【ONE PIECE】電気(ことわり)を統べる者 〜海賊王の右腕となる雷の能力者〜 作:フォレスティアル
第44話は、ドラム城内での交流と運命の開戦!
ナミがVR空間で穏やかに休む傍ら、城内で繰り広げられるチョッパーとのドタバタ、明かされる恩師Dr.ヒルルクとの泣ける過去と「怪物」と呼ばれた誇り、そして城門を破壊して舞い戻ってきた悪王ワポル軍との激突を描く大ボリューム回です!
どうぞお楽しみください!
ドクター・クレハの手によって解熱剤と抗菌薬の投与が始まり、同時にルーサスの『絶対電脳空間(ヴァーチャル・ワールド)』への精神接続によって、ナミは薬効の激しい副反応や身体の重だるさを何一つ味わうことなく、VR空間の常春の庭園で穏やかな休息に入っていた。
ベッドの上で呼吸を整え、安らかな表情で眠るナミの姿を確認したルフィは、ポンと手を叩いた。
「よし! ナミの奴、気持ちよさそうに寝てんな! ……ところでよ、さっきのトナカイはどこ行ったんだ?」
ルフィがキョロキョロと室内を見回すと、医務室の奥にある巨大な本棚の陰から、ガタガタと震える気配があった。
青い鼻のトナカイ――チョッパーが、相変わらず『隠れる向きが逆(顔だけ隠して体が丸出し)』の状態で、必死に息を殺していた。
「おい、トナカイ! お前もナミの薬を作ってくれたんだろ? サンキューな!」
「ひっ……!!」
ルフィがニカッと笑って近づくと、チョッパーはビクッと全身を跳ね上がらせ、咄嗟に巨漢の人間型(重量強化・ヘビーポイント)へと姿を変えた。
「く、来るな人間ども! おれはトナカイだが『ヒトヒトの実』を食べた化け物だ! 人間でもトナカイでもねぇ……青い鼻の怪物なんだ! おれなんかに近づくと怪我するぞ!!」
巨大な身体で必死に威殺の構えをとるチョッパー。だが、その瞳には深い絶望と「また拒絶されるのではないか」という怯えが色濃く滲んでいた。
生まれた時から奇異な青い鼻を持ち、トナカイの群れから弾き出され、悪魔の実を食べて人型になれば人間たちから「雪男」「怪物」と恐れられて鉄砲で撃たれた過去。彼を受け入れてくれたのは、この国でたった一人の心優しきヤブ医者――Dr.ヒルルクだけだった。
ルーサスは眼鏡の奥の瞳を冷徹に光らせ、チョッパーの形態変化を分析するように呟いた。
「……トナカイが『ヒトヒトの実』を摂取したことによる骨格および内分泌系の分子組み換えか。短時間で三段階の生体フォルムチェンジを可能にしているのは興味深い。……お前が言う『怪物』とは、単なる生物学的な個体変異の域を出ん」
「へ……? 生体……へんい……?」
難しい言葉にチョッパーがポカンと首をかしげると、ルフィが目を輝かせてチョッパーの巨体に飛びついた。
「うっひょーーーっ!! すっげぇええ!! 喋った! 変身した!! 面白ぇーーっ!! サンジ見ろよ! 立ち上がったぞ!!」
「うわあああ!? 触るな! 怖がるんじゃないのかよ! おれは化け物だぞ!?」
慌てふためくチョッパーを、サンジもタバコをくゆらせながらニヤリと見下ろす。
「化け物だなんだなんてどうでもいいさ。お前がナミさんを助けたのは事実だ。あとで美味ぇ肉料理でも食わせてやるから、大人しくルフィのおもちゃになってろ」
「……お前ら、おれを……怖くないのか……?」
チョッパーの大きな瞳から、ぽろぽろと大粒の涙があふれ出す。
「怪物」と蔑まれることもなく、ただの「仲間」として当たり前のように接してくれる人間たちとの、生まれて初めての出会いだった。
クレハが酒瓶をあおりながら、どこか愛おしそうにチョッパーを見つめ、静かに語り出す。
「……このチビの名はトニートニー・チョッパー。この国にいた本物のバカなヤブ医者――Dr.ヒルルクがつけた名前さ」
「ヒルルク……?」
それはかつて、全てに絶望して瀕死だったトナカイのチョッパーを、ヒルルクは両手を広げて「おれは決して銃を撃たねぇ」と笑顔で迎え入れ、「チョッパー」という誇り高い名前とピンクの帽子をくれた。
