【ONE PIECE】電気(ことわり)を統べる者 〜海賊王の右腕となる雷の能力者〜 作:フォレスティアル
第43話は、冬島「ドラム王国」上陸編の完全版!
村人たちとの緊迫の対峙、ビビの「下心なき降伏」、この国から医療が消えた真実、参謀ルーサスの反重力結界による圧倒的な空中登頂、チョッパーとの最初の遭遇、そしてドクター・クレハの城での治療です大ボリューム回です!
どうぞお楽しみください!
「うわぁぁ寒っ!! なんだこの雪はーーっ!!」
ゴーイング・メリー号からドラム王国の雪深い海岸へと降り立ったルフィが、寒さのあまり全身をブルブルと震わせる。
リトルガーデンの猛暑から一転、目の前に広がるのは凍てつくような白銀の世界、そして身を切るような暴風雪だった。
「当たり前でしょ、冬島んだから! 早くナミを診てもらう医者を探さなきゃ凍え死んじゃうわよ!」
防寒着をしっかりと着込んだビビが、険しい表情でそびえ立つ雪山を見上げる。
船内では、ルーサスの『ミクロ・サーモスタシス』による一時的な分子アレストによってナミの病状と高熱は一時的に不活化されていた。だが、それはあくまで致命的な悪化を防いでいるだけの「時間稼ぎ」に過ぎない。現実の肉体を根治させるためには、一刻も早くこの島の専門医を見つけ出す必要があった。
ルーサスは眠るナミを乗せたソリに微弱な『反重力リフター』を付与し、雪面から数センチ浮かせた状態で引けるようにセッティングを施した。
「よし、野郎ども出発だ! ナミを治すスッゲー医者を探すぞ!」
一味は雪に埋もれるようにして広がる港村『ビッグホーン』へと足を踏み入れた。
しかし、そこで一味を待ち受けていたのは、異様な殺気だった。
「動くな海賊ども!! この島から即刻立ち去れ!!」
雪煙をかき分けて現れたのは、銃や槍を構えた大勢の村人たちだった。彼らの目は怒りと恐怖に狂気じみた色を宿しており、容赦なく一味へ銃口を向けている。
「うわあああ!? なんだいきなり銃を向けてきやがったぞ!!」
ウソップが飛び上がる。
ルフィは威嚇するように拳を固め、「なんだお前ら! 俺たちは医者を探しに来たんだぞ!」と威嚇の姿勢をとろうとした。
その瞬間――引き金が引かれ、一発の弾丸がビビの肩を掠めた。
「くっ……!」
ビビが雪の上に崩れ落ちる。
「ビビ!!」
怒髪天を突いたルフィが「てめぇら……!!」と村人たちへ殴りかかろうと飛び出した。
「待て、ルフィ!!! 叩いちゃダメ……!!!」
血を流しながら、ビビは雪の上に突っ伏し、深々と頭を下げて土下座をした。
「お願いです……! 私たちの仲間の命がかかっているんです……! 医者を……医者を呼んでください……! 私たちの無礼はお詫びします……だから、どうか彼女を助けて……!!」
一瞬、静まり返る雪原。
ルフィは目を見開き、拳を握りしめたまま固まった。ビビの全身全霊の「下心なき降伏」――真の王女としての覚悟を目にしたからだった。
ルフィは静かに拳を下ろし、自分もビビの隣で雪に頭をこすりつけた。
「……ごめん。俺が間違ってた。……医者を呼んでくれ! 仲間が死にそうなんだ!!」
