【ONE PIECE】電気(ことわり)を統べる者 〜海賊王の右腕となる雷の能力者〜 作:フォレスティアル
第39話は、グランドライン最初の島「ウイスキーピーク」編を丸ごと一話に凝縮した超特大ボリューム回!
歓迎の宴に隠された賞金稼ぎたちの罠、
参謀ルーサスの冷徹な盤面支配とともにお届けします。ぜひお楽しみください!
双子岬で巨大鯨ラブーンと固い再会の約束を交わしたゴーイング・メリー号は、ナミの手にある『記録指針(ログポース)』の示す磁気を頼りに、未知の海原を進んでいた。
「ふむ……大気の湿度、水圧、そして方位磁針の狂い方。グランドラインの環境変動パターンは、やはり従来のナビゲーションでは解読不可能だな」
船首の甲板で、参謀ルーサスは電脳空間(VR)上の環境パラメーターを静かに監視していた。
従来の海では考えられない急激な天候の変化――数分前まで快晴だった空が急に激しい吹雪となり、すぐさま熱帯の強い日差しが差し込むといった狂った気候が続いていた。
「ナミすゎ〜ん! 大変な気候変化にも負けない、愛のこもった冷えたジュースはいかがですか〜♡」
「サンジ、後にして! 舵取りで忙しいのよ!」
「はい喜んでぇ〜♡」
「なぁナミ、あとどれくらいで次の島に着くんだ?」
ルフィが甲板の縁に座り、お腹を空かせた顔でナミを見上げる。
「ログポースの磁気はまっすぐ前を指してるわ。このペースなら、あと数刻で島が見えてくるはずよ」
ナミの予想通り、霧の立ち込める海の向こうから、巨大なサボテンのような独特な形をした岩山がいくつも聳え立つ島が姿を現した。
「見えたぞー! 島だーーーっ!!」
ルフィが歓声を上げると、ウソップやゾロも甲板に集まってきた。
島の名は『ウイスキーピーク』。サボテンの針のように見える無数の墓標が印象的な、不気味さと異国情緒が入り混じる島であった。
◇
メリー号が港に接岸すると、驚くべき光景が待ち受けていた。
「「「ようこそ! 海の勇者たちよーーーっ!!!!」」」
港を埋め尽くす大勢の町民たちが、音楽を奏で、花束と酒樽を抱えて一味を熱烈に大歓迎し始めたのだ。
町の町長であるイガラム(町長アイザム / Mr.8)が、立派な巻き髪を揺らして笑顔で一味を迎え入れる。
「マ〜マ〜マ! ようこそ、偉大なる航路(グランドライン)へ! 我がウイスキーピークは、過酷な海を越えてきた勇敢な海賊たちを心から歓迎し、その労をねぎらう町です! さあ、遠慮はいりません! 今夜は朝まで宴を執り行いましょう!!」
「うおおお! 肉だー! 酒だーーーっ!!」
ルフィが大喜びで町へと駆け出していく。
「ちょっとルフィ! 警戒しなさいよ!」
ナミが呼び止めるが、サンジも「町には美しい淑女がたくさんおられる……♡」とデレデレしながらついて行ってしまい、ウソップも自慢話を語る気満々で町民に囲まれてしまった。
ゾロは不敵な笑みを浮かべつつ、腰の『三代鬼徹』の柄に手を置いて静かに歩みを進める。
ただ一人、ルーサスだけは両手をコートのポケットに突っ込んだまま、冷ややかに町全体を見回していた。
(――歓迎の熱意に対して、住民たちの心拍数と発汗量が不自然に高い。それに、この街の至る所に配置された建造物の構造……射撃用の射口と、退路を断つための隠し路地が網の目のように配置されている)
ルーサスの電脳空間(VR)上の網膜には、町民たちの懐に隠された無数の銃器や刃物の生体反応が、赤く鮮明にハイライトされていた。
(バロックワークスの末端組織か。あまりに雑な仕掛けだが……まあいい。ルフィの奴が楽しんでいるなら、宴の終わりまで付き合ってやるか)
