【ONE PIECE】電気(ことわり)を統べる者 〜海賊王の右腕となる雷の能力者〜   作:フォレスティアル

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第41話は、リトルガーデン編の完全クライマックス!
Mr.3の罠、クロコダイルとの初会話の超大ボリュームでお届けします!



第41話 『蠟の罠と、冷徹なる盤面の支配者』

ドゴォオオオオオオオオン!!!!

 

島の中央にそびえ立つ巨大な火山が、大気を激しく震わせながら大噴火を起こした。

黒煙が天を突き、赤熱した溶岩が空へと舞い上がる。その爆熱の合図とともに、リトルガーデンは太古の闘技場へと姿を変えた。

 

「ガバババ! 100年ぶりの決闘だブロギー!!」

「ゲギャギャギャ! 今日こそ貴様を討ち取るぞドリー!!」

 

島の東側のジャングルから『青鬼のドリー』が巨大な大剣を掲げて現れ、西側のジャングルから『赤鬼のブロギー』が重厚な大斧を手に躍り出る。

大地を激しく揺らす両者の足音が交差し、中央の広場で二体の巨躯が激突した。

 

ズガアアアアンッ!!!!

 

大剣と大斧が噛み合い、凄まじい衝撃波が周囲の巨木を一瞬にしてなぎ倒していく。

その壮絶な一騎打ちを、決闘場の岩陰からルフィは目を輝かせて見守っていた。

 

「すっげぇ……! おいビビ、見ろよあの迫力! 島そのものが揺れてるみたいだぞ!」

 

「うん……でも、本当にあんなに戦い続けて、お互いに命を落とすことになっても後悔はないのかしら……」

ビビが不安げに呟くが、ルフィはニカッと口元を吊り上げて首を振った。

 

「後悔なんかあるもんか! あいつらは誇りを賭けて戦ってんだ。男の勝負に口挟むのは野暮ってもんだろ!」

 

しかし――その誇り高き戦いの裏で、不気味で冷酷な「悪意の歯車」が確実に回り始めていた。

 

決闘場を見下ろす高台の木陰。

そこに、秘密犯罪会社バロックワークスの高級エージェントであるオフィサーエージェント『Mr.3』と、その相棒である無口な少女『ミス・ゴールデンウィーク』が潜んでいた。

 

「クハハハ……相変わらず愚かで扱いやすい巨奴どもだねェ」

 

Mr.3は自らの『ドルドルの実』の能力で生み出した白い硬質化蝋(ロウ)の豪華な椅子に深く腰掛け、ティーカップを傾けながら不気味な笑みを浮かべていた。

横では、ミス・ゴールデンウィークが煎餅をポリポリと齧りながら、無表情に絵の具のパレットを弄んでいる。

 

すでにMr.3の手によって、ドリーが拠点に置いていた酒樽には強力な『爆薬』が密かに仕込まれていた。

さらに、決闘場の足元や周囲の土壌には、人間の目には見えない特殊な液体状の蝋が罠として広範囲に敷き詰められていたのだった。

 

ドリーがブロギーとの激しい打ち合いの最中、息を整えるために腰の酒樽を引き抜き、豪快に喉へと流し込んだ――まさにその瞬間。

 

――ドギャアアアアアン!!!!

 

「ぐあっ……!!????」

 

ドリーの腹部で猛烈な爆発が巻き起こった。

内臓を焼き尽くすかのような衝撃に、巨体から鮮血が吹き出し、ドリーは膝から崩れ落ちる。

 

「ドリーーーッ!!」ルフィが驚愕の声を上げて岩陰から飛び出した。

 

「どうしたドリー! なぜ貴様の身体の中から爆発が……!?」

ブロギーもまた斧を止め、目を見開いて相棒に駆け寄ろうとする。

 

だが、腹を押さえて苦悶の表情を浮かべるドリーの瞳には、100年の誇りゆえの激しい疑念が宿っていた。

 

「ふ、ふふ……ブロギー……貴様、俺に……酒に毒(爆弾)を仕込んだか……!?」

「何だと……!? 貴様、俺を疑うかドリー! 100年連れ添った私を、そんな卑劣な男だと思うか!!」

「……勝負の途中で酒を勧めてきたのは……貴様だろうが……!!」

 

Mr.3の張り巡らせた陰湿な罠によって、100年間一度も揺るぎなかった二人の戦士の信頼に、痛烈な亀裂が入ろうとしていた。高台のMr.3は、その様子をうっとりと眺めながら嘲笑する。

