【ONE PIECE】電気(ことわり)を統べる者 〜海賊王の右腕となる雷の能力者〜 作:フォレスティアル
第27話はいよいよ『バラティエ編』クライマックス!
去り際の『鷹の目ミホーク』に対し、ルーサスがルフィへの絶対的な信頼を語る熱い対話! そして首領・クリークの全兵器と猛毒を物理制御で完封する圧巻の無双劇!
ルフィの信念の拳と、海の男たちの絆が紡ぐ感動の旅立ちを、大ボリュームの長文で丁寧にお届けします!
ゾロの決死の誓いを受け止め、黒刀を収めた『鷹の目』ミホークが、静かに漆黒の小舟へと歩みを進めようとしたその時――。
止血処置を終え、ポケットに両手を戻した俺とミホークの視線が、海風の吹く甲板上でまっすぐに交錯した。
「……見事な手際だな」
ミホークが足を止め、猛禽のような黄色の瞳を俺へと向けた。
「あのコンマ数秒の間に、極小の力場で創傷面の細胞を固定し、流血を完全に止めた。ただの医学でも、通常の悪魔の実の能力でも説明がつかん。……『ルーサス』と言ったな」
自分の名を呼ばれたことに、俺は静かに片眉を上げた。まだ名乗りもしていないはずだ。
「ほう……初対面のはずだが、俺の名を知っているのか」
「赤髪から聞いている」
ミホークの口元に、かすかな笑みが浮かんだ。
「あいつが東の海から戻った際、酒の席でな。『ガープの元で育ち、あの小僧の船で知略と理外の力を振るう異次元の参謀がいる』と……嬉しそうに語っていたぞ」
「なるほど、シャンクスか。余計な噂を吹き込んでくれたものだな」
俺は不敵に微笑むと、視線だけをミホークへと集中させ、意識の深層から『圧倒的な威圧』を解放した。
極小の空間収縮を伴う、ピンポイントの『覇王色の覇気』。
ド重い空気の歪みが、ミホークただ一人を正確に狙い撃ちして襲いかかる。
「……ッ!?」
ミホークの黄色の瞳が激しく見開かれ、背中の黒刀がかすかに共鳴して震えた。周囲の料理人やクリークの部下たちには一切破片すら伝わらない、完璧に制御された超高密度の覇王色。
「……間違えるなよ、ミホーク」
俺はポケットに両手を突っ込んだまま、静かに、だが絶対的な確信を込めて言い放った。
「あの男……俺の船長は、将来間違いなく世界を揺るがす大物になる。この俺が、一生を賭けてついて行きたいと思えた唯一の人物だからな。シャンクスが腕を賭けた理由も、あんたなら理解できるはずだ」
「……フフっ」
至近距離でルーサスの覇王色を正面から浴びたミホークは、恐怖するどころか、興奮を隠しきれないように低く笑った。
「なるほど……赤髪の言葉以上に面白い男だ。貴様ほどの怪物がそこまで買い被る男……そして、あの一筋縄ではいかん剣士。あいつが率いる船ならば、確かに世界の頂点すら届き得るのかもしれんな」
ミホークは最後に、デッキで笑顔を浮かべるルフィを振り返った。
「そこの小僧。面白い仲間を持ったな。我を知り、世界を知り、強くなれ。……貴様らがこの海の頂点へ登り詰めてくる日を、楽しみに待っている」
ミホークの小舟が、静かに波間へと消えていく。
「……ふっ、行っちゃったな」
俺が肩をすくめると、静観していた首領・クリークが、瓦礫の中から黄金の鎧を軋ませて正気を失った眼光で立ち上がった。
「ハハハハハ! 鷹の目も消えた! この船も、バラティエも、全て俺様の物だぁぁっ!!」
クリークはマントの内側から、巨大なガトリング砲と紫色の危険な砲弾を吐き出す筒状の兵器――猛毒ガス弾『M・H・5』を突き出してきた。
「死ねぇぇぇっ! 毒の海に沈め!!」
プシューーッ!!
大量の猛毒ガスが、バラティエのデッキ全体を覆い尽くそうと一気に噴射された。恐怖に悲鳴を上げる料理人たちと、息を呑むサンジ。
――だが、俺はミホークとの対話を終えた余韻のまま、静かに一歩前へ踏み出していた。
固有技の発動――『絶対領域・局所事象改変(イベント・ホライゾン)』。
俺の視線が向けられた瞬間、広範囲に広がろうとしていた紫色の猛毒ガスの分子運動が、コンマ数秒で完全停止した。
「な……ガスの広がりが止まっている……!?」
「――分子結合解体、および真空圧縮」
俺がポケットの中で指先を軽く鳴らすと、完全静止していた毒ガス粒子が、すさまじい電磁密度によって一箇所に激しく凝縮され、最終的には透明な超高圧の液体へと変換されて海へと一瞬で叩き落された。
さらに俺の演算は止まらない。クリークが身に纏う全身の黄金の鎧、剣山マット、剣、ガトリング砲――そのすべての金属分子の熱振動を極限まで上昇させる。
ジジジジジッ……!!
