【ONE PIECE】電気(ことわり)を統べる者 〜海賊王の右腕となる雷の能力者〜 作:フォレスティアル
第33話はいよいよ『アーロンパーク編』超大ボリュームの完全クライマックス&エピローグ!
ナミの8年間の絶望と痛みを背負ったルフィが全力を解き放ちアーロンとの決戦に挑みます。
激闘の結末、賑やかな宴、そしてココヤシ村の旅立ちを描いた感動の決着をぜひ最後までお楽しみください!
「お前みたいな奴はな……!! 俺が、完全に叩きのめさなきゃ気がすまねぇんだよっ!!」
ルフィの咆哮とともに、アーロンパークの中庭の空気が、ドォン!! と激しい衝撃波を立てて爆ぜた。
それまであえて攻撃を受け止め、相手の出技を引き出すように「力をセーブして戦っていた」ルフィの雰囲気が一変する。全身から放たれているのは、圧倒的な質量を持った怒りと、空気を目に見えて歪ませるほどの凄まじい覇気だった。
「シャ……シャハハ……! 冗談じゃねぇぞ、人間が……!! 一瞬で出力を引き上げただと……!?」
アーロンが額に青筋を立て、フラつきながら立ち上がる。その瞳は完全な殺意と狂気に染まりきっていた。
「調子に乗るなよ、人間がぁぁぁっ!! 俺たち魚人は生まれながらの進化の頂点! 貴様ら軟弱な種族とは根底から作りが違うのだ!! 『鮫(サメ)ONダーツ』っ!!」
アーロンが海水プールへ跳び込むと、魚人ならではの爆発的な推進力で水面を切り裂き、水弾並みの速度でルフィの胸元へ一直線に突き刺さるべく突進した。ノコギリ状の鼻が、音を立てて空気を切り裂く。
だが――ルフィはその高速突進を、寸分違わぬ眼光で見切っていた。
「遅ぇよ」
シュッっ!
ルフィは紙一重でアーロンのノコギリ鼻をかわすと、伸ばした腕でアーロンの巨頭を空中で強固に掴み取った。運動エネルギーが完全な静止へと変わる。
「な……ッ!? 捕まった……!? 魚人の水中の速度を、陸の上で手で受け止めたというのか!?」
「お前がどれだけ強くても……どれだけ偉そうにしててもな……」
ルフィはアーロンの頭を掴んだまま、アーロンパークの最上階――ナミが8年間、閉じ込められて地図を描かされ続けてきた『測量室』の窓へと視線を向けた。
「あそこに……ナミの辛い思い出が全部詰まってんだろ」
「シャハハハ! そうだ! あの部屋はナミの才能の証! あいつは一生、俺たちのために世界地図を描き続ける道具なんだよ!!」
アーロンの高笑いに、ルフィの瞳の奥で青い炎のような怒りが静かに燃え上がった。
(……なるほどな)
崩れ落ちた壁の陰。両手をポケットに突っ込んだまま、参謀ルーサスは静かに解析フレームの数値を更新していた。
ルーサスの電脳空間(VR)には、アーロンパークの構造耐性と、ルフィが解き放とうとしている全エネルギーのベクトルが完璧に描かれていた。
(ルフィの目的は、単にアーロンを倒すことじゃない。ナミを縛り続けてきた『物理的な呪縛』――あの測量室、そしてアーロンパークという絶望の象徴そのものを、この島から跡形もなく消し去ることだ)
参謀として、ルーサスは一切の手出しをせず、ただその終焉を見届ける姿勢を貫いた。
外海を塞ぐ氷壁は今も完璧に機能を果たしており、アーロンに逃走の芽はない。お膳立てはすべて完了している。あとは船長が、己の拳で仲間の未来を切り開くだけだ。
「ナミの居場所は……こんな冷たい部屋じゃねぇ!!」
ルフィが咆哮した。
ルフィの脚がぐんと伸び、空中高くへと跳ね上がる。アーロンの巨体を引っ掴んだまま、ルフィの脚が遥か上空、アーロンパークの屋上を超えて天へと伸びていった。
「ゴムゴムの――」
空中で足首が何重にも捻られ、位置エネルギーとゴムの復元力が極限まで蓄積されていく。
「や、やめろぉぉぉっ!! 俺の城が……俺のアーロンパークがぁぁぁっ!!」
恐怖に顔を歪め、悲鳴を上げるアーロン。
「――大槌(オノ)――――――っ!!!!」
ギィィィィィン……ドォォォォォォォォォォン―――――ッ!!!!
