【ONE PIECE】電気(ことわり)を統べる者 〜海賊王の右腕となる雷の能力者〜 作:フォレスティアル
おかげさまで第30話という節目の回を迎えることができました!
今回は『アーロンパーク』への本格殴り込みと、それぞれの激闘の幕開けをお届けします。
逃げ場を完全に塞がれた魚人海賊団が繰り出す全力の武力に対し、一味がどう立ち向かうのか。熱い戦闘の火蓋が切って落とされます!
ココヤシ村を押し包んでいた重苦しい絶望の静寂は、男5人の力強く踏みしめる足音によって静かに打ち破られていた。
先頭を歩くルフィの表情には笑みも怒りもなく、ただ静かな殺気が宿っている。そのすぐ後ろを、ゾロが腰の三本の刀の柄に手を掛けながらニヤリと不敵に笑って従い、サンジはポケットに両手を突っ込んだまま静かにタバコに火を点けた。ウソップは脚をガクガクと震わせ、緊張で生唾を飲み込みながらも、パチンコを固く握りしめて離さない。そして俺は、両手をポケットに入れたまま、周囲の空間データと熱運動パラメータを絶え間なく演算・更新し続けていた。
「おい、ルフィ。あのバカでかい門はどうするんだ?」
ゾロが前方に見えてきた巨大な鉄製の建造物を見上げて尋ねる。
「開けてもらう必要はねぇよ」
ルフィが足を止め、目の前に聳え立つ『アーロンパーク』の重厚な正面門を見上げた。門の奥からは、酒を酌み交わし、人間を「下等種族」と見下して高笑いする魚人たちの下品な声が漏れ聞こえてくる。
「……ゴムゴムの――」
ルフィが腰を深く落とし、右腕を後方へと長く、長く引き伸ばしていく。ゴムの伸縮によって蓄積された位置エネルギーが、極限まで爆発的な運動エネルギーへと変換されていくのを、俺の電脳空間の眼が見捉えた。
「――ピストル!!」
ドドォォォォォン――ッ!!!
激しい爆音とともに、数トンはある巨大な鉄門が、まるで紙くずのように内側へと粉々に吹き飛ばされた。
アーロンパークの敷地内に巻き起こる猛烈な爆風と土煙。園内で呑気に酒を飲んでいた数十匹の魚人たちが、口から酒を噴き出して驚愕と困惑の声を上げる。
「な、なんだぁぁああっ!? 門が破られたぞ!?」
「誰だ! このアーロンパークに怒鳴り込んできた命知らずの人間どもは!!」
もうもうと立ち込める煙が晴れていく中、真っ直ぐに歩みを進めるルフィ。その背後にゾロ、サンジ、ウソップ、そして俺が並び立つ。
「ナミの航海士の部屋はどれだ?」
ルフィの低く鋭い声が、静まり返った園内に重く響き渡った。
その園内中央、豪華なイスに深々と腰掛け、ノコギリ状の巨大な鼻を鳴らしている男――魚人海賊団船長『アーロン』が、冷酷で蔑むような眼差しで俺たちを見下ろした。
「シャハハハハ! 人間の分せいで我がアーロンパークの門を壊すとはな。……おい、麦わら。ナミは俺たちの『仲間』だ。優れた地図を描く能力を持つ高等の種族(魚人)に仕えるのが、下等種族である人間の誉れというものだろ?」
アーロンの言葉に、サンジが煙草の煙を紫煙とともに吐き出しながら、冷ややかな眼光で一歩前へ出た。
「おいおい、クソ魚。レディの心を傷つけて涙を流させた罪は重いぜ。……蹴り殺されてぇのか?」
「シャハハハ! 青二才どもが調子に乗るな! たとえ陸の上で少しばかり立ち回れたところで、俺たち魚人は海の王者だ! 不利と見れば海へ飛び込み、お前たちの船もろとも海底の藻屑にして、遠くの海へ逃げ切ることもできるのだぞ!!」
アーロンが高笑いを響かせると、六刀流のタコ魚人『ハチ』、エイの魚人『クロオビ』、キス魚の『チュウ』ら幹部たち、そして大勢の雑魚魚人どもが一斉に勝ち誇ったような笑い声を上げた。
「……逃げ切る、か」
俺はポケットに両手を突っ込んだまま、冷ややかな視線をアーロンに向けた。
「お前たちの戦術と余裕は、常に『不利になれば沖へ逃げられる』という退路の上に成り立っている。……なら、その遠くへの逃げ場だけを奪ってやる」
「あぁ……!? なにをたわけた事を――」
アーロンが言いかけた瞬間、俺はポケットの中で指先を静かに鳴らした。
固有技――『絶対領域・環状熱力学遮断・外周氷壁(アブソリュート・ウォール)』。
ピキィィィィィィン……!!!!