ルーサスは一切表に警戒を出さず、冷徹に事態の推移を観察することにした。
◇
夜になり、町の大酒場では盛大な宴が開かれていた。
「ひゃっはー! 喰え食えー!」
「ルフィ様、もっとお酒をお代わりなさってください!」
ルフィは山盛りの肉を口に押し込み、大笑いしながら大食い勝負を楽しんでいた。
サンジは美女たちに囲まれて酒を注がれ、ウソップは町民相手に大ボラを吹いて酔い潰れ、ナミは大酒飲み勝負で町の男たちを次々と叩きのめして大量の現金をせしめていた。
そして深夜――。
酒場にいた一味のメンバーが、次々と酔い潰れて床に倒れ込んでいった。
「ふふふ……かかったな、愚かな海賊どもめ」
イガラム(Mr.8)が笑顔を消し、冷酷な賞金稼ぎの顔へと一変した。
周囲の町民たちも、次々と銃や仕込み刀を取り出す。彼らの正体は、秘密犯罪会社『バロックワークス』に所属する数百万ベリー級の賞金稼ぎたちであった。
「東の海(イーストブルー)で3000万ベリーの首、麦わらのルフィ……そしてその参謀ルーサス。こいつらの首を本部に差し出せば、多額の賞金と昇格が手に入るぞ!」
ミス・マンデー、Mr.9、ミスター・ウェンズデー(ビビ)らが武器を構え、倒れ伏す一味へと近づいていく。
「さあ、まずはこの参謀の首から――」
賞金稼ぎの一人がルーサスに向けて銃口を突きつけた、まさにその瞬間。
**「――誰の首を跳ねるだと?」**
静寂を切り裂く、氷のように冷たい声が響いた。
「なっ……!?」
倒れていたはずのルーサスが、コートの汚れ一つ落とすことなく、静かに体を起こしていた。
酒など最初から一滴も口にしておらず、毒薬の成分すらも『絶対領域』の粒子制御で無効化していたのだ。
さらに、建物の屋根の上からは、月明かりを背に受けたゾロがニヤリと不敵な笑みを浮かべて見下ろしていた。
「ふぅ……ようやく本性を現したか。酒を飲まされた振りをするのも疲れるぜ」
「な、なぜ起きている……!? 睡眠薬を仕込んだ酒と肉をたらふく食ったはずだぞ!?」
イガラムが動揺して叫ぶ。
「この程度の罠、計算に入れるまでもない。……ゾロ、雑魚の処理はお前に任せる。俺は少し盤面の整理をさせてもらう」
ルーサスが淡々と告げると、ゾロは『三代鬼徹』と『雪走』を構えて飛び降りた。
「おう、任せとけ。100人の賞金稼ぎ対俺一人……新しい刀の試し斬りには丁度いい」
ここから、夜のウイスキーピークを舞台に、ゾロの圧巻の100人斬りが始まった!
ミス・マンデーが怪物のような怪力でブラスナックルを振り下ろすが、ゾロはその腕を力でねじ伏せ、一撃で沈める。
Mr.9がアクロバティックな『流星錘』で跳びかかるが、新刀『雪走』の極上の切れ味の前に武器ごと一刀両断。
ミスター・ウェンズデー(ビビ)が『クジャクスラッシャー』を繰り出すも、ゾロの圧倒的な剣技の前にあっさりと制圧される。
「鬼斬り――!!」
一閃。静まり返る街に、100人の賞金稼ぎたちの悲鳴と倒れ込む音が響き渡った。
◇
だが、騒動はこれで終わらなかった。
満腹になって目を覚ましたルフィが、倒れ伏す町民たちと刀を構えるゾロの姿を目撃したのだ。
「……おいゾロ。お前……世話になった街の奴らに、なにか言いがかりでもつけて斬ったのか?」
「あぁん? 違うぜルフィ、こいつらは賞金稼ぎで――」
「ウソつけーーーっ!! 肉を食わせてくれた良い奴らを斬るなんて許さねぇ!! **恩を仇で返すなぁーーっ!!**」
肉の恩に報いるため(そして盛大な勘違いにより)、ブチ切れたルフィがゾロへと襲いかかった!