その姿を見た村人たちの先頭に立つ男――巨漢の護衛隊長『ドルトン』は、銃を静かに下ろし、深く息を吐いた。
「……ついて来い。村へ案内する」
◇
ドルトンの家で暖を取りながら、一味はこの国が抱える恐ろしい現実を知ることになる。
「医者を探していると言ったな……。残念だが、この国にまともな医者はもういない」
ドルトンが苦々しく語り出す。
「……かつて医療大国と呼ばれたこのドラム王国は、最悪の暴君『ワポル』によって滅ぼされた。ワポルは国中の優秀な医者たちを自分専属の『イシシ20(トゥエンティ)』として囲い込み、民衆から一切の医療を奪ったのだ。『病気にかかりたくば自分にひざまずけ』とな……」
「なんだそいつ! 最悪な奴だな!!」ウソップが激怒する。
「そして数ヶ月前、黒ひげ海賊団がこの国を襲撃した際、国王であるワポルは民を見捨て、真っ先に国外へ逃亡したのだ……。だから今、この国にまともな医者は一人しかいない」
ビビが身を乗り出す。
「一人でもいるの!? その医者はどこにいるの!?」
「……『ドクター・クレハ』。御年140歳を超える魔女のような医者だ。彼女は村に住み着くことを嫌い、あの雲を突くような巨岩『ドラムロック』の頂上にある城に一人で暮らしている」
ここでウソップが首をかしげて尋ねる。
「ちょっと待てよ? その城って、さっきから言ってる最低な王様・ワポルの城じゃねぇのか? なんでそんなところに魔女の医者が住んだんだ?」
ドルトンは苦渋に満ちた表情で語った。
「……正確に言えば、『住んでいる』のではない。ワポルが国を捨てて逃げ出した後、ドクター・クレハが勝手に城へ押しかけ、我が物顔で居座り続けているのだ。あのお城にはこの国最高の医療設備と膨大な蔵書が揃っている。クレハにとっては、医療研究を行うための絶好の拠点というわけだな。王国軍も恐れをなして、誰もあの城には手出しができない……」
「なるほどな。優秀なリソースが放置されていたから、勝手に占拠して研究室にしたってわけか。合理的な魔女だな」
ルーサスが冷徹に納得の声を漏らした。
「あ、ああ……。だが気が向いた時しか山を降りず、診察の代償として全財産を巻き上げるか、命を奪うような恐ろしい報酬を要求する……!」
「その山の上に……城に医者がいるんだな!?」
ルフィの目が鋭く光る。
「ああ、だが登るのは不可能だ。ドラムロックは垂直に切り立った絶対壁。しかも今は激しい冬の嵐だ……!」
「関係ねぇ! そこにしか医者がいねぇなら、今すぐ行くぞ!!」
◇
村を出たルフィ、サンジ、ナミを背負ったソリ、そしてルーサスの一行は、そびえ立つドラムロックの麓へと到着した。
この極寒の壁面を病人を抱えて登るのは、常人であれば命取りになる過酷な行程だった。
だが、先頭に立っていた参謀ルーサスは、静かに立ち止まり右手を軽くかざした。
「……これ以上の人力による登頂は非効率だ。気象の乱気流をハックし、最短経路で城へ直行する」
ルーサスが足元に青白い幾何学模様の『絶対領域』を展開する。
瞬間、ルーサスを中心に半径数メートルの球状の重力結界が形成された。
――ズアアアッ……!!