世界から一瞬だけ音が消え、続いて大地と海が凄まじい音を立てて震動した。
次の瞬間、ココヤシ村とアーロンパークを取り囲む遥か沖合の海上に、天を突くほど巨大な『氷の環状大外壁』が一瞬にして切り立った。
島全体を遠くからぐるりと完璧に囲い込む、圧倒的な白銀の円形要塞。船による島外への脱出や、沖合への遠方逃亡を完璧に封絶する絶対の壁だ。
「な……ッ!!?? 海の遥か沖に……巨大な氷の壁が巻き上がったぞ!?!?」
「バ、バカな!! 船も出せねぇし、沖へ泳いで逃げることも出来ねえぇぇぇっ!?」
魚人たちが目を見開き、パニックを起こして悲鳴を上げた。
だが、園内の海水プールや沿岸近くの水域はそのまま残されている。敵の水を使った攻撃や水中での戦闘能力は生かしたまま、ただ「遠くへの逃走」だけが不可能になったのだ。
「シャ……シャハ……!? 外海への逃げ場を塞ぎやがったのか……!?」
額に冷や汗を流しつつも、アーロンがニヤリと凶悪な笑みを浮かべ直した。
「フン……面白い! 逃げ道がないなら、この園内の水を使って貴様らを一人残らず噛み殺すまでのこと!!」
敵が不利を悟り、水を含めたすべての武力を『全開』で出さざるを得ない状況が完成した。
俺は静かに壁に背を預け、腕を組んだ。
「遠くへの逃げ場は消した。だが、園内の水も敵の力もそのままにしてある。……幹部どもはお前たちの獲物だ。相手の全力を上回って勝ってこい」
俺はゾロ、サンジ、ウソップへ視線を送る。
参謀としての俺の判断だ。一味がこれから『偉大なる航路(グランドライン)』という地獄へ挑む以上、敵が全力を出してきた状態を正面から破り、最高の経験値(レベルアップ)を獲得させる必要がある。
命の危険がある真のピンチでない限り、これ以上俺が手を貸すつもりはない。
「フン……上等だ。相手が全力を出してくれた方が、叩き潰しがいがある」
ゾロが不敵に笑い、六本の剣を構えるタコ魚人『ハチ』の前に立つ。
「クソ魚、得意の水でも何でも使ってかかってきな」
サンジが鋭い蹴りの構えをとり、魚人空手の使い手『クロオビ』と対峙する。
「ひえぇぇっ! 逃げ場がないなら腹括って全撃で倒すしかねぇぇっ!」
チュウの水鉄砲に狙われたウソップが、半泣きになりながらもパチンコを構え、園外の森へと駆け出していった。
それぞれが原作通りの因縁のカードへと散っていく。
そして中央では、ルフィがニシシと無邪気に笑っていた。
「ルーサス、サンキュ! 相手が本気出せるようにしてくれて助かったぞ!」
ルフィが拳を握りしめ、全力を出そうとするアーロンに向かって前へと踏み出す。
……俺には分かっていた。ルフィの全身から溢れ出る圧倒的な潜在能力。だが、ルフィはあえて最初から全力を出していない。敵の全力を引き出し、自らも『戦闘を楽しむ』ために、故意に力をセーブして遊んでいるのだ。まるでどこかの戦闘民族の男のように。
「また遊んでるな、あいつは……」
俺は苦笑しながら、一味の成長を見守る参謀として静かにこの激闘の行方を見つめるのだった――。
ご覧いただきありがとうございました!
第30話の節目の回は、参謀ルーサスによる『島全体の遠方逃亡を封じる大氷壁』の展開をお届けしました!
魚人たちに「水」や「全力の武力」を使わせる環境を残しつつ、逃げ場だけを奪うことで、麦わらの一味が敵の全力を破って最高の経験値を獲得する盤面が完成!
ウソップvsチュウ、サンジvsクロオビ、ゾロvsハチ、そしてルフィvsアーロンの全開バトルがここから本格スタートします!
次回第31話は、一味の幹部戦と、ルフィの力をセーブした戦闘スタイルをルーサスが分析する熱いバトルを描いていきます!
※今作のルフィは「敵の全力を引き出しつつ自分も戦いを楽しむ」ために、あえて初手から全力を出さずに力をセーブするスタンス(ドラゴンボールの孫悟空スタイル)をとっています。参謀ルーサスだけがその本質を見抜いている信頼関係にもぜひご注目ください!
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