天空から振り下ろされた巨大にかかとおとしが、アーロンの頭部を捉え、そのままアーロンパークの最上階――『測量室』へと垂直に叩きつけられた。
何千枚、何万枚ものナミが血と汗で描き続けてきたペンや紙、測量器具が、一瞬にして爆風とともに夜空へと舞い散る。
ズガガガガガガガッ!! ボカァァァァンッ!!
爆音は止まらない。ルフィの一撃の威力は測量室を突き破り、階下、中庭、そしてアーロンパークの基礎土台にまで達した。
巨大な塔が内側から崩壊を始め、数トンの瓦礫と巨石が地鳴りを立てて崩れ落ちていく。
「ギャアァァァァァァ―――ッ!?」
アーロンの絶叫とともに、東の海を恐怖で支配していた悪夢の城郭『アーロンパーク』が、完全に粉々に粉砕され、土煙の彼方へと沈んでいった。
………………。
静寂が訪れた。
舞い散る砂塵と、空からひらひらと降り注ぐ無数の紙くず。
それは、ナミが8年間閉じ込められ、買い戻すために描き続けてきた思い出の残骸であり――ナミを縛りつけていた鎖が解き放たれた証だった。
瓦礫の山の中央。
満身創痍のルフィが、崩れた石の上に立ち上がり、空を仰ぎ見て息を整えていた。
その足元には、完全に白目を剥き、二度と立ち上がることのないアーロンの姿があった。
「はぁ……はぁ……」
ルフィは静かに呼吸を整えると、遠くで涙を浮かべて立ち尽くしているナミに向かって、腹の底からの大声を張り上げた。
「「「ナミ――――――ッ!!!!」」」
「……っ!!」
「「「お前は俺の……仲間だぁぁぁぁぁぁぁぁぁっ!!!!」」」
空を突き破るようなルフィの叫びが、ココヤシ村全体に、そして静まり返った島中に響き渡った。
ナミの目から、溢れ出る涙が止まらない。
膝をつき、両手で顔を覆いながら、ナミは子供のように泣きじゃくった。8年間、一人で背負い続けてきたあまりにも重い絶望が、ついに消え去ったのだ。
「……勝ったんだな、ルフィの奴」
ウソップが涙と鼻水を流しながら、木に背を預けて笑った。
サンジは静かにタバコに火を点け、紫煙越しにナミの泣き顔を優しく見守った。
ゾロは刀を納め、満足そうにフッと鼻で笑うと、そのまま倒れ込むように草むらに横たわった。
そして――。
ルーサスはポケットに両手を突っ込んだまま、静かに歩み寄り、空を見上げた。
「……氷壁の解除」
ルーサスが指先を鳴らすと、沖合を塞いでいた天を突く巨大な氷壁が一瞬にして粒子となって消え去り、澄み渡った青空と穏やかな海がココヤシ村へと戻ってきた。
「パパパパパッ!! 撮った! 撮ったぞぉぉぉっ!!」
物陰から、世界経済新聞の記者が狂喜乱舞しながら飛び出してきた。
「『東の海の覇者アーロンパーク完全崩壊』! 『謎の男ルーサスの規格外の能力』! そして『アーロンパークで大暴れした麦わらのルフィ』! これは世界を揺るがす超大ニュースだぁぁぁっ! 今すぐ本社へ通信して緊急号外を全世界に配るぞっ!!」
記者はカメラを握りしめ、爆速で電電虫へ向かって走り去っていった。
「フッ……これで盤面は完成だ」
ルーサスは口元を不敵に歪めた。
これでルフィの名は一気に世界中へ知れ渡り、原作通り東の海最高額となる『3000万ベリー』の初額手配書が発行される。世界政府も海軍本部も、もはやこの存在を無視することはできない。そして何より――海軍中将ガープであっても、全世界に配られた号外の前では、孫の海賊行為を隠蔽することは不可能な状態が完成したのだ。
◇
アーロンパークが崩壊したその日の夜、ココヤシ村では村を開放された歓喜の『大宴会』が開催された。
村中からかき集められた酒と肉、美味しそうな料理が広場にズラリと並べられる。
村人たちは涙を流しながら笑い合い、ルフィたちは腹が狂うほど肉を喰らい、酒を浴びるように飲んでいた。
「ひゃっはー! 宴だ宴だぁぁぁっ!!」
ルフィが鼻に箸を突っ込んでバカ踊りを披露し、ウソップとサンジがそれに合わせて大爆笑する。ゾロは大量の酒樽を担ぎ上げ、豪快に飲み干していた。
そんな喧騒から少し離れた場所で、ナミが静かに歩み寄ってきた。
ナミの表情からは、昼間までの暗い影は完全に消え去り、あたたかな笑顔が戻っていた。