結界の外側では狂ったような暴風雪が吹き荒れ、視界を完全に遮っているというのに、結界の内側は春のポカポカとした陽気のような心地よい微風に満たされ、氷点下の冷気はピタリと遮断された。
さらに、ルーサスは眠るナミを乗せたソリと、ルフィたちの足元に反重力を付与する。
「反重力リフター――『ゼロ・グラビティ・アセンション』」
ふわり、と軽やかな浮遊感とともに、ルフィやサンジ、ナミを乗せたソリが雪面からふわりと離れ、そのまま宙へと浮かび上がった。
物理的な重力と摩擦が消え去り、ルーサスの思考ベクトルに導かれるまま、一味はまるでエレベーターに乗っているかのように、垂直の暴風雪を切り裂きながらドラムロックの頂上へ向かって空中を優雅に直立飛行(リフトアップ)していく。
「すっげぇ……!! 空飛んでるぞこれ!! 全然寒くねぇし、めちゃくちゃ快適だぁーーっ!!」
ルフィが空中で大はしゃぎし、サンジもタバコをくゆらせながら感心したように息を吐く。
「さすがルーサス君だね。これなら病人の負担もゼロだわ」
ビビが能力について感想を言った
◇
ルーサスが展開する『反重力・温熱結界』の加護を受け、一味は猛吹雪の吹き荒れるドラムロックの険しい壁面を一気に駆け上がり、あっという間に頂上にそびえ立つ巨大な城の麓へと到着した。
結界を解除し、着地したルフィがナミの乗ったソリを引き直す。
「よし、着いたぞ! ここがその城だな!」
その時だった。
城の門の脇にある雪山の斜面から、ガサリと音が響いた。
「ん……? なんだ今の影……!?」
サンジが雪煙の合間に鋭い視線を向けた。
斜面の上の雪陰から、ふわりと小さな影が姿を現し、こちらを伺うように覗き込んでいた。
それは――青い鼻を持ち、二本足で立つ奇妙なトナカイの姿だった。
トナカイは、物陰から身体を隠しているつもりなのだろうが、『隠れる向きが逆(顔だけ隠して体が丸見え)』になっていた。
「おいルフィ……見ろよあれ。トナカイか……? なんであいつ、隠れ方が逆なんだ……?」
サンジが呆れたように呟く。
「ん? なんだあいつ! 面白ぇ顔してんな! 非常食か!?」
ルフィが寒さに耐えながらもニカッと笑う。
そのトナカイ――のちの船医『トニートニー・チョッパー』は、ルフィたちの声にビクッと肩を跳ね上がらせると、怯えたように一目散に雪山の奥へと走り去っていった。
「逃げちゃったな……。だが、あいつを追えば城の中に入れるはずだ!」
ルフィたちは巨大な城門を押し開き、内部へと踏み込んだ。
「おいーーっ! 医者はどこだーーっ!! 仲間が病気なんだ、助けてくれ!!」
ルフィの声に導かれるように、城の奥から梅干しを口に含んだような笑い声とともに、派手な衣装を纏った140歳の魔女医者『ドクター・クレハ』が姿を現した。傍らには、先ほどの青い鼻のトナカイ・チョッパーが恐る恐る隠れている。
クレハはナミの状態を一目見て「ケスチア病……放っておけばあと2日で死亡する猛毒の病だよ」と告げる。そしてルーサスの分子熱量ハックによる一時的アレストを見抜きつつ、「代償としてお前たちの全財産をいただくよ!」と豪快に笑った。
すぐにクレハとチョッパーによる解熱・抗菌の治療が始まる。
その様子を見届けたルーサスは、過酷な薬効の副反応や体の痛みをナミに味わわせないため、静かに彼女の額に指先を触れさせた。
「現実の肉体で治療が完了するまで、過酷な薬効の副反応や体の痛みを耐えさせる必要はない。――ナミ、治療が終わるまで精神はあの空間でゆっくり過ごしていろ」
ルーサスは脳波シグナルを同調させ、VRアクセスを起動した。
「VRシステム――『絶対電脳空間(ヴァーチャル・ワールド)』・ヒーリングモード接続」
VR空間の常春の楽園で、病気の苦しみを一切忘れて美味しいスイーツを食べながらゆっくりと眠るナミ。現実世界のベッドでは、彼女は苦痛を感じることもなく穏やかな表情で治療を受けていた。
ナミの無事が確保され、一味の関心はいよいよ、この城に潜む奇妙で心優しいトナカイ『トニートニー・チョッパー』の秘密へと向けられていくのだった――!
ご覧いただきありがとうございました!
第43話をお読みいただきありがとうございます。
次回第44話もどうぞお楽しみに!
※今作のルフィは「敵の全力を引き出しつつ自分も戦いを楽しむ」ために、あえて初手から全力を出さずに力をセーブするスタンス(ドラゴンボールの孫悟空スタイル)をとっています。参謀ルーサスだけがその本質を見抜いている信頼関係にもぜひご注目ください!
少しでも面白かったら、評価やブックマークをいただけますと大変執筆の励みになります!