【ONE PIECE】電気(ことわり)を統べる者 〜海賊王の右腕となる雷の能力者〜 作:フォレスティアル
第2話はコルボ山でのエース、サボとの出会い編です。
シャンクスたちがフーシャ村を旅立ってから、数ヶ月が過ぎた頃。
昼下がりの『マキノの店』で、俺とルフィはカウンターに並んで座り、のんびりとジュースを飲んでいた。
「あーあ、シャンクスたち行っちゃったなぁ……。なぁルーサス、俺たちも早く海に出たいぞ!」
「焦るなルフィ。船を出すにも体力と知識が必要だ。まずは基礎訓練からだろ」
俺はグラスを傾けながら、体内の生体電流で氷の温度を微調整し、溶ける速度をコントロールする練習(微小熱運動の制御)をしていた。平和で穏やかな日常。
――だが、その平和は唐突に打ち破られた。
バギャァアン!!
酒場の頑丈な木製扉が、爆発音のような音を立てて吹き飛んだ。
「ルフィーーーっ!! ルーサスーーーっ!! お前らどこにおるかぁぁぁ!!」
「「ぶへっ!?」」
入り口に立っていたのは、巨躯を誇る海軍の英雄――ガープ中将だった。
ガープは凄まじい鬼の形相で店内に入ってくるなり、俺とルフィの首根っこを大きな手で鷲掴みにした。
「じ、じいちゃん!? なんでここに!?」
「黙れルフィ! 赤髪のバカに毒されおってからに! お前らを一人前の男にするため、今日から特別訓練じゃ! 荷物をまとめろ……いや、そのまま行くぞ!」
「ちょっと待てガープ中将! 俺まで巻き込むな!」
俺は身を捩り、身体の表面に微小な『電磁反発力』を発生させて拘束を解こうとした。
だが、ガープの手には容赦なく『覇気』が纏わされる。
「ガハハ! 無駄だルーサス! お前が自然系『ライライの実』の能力者で、頭の回る賢いガキだということは赤髪から全部聞いておる!」
ガープは俺を片腕でひょいと抱え上げると、ニカッと豪快に笑った。
「ルフィみたいなアホはともかく、ルーサス! お前ほどの頭脳とロギアの力があれば、海軍に入れば間違いなく将来の大将……いや、元帥の参謀として世界を動かせる逸材じゃ! ワシの孫として、今日から徹底的に海兵教育を叩き込んでやるからな!」
「俺は海軍に入る気はない! ルフィの右腕になるんだ!」
「許さん! お前のような天才を海賊になどさせてまるか! 行くぞ、コルボ山へ!」
「「うわあああぁぁぁっ!?」」
俺とルフィは悲鳴を上げる間もなく、ガープによって首根っこを掴まれたまま、フーシャ村からコルボ山の深緑の中へと引きずられて行ったのだった。
◇
「今日からここがお前らの家だ! 仲良く暮らしやがれ!」
ドゴォン!!
「「ぶへっ!!」」
コルボ山にある山賊ダダンの庵の前に、けたたましい破壊音が響き渡った。
ガープの容赦ない『愛の拳』が俺とルフィの頭に振り下ろされる。
「痛ぇぇぇ!! なんで殴るんだよガープじいちゃん!」
「ガハハハ! 痛ぇのは当たり前だ! いいかダダン、この二人の面倒を見ろ! ルーサス、お前も海軍に入る気になったら上がってこい!」
そう吐き捨ててガープは去っていったが、去り際の顔には、どこかルーサスを「手のかかる賢い孫」として見込んでいるような笑みが浮かんでいた。
◇
ガープが去った後、庵の入口には腕を組んで立っていた一人の黒髪の少年がいた。
ポートガス・D・エース。
海賊王ロジャーの血を引く少年であり、ガープが隠し育てているもう一人の「孫」だ。
「……けっ、またガープの連れてきたガキか。足手まといはいらねぇんだよ」
エースは俺たちを一瞥すると、ペッと唾を吐き捨てて一人で森の奥へと走り去ってしまった。
「待てよエースー! 俺も連れてけー!」
ルフィは早速その後を追いかけて走っていく。
(相変わらずの行動力だな……だが、今のエースは世界への憎しみと孤独を抱えている。力ずくで追いかけても追いつけないし、心も開かない)
俺は焦らず、腰に差した鉄パイプの感触を確かめた。
手元で目に見えないほどの微細な電荷を発生させ、体内の生体電流を活性化させる。
『――【生体電磁加速(バイオ・スパーキング)】』
ドォン!