 

「クハハハ! 素晴らしい! 人間の誇りなど、ほんの少しの疑念を注ぎ込めば簡単に崩壊する薄っぺらいガラス細工さね!」

 

◇

 

――時は少し遡る。

 

ジャングルの深い樹海。

恐竜の群れから逃げ惑っていたウソップとナミのコンビは、突如として足元に異様な違和感を覚えていた。

 

「はぁ、はぁ……なんだこの島は……生きるか死ぬかの連続じゃないか……!」

ウソップが冷や汗を拭いながら走る。

「ちょっとウソップ、しっかりしなさいよ! ……って、きゃああっ!?」

 

ナミが悲悲鳴を上げた瞬間、二人の足元がグニャリと沈み込んだ。

Mr.3があらかじめジャングルに配置していた『ドルドル』の液体状の蝋の罠だ。

 

「うわあああ!? 足が抜けない! なんだこれ、固まっていくぞ!?」

「嘘でしょ……!? まるでセメントみたいに急速に硬化していくわ……!」

 

あっと言う間に膝から下をガチガチに固められ、冷や汗を流す二人の前に、音もなく現れたのがミス・ゴールデンウィークだった。

彼女は言葉を発することなく、無表情のまま煎餅を齧り、手元の筆に鮮やかな絵の具を馴染ませる。

 

「な、なんだこのガキ……!? おれ達に何をする気だ……!」

 

ミス・ゴールデンウィークがペタリとウソップとナミの服に筆を走らせた瞬間――奇妙な脱力感が二人を襲った。

――『カラーズトラップ・和みの緑』。

 

「ふぅ……なんか……どうでもよくなってきたな……お茶でも飲もうぜ……」

「そうね……戦うなんて疲れるだけだわ……のんびりしましょ……」

 

緊張感を根こそぎ奪われたウソップとナミは、一切の抵抗ができないままMr.3の手によってアジトへと連れ去られてしまった。

 

さらに、ジャングルの別行動をとっていたゾロもまた、Mr.3の生み出した完璧な蝋の分身や罠に遭遇し、激しい戦闘の末に捕らわれていた。

 

「チッ……切っても切ってもキリがねぇ蝋人形だな……!」

ゾロが『三代鬼徹』を振るうが、身体にまとわりついた蝋が瞬時に硬化し、自由を奪われる。

 

ゾロも奮戦虚しく、Mr.3の『ドルドル』の拘束によって完全に身動きを封じられてしまったのだった。

 

◇

 

そして――現在。

 

Mr.3が建造した特設アジトのステージ。

そこには、巨大な蝋の回転台『キャンドル・サービス(巨大ろうそく)』が鎮座していた。

 

捕らえられたナミ、ウソップ、ゾロの3人は、そのキャンドル・サービスの周囲に固く縛り付けられていた。頂上の火種から噴き出す白い蝋の粉末が、粉雪のように舞い降り、3人の全身を徐々に白く覆い尽くしていく。

 

「な……なにこれ!? このままだと全身が完全に固められて、蝋の人形になっちゃう……!!」

ナミが恐怖に震えながら涙ぐむ。

 

「チッ……完全に動けねぇな。だが、どうせ蝋人形にされて死ぬなら、一番カッコいいポーズで固まってやるぜ」

ゾロは全身を硬化させられながらも、刀を構えた不敵なポーズのままニヤリと笑ってみせた。

 

「バカなこと言わないでよゾロ!! 助かる方法を考えなさいよ!!」

ナミの絶叫が響き渡る。

 

「クハハハ! 哀れな海賊どもめ! お前たちは我がアートの最高傑作として、永久にこの島で飾りにしてやるさね!」

 

Mr.3が勝利を確信して高笑いを上げた、その時――。

Mr.3の懐で、連絡用の『子電々虫(デデンムシ)』がプルプルと鳴り響いた。

 

*「ガチャ……。Mr.3、首尾はどうだ」*

 

受話器の口元から漏れ出してきたのは、どこか重低音の響く、冷酷で圧倒的な威圧感を放つ男の声――バロックワークス最高司令官『ボス』こと、王下七武海クロコダイル本人からの通信であった。

 

Mr.3は思わず姿勢を正し、冷や汗を流しながら受話器に恭しく口を寄せる。

 

「はっ! ボス! ご安心ください。二人の巨人は相討ち同然に仕留め、潜入者であるビビ王女、探していた麦わらの一味もろとも、我が特製キャンドルで完璧な蝋人形へと仕立て上げております。まもなく完了の報告を……」