「あががががっ!? あ、熱いっ!? 鎧が……兵器が熱くて持てねぇぇぇっ!?」
あまりの超高熱に耐えかねたクリークが、自身の誇る全兵器を泣き叫びながら甲板へ投げ捨てた。
「東の海の覇者と聞いて呆れるな。……玩具を取り上げられたら、ただの図体のデカい男か」
俺が冷ややかに見下ろす横で、ルフィが静かに一歩前へ出た。その瞳には、どんな猛毒や巨大な武器よりも恐ろしい『死を恐れない信念』の光が宿っていた。
「全身に何百の兵器を仕込んでも、腹にくくった『一本の槍』にゃ敵わねぇ事がある……!」
「ガキが……調子に乗るなぁぁぁっ!!」
素手で襲いかかるクリークに対し、ルフィは一切の怯みもなく踏み込んだ。
「ゴムゴムの―――銃乱打(ガトリング)!!!」
ドガガガガガガガガガガッ!!!!
無数の拳がクリークの巨体と黄金の鎧を完全に粉砕し、そのままクリークは海へと盛大に叩き落された。東の海最強と呼ばれた海賊艦隊の完全なる幕引きだった。
――激闘が終わり、静けさを取り戻したバラティエの甲板。
ルフィは壊れたデッキに座り込み、サンジへと向き直った。
「サンジ、一緒に来いよ。海賊王の船のコックになれ」
サンジは煙草に火を点け、遠い海を見つめながら静かに首を振った。
「断る。俺はここで、あのクソジジイと一緒に店をやっていく……」
その言葉を聞いていた厨房の奥で、ゼフや料理人たちが静かに息を呑んでいた。サンジが自分への「命の恩」と「脚を奪った罪悪感」から、ずっと自分の夢である『オールブルー』を諦め、この店に縛られ続けていることを、誰もが知っていたからだ。
「そうか。じゃあ無理には誘わねぇ」
ルフィがニシシと笑う。
そして数日後――傷の癒えたゾロ、ウソップ、ナミ、そしてルフィと俺がメリー号へ乗り込もうとしたその時だった。
サンジが自分の荷物を入れたボストンバッグを肩に担ぎ、静かにタラップを降りてきた。
「おい……サンジ、お前……!」
パティたち料理人たちが包丁を構え、芝居がかった悪態をつき始めた。
「おいおい! 無断で店を辞める気かクソコック! 出て行くならサッサと失せやがれ!」
「そうだ! お前のへたくそな料理なんか、もう二度と食いたくねぇんだよ!」
涙を必死に堪えながら怒鳴り散らす料理人たち。サンジもまた、不敵な笑みを浮かべて背中を向けた。
「へっ……最後までクソな野郎どもだぜ。二度と会うこともねぇよ」
サンジがメリー号へと足を踏み入れようとした――その瞬間。
2階のレストランの窓から、静かで重々しい声が響いた。
「――風邪ひくなよ」
ゼフの声だった。
その一言を聞いた瞬間、サンジの足がピタリと止まった。
これまでどんな苦難にも、どんな強敵にも決して涙を見せなかった男の肩が、激しく震え始める。
サンジは荷物を地面にドサリと落とすと、その場に深く膝をつき、両手と額を床に擦り付けた。溢れ出る涙が、木造のデッキを濡らしていく。
「……ゼフオーナー……!!」
サンジは声を大にして、涙とともに己の全人生の感謝を叫んだ。
「長い間!!! クソお世話になりました!!! このご恩は一生……忘れません!!!!」
「「「がんばれよーーーーっ!!! サンジぃぁぁぁぁぁっ!!!!」」」
料理人たちが涙と鼻水を流しながら大声で歓声を上げる。ゼフもまた、帽子を目深にかぶり、静かに涙を拭っていた。
「……ふっ、いい仲間を得たな、ルフィ」
俺はポケットに手を突っ込んだまま、メリー号の甲板からその光景を温かく見守っていた。
こうして、最高のコック『黒足のサンジ』を新たな仲間に迎えた麦わらの一味は、ついに次なる目的地――ナミの故郷であり、魚人海賊団アーロン一味が支配する『ココヤシ村(アーロンパーク)』へと向けて舵を切るのだった――。
ご覧いただきありがとうございました!
第27話をもって、大盛り上がりの『バラティエ編』が堂々完結いたしました!
ミホークだけに放つピンポイントの覇王色とルフィへの絶対的な信頼、首領・クリークの猛毒や兵器を物理制御で鮮やかに無効化する無双劇、そしてサンジの旅立ちの名シーン「クソお世話になりました!」を長文で丁寧に描き切りました。
次回第28話からは、いよいよ東の海編最大の激闘『アーロンパーク編』が開幕します!
ナミが背負う絶望の過去と涙、そしてナミを救うために立ち上がるルフィたちと参謀ルーサスの圧倒的な頭脳戦をお届けします!
※ちなみに今作のルフィは、どんな強敵相手でも「相手の能力や全力を引き出しつつ、自分も戦闘を楽しむため」にあえて最初から全力を出さず力をセーブして戦うスタンスをとっています(ドラゴンボールの孫悟空のようなイメージです)。
参謀ルーサスから見ても「またあいつ遊んでるな」と見抜かれている、ルフィの底知れぬ強さにもぜひご注目ください!
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