「……ルフィ、ゾロ、サンジ、ウソップ……そしてルーサス」
ナミの声に、一味が振り返る。ナミは深々と頭を下げ、言葉を詰まらせながら感謝を伝えた。
「本当に……本当にありがとう。みんなが来てくれなかったら、私……私ずっと、あの地獄から抜け出せなかった。私を助けてくれて……本当に、ありがとう!!」
「しししっ! 何言ってんだナミ! お前は俺たちの仲間なんだから当たり前だろ!」
ルフィが肉を咥えたままニシシと笑う。
「ふふ、そうね。……私、決めたわ。私、みんなと一緒に海へ行く。世界中の海を回って、自分の目で見た最高の世界地図を描くの!」
ナミの力強い宣言に、男たちは歓声を上げた。ルーサスもポケットに手を突っ込んだまま、静かに口元を緩めた。
「歓迎するよ、航海士さん。お前の能力がなけりゃ、『偉大なる航路(グランドライン)』の過酷な海は渡れないからな」
その夜の宴は、朝まで途切れることなく続いたのだった。
◇
そして、翌朝。
澄み渡る朝焼けの光が、ココヤシ村の港を優しく照らしていた。
海岸には、修復と補給を終えた麦わらの一味の船が停泊しており、出航の準備が整えられていた。
村の広場には、ノジコや村長のゲンさんをはじめ、ココヤシ村の住民たちが大勢集まっていた。
「おい……ナミの奴、まだ来ねぇのか?」
ウソップが荷物を運び込みながら首を傾げる。
「ふーむ、出航の準備は完璧に完了しているがな。荷物もナミのミカンの木もすべて船に運び終えている」
ルーサスが端末のリストを確認しながら答えると、港の坂道の上から、軽やかな足音が響いてきた。
「みんなどうもありがとうー! お世話になりましたー!」
ナミが満面の笑みで、手を振りながら坂道を走ってくる。
村人の間をすり抜ける瞬間――ナミの手がしなやかに動き、村人たちのポケットや財布から、目にも留まらぬ速さでサイフを次々とスり取っていった。
「じゃあねー! みんな元気でねー!」
ナミがひらりと船のデッキへと飛び乗る。
「……ん? あれ、俺のサイフがねぇ!?」
「あ! 俺のサイフもねぇぞ!?」
「あの野郎ーっ!! 最後の最後に村全員のサイフをスりやがったぁぁぁっ!!」
村人たちが一斉に怒鳴り声を上げ、港が大騒ぎになる。
だが、ナミの義理の姉であるノジコだけは、腕を組んでクスクスと嬉しそうに笑っていた。
そして、駐在のゲンさんは、涙をボロボロと流しながら、大声で船の上のナミに向かって叫んだ。
「ナミ―――っ!! 辛くなったら、いつでも帰ってくるんだぞ―――っ!!」
ナミは風に髪をなびかせながら、村人たちに向かってサイフをかざし、眩しい笑顔で大声で振り返した。
「いってきま―――――すっ!!!!」
錨が上げられ、帆が風を孕んで広がっていく。
超高速艇と一味の船が、ココヤシ村の港を離れ、青くどこまでも広がる大海原へと滑り出した。
「しししっ! 出航だぁぁぁっ! 目指すは『始まりと終わりの町』――ローグタウンだぁぁぁっ!!」
ルフィが船首に飛び乗り、空に向かって拳を突き上げた。
8年間の絶望を打ち砕き、最高の仲間を得て、麦わらの一味は次なる冒険の舞台へ向かって進み始める。
『アーロンパーク編』――ここに堂々の完結!!
ご覧いただきありがとうございました!
第33話をもちまして、長きにわたる『アーロンパーク編』がここに堂々完結となりました!
ナミの絶望を粉砕するルフィの怒りの大槌、熱い宴、そしてココヤシ村の旅立ちを描いた感動のエピローグをお届けしました!
次回第34話からは、いよいよ『偉大なる航路(グランドライン)』への入口である『ローグタウン編』が開幕します!
始まりと終わりの町で一味を待ち受ける新たな出会いと試練を、どうぞお楽しみに!
※今作のルフィは「敵の全力を引き出しつつ自分も戦いを楽しむ」ために、あえて初手から全力を出さずに力をセーブするスタンス(ドラゴンボールの孫悟空スタイル)をとっています。参謀ルーサスだけがその本質を見抜いている信頼関係にもぜひご注目ください!
面白かったら評価やブックマークをしていただけると、すごく執筆の励みになります!