 

*「……ふん。油断するなと言ったはずだ。あの『麦わらのルフィ』だ、何が起きるか分からん。息の根を止めるまで気を抜くな」*

 

「はっ! このMr.3、抜かりはございません!」

 

Mr.3が誇らしげに報告を終え、通信を切ろうとしたまさにその瞬間――。

 

**「――誰の都合で、この盤面(フィード)を勝手に終わらせようとしている?」**

 

静寂を切り裂く、氷のように冷たく鋭い声がジャングル全体にこだました。

 

「なっ……何だ奴は!?」

Mr.3が驚愕して思わず振り返る。

 

空間が、歪んでいた。

空中に突如として現れた青白い幾何学模様の光輪。その中心から、両手をコートのポケットに突っ込んだ男――参謀ルーサスが、静かに空中を踏みしめながら降臨していた。

 

ルーサスの電脳空間(VR)上の網膜データには、Mr.3の『ドルドルの実』による蝋の分子構造、そしてナミたちを拘束している蝋の硬化テンション、さらには電々虫の通信波長までが完全にハックされていた。

 

「お前がMr.3か。クロコダイルの駒ごときが、いい気になって茶番を演じているな」

 

ルーサスが冷たい視線を受話器に向けると、通信の向こうのクロコダイルが途端に沈黙した。

 

*「……ほう。お前が噂のルーキー『ルーサス』か。ずいぶんと生意気な口を利く青二才だな」*

 

「クロコダイル。お前の配下はあまりに無能で、仕掛けも陳腐だ。貴様が砂漠の国でどんな盤面を描こうと自由だが、我が船長の領域に泥を塗るなら、その王下七武海の称号ごと盤面から叩き潰す」

 

*「フハハハハ……! 面白い。アラバスタで待っているぞ、生意気なルーキーが」*

 

*ガチャリ*と通信が切れ、Mr.3は激怒して顔を真っ赤に染めた。

 

「貴様ぁあ! ボスに向かって何たる口を!! 『ドルドル館』・特製キャンドル!!」

焦ったMr.3が手から大量の硬質化蝋を射出し、ルーサスを押し潰そうとする。その強度は鋼鉄すら凌駕する代物であった。

 

だが――ルーサスは冷徹に目を細め、静かに右手を掲げた。

 

「物理的な硬度など、分子間の結合エネルギーの前では無意味だ。――『サーモ・ハック』」

 

ルーサスの手のひらから奔流のような高熱の波動と微小なプラズマの炎が放たれた瞬間、突進してきた巨大な鋼鉄級の蝋の塊は、衝突するよりも早く凄まじい熱量によって**ドロドロに融解**し、ただの熱い液体となって足元へと流れ落ちていった。

 

「なっ……!? わたしの特製蝋が、一瞬で溶けただと……!?」

Mr.3が信じられないものを見る目で目を見開く。

 

「熱量制御による分子結合の解除だ。お前の能力の本質など、数行のコードですべて書き換えられる」

 

ルーサスが指先を軽く一瞥すると、ナミやゾロたちを縛り上げていた巨大ろうそく『キャンドル・サービス』の根元もまた、ピンポイントの熱線によって綺麗に焼き切られ、音を立てて崩れ落ちた。

 

「助かったわルーサス……!」ナミが自由に動けるようになった足でその場にへたり込む。

「ふぅ……カッコいいポーズのまま固化せずに済んだな」ゾロが苦笑しながら刀を拾い上げた。

 

そこへ、ミス・ゴールデンウィークの『カラーズトラップ』を解かれ、ルフィが激怒しながら駆けつけてきた。

「お前ら……! 仲間と巨人のおっさんたちの勝負を邪魔しやがって!!」

 

「Mr.3様! お助けします!」

物陰から爆弾人間『Mr.5』と、体重変更人間『ミス・バレンタイン』が飛び出してきた。

 

しかし、自由を取り戻したゾロとルフィの敵ではなかった。

「邪魔だ」

ゾロの一閃がMr.5を斬り伏せ、ルフィの「ゴムゴムのバズーカ」がMr.3とミス・バレンタインをジャングルの彼方へと吹き飛ばした。

 

◇

 

激闘が終わり、静けさを取り戻したリトルガーデン。

倒れたドリーの元へブロギーが駆け寄り、二人のお互いの誤解は解けた。

 

