【ONE PIECE】電気(ことわり)を統べる者 〜海賊王の右腕となる雷の能力者〜   作:フォレスティアル

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第37話は、処刑台での絶体絶命の危機と大荒れの雷撃、そして裏で同時進行していたゾロの「名刀との出会いとたしぎとの邂逅」を描く超ボリューム回!
ルフィの危機とゾロのドラマが交錯する緊迫の展開を、ぜひお楽しみください!



第37話 『処刑台の刃と、盤上を穿つ落雷』

鉛色の雲が街全体を重く押し潰すように垂れ込め、ローグタウンの中央広場を冷たい雨が激しく打ち付けていた。

石畳の路面を叩く雨音だけが不気味に響き渡り、吹き抜ける海風は肌を刺すように冷たい。

 

広場の中央にそびえ立つ、かつて海賊王ゴールド・ロジャーが首を落とされた伝説の『処刑台』。

その冷たい鉄と木造で作られた高所へ上り詰め、荒れ狂う海を見渡していたルフィは、一瞬の恐れすら抱くことなく、むしろ心底楽しそうな笑みを浮かべていた。

 

「ししし! すげぇな、ロジャーもここから同じ海を見たのかな!」

 

強敵との戦闘を心から愛し、自身の底知れぬ潜在能力すらもまだ限界まで解き放たずに「戦いの過程そのもの」を全身で満喫しているルフィにとって、この歴史的な処刑台は恐怖の対象ではなく、旅のロマンの象徴でしかなかった。

しかし――その「戦いと空気を楽しむ」がゆえの余裕と、ほんのわずかな油断が、冷徹な死角から迫る影を呼び寄せてしまった。

 

「――かかったな、麦わらァ!!」

 

雨音と強風を完璧に切り裂いて放たれたのは、暗器特有の微かな風切り音。

次の瞬間、ルフィの無防備な首筋に、チクリと小さな衝撃が走った。

 

「ん……? なんだこれ、蜂か……?」

 

反射的に首元へと手を伸ばし、それを払いのけようとしたルフィだったが、その瞬間、視界が激しくぐにゃりと歪み始めた。

針の先端にたっぷりと塗られていたのは、東の海(イーストブルー)の猛者や怪力の大男をも一瞬で昏睡させる、極濃縮の特製麻痺毒。

急激に全身の筋肉が弛緩し、手足の感覚が霧散していく。頭が鉛のように重くなり、視界の端から急速に闇が侵食していく中で、ルフィは「あはは、やっちまったな」と言いたげな、どこか間の抜けた苦笑いを浮かべたまま、その場にガクリと膝をついた。

 

「ギャハハハハハハハ!! まんまと油断しやがったな、麦わらのルフィ!!」

 

豪快な笑い声とともに、周囲の煙幕から姿を現したのは、派手な赤鼻と道化のメイクを施した男――道化のバギーであった。その傍らには、かつてルフィに敗北したものの、悪魔の実の力で美貌を手に入れ、再びバギーと手を組んだ女海賊アルビダが冷ややかな笑みを浮かべて立っている。

 

「東の海の賞金首トップが聞いて呆れるぜ! まさかこんなアッサリと罠にかかりやがってよォ!!」

 

意識が朦朧とする中、ルフィは木製の拘束具によって、処刑台の台座へと両手両足を固く縛り付けられていく。

 

「おい見ろおめえら!! 東の海を賑わせたあの『麦わらのルフィ』が、今や俺様の手で処刑台の上のさらし者だ!! かつて海賊王が死んだこの場所で、俺様がその首を生きたまま跳ね切ってやるよ!!」

 

バギーが処刑刀を高く掲げると、広場を取り囲んでいた海賊たちや野次馬の群れから、割れんばかりの歓声と悲鳴が入り混じって沸き上がった。

 

◇

 

――時を同じくして、広場から少し離れた裏通り。

喧騒を遠くに聞きながら、緑頭の剣士ロロノア・ゾロは、古びた佇まいの小さな刀剣店に足を踏み入れていた。

先の戦いで刃こぼれした愛刀の代わりを探すためだった。

 