医療の技術など一切ないヤブ医者ではあったが、ヒルルクには「この世に治せねぇ病気なんてねぇのさ! 国の病気だって治してみせる!」という熱い信念があった。彼が目指したのは、数十年の研究の末に完成させようとしていた『冬島に咲かせる奇跡のピンクの桜』――人の心を救う奇跡の花だった。
だが、ヒルルクの身体は不治の病に侵されていた。
彼に生きてほしい一心で、チョッパーは図鑑で見つけた万能薬のマーク(ドクロのマーク)を信じ、命がけで猛毒のキノコ『アミウダケ』を採取して持ち帰った。
「おれの力になれるなら……おれは本物の怪物にだってなりたい……!!」
ボロボロになりながら笑うチョッパーの思いを知ったヒルルクは、それが猛毒だと知りながらも「美味かったぞ、元気を貰った」と笑ってスープを飲み干した。ドクロのマークが「信念の象徴」ではなく「死の象徴」だとチョッパーが知ったのは、ヒルルクが去った後のことだった。
ヒルルクは、ワポルが仕掛けた「イッシー20が全員倒れた」という卑劣な偽情報に引っかかり、城へと赴いた。
だが、それが罠だと知った時、ヒルルクは病気が偽りだったことに心から安堵し、城の前で笑ったのだ。
「――人はいつ死ぬと思う…? 心臓をピストルで打ち抜かれた時……違う。不治の病に侵された時……違う。猛毒のキノコ風スープを飲んだ時……違う!!」
兵士たちの銃口を前に、ヒルルクは胸を張って叫んだ。
「――人に、忘れられた時さ……!!」
自ら劇薬を飲み、爆発の中で命を散らしたヒルルク。その遺志を継ぐため、チョッパーはクレハに頭を下げ、「おれに医者のやり方を教えてくれ!」と泣き叫び、今日まで必死に医療を学んできたのだ。
「……おれの名前は『トニートニー・チョッパー』!!! 世界で一番偉大な医者がくれた名前だ!!!!」
涙を拭い、誇らしく胸を張るチョッパー。
その時だった。
――ドゴォォォン……!!!
重厚なドラム城の巨大な門が、凄まじい衝撃とともに内側へ向かって吹き飛ばされた。
極寒の暴風雪が城内へと突風となって雪崩れ込んでくる。
「ハッハッハ! 戻ったぞ、我が城へ!!」
雪煙の中から現れたのは、ブリキの鎧を身に纏い、巨大な口を歪めた男――この国を捨てて逃げ出していた悪王『ワポル』。そしてその側近であるチェスとクロマーモの二人だった。
「ワポル……!!」ドルトンから話を聞いていたサンジが眼光を鋭くする。
「ほう、ドクター・クレハか。勝手にワタクシの城を不法占拠しおって! イシシ20を取り戻し、このドラム王国を再びワタクシの完璧な支配下に置くために帰還したのだ! 邪魔立てする者はすべて我が『バクバクの実』の能力で食い尽くしてやるわい!」
ワポルが醜悪な笑みを浮かべ、城内にたむろするルフィたちをねめつける。
「ん……? なんだあいつら。見かけん顔だな。……まぁいい、城の中にいる虫ケラはまとめて排除しろ!」
ワポル軍の兵士たちが一斉に銃器を構えた。
チョッパーが前に出ようと身体を張るが、その肩を、ルーサスが静かに制した。
「……待て、トナカイ。患者のいる空間での騒音および構造物の破壊行為は、医療環境の維持において非合理極まりない」
ルーサスが静かに歩み出で、足元に青白い幾何学模様の『絶対領域』を展開する。
同時に、後ろで腕を組んでいたルフィが、ニカッと不敵な笑みを浮かべた。
「おいルーサス。あいつがこの国を無茶苦茶にした最低な王様か?」
「ああ。ターゲット確定――バクバクの実の能力者、ワポル。……どう料理する、船長」
「ひっさしぶりに胸糞悪い奴に会ったぜ。――ぶっ飛ばす!!」
ドラム城の広間にて、一味と悪王ワポル軍の決戦の火蓋が、いま切って落とされたのだった――!
ご覧いただきありがとうございました!
第44話をお読みいただきありがとうございます。
次回第45話もどうぞお楽しみに!
※今作のルフィは「敵の全力を引き出しつつ自分も戦いを楽しむ」ために、あえて初手から全力を出さずに力をセーブするスタンス(ドラゴンボールの孫悟空スタイル)をとっています。参謀ルーサスだけがその本質を見抜いている信頼関係にもぜひご注目ください!
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