「ガバババ……! ブロギー、お前が酒に爆弾を仕込んじゃいなかったんだな……」

「当り前だドリー! だが……私の斧でお前を倒してしまった……!」

ブロギーが涙を流すが、次の瞬間――ドリーが「痛たた……」と身体を起こした。

 

「ぬ……!? 生きているのかドリー!?」

「ガバババ! 100年連れ添ったお前の斧だぞ? 100年間の打ち合いで刃がボロボロにこぼれていて、切れ味が落ちておったのさ!」

 

二人の巨人は顔を見合わせ、太古のジャングルに届かんばかりの大笑声を響かせた。

 

その頃、一人ジャングルを散策していたサンジは、Mr.3が隠れ家にしていた蝋でできた建物(ドルドル館)を発見していた。

 

中に入ると、テーブルの上で子電々虫が鳴っていた。サンジはタバコに火をつけながら受話器を取る。

 

*「……Mr.3か。麦わらの一味の処刑は完了したのだろうな」*

再びクロコダイルの声だった。

 

サンジはニヤリと不敵に口元を歪め、落ち着いた声で応じる。

「ああ……こちら『ミスター・プリンス』だ。麦わらの一味なら、全員俺が片付けたぜ」

 

*「何……? ミスター・プリンスだと……?」*

 

サンジは適当に嘘をついて通信を切り、机の引き出しにあった『アラバスタへの永久指針(エターナルポース)』を懐に収めた。

これで、1年間かかるリトルガーデンの磁気を待つことなく、アラバスタへ直行できる手段が手に入ったのだった。

 

◇

 

メリー号に全員が合流し、いざ出航の時。

船が海へと乗り出そうとしたその瞬間――海原から、島をも丸呑みにするほどの超巨大な怪物『島食い金魚(ゴールド・スパーク)』が突如として巨大な口を開けて船の前に立ちはだかった。

 

「ぐわああっ! なんだあの化け物はーーっ!! メリー号が呑み込まれるぞ!!」

ウソップが絶叫する。

 

巨大な影が船を覆い、逃げ場のない絶体絶命の危機。

その時、岸辺に立ったドリーとブロギーの二人の巨人が、ボロボロになった大剣と大斧を揃えて仁王立ちした。

 

「おい、人間たちよ! まっすぐ前だけを見て進め!」

ブロギーが叫ぶ。

 

「エルバフの戦士の誇りに懸けて、お前たちの航路を阻むものなど、この海ごと打ち破ってやるわ!!」

ドリーが大剣を構えて笑う。

 

ウソップは、命を懸けて誇りを貫く二人の巨人の背中を見据え、胸の奥底から込み上げる熱い感情を抑えきれず、涙をボロボロと流しながら叫んだ。

 

**「おめェら……!! かっけぇよ……!!! おれにあんな風に生きられるのかよ……っ!! 男のなかに男を見るって、こういうことだ――っ!!」**

 

ウソップの魂の叫びがジャングルにこだまする。

 

そして――。

二人の巨人は全霊の力を込め、息を合わせて武器を振り下ろした。

 

**「「 覇 国 ―― !!!」」**

 

ドオオオオオオオオオオオオオン!!!!!!

 

ふたりの巨人が放った凄まじい衝撃波の奔流は、海を割り、一瞬にして巨大な島食い金魚の体を貫き、遥か彼方まで続く真っ直ぐな航路を作り出した。

 

「すごいや……!!」ナミやビビが目を丸くする。

 

その圧倒的な男たちの背中に見送られながら、ゴーイング・メリー号は太古の島を背に、サンジの手に入れた永久指針が指し示す次なる激闘の地――アラバスタへ向けて大いなる帆を上げたのだった――!

 




ご覧いただきありがとうございました!

第41話は、Mr.3の罠、クロコダイルとの緊密な心理戦、一味のピンチ、参謀ルーサスの熱量ハック(サーモ・ハック)による圧倒的無双、Mr.5撃破、巨人の愛しき刃こぼれの絆、サンジの「ミスター・プリンス」誕生とエターナルポース奪取、ウソップの魂の叫び、そして「覇国」による感動の出港までを完全に網羅した特大ボリュームでお届けしました!

次回第42話もお楽しみに!

※今作のルフィは「敵の全力を引き出しつつ自分も戦いを楽しむ」ために、あえて初手から全力を出さずに力をセーブするスタンス(ドラゴンボールの孫悟空スタイル)をとっています。参謀ルーサスだけがその本質を見抜いている信頼関係にもぜひご注目ください!

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