「おい、店主。この一番安刀(やすとう)のコーナーでいいから、何か使えそうなものは……」

 

カウンターの奥から現れた、眼鏡をかけた気弱そうな店主――一本松が、ゾロの腰に差された三本の刀を見るなり、目を見開いて飛び退いた。

「おいおい待てよ! お前が持ってるその一番上の刀……『和道一文字』じゃねぇか!? 世界に数本しかない大業物じゃねぇか!」

 

「ああ、これは親友の形見だ。売るわけにはいかねぇ」

 

ゾロが苦笑しながらそう答えると、一本松は冷や汗を流しながら店の奥へと引っ込み、いくつかの刀を差し出した。だが、どれもゾロの目に留まるような代物ではない。

そのとき、一本松は怯えた面持ちで、奥の棚から一枚の埃をかぶった刀を取り出した。

 

「こいつは……やめておいたほうがいい。いわゆる『呪い刀』だ。『三代鬼徹』……。この刀を手にした剣士は、例外なく悲惨な死に方を遂げている」

 

ゾロはその言葉を聞くやいなや、むしろ不敵な笑みを浮かべて鞘から刀身を引いた。

青白く冷たく光る、美しい乱れ刃の刀身。ゾロの肌が、本能的な殺気と狂気を敏感に察知して粟立つ。

 

「ふっ……面白い。どれ、運試しといこうか」

 

ゾロは三代鬼徹を宙へ放り投げ、自らの左腕をスッと突き出した。

もし呪いが本物なら、この刀は自らの意思でゾロの腕を切り落とす。一本松が「やめろ馬鹿野郎!!」と絶叫し、思わず目を覆ったその瞬間――。

 

ゾロの腕すれすれをかすめ、三代鬼徹は畳に深く、恐ろしいほどの正確さで突き刺さった。

腕には一筋の傷すらない。ゾロは冷や汗を流しながらも、ニヤリと笑った。

 

「はは……! なかなかの暴れ馬だ。気に入った。これをもらう」

 

そのゾロの尋常ならざる胆力と剣士としての狂気に当てられ、一本松は震えながらも、もう一つの名刀――代々家宝として受け継いできた業物『雪走』を、ゾロに託すのだった。

 

◇

 

新たな相棒を手に入れ、店を出たゾロが雨の中を歩いていたときだった。

ふと、視界の端に、かつての死闘の記憶が痛烈に蘇るような――亡き幼馴染・くいなと瓜二つの後ろ姿が飛び込んできた。

 

「……っ!」

 

思わず足を止めたゾロの前に、青いコートを翻した海軍将校――曹長のたしぎがふわりと振り返った。

その手には名刀『時雨』が握られている。

 

「あなた……待ってください!」

 

たしぎの瞳には、海賊に対する怒りではなく、刀を愛する者としての純粋な、そして強烈な情熱が宿っていた。彼女はゾロが手にした三代鬼徹と和道一文字をひと目見るなり、息を呑んだ。

 

「その刀……『三代鬼徹』と『和道一文字』……!? なんでそんな名刀が、あなたのような海賊の手に……!」

 

たしぎは悔しそうに歯を噛み締めながら、真っ直ぐにゾロを睨み据えた。

「刀にはそれぞれに宿るべき正しい場所があります! 名刀が呪い刀などと呼ばれ、悪人の手に渡るなんて……刀が泣いているわ! 剣士なら、その刀の価値をもっと大切にしなさい!」

 

その言葉に、ゾロはふっと小さく息を吐き、静かな、しかし剣士としての重みのある眼光でたしぎを見据えた。

 

「……刀に意思があるなら、持ち主を選ぶ権利もあるだろ。こいつは俺の腕試しの結果、俺を選んだのさ」

 

「そんなの理屈です! 刀の歴史や背景も知らないくせに……!」

 

「おい、眼鏡の姉ちゃん」

 

ゾロが低く、しかし圧倒的な圧力を伴った声で遮る。

「俺は海賊だが、刀に対する誇りまで捨てた覚えはない。お前、名前はなんて言うんだ」

 