神経伝達速度を電磁力で爆発的に引き上げ、足の筋肉へ瞬時に過電流を流す。
俺の身体は落雷のような初速で地面を蹴り、一瞬でルフィの隣を通り抜けてエースの背後へと肉薄した。
「なっ……!? なんだアイツ、急に消えた……!?」
後ろからルフィの驚愕する声が聞こえる。
森の中を凄まじいスピードで逃げるエースだったが、俺は木の幹から木の幹へ、電磁力の反発を利用して滑空するように追走した。
「ちっ……! しつこい野郎だ!」
エースが振り向きざまに、巨大な大樹の太い枝を蹴り折って落としてくる。
「危ねぇ!」というルフィの叫びが遠くから響くが、俺は立ち止まらない。
かざした右手から、空気中の分子を電離させた荷電粒子を放出する。
『――【高周波電磁断裂(プラズマ・スライサー)】』
バチバチッ……シュァン!
見えない衝撃波のようなプラズマの刃が空気を切り裂き、頭上から落ちてきた巨木を粉々に粉砕した。
木屑が舞い散る中、俺は静かにエースの目の前の枝に着地する。
「な……なんだお前……!? 今の力は……悪魔の実か!?」
エースが目を見開き、手に持った鉄パイプを構え直した。その瞳には、強い警戒心と――圧倒的な力に対する驚きが宿っていた。
「俺はルーサス。ルフィの幼馴染で、雷の理(ことわり)を扱う人間だ」
「雷……!? ふざけんな、ただのガキがそんな化け物みたいな力持ってるわけねぇだろ!」
エースは猛然と飛びかかり、鉄パイプを俺の脳天目掛けて振り下ろしてきた。
野生の勘と怒りに任せた、鋭く重い一撃。
だが――。
ガギィィン……!!
エースの鉄パイプは、俺の顔面の数センチ手前で、まるで目に見えない壁にぶつかったかのようにピタリと止まった。
激しい金属音が響き、エースの手元に強烈な反動が跳ね返る。
「くっ……!? なんだコレは……硬ぇ! 何があるんだ!?」
「『ローレンツ斥力』による物理バリアだ。どんなに強く叩いても、俺の磁場を突破することはできない」
俺は静かに手をかざし、磁場の反発係数を少しだけ高めた。
ドォン!
「うわっ……!?」
衝撃波に弾かれ、エースは後ろの草むらへと吹き飛ばされた。
擦り傷を負いながらも、エースはすぐに立ち上がり、鋭い目付きで俺を睨みつけてくる。
「クソが……! お前、何しにここへ来た! 俺をバカにしに来たのか!?」
「いいや。俺はルフィの右腕として、これからこの世界を制覇する。そのために、まずはこの山で最強の男たちと肩を並べに来たんだ」
「……あ?」
「お前も、いずれ海へ出て自分の名前を世界に知らしめたいんだろ、エース。……だったら、俺たちと組まないか?」
「……勝手なこと言ってんじゃねぇよ!」
エースは吐き捨てるように言うと、悔しそうに歯を食いしばりながら森の奥へと消えて行った。
(フッ……素直じゃないな。だが、これで存在は強烈に刻み込めた)
遅れて息を切らしたルフィが追いついてくる。
「ハァ……ハァ……! ルーサスすげぇ! エースを吹っ飛ばしたのか!?」
「吹き飛ばしてはいないさ。ただ挨拶をしただけだ。……行くぞルフィ、次はサボという男にも会いに行く」
こうして、俺たちのコルボ山での厳しい修行と、熱い絆の物語が始まった。
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次回はサボとの出会いと、4人での修行・共闘を描いていきます!