「ゴムゴムの――ピストル!!」
「受けろってのかアホ船長!!」
ルフィの拳とゾロの刃が激突し、周囲の建物が吹き飛ぶ凄まじい大格闘が勃発。
割り込んできたMr.5とミス・バレンタイン(本部に潜入していたオフィサーエージェント)の二人を、「邪魔だ!!」と二人揃って一瞬で吹っ飛ばしてしまうほどの暴走状態に陥る。
「おい、そこまでだ馬鹿ども」
二人の喧嘩が街を半壊させかけたその瞬間――。
ルーサスが二人の間に割って入り、両手をスッと掲げた。
「ベクトルハック――『絶対圧砕』」
ドゴォオン!! と二人の足元に凄まじい超重力領域が局所展開され、暴走していたルフィとゾロは同時に地面へと叩きつけられ、強制的に制圧された。
「痛ぇっ!? なんだルーサス!?」
「くっ……相変わらず容赦ねぇ能力だな……」
「ルフィ、頭を冷やせ。こいつらの正体は賞金稼ぎだ。ナミから聞いてみろ」
目を覚ましたナミが一瞬でルフィの頭をぶん殴ってタンコブを作り、状況を説明したことで、ようやくルフィの勘違いが解けたのだった。
◇
静まり返った月夜の街路。
ゾロに打ちのめされ、ルーサスの圧倒的な威圧感の前に身動きを封じられたMr.8とミスター・ウェンズデーの二人。その場へ、本部に潜入していた刺客Mr.5とミス・バレンタインが再び立ち塞がった。
「ミス・ウェンズデー……いや、違うな」
Mr.5が指先から爆弾を弄びながら、冷酷な笑みを浮かべる。
「会社のボス……王下七武海『サー・クロッカス』……いや、**クロコダイル**の正体を知った者は、生かしてはおかない。社則違反だ」
その言葉が響いた瞬間、Mr.8と呼ばれていた男が、着ていた衣装を脱ぎ捨てて叫んだ。
「姫様!! お逃げください!!」
「イガラム!!」
Mr.8の正体は、砂漠の国・アラバスタ王国の護衛隊長**イガラム**。そしてミス・ウェンズデーの真の正体は、国家の危機を救うために自ら悪の組織へ潜入していた**アラバスタ王国第一王女ネフェルタリ・ビビ**であった!
イガラムは銃を仕込んだ巻き髪(イガラッパ)を構え、Mr.5に決死の射撃を浴びせる。
「我が命に代えても! ビビ様をお守りする!! 姫様、早く海賊たちの船へ!!」
しかし、ボムボムの実の能力者であるMr.5の前に、イガラムの攻撃は虚しく砕け散り、凄まじい爆炎に包まれて倒れ伏した。
「イガラムーーーっ!!」
ビビが血を吐くような悲鳴を上げ、涙を流して崩れ落ちる。
「おいおい……王女様かい。随分と訳アリの荷物を背負い込んでるな」
ゾロが刀の柄に手を置く。
ビビはボロボロと涙をこぼしながら、ルフィたちの足元に跪き、必死に頭を下げた。
「頼みます……! 私を……私を無事にアラバスタ王国へ送ってください! 私の国は今、クロコダイルの陰謀によって内乱が起き、民が苦しんでいるんです! 私が帰らなければ、国が滅んでしまうの……!!」
ナミが目ざとく「報酬は1億ベリーね! 約束できる!?」と交渉を突きつけると、ビビは泣きながら頷いた。
「よし! 任せとけ!!」
ルフィはニカッと太陽のような笑みを浮かべ、ビビの肩を力強く叩いた。
「お前、いい奴だな! オレたちがそのクロコダイルって奴をぶっ飛ばしてやる!!」
◇
その時だった。
イガラムが血みどろの身体を起こし、ビビの変装用の服とウィッグを身にまとって現れた。
「……姫様、これをお召しください。私が姫様の影武者となり、別ルートでアラバスタへ向かう船を出します。海軍とバロックワークスの目を私へ引きつけます……!」