「……海軍本部曹長、たしぎです!」

 

「たしぎ、か。……お前、時々思い出すんだよ。俺の許せねぇ昔の知り合いに、顔も声も、そしてその剣に対するまっすぐすぎるところも……そっくりな奴をな」

 

ゾロの言葉に、たしぎは一瞬虚を突かれたように目を丸くした。

 

◇

 

――その頃、広場から数丁離れた路地裏。

海軍本部准将スモーカーの巨体を『絶対領域』の気流と武装色の覇気で吹き飛ばしたルーサスは、冷徹な瞳のまま、一切の動揺も見せずに静かに佇んでいた。

 

ルーサスの電脳空間(VR)上の網膜データには、離れた処刑台の広場を中心とした生体反応の変動が、寸分の狂いもなくリアルタイムで描画されている。

 

(……ルフィの生体反応が急速に低下。麻痺系薬物による意識障害か。……全く、余計なところで派手に捕まりやがって)

 

ルーサスは冷ややかに息を吐き、コートのポケットから片手を取り出すと、静かに天へと向けた。

その指先から、目に見えぬ幾何学的な波動が、頭上の重い雲海へと放射されていく。

 

「……? なんだ……急に周囲の空気が異様にピリピリし始めやがった……! 雲の動きが……異常な速度で渦を巻いているぞ……!?」

 

スモーカーの野性的な戦闘勘が、全細胞レベルで危機信号を鳴らし始めた。

街の空を覆う黒雲が、まるで生き物のように不自然に収束し、急激に密度を増していく。静電気がバチバチと激しい音を立てて空気を焦がし始めるのを感じ、スモーカーは肌が泡立つのを覚えた。

 

「おい……ルーサス! お前、まさかこの上空の雷雲を……何かとんでもねぇ真似をしやがったのか!?」

 

スモーカーの緊迫した絶叫に対しても、ルーサスは無言を貫く。

説明など必要ない。ルーサスが『絶対領域』の局所熱操作によって周囲の温度と気圧のパラメーターを極限まで書き換え、上空の積乱雲内の氷粒子を猛烈な速度で摩擦させ、莫大なメガボルト級の電荷を一箇所へと強制的に集約させているのだから。

 

◇

 

再び、処刑台の中央広場。

激しさを増す雨の中、バギーは処刑刀を大きく振りかぶり、狂気じみた高笑いを広場全体に響かせていた。

 

「ハァーッハッハッハッハ!! 遺言はあるか、麦わらぁ!! お前の野望もここで終わりだ!!」

 

その大声と冷たい雨の刺激で、ルフィはわずかに意識を薄っすらと取り戻した。

朦朧とする視界のなかで、首を固定され、頭上に振り下ろされようとする冷たい白刃をぼんやりと見上げる。

 

「あ……れ、オレ……いつの間にか縛られてんのか?」

 

「今更とぼけたって遅ぇよ!! もうお前の処刑の時間は終わりだ、死ねぇ!!」

 

誰もが麦わらのルフィの絶体絶命の死を予感し、悲鳴を上げて目を背ける中――ルフィは、なぜか恐怖の色を一切見せなかった。

自分が油断して勝手にハマった窮地ですらも、どこか運命の悪戯として受け入れるように、ニカッと顔一杯に、あの太陽のような笑みを浮かべたのだ。

 

「ししし……! まっ、悪ぃな! オレ、ここで死ぬわ!」

 

その無邪気で一切の迷いがない笑みが広場に響き渡った、まさにその瞬間。

 

**――ドドズオオオオオオオオオオオオオン!!!!**

 

世界が真っ白な光に一瞬で塗りつぶされた。

轟音というレベルを遥かに超え、大気そのものを物理的に粉砕・爆散させるような凄まじい爆発音。

ルーサスが寸分の狂いもなく上空から誘導した巨大な神罰の如き雷の柱が、処刑台の鉄の避雷針へと、完璧なタイミングで直撃した。

 

