寄っていった。
「おい、お前。腹減ってねぇか?」
「……あ?」
ゾロが鬱陶しそうに片目を開け、ルフィを睨みつけた。
「死にたくなけりゃあ消えな、ガキ。俺はここで一ヶ月耐え抜けば釈放される約束なんだ。邪魔をするな」
「へぇ、一ヶ月も水なしで耐えるつもりか。意地っ張りだな」
俺もゆっくりと柵を超え、ルフィの隣へと歩み寄った。
見聞色でゾロの体調を探るが、限界に近い疲労の中にあっても、その魂の芯は決して折れていない。流石は後に世界一の大剣豪となる男だ。
その時――カタリと処刑場の壁の上で音がした。
見上げると、小さな女の子が必死に梯子を登り、手に竹籠を抱えて処刑場の中へと飛び降りてくるところだった。
「だ、ダメだよお嬢ちゃん! 危険だ!」コビーが悲鳴を上げる。
少女――リカは、怯えながらもまっすぐゾロの元へと駆け寄り、竹籠の中から包み紙を取り出した。
「お兄ちゃん! これ、食べて! ずっと縛られててお腹減ってるでしょ? 私が作った『おにぎり』だよ!」
差し出されたのは、不格好だが愛情を込めて握られた二つのおにぎりだった。
「……失せろ、ガキ」
ゾロは冷たく言い放ち、視線を背けた。
「いらないと言ってるだろ。早く帰れ、見つかったら殺されるぞ」
「でも……お兄ちゃん、私の代わりにヘルメッポたちの狼から街を守ってくれたんでしょ? だから……だから食べて!」
リカが一生懸命におにぎりを差し出し続けた、その時――
「ヒハハハハ! 誰の許可を得て処刑場に入り込んでるんだぁ~?」
不快で下品な笑い声とともに、派手な服を着たアゴの割れた男――モーガン大佐のバカ息子、ヘルメッポが数人の海兵を引き連れて姿を現した。
「あ……ヘルメッポ……!」
リカが恐怖で青ざめる。
「ほう、罪人におにぎりの差し入れか? 健気なこったねぇ!」
ヘルメッポはニヤニヤと嫌味な笑みを浮かべると、リカの手から引ったくるようにしておにぎりを奪い取った。そして、それを口に運ぶかと思いきや――
ポイッと地面に投げ捨て、そのまま靴の裏でぐちゃぐちゃに踏みにじった。
「うわっ! 中に砂糖が入ってやがる! 甘くて喰えたもんじゃねぇよ! ヒハハハハ!」
ぐにゃりと押し潰され、泥だらけになったおにぎり。
「あ……あぁ……っ……!」
リカの瞳から大粒の涙が溢れ出した。一生懸命作ってきたおにぎりが、目の前で無惨に踏みにじられたのだ。
「何をするんだ! ひどすぎる!!」コビーが怒りで声を震わせる。
だが、ヘルメッポは反省する様子もなく、リカの首根っこを掴み上げた。
「おい海兵ども! このガキを壁の外へ投げ捨てろ!」
「え……!? し、しかし相手は小さな子供です!」海兵が躊躇う。
「僕の言ったことが聞けないのか!? 親父に言ってお前らも処刑させるぞ!!」
ヘルメッポの脅しに屈した海兵が、恐怖に震えながらリカを掴み、高い壁の外へと投げ飛ばした。
「きゃあぁぁぁぁっ!?」
「リカちゃん!!」
悲鳴を上げて落下していく小さな身体。だが――
シュバッ……!!
地面に激突する直前、白銀の残影とともに俺がリカの身体を優しく抱き止めていた。
音すら置き去りにする微小な電磁ステップ。
「……大丈夫か、リカ」
「あ……お兄ちゃん……ありがとう……」
無傷で着地したリカを抱きかかえ、俺は冷たい視線で壁の上に立つヘルメッポを見上げた。
(自分の権力で弱者を踏みにじるクズか。ゴア王国の貴族どもと同類だな)
俺の全身から、周囲の空気を凍てつかせるような圧倒的な殺気が静かに漏れ出す。
ヘルメッポは俺の視線と一瞬目が合っただけで、「ひっ……!?」と短い悲鳴を上げてガクガクと震え出した。
その横で、ゾロは地面に転がる泥だらけのおにぎりをじっと見つめ、静かに低く呟いた。
「……拾え」
「あぁ? 何だって?」ヘルメッポが耳を傾ける。
「それを……俺に食わせろ」
「ヒハハハ! 正気かよ! ただの泥の塊だぞ!?」
ヘルメッポはヘラヘラと笑いながら、踏み潰したおにぎりをゾロの口元へと押し込んだ。
ゾロは泥と砂糖が混ざったおにぎりを、一口一口、噛み締めるように飲み込んでいく。
「……うめぇよ。ごちそうさまだ」
泥を吐き出しながら、ゾロは真っ直ぐに俺が抱えているリカの方を見て、ニッと不敵に笑った。
「……! お兄ちゃん……食べてくれた……!」
リカの顔に、涙とともにぱっと明るい笑顔が戻った。
ヘルメッポたちが嘲笑いながら去っていく中、ルフィがゾロの前に歩み寄った。
「ゾロ、美味しかったか?」
「……ああ、最高に美味かったさ」
ゾロのその一言を聞き、ルフィはニカッと太陽のような笑みを浮かべ、俺も不敵に口角を吊り上げた。
「いい男だな、ゾロ。……さてルフィ、腐った大佐殿に挨拶しに行くか」
「しししっ! おう! あいつらをブッ飛ばして、ゾロの刀を取り戻してくるぞ!」
誇り高き剣士ロロノア・ゾロと、権力を振りかざす独裁者モーガン。
シェルズタウンの闇を撃ち払うスカッと制裁の瞬間が、刻一刻と近づいていた――。
ご覧いただきありがとうございました!
第14話では、原作でも屈指の名シーンである「リカちゃんのおにぎり」と、ゾロの信念・漢気溢れる姿をじっくりと描きました!
ヘルメッポの身勝手な横暴と、それに対するルフィ&ルーサスの静かな怒り……!
次回第15話は、ついに海軍支部タワーへ突入!
独裁者モーガン大佐への爽快な制裁と、ゾロの勧誘&仲間入りを大迫力で描いていきます!
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