「そんな……駄目よイガラム! あなたが死んじゃう!!」
「姫様……どうかご無事で!! アラバスタの未来を……よろしくお願い申し上げます!!」
イガラムは涙を拭い、ビビに頭を下げると、一人で別の船へと乗り込み、港から沖へと出航していった。
だが――その僅か数分後。
**――ドゴアアアアアアアアアン!!!!**
静かな夜の海に、腹に響くような大爆発が轟いた。
イガラムの乗った船が、漆黒の夜の海で真っ赤な炎の柱となって吹き飛んだのだ。
「イガラムぁあああああーーーーーっっっ!!!???」
ビビの絶望に満ちた叫びが響き渡る。
炎上する海を見つめるメリー号の甲板上に、ふわりと一人の美女が降り立った。
紫の帽子をかぶり、妖艶な笑みを浮かべた女性――バロックワークス副社長、**ミス・オールサンデー(ニコ・ロビン)**であった。
「あらあら、可哀想に……身代わりになろうなんて、愚かな護衛隊長ね」
ロビンはクスクスと冷ややかに笑う。
「あなたが追われている航路は危険すぎるわ。ウイスキーピークの先に待ち受けるのは、太古の生物が生きる巨大な島『リトルガーデン』……。アラバスタへ向かう前に、みんな死んでしまうわよ?」
そう言って、ロビンは安全な航路を示す『永久指針(ポース)』をルフィへと差し出した。
「これを使えば、リトルガーデンを回避してアラバスタへ行けるわ。どうするかしら、船長さん?」
だが、ルフィはその永久指針を受け取るなり、迷わず握り潰してみせた。
**バシィッ!!**
「進路はオレが決める!! お前みたいな怪しい奴の指す方なんて行かねぇ!!」
「フフ……度胸のある船長さんね。面白いわ」
ロビンは驚くこともなく、楽しそうに目を細めた。
「ウイスキーピークの先に待ち受ける島『リトルガーデン』……死なないでね」
ロビンは謎めいた言葉を残し、巨大な亀の背に乗って夜の海へと消えていった。
参謀ルーサスは、去り行くロビンの背中と、燃える海を冷徹な視線で見送りながら、静かに思考を巡らせていた。
(王下七武海クロコダイル……そして古代兵器と歴史の謎を追う女か。なるほど、偉大なる航路最初の『盤面』としては実に興味深い)
ルーサスは泣きじゃくるビビの肩に静かに手を置き、冷徹だが力強い声で告げた。
「泣くな、王女。イガラムの死(盤上の犠牲)を無駄にするな。……お前の国は、俺たちが完璧にハックして救ってみせる」
アラバスタ王国の危機、七武海の陰謀、そして太古の島リトルガーデンへ。
ルーサスという最強の参謀を得た麦わらの一味の航海は、さらに激しく、熱き激闘のうねりへと巻き込まれていくのだった――!
ご覧いただきありがとうございました!
第39話は、ウイスキーピークでの歓迎の宴、バロックワークスの罠、ゾロの100人斬り、ルフィvsゾロの激突、ミス・ウェンズデー(ビビ)とイガラムの真の正体発覚、イガラムの覚悟と船の爆破、そしてミス・オールサンデー(ロビン)の登場まで、ウイスキーピーク編のすべてを完全網羅した超特大ボリュームでお届けしました!
次回第40話では、太古の生物と巨人が生きる島「リトルガーデン」への到着と、そこで繰り返す激闘をお届けします!
※今作のルフィは「敵の全力を引き出しつつ自分も戦いを楽しむ」ために、あえて初手から全力を出さずに力をセーブするスタンス(ドラゴンボールの孫悟空スタイル)をとっています。参謀ルーサスだけがその本質を見抜いている信頼関係にもぜひご注目ください!
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