「ギャああああああああっっっ!!!??? なんだこれぇえええええ!!??」

「ば、馬鹿な!? なんでこんな晴天でもねぇのにピカドンがァ――ッ!?」

 

全身を黒焦げにされたバギーとアルビダは、凄まじい電撃のショックを受けて白目を剥き、アフロ頭をモリモリと煙らせながらぶっ飛んでいく。

 

爆風と衝撃波が広場を駆け抜け、立ち込めていた煙がスーッと晴れていったあと――瓦礫の山の中から、黒く煤けた小さな影がのそりと動き出した。

 

「……ふぅ~。あはは、危ねぇとこだった! すげぇ雷だったな、たすかったー!」

 

処刑台の残骸の中から、お気に入りの麦わら帽子をヒョイと拾い上げたルフィが、何事もなかったかのように元気に飛び出してきた。

 

「――よし、行くぞ」

 

その時だった。突如として、ローグタウン全体を飲み込むような、尋常ではない**「すさまじい突風(強風)」**が吹き荒れた。

 

「なっ……なんだこの風は……!? まるで街そのものが吹き飛ばされるような……ッ!」

 

海兵たちが踏ん張ろうと足を踏みしめるが、突如として発生した爆風レベルの暴風が、海軍の包囲網を一瞬にして完全に引き裂いていく。

その暴風の中心――広場の片隅に佇んでいたのは、フードを目深に被った謎の男――ドラゴンだった。

 

ドラゴンは、不気味で、しかしどこか慈愛に満ちた鋭い眼光を、瓦礫の中から立ち上がったルフィへと向ける。

(――行け、息子よ。お前の選んだ道へ)

 

言葉を発することなく、ただその圧倒的な「風の支配力」でスモーカーたち海兵の視界と足場を完全に奪い、ルフィたちの逃げ道をこじ開けるドラゴン。

その不可解かつ強烈な天候のうねりを、少し離れた路地裏から電脳空間(VR)で感知したルーサスは、わずかに目を細めた。

 

(……なんだ、この不自然な気流の発生源は。俺が誘導した雷雲とは別に、周囲の風圧と気圧を完全にコントロールしている別の波長がある……? いや、あれは――)

 

ルーサスの思考の解析を一瞬で振り切るように、強風がさらに勢いを増す。

 

「おっと、風が味方をしてやがるぜ! みんな、一気に海岸へ走るぞ!」

「なんだか知らねぇが、この突風のおかげで海兵どもが動けねぇぞ!」

 

合流を果たしたゾロやサンジ、ナミたちが次々と走り出し、ルフィもケロッとした顔でその後に続く。

 

「待て……! 麦わらを逃がすな……ッ!」

スモーカーが十手を地面に突き立て、その強風の中を必死に踏み出そうとするが、ドラゴンが巻き起こした圧倒的な気圧の壁に阻まれ、一歩も前に進むことができない。

 

「始まりと終わりの町」で吹き荒れた、神罰の雷と、運命を導く謎の強風。

参謀ルーサスが計算した盤面と、背後でうねる巨大な運命の意思に背を押され、一味はいよいよ荒れ狂う偉大なる航路(グランドライン)への突入へと向かっていく――!

 




ご覧いただきありがとうございました!

第37話は、処刑台での雷撃、バギーたちの吹っ飛び劇、ゾロとたしぎの邂逅に加え、謎の男「ドラゴン」が巻き起こす圧倒的な強風の援護と一味の脱出劇を大ボリュームでお届けしました!
ルーサスの気象ハックとドラゴンの風が交錯するこの展開、お楽しみいただけましたでしょうか?

次回第38話では、いよいよ一味が憧れのグランドラインへ足を踏み入れる大迫力の展開を描いていきます!

※今作のルフィは「敵の全力を引き出しつつ自分も戦いを楽しむ」ために、あえて初手から全力を出さずに力をセーブするスタンス(ドラゴンボールの孫悟空スタイル)をとっています。参謀ルーサスだけがその本質を見抜いている信頼関係にもぜひご注目ください!

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